魔王と配下の英雄譚(修正版)

るちぇ。

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第一章 英雄の序曲

第35話「聖リリス帝国からの刺客4」

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 デス・ガーディアンを見れば見るほどに、俺の胸の内が凍り付いていくのがわかる。
 あれのレベルは捕食した対象の合計値が反映される。当然、食われた配下はロストだ。あれは大切な皆を使い捨ててでも勝利したい時に使う召喚魔法である。

「……不愉快だな」

捨てられる配下の気持ちを考えないゲーム上最悪の行動だ。所詮データと言って、捨てられる配下の気持ちなんて考えもしない。オラクル・ナイツの面々を思い出せ。そしてイメージしろ、あいつらが食いものにされる光景を。

「おい、魔導師。念のため確認しておく。そいつの特性を理解しているんだな?」
「馬鹿か、お前は。これは俺が使役する最強のモンスターだぞ? 熟知しているに決まっているだろうが」
「そうか……なら、お前は俺の敵だな!」

 遠慮はしない。躊躇もしない。この怒りに身を任せ、塵芥すら残さず、この世から抹殺してくれる。

「何を今更……さぁ、そこの出来損ないを食らえ、デス・ガーディアン!」

 その大腕が村人を掴み上げ、大口へと放り込もうとする。そんなことを許すはずがない。

「スキル発動、パラレルワールド・ザ・ラストデイ」

 デス・ガーディアンの腕がこちら側の地面へ落下、残りは向こうの世界へ送り込む。

「な……何が起こったんだ?」
「気が付かないか? なら、その末路をよく見るといい」

 デス・ガーディアンの周りに眩い光の球体が次々と出現していく。たちまちその世界を覆い尽くすとそれは破裂して、中にいた奴を肉片ひとつすら残さずに吹き飛ばした。

「で……デス・ガーディアンが……!? 馬鹿な……100人は喰らわせておいたはずのあいつが……一撃で?」
「絶望したか? なら、続きを始めよう」
「つ……続き? ま……まさか、止めろ!」

 奴を並行世界へと飛ばそうとすると、スキルの発動が中断された。見ると、無傷のシスターが立っている。あの死者の軍勢とやらに巻き込まれなかったのか。

「よ……よくやったぞ、シスターマリア!」

 やはりあのシスターがやったのか。完全に無防備だったとはいえ、このレベルのスキルを打ち消されるとは。

「まさか……神より授かりし最高位のアイテムでようやく打ち消せるとは。ここは退いた方が良さそうですよ」
「馬鹿を言うな! こ、このまま引き下がれるはずがない!」
「それは好都合だ……!」

 更なる地獄を見せようとした時、ふと、フェンリスの不安げな表情が目に留まる。目が合うと、彼女は悲しげな口調で呟いた。

「魔王様……少しだけ恐いです」
「フェンリス……すまなかった。それに神無月も」

 また悪い方向に進んだみたいだ。俺は魔王を名乗っているが、人でもある。確かにあの魔導師は絶対に許せないが、絶望をまき散らすことを楽しむようじゃ皆の上には立てない。

「魔王様……はい!」
「全ては魔王様の御心のままに」

 2人の笑顔を見て、俺は深く息を吐く。

「おい、魔導師。最終警告だ。降伏するなら命まで取らないが、抵抗するなら容赦はしない」
「は……ははは! 甘い! その甘さが命取りになることを知れ!」

 魔導師は再度黒いオーブを掲げるが、二度もやらせるはずがない。ライトニングの魔法で即座に破壊した。

「馬鹿な……そんな馬鹿な……!」

咄嗟に身を翻し逃げようとした魔導師だが、ローブを踏んで転ぶ。

「無様だな」
「ふ……ふざけるな! 死ね!」

 火球が俺の顔に直撃する。ぬるま湯を浴びた気分だ。熱さも痛みも感じず、ダメージも負っていない。

「この程度で俺にダメージを与えられると思ったのか?」
「あ……悪魔……いや、その王。まさに……魔王という訳か……!」
「今更それか……最初からそう言っておけば良いものを。神無月、こいつを縛り付けておけ」

 マリアの方を見ると、奴はただ微笑んでいた。魔導師が捕まったというのに。

「何を企んでいる?」
「私は魔王を見に来ただけです。この一戦で能力は勿論、性格や弱点もわかりました。次にお会いする時が楽しみですね」

 そう言い残すと、マリアの体が消失する。その足元には青いオーブが落ちていた。

「これは……通信用のオーブか。こんなものまであるとはな」

 聖リリス帝国か。雑魚と侮っていたが、少し警戒して対応していく必要がありそうだ。
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