逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

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三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊

50話 熱湯裁判の日が決まる

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 マッチョの方が手を止めたのを見て、俺はミーノのもとに駆け寄った。
「降参だ!! もういいだろ!!」
 ミーノは恐怖に震えながら頭を庇って縮こまっていた。
「お前らがそう言うなら構わねえぜ。俺たちは不倶戴天の敵ってわけじゃあねえんだからな」
「ヤグラくん……」
 ミーノが顔をあげた。

「怪我は?」

「打撲とかスリ傷はたくさんあるけど、骨は大丈夫みたい」
「そうか……。ごめんな……」
「どうしてヤグラ君が謝るの? ミーノ、冒険者だから、戦う覚悟はできてるよ?」
「そうか……。そうか……」
 男どもは既にミタカさんを縄で縛っていた。
 本来なら実体を持たないはずのミタカさんだが、胴体に固定された腕を窮屈そうに動かしている。
 敗北感に打ちひしがれていると、マッチョの男が言った。

「なにしてるんだ? 一緒に来ないのか?」

「そうだ。俺たちはお前らの手柄まで奪うつもりはねえんだ。お前たちはこの女を見つけた。俺たちはその護送を手伝う。それぞれの仕事を全うしようじゃねえか」
「くっ……」
 俺は唇を噛んだ。
 ミタカさんを逃がすと言っておきながら、結局はこのザマだった。彼女に合わせる顔がなかった。
「ヤグラ! 来なさいよ!! それがあんたの仕事だったんでしょ!」
 ミタカさんが不機嫌な声を出した。
「でも……」
「私を守ろうと必死だったのは見てたから。こうなった以上、あんたたちを責めるつもりはないわ。一緒に来て、報酬を受け取りなさいよ」
「悔しいですけど、行きましょうか」
ミーノがゆっくりと立ち上がった。全身を庇うようなぎこちない動きだった。


  相性の問題もあったが、俺たちは完敗だった。カボチャのオバケに変身すると、シルバーランクに匹敵する強さを得ることができるという。それは間違いないのだろう。
 ミーノのタックルをもろに食らったアゴヒゲはどこか痛めたのか、ときどき肩に手を当て、顔をしかめた。
 だが、ミーノはボコボコに蹴り飛ばされ、俺だって攻撃を防ぐのが精いっぱいだった。

「あれだけ殴ったはずだが、ほとんどきいていないとはどういうことだ?」

 マッチョの男が前を歩く俺を見て言った。
「腕が鈍ったんじゃねえか? あんなひょろっぴいも仕留められねえなんて」
 アゴヒゲがそれに答えた。
「お前こそ、時間がかかってたぞ」

「ヤグラ、あんたどうやったの?」
 ミタカさんがそう耳打ちした。
「どうって……?」

「私の目からは一方的に殴られているようにしか見えなかった。あれだけ好き勝手殴られたんじゃ、普通死んじゃうわよ。それなのに元気じゃない。傷もほとんどないみたい」

「まあ、ちょっとした仕掛けがあったんですよ」
 俺は適当にはぐらかしておいた。
「ミタカさんこそ、驚きましたよ。まさか物体を浮かせる力があるなんて」
「物体に限らないけれど。幽霊はみんなモノを浮かす力があるのよ。ポルターガイストと呼ばれる現象は大体この能力によるものね」
 戦闘の疲れもあって口数は次第に減っていった。ミタカさんの身に起こることを考えれば、彼女にかける言葉も浮かばなかった。
 なんとか王都までミタカさんを送り届け、俺とミーノは王都で宿を取って眠った。そのあいだも俺たちはほとんど話さなかった。

「三日後になるそうですよ」

「何が?」
「熱湯裁判ですよ。三日後の午後に教会の中で行われるそうです」
「ああ」
「見に行きますか?」

「見に行ってどうするんだ?」

「だって、裁判ですよ? 無実なら助かるんでしょう?」
「無実だって、熱湯に手を入れればヤケドするだろう」
「だけど、嘘を言ってないなら、きっと神様の加護があります」

 ミーノは真剣な目をしていた。ほんとうに神が公平な裁きを下すなら、ミタカさんの運命を見届けてもいい。だが、彼女がいたずらに火傷をするところは見たくなかった。

「俺は行かない。辛い思いをするだろうから。ミーノもいかない方が良いかもな」
「むう……。そうですか……」
 無力感に襲われ、ミーノに冷たく当たってしまった。
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