30 / 44
第一章 英雄の序曲
第30話「閑話休題:最重要の防衛兵器1」
しおりを挟む
改めてオラクル・ラビリンスの守護を任された3人は軍議の間に集まり、防衛計画の進行具合、完了の目途の確認をしていた。あの問答があったからか、3人の忠誠心は更に高まっており、元々高かった仕事への熱がオーバーヒートしそうになっていた。
「アザレア、ここはどうなっているのですか。要望したものと少々違うようですが」
ウロボロスの目がつり上がる。検討に検討を重ねて絞り出した案の中でも、今示した個所は特に重要な場所。
「おや、何か問題でも? 私にできる最高の仕事をしたと思うけどねぇ」
「どこがですか!? こんな粗悪なものを栄光あるオラクル・ラビリンスに配置するなど、配下としての自覚が足りませんよ!」
「いやいや、私にはこの世で最も美しい物と思えるよ。ウロボロス君には理解できないようだね」
「当たり前でしょう! すぐに撤去しなさい! 貴方に任せた私が愚かでした!」
2人の言い合いは、同席していたムラクモの咳払いで一時的に落ち着く。
「……ムラクモの意見も聞いてみましょう。そうすれば決着が付くはずです」
「ムラクモ君、美を理解する感性を持ち合わせていると信じているよ」
2人の真剣な眼差しと乗り出すような姿勢を前にしても、ムラクモは全く動じず静かに告げる。
「どちらも醜悪。第一、防衛という観点からそれは本当に必要なのか甚だ疑問だ」
「何を言っているのですか、ムラクモ! それでも私の弟子ですか!? あり得ない……あぁ、情けない! 剣を取りなさい! 一から性根を叩き直してあげます!」
「ムラクモ君には失望したよ。この美の象徴、魔王様と私の営み像の良さが理解できないなんてね」
2人が延々と口論していたのは、魔王とアザレアが絡み合い、キスをする直前のシーンを切り取ったプラチナ像だ。それにもう一度目を向けたムラクモはこれ見よがしに溜め息を吐く。
「師匠、剣の腕は心から称賛していますが、貴女の感性にはほとほと呆れます」
一方でウロボロスの要望は2人の結婚式、永遠の誓いを立ててキスをするシーンだった。似ても似つかない出来栄えに怒り狂うウロボロスは、唾を飛ばしながら声を張り上げる。
「何を言っているのですか!? 我が君をお傍に感じられれば皆の指揮は格段に高まります! この像の有用性は明白なはずですが!?」
「それは師匠個人に限った話。現に、アザレアは反発している」
「アザレアは頭が残念な雑草だからです! 他の配下たちの理解は得られると思いますけど!?」
「少なくとも私は反対だ。きっとカルマ、フェンリス、神無月も同意見。この像の破壊合戦が始まるだろうに。やはり、像の設置は指揮を乱す」
これで何度目になるか忘れられたムラクモの忠告に対し、ウロボロスは般若のような顔をしてグングニルを手に取った。
「良い覚悟ですね、ムラクモ! それにアザレア! 真の強者が我が君のお傍にあるべきと、その体に教えてあげましょう!」
「やれやれ、近接戦闘は苦手なんだよねぇ。そういう訳で、ムラクモ君。ここは任せるよ?」
即座に不利と判断したアザレアは白旗を上げて撤収する。残されたムラクモは深い溜め息を吐くと、分身ともいえる刀に手をかけた。
「いずれは超えようと思っていた。このような残念な理由で得た機会……。力付くで止めねばならぬなら、せめて魔王様への忠誠を示すため、いざ、参る!」
こうして2人の師弟の剣は交わった。
「アザレア、ここはどうなっているのですか。要望したものと少々違うようですが」
ウロボロスの目がつり上がる。検討に検討を重ねて絞り出した案の中でも、今示した個所は特に重要な場所。
「おや、何か問題でも? 私にできる最高の仕事をしたと思うけどねぇ」
「どこがですか!? こんな粗悪なものを栄光あるオラクル・ラビリンスに配置するなど、配下としての自覚が足りませんよ!」
「いやいや、私にはこの世で最も美しい物と思えるよ。ウロボロス君には理解できないようだね」
「当たり前でしょう! すぐに撤去しなさい! 貴方に任せた私が愚かでした!」
2人の言い合いは、同席していたムラクモの咳払いで一時的に落ち着く。
「……ムラクモの意見も聞いてみましょう。そうすれば決着が付くはずです」
「ムラクモ君、美を理解する感性を持ち合わせていると信じているよ」
2人の真剣な眼差しと乗り出すような姿勢を前にしても、ムラクモは全く動じず静かに告げる。
「どちらも醜悪。第一、防衛という観点からそれは本当に必要なのか甚だ疑問だ」
「何を言っているのですか、ムラクモ! それでも私の弟子ですか!? あり得ない……あぁ、情けない! 剣を取りなさい! 一から性根を叩き直してあげます!」
「ムラクモ君には失望したよ。この美の象徴、魔王様と私の営み像の良さが理解できないなんてね」
2人が延々と口論していたのは、魔王とアザレアが絡み合い、キスをする直前のシーンを切り取ったプラチナ像だ。それにもう一度目を向けたムラクモはこれ見よがしに溜め息を吐く。
「師匠、剣の腕は心から称賛していますが、貴女の感性にはほとほと呆れます」
一方でウロボロスの要望は2人の結婚式、永遠の誓いを立ててキスをするシーンだった。似ても似つかない出来栄えに怒り狂うウロボロスは、唾を飛ばしながら声を張り上げる。
「何を言っているのですか!? 我が君をお傍に感じられれば皆の指揮は格段に高まります! この像の有用性は明白なはずですが!?」
「それは師匠個人に限った話。現に、アザレアは反発している」
「アザレアは頭が残念な雑草だからです! 他の配下たちの理解は得られると思いますけど!?」
「少なくとも私は反対だ。きっとカルマ、フェンリス、神無月も同意見。この像の破壊合戦が始まるだろうに。やはり、像の設置は指揮を乱す」
これで何度目になるか忘れられたムラクモの忠告に対し、ウロボロスは般若のような顔をしてグングニルを手に取った。
「良い覚悟ですね、ムラクモ! それにアザレア! 真の強者が我が君のお傍にあるべきと、その体に教えてあげましょう!」
「やれやれ、近接戦闘は苦手なんだよねぇ。そういう訳で、ムラクモ君。ここは任せるよ?」
即座に不利と判断したアザレアは白旗を上げて撤収する。残されたムラクモは深い溜め息を吐くと、分身ともいえる刀に手をかけた。
「いずれは超えようと思っていた。このような残念な理由で得た機会……。力付くで止めねばならぬなら、せめて魔王様への忠誠を示すため、いざ、参る!」
こうして2人の師弟の剣は交わった。
0
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~
桂
ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。
そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。
そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる