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第十九話 入学試験~当日その1

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 そして待ちに待った入学試験、会場には多くの出場資格を持った男女が集まっていた。毎年…試験が行われる際、特別ゲストとして近衛兵団長のウェイン・カミルトンと守護隊長のキラーソン・タイナーが呼ばれている。国王は警備が難しいため、毎年ゲストを断念しているらしい。



 ドンッ…ドンッ…ドンッ…


 試験開始の音が会場全体に鳴り響いた。
試験官「試験をはるばる受けに来た諸君!準備は出来たかーーーー?これより入学試験を開始する。だが…まず、はじめに特別ゲストとしてお招きしているお二方にありがたい話を賜ろうではないか。それでは…カミルトン様、前へ。」

「ごきげんよう、私は近衛兵団長のカミルトンだ。これから君達には……壁を越えられるか審査を行う。そこで通った者も、通らなかった者も恨みっこ無しだ。試験の内容は極めて簡単。力をためるだけ、既にギルドで仕事をして報酬を貰えるほどの強者もいるだろう。しかし、強者も弱者もない。ただ、力をためれば良いのさ。」


試験官「ゴホンッ……、カミルトン様ありがとうございました。」明らかに途中で話を切られたので、カミルトンも良い気持ちはしなかったが、黙って自分の席に戻って静かに着席した。

試験官「それでは、タイナー様…前へ。」

「ご挨拶に預かった、私は守護隊長のタイナーだ。諸君も話には聞いていただろう、カミルトン殿と私…タイナーはこの国の英雄だ。何が言いたいかというと、つまりだな……今ここにいる君たちの中にも将来、最強の名を受け継ぐものがいるだろう。是非このアルカリスの力になってくれ。私からは以上だ。」そう言うとタイナーは席に戻っていった。

試験官「さぁ、ショータイムの始まりだ。諸君、個々の力を存分に見せてくれ。」

 入学試験受験者は全員で二十名いた。たくみの受験番号は二十番、ロゼウの受験番号は一番。そしていよいよ試験開始だ。

試験官「では、一番手の者……来なさい。自己紹介を。」

「ボクの名前はロゼウ……………」



 そのころ控え室では、
「くぁーーーー、きんちょーするなーーー。こんなに緊張したの、高校の時の就職試験以来だ。」

???「何?しゅーしょくしけんって?」見知らぬ少年がたくみに話しかけてきた。その少年は全身黒の衣服を着ていて、ロゼウよりも少し年下に見えた。

「ん?就職試験っていうのは、俺が前いた世界の仕事を得るための手段だ。まあ、こっちの世界で言えば…ギルドに入るときにそこの責任者に話を通すだろ?それに似てると思う。」以前ロゼウにこっちの世界について色々学習していたので、たくみはとても詳しくなっていた。

???「へぇー、そうなんだ。ボクはあんまり人と話したこと無いし、外も今日初めて目にしたんだ。ほんとに戸惑いだらけだよ。」

「なっ?お前…今まで、外を見ないで何やってたん「受験番号 十九番の者、呼ばれているぞ!早く行きなさい。」……。」

 たくみの声に呼び出しの声が割り込んできた。少年は呼び出しのあと、たくみに軽く会釈して試験会場に向かった。

「あっ……しまった、名前を聞き損ねた。」

 そして、しばらくするとたくみの出番が回ってきた。
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