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第一章 英雄の序曲
第22話「魔王の代償9」
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転移魔法でオラクル・ラビリンスの入り口に戻る。アデルは物珍しそうに辺りを見渡していた。
「ここは……神殿?」
「抑えろ、ウロボロス。約束を覚えているだろ?」
前もって釘を刺しておく。アデルをここに連れて来るまでだって相当の苦労をした。最終的に今晩の食事を一緒にするという約束で何とか説得したのだ。
「うぅ……悩ましいです、我が君……!」
「それよりも睦月はどうした? もう連絡は入れたんだろう?」
捕虜の指揮官をアザレアに引き渡したいのだが。ウロボロスが腕力で無理やり押さえ付けているからか、喚き散らされて耳が痛い。
「それには及びませんよ」
アザレアが地表近くまで来るとは珍しい。日焼けが嫌とか言っていた気がするけど、俺たちを出迎えてくれた。
「珍しいな、アザレア」
「いえ、ゴミ出しの帰りです。ところで……こいつを料理していいんですね?」
言いながら、舐めるような目を指揮官に向けている。流石、男もいける奴は見る目が違うな。
「お……おい! 俺は命を助けられる約束をしている! 手荒な真似はするなよ!?」
よくそんな口が聞けたものだな。アザレアもそう思ったのだろう。楽しそうな笑みを浮かべる。
「調教しがいがありそうです。少々お預かりします」
何やら叫んでいる指揮官とアザレアを見送り、アデルを玉座の間まで連れて行く。
「もしかして、ここがユウさんのお城なの? 凄い……ここ、謁見の間なんだよね?」
「少し黙っていてくれ。これから配下たちに指示を出す」
神無月を呼ぶ。アデルに敵意の籠った視線を送りながらも、一度注意するといつもの表情に戻った。
「文月をあの村の警護につかせてくれ。外敵を一切近付けさせないように」
「畏まりました。武装は如何様になさいますか?」
「王具の使用も許可するけど、今のところ相手は雑魚ばかり。木の枝でも十分かもしれないぞ」
冗談混じりに危険は少ないと伝える意味も込めて話したのだが、
「委細承りました。では、失礼致します」
真面目な神無月は言葉通りに受け取ったのだろう。文月が木の枝を振り回す姿が目に浮かんだ。何だか申し訳ないけど、特に問題はないだろう。
神無月を見送り、ウロボロスにも指示を出す。
「ウロボロス、疲れただろ? 装備を外して来るといいよ」
「それでは我が君を警護する者がおりません!」
「それはワシに任せるのじゃ」
ワープでカルマがやって来る。両手にはフラスコとビーカー。実験中だったか。
「団長殿はご高齢じゃ。お婆ちゃんにはもう限界じゃろう。湯浴みでもして肩凝り腰痛を解消して来るがいい」
初対面のアデルでさえ顔が引きつるほどの毒舌。流石だ、カルマ。
「ほぉ……良い度胸ですね、カルマ。死にたいならそう言って下されば良いものを!」
再会した途端に喧嘩か。アデルもいるというのに。これじゃあ威厳も何もあったものじゃないな。
「カルマ、お前はここに残れ。ウロボロス。お前は少し下がって頭を冷やして来い」
「了解したのじゃ、魔王様」
カルマが勝ち誇ったような顔で俺の横に立つ。
「……了解しました。すぐに戻って参ります」
一方で、鬼の形相でウロボロスは退室していった。これで何とかこの場は切り抜けたかな。
「え……あの、そこの人。今、ユウさんを何と呼びましたか?」
アデルが戸惑った様子でカルマを呼び止める。ちゃんと説明しておかないとな。居住まいを正してアデルに向き合う。
「ようこそ、我らが居城へ。俺は魔王ユウ。とある世界で絶対的な覇者として君臨した、オラクル・ナイツの創造主だ」
沈黙が流れる。かなり頑張って格好つけたんだけど。
「えっと……ユウさんって、ひょっとして痛い人? それとも頭が残念なだけ?」
「違う! 本当なんだよ! 見ただろ、俺たちの力を!」
カルマが大笑いする。
「この小娘は今晩の食事か実験体かの? 我が愛しき魔王様に対して余りにも不敬。コックはワシに任せて貰えまいか……!?」
いや、笑ってなかった。目がマジだ。明らかに激怒している。
「落ち着け、カルマ! こいつは大切な現地協力員だ! 殺すなよ、絶対だぞ!?」
そして、どうしてアデルは胸を張っているんだ。現地協力員はそんなに偉いのか。
「く……ぐ……! ふぅ……ワシとしたことが取り乱したようじゃ。小娘、今後は魔王様に対する言動に気を付けよ。さもなければ、刺し違えてでも殺すからの。何なら今からでも遅くはないぞ?」
狂人というものが本当にいるなら、カルマみたいな笑顔を浮かべるんだろうな。それでもウロボロスよりはマシか。そう思うことにして配下たちが揃うのを待った。
「ここは……神殿?」
「抑えろ、ウロボロス。約束を覚えているだろ?」
前もって釘を刺しておく。アデルをここに連れて来るまでだって相当の苦労をした。最終的に今晩の食事を一緒にするという約束で何とか説得したのだ。
「うぅ……悩ましいです、我が君……!」
「それよりも睦月はどうした? もう連絡は入れたんだろう?」
捕虜の指揮官をアザレアに引き渡したいのだが。ウロボロスが腕力で無理やり押さえ付けているからか、喚き散らされて耳が痛い。
「それには及びませんよ」
アザレアが地表近くまで来るとは珍しい。日焼けが嫌とか言っていた気がするけど、俺たちを出迎えてくれた。
「珍しいな、アザレア」
「いえ、ゴミ出しの帰りです。ところで……こいつを料理していいんですね?」
言いながら、舐めるような目を指揮官に向けている。流石、男もいける奴は見る目が違うな。
「お……おい! 俺は命を助けられる約束をしている! 手荒な真似はするなよ!?」
よくそんな口が聞けたものだな。アザレアもそう思ったのだろう。楽しそうな笑みを浮かべる。
「調教しがいがありそうです。少々お預かりします」
何やら叫んでいる指揮官とアザレアを見送り、アデルを玉座の間まで連れて行く。
「もしかして、ここがユウさんのお城なの? 凄い……ここ、謁見の間なんだよね?」
「少し黙っていてくれ。これから配下たちに指示を出す」
神無月を呼ぶ。アデルに敵意の籠った視線を送りながらも、一度注意するといつもの表情に戻った。
「文月をあの村の警護につかせてくれ。外敵を一切近付けさせないように」
「畏まりました。武装は如何様になさいますか?」
「王具の使用も許可するけど、今のところ相手は雑魚ばかり。木の枝でも十分かもしれないぞ」
冗談混じりに危険は少ないと伝える意味も込めて話したのだが、
「委細承りました。では、失礼致します」
真面目な神無月は言葉通りに受け取ったのだろう。文月が木の枝を振り回す姿が目に浮かんだ。何だか申し訳ないけど、特に問題はないだろう。
神無月を見送り、ウロボロスにも指示を出す。
「ウロボロス、疲れただろ? 装備を外して来るといいよ」
「それでは我が君を警護する者がおりません!」
「それはワシに任せるのじゃ」
ワープでカルマがやって来る。両手にはフラスコとビーカー。実験中だったか。
「団長殿はご高齢じゃ。お婆ちゃんにはもう限界じゃろう。湯浴みでもして肩凝り腰痛を解消して来るがいい」
初対面のアデルでさえ顔が引きつるほどの毒舌。流石だ、カルマ。
「ほぉ……良い度胸ですね、カルマ。死にたいならそう言って下されば良いものを!」
再会した途端に喧嘩か。アデルもいるというのに。これじゃあ威厳も何もあったものじゃないな。
「カルマ、お前はここに残れ。ウロボロス。お前は少し下がって頭を冷やして来い」
「了解したのじゃ、魔王様」
カルマが勝ち誇ったような顔で俺の横に立つ。
「……了解しました。すぐに戻って参ります」
一方で、鬼の形相でウロボロスは退室していった。これで何とかこの場は切り抜けたかな。
「え……あの、そこの人。今、ユウさんを何と呼びましたか?」
アデルが戸惑った様子でカルマを呼び止める。ちゃんと説明しておかないとな。居住まいを正してアデルに向き合う。
「ようこそ、我らが居城へ。俺は魔王ユウ。とある世界で絶対的な覇者として君臨した、オラクル・ナイツの創造主だ」
沈黙が流れる。かなり頑張って格好つけたんだけど。
「えっと……ユウさんって、ひょっとして痛い人? それとも頭が残念なだけ?」
「違う! 本当なんだよ! 見ただろ、俺たちの力を!」
カルマが大笑いする。
「この小娘は今晩の食事か実験体かの? 我が愛しき魔王様に対して余りにも不敬。コックはワシに任せて貰えまいか……!?」
いや、笑ってなかった。目がマジだ。明らかに激怒している。
「落ち着け、カルマ! こいつは大切な現地協力員だ! 殺すなよ、絶対だぞ!?」
そして、どうしてアデルは胸を張っているんだ。現地協力員はそんなに偉いのか。
「く……ぐ……! ふぅ……ワシとしたことが取り乱したようじゃ。小娘、今後は魔王様に対する言動に気を付けよ。さもなければ、刺し違えてでも殺すからの。何なら今からでも遅くはないぞ?」
狂人というものが本当にいるなら、カルマみたいな笑顔を浮かべるんだろうな。それでもウロボロスよりはマシか。そう思うことにして配下たちが揃うのを待った。
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