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最終章 最高の逆転劇
85話 泥棒の方が正論だ!
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「いいや、俺はあんたが裏通りから闇商人の店に入っていくのを見た。それでいつまでたっても出てこないから、他の出口を探していたところを隣のアパートから出てくるのを発見したんだ。商館とアパートの隙間に扉が見えたし、そこから柵を乗り越えて裏庭に入れるのも確認した」
俺は手持ちのカードを切った。
「恐ろしく執念深いんだな。しかし、僕があの店から出てきたと言っても、泥棒とは限らないだろう。何か買い物に来たのかもしれないし、店のオヤジに用があったのかもしれない」
「別にはぐらかさなくていい。俺はあんたを捕まえたり、警察に突き出す気はないんだから」
「ほう?」
男の瞳に好奇の光が差した。
「俺はあんたにシリンキ村から梅干しを盗むのをやめてほしいだけだ」
「なぜ?」
「というのも、俺はちょっとした成り行きから、あんたの罪を被っちゃったんだよ。俺が梅干し泥棒だってうそぶいて、それで今泥棒から足を洗ってまっとうに生きると友だちに宣言したところなんだ。その横からあんたが梅干しを盗るもんだから、俺の罪がどんどん重くなる。いよいよ、友だちにも見放されそうなんだ」
男は打ち解けた笑みを浮かべた。さきほどの他人行儀な笑みではない。親しい友人と夕食の席で見せるような笑みだった。
「バカだねえ……。他人の罪を白状するのも馬鹿だが、その真犯人に、俺がお前の罪を被ったと伝えるのは大バカじゃないか。他人が自分の罪を被ってるなら、それこそ好都合だ。僕ならここが稼ぎ時だと、仕事に励むね」
俺はうっと小さく呻いた。どう考えてもこの男が悪いはずなのに、言い返すことができない。
なぜならどう考えても、泥棒の方が正論だ!!
他人の罪をかぶるのもバカなら、それを本人に言うのは大馬鹿じゃないか!
「そこを正直に伝えてるんだから、身を引いてくれよ。な? 別にあんたが泥棒をするなとは言わない。シリンキ村以外の場所で、梅干し以外で商売をしてくれたらそれでいいんだ」
「断ると言ったら?」
「どうして」
「僕は人を出し抜くのが好きでねえ。人が油断してるところを、全く警戒もしていないところを突くのが大好きなんだよ。考えてみれば、梅干しほどいい品はない。貨幣と違って通し番号も、型もないから捌きやすいし、軽いわりに中々高価だ。だけど、なんとなく所帯じみてる。泥棒の品としては織物や、宝石の方が標的にされやすいが、あっちはどこも厳重に保管されてて、手が出しにくい」
他人を出し抜くのが好きか……。
「確かに、宝石を棚の奥に大切にしまっておく人も梅干しは台所に置きっぱなしだ」
「だろ? 今頃、『しまった、梅干しを隠すのを忘れた!』と後悔していると思うと愉快で仕方ない」
「それならどうして同じ村で盗んだんですか? 流石に二回目は警戒されたでしょう?」
「ハハハ、一度あったから、かえって警戒が薄れるということがある。梅干しが盗まれるなんて珍事がそう二回も続くことはないだろうと、みんなたかをくくっているのさ。そこを僕が物の見事に出し抜いたってわけだ」
「三回目は?」
「三回目は、もうさすがに梅干しは警戒されてるだろうと覗いてみれば、それが何の用心もなく、台所の格子戸の前に置いている。あまりに不用心だったから、そのまま盗ってきたんだよ」
「じゃあ、もう三回目で気が済んだでしょう。これ以上は出し抜くこともできない。向こうだって警戒してるから」
「まあね。僕もここ一週間でじゅうぶん稼いだから、このあたりで切り上げるつもりだ」
「そうですか」
「しかし、裏稼業について知る人間をみすみす生かしておくこともない。君にはこのあたりで死んでもらおうよ」
男は腰からナイフを抜くとさっと間合いを詰めた。
俺は手持ちのカードを切った。
「恐ろしく執念深いんだな。しかし、僕があの店から出てきたと言っても、泥棒とは限らないだろう。何か買い物に来たのかもしれないし、店のオヤジに用があったのかもしれない」
「別にはぐらかさなくていい。俺はあんたを捕まえたり、警察に突き出す気はないんだから」
「ほう?」
男の瞳に好奇の光が差した。
「俺はあんたにシリンキ村から梅干しを盗むのをやめてほしいだけだ」
「なぜ?」
「というのも、俺はちょっとした成り行きから、あんたの罪を被っちゃったんだよ。俺が梅干し泥棒だってうそぶいて、それで今泥棒から足を洗ってまっとうに生きると友だちに宣言したところなんだ。その横からあんたが梅干しを盗るもんだから、俺の罪がどんどん重くなる。いよいよ、友だちにも見放されそうなんだ」
男は打ち解けた笑みを浮かべた。さきほどの他人行儀な笑みではない。親しい友人と夕食の席で見せるような笑みだった。
「バカだねえ……。他人の罪を白状するのも馬鹿だが、その真犯人に、俺がお前の罪を被ったと伝えるのは大バカじゃないか。他人が自分の罪を被ってるなら、それこそ好都合だ。僕ならここが稼ぎ時だと、仕事に励むね」
俺はうっと小さく呻いた。どう考えてもこの男が悪いはずなのに、言い返すことができない。
なぜならどう考えても、泥棒の方が正論だ!!
他人の罪をかぶるのもバカなら、それを本人に言うのは大馬鹿じゃないか!
「そこを正直に伝えてるんだから、身を引いてくれよ。な? 別にあんたが泥棒をするなとは言わない。シリンキ村以外の場所で、梅干し以外で商売をしてくれたらそれでいいんだ」
「断ると言ったら?」
「どうして」
「僕は人を出し抜くのが好きでねえ。人が油断してるところを、全く警戒もしていないところを突くのが大好きなんだよ。考えてみれば、梅干しほどいい品はない。貨幣と違って通し番号も、型もないから捌きやすいし、軽いわりに中々高価だ。だけど、なんとなく所帯じみてる。泥棒の品としては織物や、宝石の方が標的にされやすいが、あっちはどこも厳重に保管されてて、手が出しにくい」
他人を出し抜くのが好きか……。
「確かに、宝石を棚の奥に大切にしまっておく人も梅干しは台所に置きっぱなしだ」
「だろ? 今頃、『しまった、梅干しを隠すのを忘れた!』と後悔していると思うと愉快で仕方ない」
「それならどうして同じ村で盗んだんですか? 流石に二回目は警戒されたでしょう?」
「ハハハ、一度あったから、かえって警戒が薄れるということがある。梅干しが盗まれるなんて珍事がそう二回も続くことはないだろうと、みんなたかをくくっているのさ。そこを僕が物の見事に出し抜いたってわけだ」
「三回目は?」
「三回目は、もうさすがに梅干しは警戒されてるだろうと覗いてみれば、それが何の用心もなく、台所の格子戸の前に置いている。あまりに不用心だったから、そのまま盗ってきたんだよ」
「じゃあ、もう三回目で気が済んだでしょう。これ以上は出し抜くこともできない。向こうだって警戒してるから」
「まあね。僕もここ一週間でじゅうぶん稼いだから、このあたりで切り上げるつもりだ」
「そうですか」
「しかし、裏稼業について知る人間をみすみす生かしておくこともない。君にはこのあたりで死んでもらおうよ」
男は腰からナイフを抜くとさっと間合いを詰めた。
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