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最終章 最高の逆転劇
86話 戦闘は避けられない
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俺はとっさに後ろに下がる。
さすがに戦闘は避けられないか。
「遅いね」
射程距離から離れたと思ったのもつかの間、男がすばやく地面を蹴った。
「ヤバい……」
俺は慌ててナイフを抜くと、切っ先を払って、軌道をそらす。男が振り向きざまに低い位置から突き出した一撃を、すれ違うようにかわし、男から距離をとった。
「ただのマヌケかと思ったが、意外に動けるようだね」
「かわすだけなら、これくらいはできますよ。まだやりますか」
「もちろん、しかし、やじ馬が来る前に決着をつける気だ」
男は手の中でナイフを回転させると、逆手に持ち替えてステップを踏んだ。
男の腕が死角になって、ナイフの出所が読めない。逃げようにも、背を向けられた瞬間に手痛い一撃が飛んでくるだろう。男はいくつかの急所に狙いを定めて、そのどこかに隙ができる瞬間を待っていた。一刺しで致命傷を与えられる部位がいくつも思い浮かぶ。
対する俺は武術に関してはまだ見習いだ。ミーノが教えてくれたのは基本的なステップだけ。流れるような体運びから、相手の一撃を交わし反撃に出る。それも、動物や魔獣など、比較的知能が低く、単調な動きをする相手としか戦ってこなかった。
他人を出し抜くのが好きだと自称する、トリッキーな相手と戦ったことはない。
「さあ、行くよ」
男が腕を振りかぶった瞬間、切っ先が見えた。ナイフの軌道が何となく予測できる。俺はさきほどと同じ要領で、相手の間合いに入り込む。刃が体に到達する前に、軌道の中に入ったと思ったそのときだった。
男の手首がぐにゃりと折れ曲がると、ナイフが変則的な動きを見せた。
「ヤバい――」
俺は強引に体をそらし、勢い余って地面に倒れこんだ。
「よくよけたね」
「自分でもそう思いますよ」
首筋が熱く濡れている。その感触が首元をツーっと伝っていく。
「次はないよ」
俺が体勢を立て直す間もなく、男が地面を蹴った。
「避けきれない!」
俺がどうすることもできないまま、男を見上げていたとき、さっと黒い影が差し、男の前に誰かが立ちはだかった。その人物は隙だらけの棒立ちだったが、それがかえって不気味に見えた。もちろん、何の勝算もなくそんなことをする奴はいない。コフネさんほどの魔術師なら、泥棒一人くらい相手ではない。
男は虚を突かれて、歩みを止めた。
「ふむ、コソ泥にしてはやることが派手じゃないか?」
それを見てコフネさんが、不敵な笑みを浮かべる。
「なんだ、一人じゃなかったんだな」
「半人前が二人だから、一人と勘定してもいい」
コフネさんは挑発的な笑みを浮かべた。
「良いよ。こっちは最初から武闘派じゃないんだ。この男だけなら、片付けといたほうが話が早かろうと思っただけだ」
男はナイフをしまうと、バックステップで距離をとった。
「逃げたければ逃げるがいい。こっちだって外でチャンバラをするよりは家で本を読んでたい性分なんだ」
「ああ、見て分かるぜ。恐ろしく陰気な顔してるからな」
男はそう捨て台詞を吐くと、市場の表通りに飛び込んだ。そして、すぐに人だかりに紛れて見えなくなった。
さすがに戦闘は避けられないか。
「遅いね」
射程距離から離れたと思ったのもつかの間、男がすばやく地面を蹴った。
「ヤバい……」
俺は慌ててナイフを抜くと、切っ先を払って、軌道をそらす。男が振り向きざまに低い位置から突き出した一撃を、すれ違うようにかわし、男から距離をとった。
「ただのマヌケかと思ったが、意外に動けるようだね」
「かわすだけなら、これくらいはできますよ。まだやりますか」
「もちろん、しかし、やじ馬が来る前に決着をつける気だ」
男は手の中でナイフを回転させると、逆手に持ち替えてステップを踏んだ。
男の腕が死角になって、ナイフの出所が読めない。逃げようにも、背を向けられた瞬間に手痛い一撃が飛んでくるだろう。男はいくつかの急所に狙いを定めて、そのどこかに隙ができる瞬間を待っていた。一刺しで致命傷を与えられる部位がいくつも思い浮かぶ。
対する俺は武術に関してはまだ見習いだ。ミーノが教えてくれたのは基本的なステップだけ。流れるような体運びから、相手の一撃を交わし反撃に出る。それも、動物や魔獣など、比較的知能が低く、単調な動きをする相手としか戦ってこなかった。
他人を出し抜くのが好きだと自称する、トリッキーな相手と戦ったことはない。
「さあ、行くよ」
男が腕を振りかぶった瞬間、切っ先が見えた。ナイフの軌道が何となく予測できる。俺はさきほどと同じ要領で、相手の間合いに入り込む。刃が体に到達する前に、軌道の中に入ったと思ったそのときだった。
男の手首がぐにゃりと折れ曲がると、ナイフが変則的な動きを見せた。
「ヤバい――」
俺は強引に体をそらし、勢い余って地面に倒れこんだ。
「よくよけたね」
「自分でもそう思いますよ」
首筋が熱く濡れている。その感触が首元をツーっと伝っていく。
「次はないよ」
俺が体勢を立て直す間もなく、男が地面を蹴った。
「避けきれない!」
俺がどうすることもできないまま、男を見上げていたとき、さっと黒い影が差し、男の前に誰かが立ちはだかった。その人物は隙だらけの棒立ちだったが、それがかえって不気味に見えた。もちろん、何の勝算もなくそんなことをする奴はいない。コフネさんほどの魔術師なら、泥棒一人くらい相手ではない。
男は虚を突かれて、歩みを止めた。
「ふむ、コソ泥にしてはやることが派手じゃないか?」
それを見てコフネさんが、不敵な笑みを浮かべる。
「なんだ、一人じゃなかったんだな」
「半人前が二人だから、一人と勘定してもいい」
コフネさんは挑発的な笑みを浮かべた。
「良いよ。こっちは最初から武闘派じゃないんだ。この男だけなら、片付けといたほうが話が早かろうと思っただけだ」
男はナイフをしまうと、バックステップで距離をとった。
「逃げたければ逃げるがいい。こっちだって外でチャンバラをするよりは家で本を読んでたい性分なんだ」
「ああ、見て分かるぜ。恐ろしく陰気な顔してるからな」
男はそう捨て台詞を吐くと、市場の表通りに飛び込んだ。そして、すぐに人だかりに紛れて見えなくなった。
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