逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

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三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊

52話 コフネさんは恋をしていた

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「じゃあ、同じだろう。どっちにしろ、真相はヤブの中。すべてを疑っていけば気が狂っちまう。人間は数さえあっていれば、自分を騙しながら正気を保つ。中には数もあっていないのに、平気な顔をする人間もいるがな」

 現代は違うと言いかけて、その言葉が喉元に引っかかった。果たして本当にそうだろうか。科学捜査や人権意識の発達から、冤罪は減ったのかもしれない。だが、誰でも良いから早く捕まってほしいと思う精神は、今も昔もそう変わらないのではないか。

 大勢の安心のために、人は簡単にスケープゴートにされてしまう。

 それでも俺はフリアーナ六世を許すことができなかった。

「だいたい、王様があんなんだから、いけないんですよ。誰かフリアーナ六世に神明裁判はやめろっていう臣下はいないんすかね」
「陛下の悪口は言わないでくれないか」
 コフネさんが静かに言った。
「だって、どう考えてもおかしいじゃないですか」
「ヤグラ、話はそう簡単じゃないんだよ!!」
 コフネさんが声を荒げた。表情の乏しいコフネさんが厳しい目をしていた。

「臣下だって一枚岩ではない。それぞれに思惑があって、それぞれの正義がある。もし、陛下が独断でメイドの赤子を殺せば、『悪逆非道な王だ』と言うものがいる。一方で真相も分からないまま赤子を生かせば、『家督争いすら解決できない』と笑うものもいる。陛下は何をやってもクジ引き国王だと言われてしまうんだよ……所詮、クジ引きで決められた、肩書だけの王だと、評価が先に決まってて、陛下が何をしても、誰も納得しないんだ。何をやっても認めてもらえないんだよ」

 だから、臣下に甘く見られないよう神様が結論を下したことにする。フリアーナ六世の行動が理解できないわけではない。だけど……、だけど……。

「それでも俺はミタカさんの味方だから。国王の肩は持てません!!」
「お前の気持ちも分かるよ」
「コフネさんはどうしてそこまで国王を庇うんですか?」
 俺の質問にコフネさんは目を見開き、言葉に詰まりながら、探り探り話し始めた。

「よく、本を借りに来てたんだ。外も明るいうちから護衛もつけずに図書館に来てな、気まぐれに本を借りていく。『使いのものを寄こしてくれたら、こちらで探してお届けしますよ』って言っても『自分で選ぶのが好きだ』と言って取り合わない。『王宮にも蔵書はあるでしょう』と言っても、『ここが好きだ』と言う」

 コフネさんはときどき懐かしむように笑った。

「あの頃はまだ表情も豊かでな、陰気でいつも不機嫌そうにしているところは変わらないが、それでも冗談を言ったり、私を困らせて笑ったりしていた。だが、ああして国王になられてからは、あの仏頂面を崩したことがない。相当神経を使っているんだろう」
「血なまぐさい争いを避けて遊び人になったのも分かるよ。陛下は神経質すぎる」
 たしかにコフネさんとフリアーナ六世の会話にはどこか親しさのようなものがあった。コフネさんはフリアーナ六世の言葉に「バカな」と返事をしていた。コフネさんは思ったことをそのまま口にするタイプではない。王を前にそんな口をきいたのも、日ごろの親しさを隠しきれなかったのだろう。

「コフネさんは国王のことが好きなんですか?」

「す、スキっ!? あり得ない。わたしはただ陛下の境遇に同情しているだけだ。私が誰よりも陛下を理解しているのは事実だが、陛下を憐れむ気持ちは決して恋愛感情によるものではない!!」
 コフネさんの顔がみるみる赤くなっていった。
「いや、コフネさんめちゃくちゃ国王のこと好きじゃないですか」
 
 コフネさんは明らかに恋をしていた。
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