50 / 97
三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊
50話 熱湯裁判の日が決まる
しおりを挟む
マッチョの方が手を止めたのを見て、俺はミーノのもとに駆け寄った。
「降参だ!! もういいだろ!!」
ミーノは恐怖に震えながら頭を庇って縮こまっていた。
「お前らがそう言うなら構わねえぜ。俺たちは不倶戴天の敵ってわけじゃあねえんだからな」
「ヤグラくん……」
ミーノが顔をあげた。
「怪我は?」
「打撲とかスリ傷はたくさんあるけど、骨は大丈夫みたい」
「そうか……。ごめんな……」
「どうしてヤグラ君が謝るの? ミーノ、冒険者だから、戦う覚悟はできてるよ?」
「そうか……。そうか……」
男どもは既にミタカさんを縄で縛っていた。
本来なら実体を持たないはずのミタカさんだが、胴体に固定された腕を窮屈そうに動かしている。
敗北感に打ちひしがれていると、マッチョの男が言った。
「なにしてるんだ? 一緒に来ないのか?」
「そうだ。俺たちはお前らの手柄まで奪うつもりはねえんだ。お前たちはこの女を見つけた。俺たちはその護送を手伝う。それぞれの仕事を全うしようじゃねえか」
「くっ……」
俺は唇を噛んだ。
ミタカさんを逃がすと言っておきながら、結局はこのザマだった。彼女に合わせる顔がなかった。
「ヤグラ! 来なさいよ!! それがあんたの仕事だったんでしょ!」
ミタカさんが不機嫌な声を出した。
「でも……」
「私を守ろうと必死だったのは見てたから。こうなった以上、あんたたちを責めるつもりはないわ。一緒に来て、報酬を受け取りなさいよ」
「悔しいですけど、行きましょうか」
ミーノがゆっくりと立ち上がった。全身を庇うようなぎこちない動きだった。
相性の問題もあったが、俺たちは完敗だった。カボチャのオバケに変身すると、シルバーランクに匹敵する強さを得ることができるという。それは間違いないのだろう。
ミーノのタックルをもろに食らったアゴヒゲはどこか痛めたのか、ときどき肩に手を当て、顔をしかめた。
だが、ミーノはボコボコに蹴り飛ばされ、俺だって攻撃を防ぐのが精いっぱいだった。
「あれだけ殴ったはずだが、ほとんどきいていないとはどういうことだ?」
マッチョの男が前を歩く俺を見て言った。
「腕が鈍ったんじゃねえか? あんなひょろっぴいも仕留められねえなんて」
アゴヒゲがそれに答えた。
「お前こそ、時間がかかってたぞ」
「ヤグラ、あんたどうやったの?」
ミタカさんがそう耳打ちした。
「どうって……?」
「私の目からは一方的に殴られているようにしか見えなかった。あれだけ好き勝手殴られたんじゃ、普通死んじゃうわよ。それなのに元気じゃない。傷もほとんどないみたい」
「まあ、ちょっとした仕掛けがあったんですよ」
俺は適当にはぐらかしておいた。
「ミタカさんこそ、驚きましたよ。まさか物体を浮かせる力があるなんて」
「物体に限らないけれど。幽霊はみんなモノを浮かす力があるのよ。ポルターガイストと呼ばれる現象は大体この能力によるものね」
戦闘の疲れもあって口数は次第に減っていった。ミタカさんの身に起こることを考えれば、彼女にかける言葉も浮かばなかった。
なんとか王都までミタカさんを送り届け、俺とミーノは王都で宿を取って眠った。そのあいだも俺たちはほとんど話さなかった。
「三日後になるそうですよ」
「何が?」
「熱湯裁判ですよ。三日後の午後に教会の中で行われるそうです」
「ああ」
「見に行きますか?」
「見に行ってどうするんだ?」
「だって、裁判ですよ? 無実なら助かるんでしょう?」
「無実だって、熱湯に手を入れればヤケドするだろう」
「だけど、嘘を言ってないなら、きっと神様の加護があります」
ミーノは真剣な目をしていた。ほんとうに神が公平な裁きを下すなら、ミタカさんの運命を見届けてもいい。だが、彼女がいたずらに火傷をするところは見たくなかった。
「俺は行かない。辛い思いをするだろうから。ミーノもいかない方が良いかもな」
「むう……。そうですか……」
無力感に襲われ、ミーノに冷たく当たってしまった。
「降参だ!! もういいだろ!!」
ミーノは恐怖に震えながら頭を庇って縮こまっていた。
「お前らがそう言うなら構わねえぜ。俺たちは不倶戴天の敵ってわけじゃあねえんだからな」
「ヤグラくん……」
ミーノが顔をあげた。
「怪我は?」
「打撲とかスリ傷はたくさんあるけど、骨は大丈夫みたい」
「そうか……。ごめんな……」
「どうしてヤグラ君が謝るの? ミーノ、冒険者だから、戦う覚悟はできてるよ?」
「そうか……。そうか……」
男どもは既にミタカさんを縄で縛っていた。
本来なら実体を持たないはずのミタカさんだが、胴体に固定された腕を窮屈そうに動かしている。
敗北感に打ちひしがれていると、マッチョの男が言った。
「なにしてるんだ? 一緒に来ないのか?」
「そうだ。俺たちはお前らの手柄まで奪うつもりはねえんだ。お前たちはこの女を見つけた。俺たちはその護送を手伝う。それぞれの仕事を全うしようじゃねえか」
「くっ……」
俺は唇を噛んだ。
ミタカさんを逃がすと言っておきながら、結局はこのザマだった。彼女に合わせる顔がなかった。
「ヤグラ! 来なさいよ!! それがあんたの仕事だったんでしょ!」
ミタカさんが不機嫌な声を出した。
「でも……」
「私を守ろうと必死だったのは見てたから。こうなった以上、あんたたちを責めるつもりはないわ。一緒に来て、報酬を受け取りなさいよ」
「悔しいですけど、行きましょうか」
ミーノがゆっくりと立ち上がった。全身を庇うようなぎこちない動きだった。
相性の問題もあったが、俺たちは完敗だった。カボチャのオバケに変身すると、シルバーランクに匹敵する強さを得ることができるという。それは間違いないのだろう。
ミーノのタックルをもろに食らったアゴヒゲはどこか痛めたのか、ときどき肩に手を当て、顔をしかめた。
だが、ミーノはボコボコに蹴り飛ばされ、俺だって攻撃を防ぐのが精いっぱいだった。
「あれだけ殴ったはずだが、ほとんどきいていないとはどういうことだ?」
マッチョの男が前を歩く俺を見て言った。
「腕が鈍ったんじゃねえか? あんなひょろっぴいも仕留められねえなんて」
アゴヒゲがそれに答えた。
「お前こそ、時間がかかってたぞ」
「ヤグラ、あんたどうやったの?」
ミタカさんがそう耳打ちした。
「どうって……?」
「私の目からは一方的に殴られているようにしか見えなかった。あれだけ好き勝手殴られたんじゃ、普通死んじゃうわよ。それなのに元気じゃない。傷もほとんどないみたい」
「まあ、ちょっとした仕掛けがあったんですよ」
俺は適当にはぐらかしておいた。
「ミタカさんこそ、驚きましたよ。まさか物体を浮かせる力があるなんて」
「物体に限らないけれど。幽霊はみんなモノを浮かす力があるのよ。ポルターガイストと呼ばれる現象は大体この能力によるものね」
戦闘の疲れもあって口数は次第に減っていった。ミタカさんの身に起こることを考えれば、彼女にかける言葉も浮かばなかった。
なんとか王都までミタカさんを送り届け、俺とミーノは王都で宿を取って眠った。そのあいだも俺たちはほとんど話さなかった。
「三日後になるそうですよ」
「何が?」
「熱湯裁判ですよ。三日後の午後に教会の中で行われるそうです」
「ああ」
「見に行きますか?」
「見に行ってどうするんだ?」
「だって、裁判ですよ? 無実なら助かるんでしょう?」
「無実だって、熱湯に手を入れればヤケドするだろう」
「だけど、嘘を言ってないなら、きっと神様の加護があります」
ミーノは真剣な目をしていた。ほんとうに神が公平な裁きを下すなら、ミタカさんの運命を見届けてもいい。だが、彼女がいたずらに火傷をするところは見たくなかった。
「俺は行かない。辛い思いをするだろうから。ミーノもいかない方が良いかもな」
「むう……。そうですか……」
無力感に襲われ、ミーノに冷たく当たってしまった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。
そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。
【カクヨムにも投稿してます】
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者
哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。
何も成し遂げることなく35年……
ついに前世の年齢を超えた。
※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。
※この小説は他サイトにも投稿しています。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-
ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。
困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。
はい、ご注文は?
調味料、それとも武器ですか?
カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。
村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。
いずれは世界へ通じる道を繋げるために。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる