魔王と配下の英雄譚(修正版)

るちぇ。

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第一章 英雄の序曲

第15話「魔王の代償2」

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 警護という話で同行しているが、全くモンスターと遭遇することなく目的地に到着したらしい。そこは地平線が見えるほど広大な黄色の花畑が咲き誇っていた。

「これは……菜の花か」

 確か油の原料になるんだったか。あの村は農業を中心に生計を立てているのかもしれない。

「綺麗ですね、我が君」
「あぁ、そうだな」

 こうして一面咲き誇っていると、まるで黄金の絨たんを敷いたみたいだ。チョウチョや小鳥が飛び交い、絵に描いたような楽園のようになっている。
 しばらく菜の花観光をしていると、少女の悲鳴が響き渡る。駆け付けると、少女は腰を抜かして後ずさって来ていた。その先には剣を装備したゴブリンが数匹、にじり寄る様にして迫って来る。

「我が君、お下がり下さい! ここは私が!」

 言うや否や、ウロボロスが槍の神具グングニルを振るうと、ゴブリンの頭が空高く舞い上がった。
余りの速さに理解が追い付いていないのだろう。茫然と、仲間だったものをゴブリンたちは見つめて動こうとしない。

「……待て、ウロボロス。試したいことがある。下がってくれ」
「は、了解しました」

 雑魚とわかったからか、ウロボロスは後方に下がってくれる。一応アザレアにも連絡を入れると、そもそも敵とすら認識していなかったらしい。ま、ステータスチェックする余裕があったなら当然の反応だな。
 錬金開始。媒介は空気。ランクは神具の下の王具から始めてみよう。形状は剣。そうだな、文月に持たせているファルシオンでいいか。

「錬金完了」

 重量級の片刃剣を生成する。こいつは敵の鎧ごと切り捨てるための武器だ。
 我に返ったであろうゴブリンたちが剣を振り上げて向かって来る。丁度いい。剣を交えてみようじゃないか。

「……弱いな」

 金属音が鳴ったかと思ったら、もうゴブリンの首をはねていた。相手の剣は綺麗に真っ二つ。話にならない。

「ウロボロス、持っていろ」
「は、了解しました」

 ファルシオンを預けて次の武器の錬金にかかる。実験体がいる内に、配下たちの武器が効くのか試しておきたい。

「出でよ、モーニング・スター」

 これは卯月、皐月、水無月に持たせている王具のメイスだ。棘の付いた球体が先端に取り付けられている。特殊能力として、魔法攻撃を物理ダメージとして相手に叩き込める。

「さぁ、潰れろ」

 逃げるゴブリンを背後から押し潰す。炎属性を付加したからか、黒炭になって消滅した。

「……なるほど、この程度か」

 王具クラスでも楽々倒せるのは有難い。この分だと、更にランクの低い武器でも十分かもしれないぞ。

「す……凄いね。貴方たち、ひょっとして王都から来たの?」
「王都? いや、何というか……ちょっと遠い国からな。海を超えて来たんだ」
「そっか、そうだよね。全然見たこともない魔法と武器だったもんね」

 少女はやっと立ち上がり、

「ありがとう、このご恩は忘れません」

 丁寧に、深々と頭を下げてきた。そんなに感謝されることなのだろうか。この程度の雑魚が脅威となる程、この世界の戦士は弱いのだろうか。

「お礼として今日はご馳走するよ! この村一番の食材を用意するからね!」
「それは楽しみだな」

 言いながら、ちょっと困ったことになった。この世界に来て約3日。どういう訳か所持していた飲まず食わずでも大丈夫な魔法をかけていた。これを解除したらどうなるのか想像も付かない。

「我が君……」
「大丈夫だ。俺を信じろ」

 ウロボロスの外観は幻惑魔法で人間に変えられるよう。そうなるように急遽、魔法を開発したのだ。自分でもびっくりだよ。ドミニオンズじゃ、魔法を作るなんてできなかったから。
 そんなやり取りをしていると、少女は小首を傾げて、

「ひょっとして、苦手な野菜でもあるのかな? 駄目だよ、そんなことじゃ大人として示しが付かないんだから」

 そんなことを言ってくれた。こいつもまた空気を読まない奴だな。俺がここに来るまでの間、どれだけフォローしたと思っているんだ。

「……我が君、もう我慢したくありません。限界です」
「そんな離婚前の妻みたいなことを言わないでくれ」

 これは、あえて地雷原に踏み込んだ戦略的自爆だ。見ろ、赤面していくウロボロスを。効果は抜群のようだぞ。

「妻……!? だ、誰が我が君と離婚などという愚行を犯すというのです!? あぁ、憎らしい。あの下等生物もろとも滅ぼしてくれる!」

 墓穴を掘ったというのか。なぜだ。どうしてそう都合悪く解釈するんだよ、お前は。これじゃあ踏み損じゃないか。

「そこを耐えてくれ。大丈夫、お前の鋼のような意思があれば」
「だからこそ、この不届き者の首を刎ねたく思います。止めないで下さい……!」

 あぁ、もうどうすればいいんだよ。もう抱き締めてキスの一つでもしないと駄目か。考えが渦巻き、一方でウロボロスが激昂して走り出そうとした時だった。少女の背中にぶつかる。

「おい、どうして立ち止まっているんだ? 道にでも迷ったか?」
「う……嘘……どうして……!? こうしちゃいられない……! 行かなくちゃ……!」

 少女は半狂乱になりながら駆け出して行った。一体何があったのか、行く先に目をやると事態を察する。遥か遠方だが、黒煙が立ち昇っている個所があった。あの煙の量から察するに大規模の火災か。

「アザレア、どういう状況だ?」

 通信を送ると、極めて落ち着き払った口調のアザレアが状況を教えてくれる。この先にある村が騎士風の人間たちに焼き打ちにされているのだと。
 後方待機している奴を向かわせても間に合わない。俺は少女の後を追った。
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