魔王と配下の英雄譚(修正版)

るちぇ。

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第一章 英雄の序曲

第14話「魔王の代償1」

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 晴天に恵まれ、出発としては最高の天候だ。しかも手厚いサポート体制が整っている。最高の出立と言っても良いだろう。

「行くぞ、ウロボロス。俺の警護は任せる」
「は、ありがたき御言葉。このウロボロス、御身には私以外の指を一本たりとも触れさせません」

 言いながら腕組をして来るのはどういうことだ。甲冑がめり込んで痛い。

「えーと……近過ぎないか?」
「いいえ、御身を御守りするにはもっと近くても良いと思います。むしろ、ひとつになってしまいたいく――」
「――あ、綺麗な雲だぞ!」

 必死に話をそらしてみるが、ウロボロスの暴走は止まらない。こんなところで初めてを奪われるのだろうか。女の子って腕組される度にこんな気持ちになるのかな。
 しばらく無事に歩くと踏み固められた道のようなものが見える。等間隔の2本の道路。この形は車輪で押し潰されたものか。

「この世界には車があるのか?」
「報告によれば荷車が存在しています」

 思いっ切り中世という感じなのか。いや、もしかしたらここが辺境の地である可能性もある。都心は兵器で溢れ返っているかもしれない。

「我が君、あちらになります」

 木造の建物が立ち並んでいる。防壁となるものはない。戦争とは無縁の世界なのだろうか。それとも罠か。

「どうなさいますか?」
「そうだな……ん?」

 1人の少女がこちらに向かって歩いて来る。16歳くらいだろうか。俺と同じ黒髪のショートヘアーと黒い目が特徴的だ。アザレアたちが何も仕掛けない辺り、普通の村娘なのだろう。丁度いい、声をかけてみるとしよう。

「そこの人、少しいいか」
「はい、どうしまし……どうしたの?」

 言葉は通じるようだ。意思疎通できるのは強みだぞ。それにしても、同い年くらいと思われたのか。きっと俺の方がずっと年上なんだが、まぁ、外見以上に年を食っている可能性もあるか。

「貴女はあの村で暮らす者だろうか?」
「そうだけど、貴方たちは?」

 俺は黒いマントを羽織っているだけだが、ウロボロスは朱色の鎧で全身を覆っている。旅の途中とは言えない武装だな。

「道に迷ってしまって。宿を探しているんだけど、あの村に宿泊施設はあるかな?」
「残念だけど宿はないんだ。もし良ければうちに招待しようか?」
「ありがたい。お願いしてもいいかな?」
「お、お待ち下さい!」

 ウロボロスに引っ張られる。心なしか、怒りが滲み出ていた。

「何をお考えなのですか!? 御身をかような下等生物の家に置くなど! それにあの雑魚はあろうことか、我が君に敬語も使わずに……!」
「まずは落ち着け」

 何とか宥めたいが、ウロボロスは怒りや殺意といったものが抑え切れないようだ。身悶え、明らかにあの子を敵視している。

「情報を得るためだ。それに、万が一に備えてお前を連れて来ている。文句はないだろ?」
「それは……そうですが。しかし、それと先ほどの無礼な態度は別問題。やはりあの者は許せません……!」
「駄目だ。そんな物騒な考えは捨てろ」

 真っ直ぐに忠誠を誓ってくれているのは嬉しいけど、少しずつ矯正していかないとな。先の件もある訳だし。
 話し込んでいると、少女が申し訳なさそうに声をかけてくる。

「あの、ごめんなさい。私はこれから急ぎの用事があるの。気に障ることがあったら謝るから……」
「もし良ければその用事に協力させて貰えないだろうか? 宿代として働きたい」

 こんなつまらないことで折角のチャンスを棒に振る訳にはいかない。他の村人たちがどんな性格かわからないのだから、こんな人の良さそうな子は逃せない。
少女は迷うような素振りを見せて唸る。そんなに悩むほど大変な用事なのだろうか。

「それなら私の警護をお願いできる? この辺りはモンスターが出るの」

 モンスターか。ランダムに出現する設定なのかもしれない。いずれにしても神無月たちが見落とした脅威。何としても確かめなければ。

「見ての通り、戦闘には精通している。警護は任せてくれ」
「なぜ私が……下等生物の警護など……」

 ウロボロスさん、抑えてくれよ。貴重な情報が手に入るんだから。背中を叩くとすぐに居住まいを正す辺り、武士系統の性格に設定しておいて良かったよな。

「じゃあ早速出発しよう。こっちだよ」

 少女の後を追う。途中、何度もウロボロスが殺意を出すから都度叱り付けたのは言うまでもない。
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