魔王と配下の英雄譚(修正版)

るちぇ。

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第一章 英雄の序曲

第30話「閑話休題:最重要の防衛兵器1」

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 改めてオラクル・ラビリンスの守護を任された3人は軍議の間に集まり、防衛計画の進行具合、完了の目途の確認をしていた。あの問答があったからか、3人の忠誠心は更に高まっており、元々高かった仕事への熱がオーバーヒートしそうになっていた。

「アザレア、ここはどうなっているのですか。要望したものと少々違うようですが」

 ウロボロスの目がつり上がる。検討に検討を重ねて絞り出した案の中でも、今示した個所は特に重要な場所。

「おや、何か問題でも? 私にできる最高の仕事をしたと思うけどねぇ」
「どこがですか!? こんな粗悪なものを栄光あるオラクル・ラビリンスに配置するなど、配下としての自覚が足りませんよ!」
「いやいや、私にはこの世で最も美しい物と思えるよ。ウロボロス君には理解できないようだね」
「当たり前でしょう! すぐに撤去しなさい! 貴方に任せた私が愚かでした!」

 2人の言い合いは、同席していたムラクモの咳払いで一時的に落ち着く。

「……ムラクモの意見も聞いてみましょう。そうすれば決着が付くはずです」
「ムラクモ君、美を理解する感性を持ち合わせていると信じているよ」

 2人の真剣な眼差しと乗り出すような姿勢を前にしても、ムラクモは全く動じず静かに告げる。

「どちらも醜悪。第一、防衛という観点からそれは本当に必要なのか甚だ疑問だ」
「何を言っているのですか、ムラクモ! それでも私の弟子ですか!? あり得ない……あぁ、情けない! 剣を取りなさい! 一から性根を叩き直してあげます!」
「ムラクモ君には失望したよ。この美の象徴、魔王様と私の営み像の良さが理解できないなんてね」

 2人が延々と口論していたのは、魔王とアザレアが絡み合い、キスをする直前のシーンを切り取ったプラチナ像だ。それにもう一度目を向けたムラクモはこれ見よがしに溜め息を吐く。

「師匠、剣の腕は心から称賛していますが、貴女の感性にはほとほと呆れます」

 一方でウロボロスの要望は2人の結婚式、永遠の誓いを立ててキスをするシーンだった。似ても似つかない出来栄えに怒り狂うウロボロスは、唾を飛ばしながら声を張り上げる。

「何を言っているのですか!? 我が君をお傍に感じられれば皆の指揮は格段に高まります! この像の有用性は明白なはずですが!?」
「それは師匠個人に限った話。現に、アザレアは反発している」
「アザレアは頭が残念な雑草だからです! 他の配下たちの理解は得られると思いますけど!?」
「少なくとも私は反対だ。きっとカルマ、フェンリス、神無月も同意見。この像の破壊合戦が始まるだろうに。やはり、像の設置は指揮を乱す」

 これで何度目になるか忘れられたムラクモの忠告に対し、ウロボロスは般若のような顔をしてグングニルを手に取った。

「良い覚悟ですね、ムラクモ! それにアザレア! 真の強者が我が君のお傍にあるべきと、その体に教えてあげましょう!」
「やれやれ、近接戦闘は苦手なんだよねぇ。そういう訳で、ムラクモ君。ここは任せるよ?」

 即座に不利と判断したアザレアは白旗を上げて撤収する。残されたムラクモは深い溜め息を吐くと、分身ともいえる刀に手をかけた。

「いずれは超えようと思っていた。このような残念な理由で得た機会……。力付くで止めねばならぬなら、せめて魔王様への忠誠を示すため、いざ、参る!」

 こうして2人の師弟の剣は交わった。
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