逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

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三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊

40話 シリンキ寺、再訪

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「それが分からないんですよ。緊急クエストってことで、冒険者たちが一斉に探してるんですけど……」
 王都や周辺部の農村には、冒険者がうじゃうじゃしていた。みんな血眼になってツンデレメイドゾンビの幽霊を探している。何しろ国王から直々の依頼とあって、報酬が弾むのだ。
 だから、俺たちは『なるべく冒険者がいない場所』を探そうということになった。そこでシリンキ山だ。ミーノは家も近いし、土地に詳しい。
 ミーノが言うには、シリンキ山の中腹には心霊スポットがあるそうだ。

 通称、ニーフの腕塚。

 三十年ほど前、地元の村人たちが、ニーフという男が山の木を勝手に切ろうとしていたところを発見した。
 なんでも山の木はふもとの村々によって管理されており、伐採の時期も、用途も話し合いで決められていたそうだ。そんな皆の木を無断で切ろうとしていたニーフを見つけた村人たちは、彼の腕をその場で切り落としたそうだ。
 ニーフは村に連れ戻された。既に腕を切り落とされていたことと、犯行が未然に防がれたこともあって、それ以上の刑罰には至らなかったそうだ。しかし、傷の治りが悪く、病気をわずらい、次の年を待たずして死んでしまったという。
 村人たちはニーフのタタリを恐れて、ニーフの遺体をシリンキ山の中腹に埋めたそうだ。そこはちょうどニーフが腕を切り落とされた場所だったという。村人たちはニーフを手厚く葬り、そこに石塚を立てた。それがニーフの腕塚なんだそうだが、どうも夜になると出るらしいのだ。

 心霊スポットなら、幽霊にとっては居心地がいいのかもしれないし、幽霊が集まりやすい土地かもしれない。

 夜を待ってシリンキ山に登った俺たちだが、期待はあっけなく裏切られた。ツンデレメイドゾンビの幽霊どころか、火の玉の一つも飛んでいない。
「出る雰囲気はあるんだけどな」
 すべてが闇に溶け込み、数メートル先の木の輪郭さえはっきりしない。明かりはミーノが持っている松明と月の光だけだ。その中でやけにずんぐりとした石塔がぼうっと立っている。いかにも出そうではあるのだ。

「今日は幽霊さんもお休みですかね……」
「というか、幽霊って霊感のある人しか見えないんじゃないのか? 目の前を通り過ぎても、見えなきゃ意味がないだろう」
「そうですね……。魔法使いや占い師は職業柄よく見えるって聞きますけど、私は農民ですし、ヤグラ君は叛逆者ですもんね……」
ミーノの返事はなんとも頼りない。
「それでどうやって見つけるんだよ」

 「うーん、どうやって見つけましょう」
 ミーノは困ったように俺を見た。
「例えば、お墓を探してみるとか。幽霊と言えば墓場ってイメージがあるし、このあたりに墓はないのか?」
「お墓でしたら、シリンキ寺の裏山にありますよ。ちょっと遠回りですけど、この山道からでも行けます」
「よし、それなら墓に行ってみるか」
「はい!」
 俺たちはシリンキ寺の墓に向かうことにした。

「この時間によくいらっしゃいましたな。道は最悪でしたでしょう」
「松明があったので道は良かったんですが、こちらこそすみません。こんな遅くに」
 俺は坊さんに頭を下げた。
「いえいえ、寺というのは夜でも誰か起きているものです。本来なら、経を読んで夜をすごすものですが、来客の応対もまた修行」
 シリンキ寺の坊さんは静かな笑みを浮かべて言った。急の訪問でそれも夜中のことだったが、坊さんは嫌な顔一つしなかった。
「そう言ってもらえると助かります」

「そういえば、ヤグラ様、先日は大活躍だったそうで」

 廊下を歩くお坊さんが振り返っていった。
 坊さんが言っているのは、先日俺が『占聖』ジェタクの果印を見つけたことだ。
「ああ、ありがとうございます。それでジェタク師のおしっこ跡はどうなったんですか?」
 俺は坊さんに向かって言った。
「はい?」
「だから、ジェタク師のおしっこですよ。そこにジェタクさんがおしっこをしたと伝わって、五百年間一度も乾いたことがないという」
「ああ、小便跡ならありますよ。記念に触っていきますか?」
「いえ、触りはしませんけど……。ここにも調査団が入ったんですよね? やっぱり本物の小便跡でしたか?」
「さあ、どうですかなあ。小便跡の調査は許可していませんので、詳しいことは分かりませんけど、きっとホンモノでしょう」
 頼りないことを言う割に、坊さんは飄々としていた。
「調査しなかったんですか?」
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