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第一章 英雄の序曲
第28話「魔王の心、人の心3」
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アデルに突き刺さるような視線と魔法の一斉照射が集まる。耳をつんざく様な轟音が鳴り響き、壁に大穴が空いた。防御魔法を使っておいて良かった。アデルが死んでしまうところだったぞ。
「全員、思うところはあるだろうけど、抑えてくれ。俺はアデルの話を聞きたい」
「しかし、我が君!」
「頼む、これは命令だ」
なおも何か言いたげにしているウロボロス、そして激怒した顔つきの全員に背を向けて、アデルと向き合う。こんなことをされたというのに、その表情は毅然としていた。
「恐くないのか?」
「うん、きっとユウさんなら守ってくれると思っていたからね。ここで死んじゃうくらいなら、この場所に来る前に命は無かったと思うし」
それだけの覚悟を決めて来たと言うのか。なるほど、村を束ねる家系に生まれただけのことはある。いや、それ以上の素質があるということか。
「それで、こんな目に遭ってまでして、何を言ってくれるんだ?」
「戦争になったらたくさんの人が死んじゃうんだよね?」
「あぁ、そうだな。お前の村がそうなったように」
意地悪な言い方だ。それでもアデルは引き下がらない。
「そんな悲しいことをどうして?」
「どうして? 逆に聞こう。どうして、お前は俺にあの村を守るように依頼した? 言葉を濁しているが、それはつまり敵を殺せと命令しているようなものだろう」
「そうだね、私たちは同罪かもしれない。殺して欲しいって言ったのは間違いなくこの私だから。でもだからこそ、その理由を聞いておきたいの」
「……理由だと?」
言いながら失笑する。俺は心のどこかでゲームと思っている。雑魚を片付ける理由なんてあるだろうか。普通は良心の呵責に耐えられないだろう。でも残念ながら、俺にそんな感情は無い以上、理由なんて大そうなものは初めから存在しない。
「あの時、ユウさんは怒ってくれた。悲しくて、泣いている私と同じ気持ちになってくれたじゃない。だから聞きたいの。どうして戦争なんて悲しいことをやるのか」
今の俺は魔王ユウだ。魔王は人の心がわからない。だって、これはゲームなんだから。他者を蹴り落とし、常に頂点を目指すシステムで生きる者の宿命なんだよ。
「我が君、どうされましたか!?」
ウロボロスが駆け寄って来て、目元を拭われる。涙だと。俺は泣いているのか。
「誰かを悲しませて何かを成す。力を振りかざして弱い人を屈服させて……それで満足なの?」
アデルの言葉を聞いて、全身の力が抜け落ちていく感覚に襲われる。そうだった。俺は皆に何て誓った。何を思ってオラクル・ナイツを作ったのか。
配下はプログラムである以上、絶対に主人に逆らえない。そんな絶対的な力関係によって捨てられて、玩具にされていた皆を守りたかった。強者としてふんぞり返る奴らに、それは間違いだと叩きつけたかった。そんな大切なことをどうして忘れていたのだろう。
直後、アデルの顔の前で金属音が鳴る。隠しきれない怒りで表情を歪めた神無月がエストックで貫こうとし、俺の張ったシールドと衝突していたのだ。
「全員、思うところはあるだろうけど、抑えてくれ。俺はアデルの話を聞きたい」
「しかし、我が君!」
「頼む、これは命令だ」
なおも何か言いたげにしているウロボロス、そして激怒した顔つきの全員に背を向けて、アデルと向き合う。こんなことをされたというのに、その表情は毅然としていた。
「恐くないのか?」
「うん、きっとユウさんなら守ってくれると思っていたからね。ここで死んじゃうくらいなら、この場所に来る前に命は無かったと思うし」
それだけの覚悟を決めて来たと言うのか。なるほど、村を束ねる家系に生まれただけのことはある。いや、それ以上の素質があるということか。
「それで、こんな目に遭ってまでして、何を言ってくれるんだ?」
「戦争になったらたくさんの人が死んじゃうんだよね?」
「あぁ、そうだな。お前の村がそうなったように」
意地悪な言い方だ。それでもアデルは引き下がらない。
「そんな悲しいことをどうして?」
「どうして? 逆に聞こう。どうして、お前は俺にあの村を守るように依頼した? 言葉を濁しているが、それはつまり敵を殺せと命令しているようなものだろう」
「そうだね、私たちは同罪かもしれない。殺して欲しいって言ったのは間違いなくこの私だから。でもだからこそ、その理由を聞いておきたいの」
「……理由だと?」
言いながら失笑する。俺は心のどこかでゲームと思っている。雑魚を片付ける理由なんてあるだろうか。普通は良心の呵責に耐えられないだろう。でも残念ながら、俺にそんな感情は無い以上、理由なんて大そうなものは初めから存在しない。
「あの時、ユウさんは怒ってくれた。悲しくて、泣いている私と同じ気持ちになってくれたじゃない。だから聞きたいの。どうして戦争なんて悲しいことをやるのか」
今の俺は魔王ユウだ。魔王は人の心がわからない。だって、これはゲームなんだから。他者を蹴り落とし、常に頂点を目指すシステムで生きる者の宿命なんだよ。
「我が君、どうされましたか!?」
ウロボロスが駆け寄って来て、目元を拭われる。涙だと。俺は泣いているのか。
「誰かを悲しませて何かを成す。力を振りかざして弱い人を屈服させて……それで満足なの?」
アデルの言葉を聞いて、全身の力が抜け落ちていく感覚に襲われる。そうだった。俺は皆に何て誓った。何を思ってオラクル・ナイツを作ったのか。
配下はプログラムである以上、絶対に主人に逆らえない。そんな絶対的な力関係によって捨てられて、玩具にされていた皆を守りたかった。強者としてふんぞり返る奴らに、それは間違いだと叩きつけたかった。そんな大切なことをどうして忘れていたのだろう。
直後、アデルの顔の前で金属音が鳴る。隠しきれない怒りで表情を歪めた神無月がエストックで貫こうとし、俺の張ったシールドと衝突していたのだ。
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