異世界列車囚人輸送

先川(あくと)

文字の大きさ
53 / 71
6章 湧き出る盗人

5、銃をよこせ

しおりを挟む

 しかし、その声は何の効果も上げなかった。

 次の瞬間、のっぽの兵士の首が舞った。酔っ払いのようにふらりと傾いたかと思うと、奇妙な角度でねじれたままバリケードに突っ伏した。

「クソ!!」
 デュアメルはのっぽの兵士を引きずり下ろすと、そのまま後方の床に寝かせた。

 のっぽの兵士は額を撃ち抜かれ、すでに息をしていなかった。

「馬鹿野郎!!」
 デュアメルは悪態をつくと、弾を装填し始めた。激しい怒りと同様にあっても、装填は淀みなく行われた。
「変わるわ、デュアメル」

 装填を終えると同時に、ジョーがバリケードから離れた。

 入れ替わるようにデュアメルがそこについた。
 ジョーは弾薬箱から銃弾を取り出そうとした。そこで弾がもう残り少ないことに気が付いた。

 剣、魔法が主体のジョーにとって小銃は他の隊員ほど優先される武器ではなく、装備が重くなることを嫌って、必要以上に携行していなかった。

 それにアヴィリオンでもイーシャでも満足に銃弾を補充できなかったため、銃弾は最初から不足気味だった。

「弾がもうないわ」
「節約して使ってくれ」

 シノは自分の弾薬箱をジョーの方へ滑らせた。シノの弾薬箱も弾は残り少なくなっていた。冒険者を救う際に、弾から魔晶石を取り出したのが仇となっていた。

「弾の残りは!」
 シノは部隊全員に聞いた。

「私はまだまだ余裕だに!」
「こっちも当分は持ちそうです」
 デュアメルとレナが答えた。

「残弾数には気を使ってくれ」

 シノはここにきてはっきりと戦闘の苛烈さを思い知った。

 練度の上では歴然とした差があったが、数が違い過ぎた。

 そのうえ騎馬隊の強みは全く生かせず、本来であれば一瞬で片をつけられるはずのジョーの魔法も使うことが不可能だった。

「隊長、馬だ!!」

 デュアメルは寝台車の外を指さした。
 二人の群盗が馬を駆り立て、寝台車を回り込もうとしていた。
 囚人用車両にはグラグラ・ウィリー一人を残してきただけで、機関車両に関しては全く手薄な状態だった。

「何をしてるんだ!! もっとスピードを出せねえのかよ」
「ここは頼んだ。一緒に来てくれ」
 シノはレナの肩を掴むと、寝台車を離れ、車両の連結部に身を隠した。

「三、二、一」

 シノはタイミングを合わせて、連結部から身を晒し、車両の横を駆ける群盗を撃ちぬいた。

 群盗は打ち捨てられた人形のように手足をだらりとさせ、そのまま何の抵抗もせず、馬からずり落ちた。

「来るんだ」

 シノとレナは囚人用車両に入った。すでに外の騒ぎを聞きつけていたようで、囚人らは抜け目ない様子で、檻の外を覗いていた。

「ウィル、回り込む敵を頼む」
「分かった」
 ぐらぐらのウィリーは連結部から顔を覗かせると、後方から馬を駆る蛮族の姿を探した。

 次の瞬間、ガタンッと車体が傾いたかと思うと、列車が急激にスピードを上げた。

 火夫は見境なく燃料をつぎ込むことにしたようだ。

 外にいた群盗は馬で追いかけることをあきらめ、家畜車両の中に飛び込んでいった。

 家畜車の群盗はそれによってさらに数を増やした。

「持ちこたえれんぞ!!」
 寝台車からデュアメルが叫び、シノは遅かれ早かれ列車を放棄するときが来ることを悟った。

「お前ら、出るんだ! トウセキを馬に乗せて運ぶ」

 シノは檻の鍵をあけると、囚人に外に出るように言った。

「馬で逃げる? 隊長さん、ちょっとはシャキッとしてくれよ」

 トウセキがくっくっと愉快そうな声を上げた。
 彼はゆっくりと立ち上がり、シノのもとに近づいた。

「何がおかしい?」

「逃げれるわけないだろう。列車を失えばあとは追いつかれておしまいだ。俺は死にたくないんでね、そんな望みの薄い策には乗れないな」
「お前に選択肢はない」

「銃を寄こせ。俺が戦ってやる」

「そういえば渡してもらえると思うのか?」
「あの石を飲んじまった以上、あいつらは必ず俺を殺すだろう。死にたくないのは俺も同じだ。その前に、こっちが殺してやる」
「黙って言うことを聞くんだ、トウセキ!!」

「銃を寄こせといってるんだ!!」

 シノとトウセキは、檻の前で睨みあった。
 燃えるような気迫にも、シノは表情一つ変えなかった。
 数秒の沈黙が二人を包みこんだ。
 シノは一歩も譲るつもりはなかったが、トウセキとて黙って馬に乗せられるつもりはなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ
ファンタジー
 第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位 応援頂きありがとうございました!  異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界  主人公のゴウは異世界転生した元冒険者  引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。  知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

処理中です...