逆転の異世界生活~最強のチートスキルは『蠕動運動』でした。最高の逆転劇を見せてやる

先川(あくと)

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三章 クジ引き国王とツンデレメイドゾンビの幽霊

53話 ヤケ酒とミーノの訪問

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「何を言う!! 大体……私みたいな卑しい身分のものと、陛下が釣り合うわけないのだ。恋愛感情を持つこと自体おこがましいのだ!!」
「そうですか? 国王も案外コフネさんのことが好きだったりして」
「す、スキ!? ……………………あり得ん、あり得ん、あり得ん!! ヤグラ、私をからかいに来たのか?」
「いや、別にからかってるわけじゃ……」

 俺はそこで押し黙ってしまった。コフネさんの顔が気の毒なほど赤くなっていた。切れ長の目尻が下がり、泣きそうな表情になる。彼女は自分が取り乱していることに、酷く戸惑っていた。
 コフネさんはしばらくのあいだ、手で火照った顔をあおいでいた。だけど、いつの間にか陰鬱な表情が、彼女の恥じらいを覆い隠してしまった。

「正直なところ、私の感情が何かなんて、どうでもいいんだよ。恋だろうが、憐みだろうが、それは私の問題であって、陛下には関係がない。でも、陛下を救ってあげられないのは苦しいんだ。これから先、陛下は大きな選択を迫られるたびに神判を実施し、神の意向と周りを納得させながら、マツリゴトを行っていく。その虚しさを思うと、気が遠くなるよ。誰かが陛下の判断を支持し、尊重しなければならない。だけど、私はただの下役人。陛下が王になると分かっていれば私ももっと出世を望んだのになあ」
 コフネさんはなげやりに本を閉じた。

 コフネさんの話を聞くと、フリアーナ六世はそれほど悪い人ではないように思えた。そして、彼の葛藤も痛いほど理解できた。
 純粋な悪などどこにも存在しなかった。

 悪逆非道な王もいない。ミタカさんの熱湯裁判だって、後継者争いを未然に防ぐためのものだ。後継者争いが泥沼の内戦を引き起こした例は山ほどある。伊達や酔狂でやっているわけではない。
 だからといって、ミタカさんの子どもを殺してしまえばいいという問題ではない。子どもの血統をはっきりさせたうえで、皇位継承の優先度を確立し、内戦の芽を摘まなければいけない。
 それが理想だろう。それで周囲が納得しないからと言って、すでに死んだミタカさんに肉体を与えたうえで、神明裁判にかけるのは残酷だ。




 俺は宿屋の一室でヤケ酒に溺れていた。
 誰か悪者を決めて、ソイツの罪を糾弾できれば、俺が罪悪感を抱くこともないだろう。
 だが実際には完璧な悪は存在しない。フリアーナ六世はただ誰もが納得する選択をしなければいけないだけだ。

 なんであれ、俺がミタカさんを守れていれば、こんな事態になることはなかった。

 もっと早くミタカさんを逃がしていれば……。
 誰かが尾行している可能性を考慮していれば……。
 あのときあの男たちに勝っていれば……。
 俺さえしっかりしていれば、誰が何と言おうとミタカさんを守ることができたのだ。

 俺だって、ここに来てから徐々に力をつけている。体力は現世と比べ物にならないほど上がっているし、格闘やナイフの扱いも覚えつつある。
 オバケカボチャの種を使えば、魔獣を狩ることだってできる。
 それでも周りの冒険者や傭兵の方が一日の長がある。自分の中ではこれ以上ないくらい頑張っているのだ。だが、周りと比べればモブキャラとそれほど変わらない。人より優れているものといれば、消化器官の蠕動運動くらいだ。
 俺は酒屋で買ってきたツマミを食い、酒を飲んだ。
 酒を飲んでぼんやりとすれば、嫌なことは考えずに済んだ。
 俺はワインを一気飲みし、グラスを空けると、また壺を傾け、グラスにワインを注いだ。

 すでにまっすぐ歩けないほど酔っぱらっていたが、まだ飲みたかった。
 ドンドンッ!!
 そのとき勢いよく扉をたたく音がした。
「ヤグラ君っ!! 入りますよー」
 聞きなれた幼い声がして、ドアが開いた。
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