異世界列車囚人輸送

先川(あくと)

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4章 最後の囚人

6、最後の囚人

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「そうはいったが……」
「規則だろ? この国の」
「とにかくあんたを助けるのが先だ。助かったら、自分で好きなようにすればいいんだから」
 シノは結論を先延ばしにした。
 銃弾を分解していくと、シリンダー一本分の量が集まった。尤も、濃度の点では比べ物にならないが、それでもかなりのエネルギーを得ることができた。
 シノはそれをジョーの手の甲に流してやる。

「ありがと……」

 ジョーは集中した様子で、意識は完全に冒険者の体内に潜っていた。
 バラバラに粉砕された魂の器をなんとか修復しようとしていた。

     ◇

 応急処置を終えたジョーは、冒険者とドラゴンを担いで馬に乗せると、そのままイーシャに向かった。
 冒険者は魂の器を修復しただけで、未だに肉体の治癒には至っていない。

 腹部の傷口はいまだに塞がっておらず、ぽっかりと貫通した穴はタオルケットを詰め物にして塞いでいた。
 デュアメルは血まみれの怪我人と急に相乗りすることになり、「こんな間抜けなことはないぜ」とぼやいていた。

 イーシャにつく頃には冒険者は息をしていなかった。わずかに脈があるが、それも心臓が痙攣をしているだけで、生きていると言えるのか定かではなかった。

 ジョーは魔晶石を探すために奔走した。

 といっても、イーシャはベルナードとヴァスケイルを繋ぐ中継地点で、鉄道会社の社員が逗留する宿屋があるほかは、民家がぽつぽつと見えるだけ。
 商いをしている人はほとんどおらず、魔道具専門店はおろか、武器屋すら見つからなかった。

 そのため駅に貯蔵されていた燃料用の魔晶石を使うことになった。

 駅員に訳を話し、倉庫から大量の魔晶石を運ばせ、それをその都度粉砕しては紋章にすりこませた。

 ジョーが治療を終えた頃には二時半になっていた。

「で、どうするわけ?」
 冒険者を宿屋の二階に寝かせ、ジョーはシノに向かって言った。
 シノは退屈そうに唇を尖らせるユズキエルを連れていた。

「あの男はどれくらいで回復するんです?」
「さあ、彼の生命力にもよるけど、二週間はベッドから出られないんじゃないかしら」
「そうか……」
 シノは決まり悪そうに視線をさまよわせた。

「シノ、このドラゴンも一緒に連れていくつもりなんでしょう?」

 ジョーはシノの考えを読んで言った。
「その方がいいと思いますか?」

「思うわけないじゃない。もう手いっぱいよ。ブタに、ユーゴくんに、そのうえドラゴンの世話までしながらトウセキを護送しろって言うの?」

「列車に乗せたら、あとはベルナードまで座っているだけです」

「どうかしらね」

 ジョーは取り合わなかった。
 ジョーは指揮官ではない。あくまで討伐隊の指揮権はシノにある。

 イーシャで囚人用車両を手配したのはシノであり、その段階ではそれがもっとも成功率の高い作戦だと考えていたはずだ。
 ただ、今となっては、ジョーは任務の達成を確信できないでいる。

 魔晶石はすでに尽き、残弾数にも限りがある。そのうえ、十六人いた隊員は十人になっている。

 シノだって、自分の言葉を信じられないでいるはずだ。

「命を懸けて戦った冒険者が俺に頼んできたことだ」
「任務が最優先よ。分かってるはずでしょう?」
「俺自身、なぜトウセキが裁判を受けられて、このドラゴンの少女がそれを許されないのかが分からない」
「それならトウセキもこの場で殺してしまえばいいわ」

「ダメだ。トウセキには裁判を受けさせる」

 シノは感情を抑制していたが、彼が意固地になっているのは明らかだった。

「あなた、自分の言ってることが矛盾してるって分からないの?」

 地方長官からの要請では、トウセキの生死は問わないことになっていた。生け捕りにしようと、死亡が確認されようと、任務は達成したことになる。
 もちろん、生きて捕まえたのなら、そのまま王都まで連れて行くのがベストだろう。追跡の最中に殺してしまったのならともかく、手錠をされ、無力化された状態の人間を殺すとなれば話が変わってくる。
 それでも任務を達成するためには、トウセキを殺し、彼の腹を裂き、龍鉱石を群盗に渡してしまうのが一番だった。

「トウセキは生きたまま連れていく。それは絶対です」
 シノは返事を待たずに言った。
「そろそろ時間です。行きましょう、ジョー様」

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