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三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊
41話 俺にそんな趣味はない
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「いえ、寺内で見つかった『ジェタク師の果印』はすべて調査団にお渡ししましたよ。土地の発掘も一部許可しました。でも、小便跡だけは調査させませんでした。あれは我が寺の由緒に関わるもので、ニセモノと分かったら、大変ですからなあ」
意外と計算高い坊さんである。
「それで、今日はお墓を見せていただきたいんですけど」
「墓……、そんなもの見てどうするんです?」
坊さんの質問に、俺はこれまでの経緯を話した。俺たちはツンデレメイドゾンビの幽霊を探しているのだ。
「なるほど。見せる分には構いませんよ。そのメイドさんがここに埋葬されているとは思いませんが……」
坊さんはそう言って裏山を案内してくれた。
「そう言えば、ここって教会ではなく、寺なんですよね……」
俺とミーノは坊さんの後ろについて歩く。
「ええ、ですからうちではないかと。そのメイドさんって王都の方なのでしょう?」
「はい」
「私どもは仏に帰依しておりますが、もとはと言えば、東方から伝来した宗教でして……。王都の人はもっぱらデュオス神とその側近であるアオイ女神を信仰している。うちではないと思いますよ……」
「ミーノはどうなんだ?」
「わたしの家はそこの村ですから。死後はここのお世話になるつもりです」
「ミーノさまの言う通りです。私たちのところで葬儀をするのは坂下の村がほとんどです」
「はあ、はあ」
俺は頷いた。
「ところで、お坊さんは幽霊を見たことはありますか?」
「まあ、こういうところに住んでおりますからなあ。不思議なことはしょっちゅうありますよ。幽霊も、一年に二三度は……」
坊さんは苦笑していた。
「怖くないんですか?」
「別に怖くはありません」
「やっぱり、そういうのはお経とかで退治するんですか?」
「そういうこともありますが、放っておいても自然にいなくなることが多いですからなあ」
「はあ、そんなもんですか」
「ええ。死者は放っておくのが一番なんですよ。ほっとけさんっていうくらいですからなあ」
「ああ……。ほっとけさん……」
仏とほっとけをかけたやや強引な洒落だ。ちなみに俺はこういう強引な洒落は大好きだ。
「着きましたよ」
寺の裏はなだらかな斜面になっていた。
斜面は月光を反射して薄明るくなっている。
その斜面に沿うようにして、墓が建てられていた。日本の墓とよく似ていて、四角く細長い墓石が安置されている。現代の墓と違い、墓と墓を隔てるものがない。墓石のすぐ隣に次の墓石を置いていく。スーパーで見かけるシメジのような状態だ。
「では、ご自由にご覧になってください。なるべく安寧を脅かしませんように」
「ありがとうございます」
俺がそう言うと、お坊さんは静かに寺内に戻っていった。飄々としていてどうも食えないお坊さんだ。
「不思議な人だなあ」
「リョーネンさんです。穏やかな人なんですけど」
「なんか、な」
悪い人ではないが、手の内が見えない人だ。
単なるバカではないし、理屈っぽいわけでもない。ただぼんやりしているわけではないが、かといって野心をたぎらせることもない。お坊さんとはみんな、あんな感じなのだろうか。
「もう少し近づいてみましょうか」
俺たちは墓石に近づいた。
遠目から見れば整然と並べられたように見えていたが、近寄るといい加減なところが目立った。大きく傾いた墓石もあれば、地面に倒れた墓石もある。規則的に並べられているわけではなく、間が詰まっているところもあれば、もう一つ入りそうなほど、間隔があいているところもある。
「これは……出そうですね」
「ああ、確かに出そうだ」
「ミーノ、少し怖いです」
ミーノがシャツの裾をぎゅっと掴んだのが分かった。
「ああ、イヤなものを見ないうちに、幽霊だけ探して帰ろうか」
まったく、俺には夜の墓地に肝試しに行くような趣味はないのだ。
意外と計算高い坊さんである。
「それで、今日はお墓を見せていただきたいんですけど」
「墓……、そんなもの見てどうするんです?」
坊さんの質問に、俺はこれまでの経緯を話した。俺たちはツンデレメイドゾンビの幽霊を探しているのだ。
「なるほど。見せる分には構いませんよ。そのメイドさんがここに埋葬されているとは思いませんが……」
坊さんはそう言って裏山を案内してくれた。
「そう言えば、ここって教会ではなく、寺なんですよね……」
俺とミーノは坊さんの後ろについて歩く。
「ええ、ですからうちではないかと。そのメイドさんって王都の方なのでしょう?」
「はい」
「私どもは仏に帰依しておりますが、もとはと言えば、東方から伝来した宗教でして……。王都の人はもっぱらデュオス神とその側近であるアオイ女神を信仰している。うちではないと思いますよ……」
「ミーノはどうなんだ?」
「わたしの家はそこの村ですから。死後はここのお世話になるつもりです」
「ミーノさまの言う通りです。私たちのところで葬儀をするのは坂下の村がほとんどです」
「はあ、はあ」
俺は頷いた。
「ところで、お坊さんは幽霊を見たことはありますか?」
「まあ、こういうところに住んでおりますからなあ。不思議なことはしょっちゅうありますよ。幽霊も、一年に二三度は……」
坊さんは苦笑していた。
「怖くないんですか?」
「別に怖くはありません」
「やっぱり、そういうのはお経とかで退治するんですか?」
「そういうこともありますが、放っておいても自然にいなくなることが多いですからなあ」
「はあ、そんなもんですか」
「ええ。死者は放っておくのが一番なんですよ。ほっとけさんっていうくらいですからなあ」
「ああ……。ほっとけさん……」
仏とほっとけをかけたやや強引な洒落だ。ちなみに俺はこういう強引な洒落は大好きだ。
「着きましたよ」
寺の裏はなだらかな斜面になっていた。
斜面は月光を反射して薄明るくなっている。
その斜面に沿うようにして、墓が建てられていた。日本の墓とよく似ていて、四角く細長い墓石が安置されている。現代の墓と違い、墓と墓を隔てるものがない。墓石のすぐ隣に次の墓石を置いていく。スーパーで見かけるシメジのような状態だ。
「では、ご自由にご覧になってください。なるべく安寧を脅かしませんように」
「ありがとうございます」
俺がそう言うと、お坊さんは静かに寺内に戻っていった。飄々としていてどうも食えないお坊さんだ。
「不思議な人だなあ」
「リョーネンさんです。穏やかな人なんですけど」
「なんか、な」
悪い人ではないが、手の内が見えない人だ。
単なるバカではないし、理屈っぽいわけでもない。ただぼんやりしているわけではないが、かといって野心をたぎらせることもない。お坊さんとはみんな、あんな感じなのだろうか。
「もう少し近づいてみましょうか」
俺たちは墓石に近づいた。
遠目から見れば整然と並べられたように見えていたが、近寄るといい加減なところが目立った。大きく傾いた墓石もあれば、地面に倒れた墓石もある。規則的に並べられているわけではなく、間が詰まっているところもあれば、もう一つ入りそうなほど、間隔があいているところもある。
「これは……出そうですね」
「ああ、確かに出そうだ」
「ミーノ、少し怖いです」
ミーノがシャツの裾をぎゅっと掴んだのが分かった。
「ああ、イヤなものを見ないうちに、幽霊だけ探して帰ろうか」
まったく、俺には夜の墓地に肝試しに行くような趣味はないのだ。
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