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第8話「アスカ山脈防衛戦・後編」

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 やがて兵たちは体を震わせ、くしゃみがあちこちで聞こえ始める。

「流石に夜は冷え込むな。山の上ってのはこういうものか」
「そういうものだろ。布団が暖かいぜ」

 見張りの兵を残して、一人、また一人と眠りに落ちる。

「なぁ……なんか寒くないか」
「あぁ。昨日までこんなに寒かったか?」

 見張りの兵たちは困惑していた。いくら気候が安定しないとはいえ、この気温の突然の変化は異常だ。わずか1時間の間に20度も下がり、今なお寒さが増していく。兵たちは震えて頬を赤くしていた。

「あり得ないって。なんだよ……おわ、雪が降り始めた」

 雪というよりはみぞれに近いが、ほとんど見たことの無い者にとっては同じこと。寒さの象徴とも言えるそれは、街中で見ればロマンチックだろう。だが、防寒対策がしっかりしていない状態で、山の中腹で見たらどうだろうか。

「ふざけんなよ。そもそもこの山は雪なんて降らないはずだろう!」
「知らねぇよ! こっちだって聞きたいくらいだ!」

 みぞれは大粒の雪に、そして風に乗って吹雪と化す。夜が明ける頃には、どの隊も身を寄せ合って動けないでいた。

「どうするんですか隊長。こう寒くちゃ進軍なんて難しくないですかい?」
「だが、もう半分以上は進んでいる。引き返すより、進んだ方がずっと距離は短い」
「寝惚けないでくださいよ。その後、もう一回戦しようなんて気力があると思うんですかい?」

 隊長が悔しそうに紫色の唇を噛み締める。

「報告します。後方の気温を確かめて来ました」
「おう。どうだった?」

 寒さに震えて何もできない隊長に代わって、筋肉質の大男が兵に尋ねる。

「戻れば戻るほど、雪は少なく暖かい感じがしました」
「おいおい、感じって……まぁ、ろくな機材もねぇんだ。それが限界だよな。ありがとよ」

 兵を下がらせ、大男は隊長の肩を掴む。

「隊長さんよ。俺たちは軍隊だ。あんたが進めと言えば進むし、死ねと言えば死ぬしかない。どうするかは任せるが、あんただってここで無駄死にしたくないだろう?」
「わかっている! だが、この作戦にかかったコストを考えると容易に撤退などできん!」
「わかってないのはあんたもだ。確かにここまで来るにもかなりのコストはかかったが、ここから強行すればもっと莫大な浪費になるんだぜ? 人間はそうポンポン生まれないし、育ちもしない」

 その一言が決定打となったのか、それとも隊長の生きたいという思いが勝ったのか。それから数時間後、撤退が決定した。
 大男は山の頂を見て溜め息を吐く。

「自然にやられたのか、それとも魔物たちにやられたのか。いずれにしても完敗だ。悔しいって気持ちも出ないくらいにな」

 こうして、アスカ山脈防衛戦はステラとアルが参戦した事により、奇跡的な勝利を収めることになった。
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