逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

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三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊

49話 俺の新しい技(ただし、あまりにも下品だ!!)

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「もう油断はしねえぜ」

 アゴヒゲがミーノに向かって突進した。ミーノはアゴヒゲの反撃をかわしながらなんとか間合いを取ろうとする。
 ミーノが後方に飛び、大きく間を取った。
 そのときマッチョの方が、背後からミーノに詰め寄るのが見えた。俺は地面を蹴り、そのあいだに割って入った。
 マッチョの方が俺に気が付き、無駄のない動きで腕をしならせる。
防御しなければ……。頭では分かっているのだが、身体は思うように動かなかった。
 俺はそのとき、カボチャのオバケではなくなっていた。何の訓練も受けていない生身の人間だった。
 咄嗟に腕でパンチを防いだが、その動きを読んでいた男は、脇腹に拳を打ち込んだ。
「くはっ……」
 身体から力が抜け、俺は膝をついた。そこに男の拳が飛んでくる。俺はなんとか攻撃を防ごうと腕をあげたが、その隙間を縫うように、男のパンチがヒットする。
 強い衝撃に脳味噌が焼ける。

 なんとか攻撃を防がなければ……。
 俺は朦朧としていく意識の中で、そんなことを考えていた。ときどきテレビでボクシングの試合を見ることがあった。ボクサーたちは攻撃を受けながらも、身体を後ろに反らすことで衝撃を和らげている。
 同じことをやってみようとしたが、身体を引くタイミングが分からない。仮に分かったとしても、それに身体が反応できない。そんなこと今までやってこなかったからだ。
 なんとか、衝撃を緩和する方法……。俺にもできる方法……。
 ふいに男の拳がスローモーションに見えた。それと同時に閃きが頭の中を駆け巡った。、とんでもないアイデアが浮かんだ。
「ふふ……。やってみるか」
 あまりのバカバカしさに、思わず吹き出してしまった。
「何を笑うことがあるっ!!」
 男が振りかぶったとき、俺は腕を下ろし、顔を守るのをやめた。男はアゴをめがけて、強烈なパンチを打ち込んだ。

「ゼンドウウンドウ!!」

 俺はそう叫ぶと、大腸を激しく収縮させた。

  俺は転生するとき、女神アオイに消化管を上下逆につけられた。そのため、喉からアゴにかけては大腸が通っている。俺は彼女から与えられた類まれな蠕動運動で、空気を一気に吸い込んだ。

 そう。男が殴ろうとしているアゴ周辺に空気を集める。俺のアゴは内側から空気に押し広げられ、一瞬にして風船のように腫れあがった。アゴの骨が明らかに変な音を立てたが、俺は気にしなかった。

 男の拳が着弾する瞬間、俺はタイミングよく腸を弛緩させた。俺のアゴは、パンチの衝撃を吸収しながらゆっくりとしぼんでいく。
 空気がパンチのエネルギーを横方向に逃がしたのだ!!
「無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄、無駄!!」

 男は何度も俺のアゴを殴りつけた。俺はそのたびに空気を吸い込み、タイミングよくへこませた。まるで強いロングパスを足元にトラップする一流のサッカー選手のように、俺は的確に力を逃がしてやった。
 エネルギーは吸収され、俺の脳はほとんど揺れなかった。
 たぐいまれな蠕動運動の能力。もしかしたらこれ……、意外と使えるかもしれねえぞ……。
 ただし、あまりにも下品だ!!

 俺はミーノの方を見た。

 ミーノの装甲も剥がれ、いつもの姿に戻っていた。
 ミーノの服はボロボロに破け、彼女の顔にも泥が付いていた。
 アゴヒゲの回し蹴りを食らい、ミーノは大きく吹っ飛んだ。アゴヒゲは情け容赦なく距離をつめ、糸くずみたいになっているミーノに蹴り上げた。
 もはや勝負はついていた。俺は男の攻撃を受け流すのが精いっぱいで、それも消化管が通っていないところを狙われればひとたまりもない。ミタカさんは何もできない。決断を急がなければミーノは死んでしまう。

「負けだ!!」
 俺は叫んだ。


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