1 / 1
1話「迷宮メイカーの世界」
しおりを挟む
【迷宮メイカー】
2000年代初頭、パソコンゲーム黎明期に流行ったシュミレーション系のファンタジーゲームだ。
ゲーム性としては最近流行りの物に比べれば、作り込みも甘く、ストーリーなどの密度もあまり良くは無い。
しかし、ドット風の2頭身キャラクターが侵入者である【勇者】と戦ったり、ダンジョンを建造したりする姿は非常に中毒性が高く、現在でも多くのファンが飽きずにプレイをしているゲームだ。
残念ながら製作会社の倒産により続編が製作されることはなく、現在は別会社に権利が移譲し、続編が世に流布している。
そして、俺、【野幹 殿】もまた、そんなゲームのファンの一人だった。
両親を早くに亡くし、孤児院に引き取られて暫く。
両親を失った悲しみから塞ぎ込んでいた俺は、孤児院の友人から紹介されたこのゲームにハマり、気づけばこのゲームに没頭するようになった。
残念なことにその友人はすぐに里親に引き取られて行ったため、付き合いが長かった訳では無いが、それでも俺の人生を救ってくれた恩人だと今でも感謝している。
おかげで深い悲しみから立ち上がることの出来た俺は、高校卒業後に「誰かの役に立ちたい」という想いから看護学校に進学。
バイトと奨学金で何とか生活しつつ、看護学生として様々な勉強をしている。
そんな俺の趣味は、言わずもがな迷宮メイカーをプレイすることだった。
「えーと、ここのエリアに壁配置…こっちに生産区画…よし、こんなもんかな。」
自分が作り上げたダンジョンは名前を付けてオンライン上にアップロードすることで、他のプレイヤーが【勇者】としてダンジョンを攻略することも出来る。
これにより、現在でも様々なダンジョンが毎日のように更新され続けているのだ。
「ふぁ~…」
急な眠気に目を擦る。
ふと、画面の端を見ると、随分長い間集中していたらしい。
今回のダンジョンは自分の中でも過去最高レベルのクオリティだと自負している。
ただ、それ相応に体力と集中力を消耗していたため、眠気が襲ってきたのだろう。
幸い明日は休日でバイトのシフトも無かったため、少し仮眠を取ろうかと机に上半身を預け、俺の意識はそのまま深い闇に沈んで行った。
――――――――――
―――ポタッ
何かにぶつかり反響する水音に気付き、俺は目を覚ました。
『…あれ…ここは…?』
見たことも無いような洞窟の風景が辺りに広がっている。
反射的に夢かと思い、もう一度目を閉じようとするが、目を閉じたはずなのに周りの景色が視界に飛び込んでくる。
これはおかしいと良く良く体の感覚に意識を向ければ、どうにも中に浮かぶ球体のような状態になっているらしい。
しかし、自分の体が中に浮かぶ球体だと自覚した上で、同時に違和感を感じることが無かった。
おかしいとは思いつつも、やはり夢かと確信し、夢ならば楽しんでやろうと洞窟の奥へ進んで行く。
『にしても暗いな~…お化けとか苦手だから出てこないで欲しいわ。』
洞窟の奥へ進む中、途中で錆び付いた中世の騎士鎧のような物が転がっているのを確認した。
興味を抱き周囲を漂っていると、中に白骨死体がいるのが見える。
『うっわ~なんだこれ…夢にしてはだいぶリアルだな。って…ん?』
中の白骨から引き寄せられるような感覚がする。
その感覚に身を委ねると、次の瞬間には視界が入れ替わり、洞窟の天井を見上げるような形で倒れているのを自覚した。
びっくりして起き上がる。
すると、今度は体の感覚があることに気づく。
がばっと自分の手を確認すると、先程倒れていた騎士鎧のグローブがそこにはあった。
2000年代初頭、パソコンゲーム黎明期に流行ったシュミレーション系のファンタジーゲームだ。
ゲーム性としては最近流行りの物に比べれば、作り込みも甘く、ストーリーなどの密度もあまり良くは無い。
しかし、ドット風の2頭身キャラクターが侵入者である【勇者】と戦ったり、ダンジョンを建造したりする姿は非常に中毒性が高く、現在でも多くのファンが飽きずにプレイをしているゲームだ。
残念ながら製作会社の倒産により続編が製作されることはなく、現在は別会社に権利が移譲し、続編が世に流布している。
そして、俺、【野幹 殿】もまた、そんなゲームのファンの一人だった。
両親を早くに亡くし、孤児院に引き取られて暫く。
両親を失った悲しみから塞ぎ込んでいた俺は、孤児院の友人から紹介されたこのゲームにハマり、気づけばこのゲームに没頭するようになった。
残念なことにその友人はすぐに里親に引き取られて行ったため、付き合いが長かった訳では無いが、それでも俺の人生を救ってくれた恩人だと今でも感謝している。
おかげで深い悲しみから立ち上がることの出来た俺は、高校卒業後に「誰かの役に立ちたい」という想いから看護学校に進学。
バイトと奨学金で何とか生活しつつ、看護学生として様々な勉強をしている。
そんな俺の趣味は、言わずもがな迷宮メイカーをプレイすることだった。
「えーと、ここのエリアに壁配置…こっちに生産区画…よし、こんなもんかな。」
自分が作り上げたダンジョンは名前を付けてオンライン上にアップロードすることで、他のプレイヤーが【勇者】としてダンジョンを攻略することも出来る。
これにより、現在でも様々なダンジョンが毎日のように更新され続けているのだ。
「ふぁ~…」
急な眠気に目を擦る。
ふと、画面の端を見ると、随分長い間集中していたらしい。
今回のダンジョンは自分の中でも過去最高レベルのクオリティだと自負している。
ただ、それ相応に体力と集中力を消耗していたため、眠気が襲ってきたのだろう。
幸い明日は休日でバイトのシフトも無かったため、少し仮眠を取ろうかと机に上半身を預け、俺の意識はそのまま深い闇に沈んで行った。
――――――――――
―――ポタッ
何かにぶつかり反響する水音に気付き、俺は目を覚ました。
『…あれ…ここは…?』
見たことも無いような洞窟の風景が辺りに広がっている。
反射的に夢かと思い、もう一度目を閉じようとするが、目を閉じたはずなのに周りの景色が視界に飛び込んでくる。
これはおかしいと良く良く体の感覚に意識を向ければ、どうにも中に浮かぶ球体のような状態になっているらしい。
しかし、自分の体が中に浮かぶ球体だと自覚した上で、同時に違和感を感じることが無かった。
おかしいとは思いつつも、やはり夢かと確信し、夢ならば楽しんでやろうと洞窟の奥へ進んで行く。
『にしても暗いな~…お化けとか苦手だから出てこないで欲しいわ。』
洞窟の奥へ進む中、途中で錆び付いた中世の騎士鎧のような物が転がっているのを確認した。
興味を抱き周囲を漂っていると、中に白骨死体がいるのが見える。
『うっわ~なんだこれ…夢にしてはだいぶリアルだな。って…ん?』
中の白骨から引き寄せられるような感覚がする。
その感覚に身を委ねると、次の瞬間には視界が入れ替わり、洞窟の天井を見上げるような形で倒れているのを自覚した。
びっくりして起き上がる。
すると、今度は体の感覚があることに気づく。
がばっと自分の手を確認すると、先程倒れていた騎士鎧のグローブがそこにはあった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる