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9-1.妖精卿と舞踏会編1【R-18:猫化プレイ】

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 淫猥な店から帰宅した俺たちは、購入した商品を使って行為に勤しんでいた。
 中には自分で選択した物もあり、羞恥を煽り立てて余計に盛り上がってしまう。

「改めて見ると我ながら引くなぁ。玩具がこんなに転がってるとかさ、爛れてる」

 意味が分からない形の道具も、その使い方を理解できるようになってしまった。
 段々性癖が歪んでいってる気もするが、魔力を増強する為には不可抗力だった。

「どれも必要な物ですから。それにしても猫化の薬は、予想以上に楽しめますね」
「これ、いつ終わるの? ……んっ、尻尾の付け根を叩くのはやめてよ!」

 今日は猫の特徴を得る薬を飲んでいて、俺には猫耳と尻尾が生えている。
 感覚もそれに準じており、尾の生え際を撫でられるだけで体が小さく跳ねた。

「けれどお尻は上がってますよ、手に押し付けるみたいに」
「動物的な本能だから、不可抗力なんだよ。……あ、ぁあ゛っ! やだ、そんな風に触らないで!」

 長い尾の先から根元まで撫で上げられると俺は悶え、うつ伏せで寝台に縋りつく。
 すると彼は尻尾の根元を執拗に弄び、俺は頭を振り乱して嬌声を上げた。

「体を擦りつけてきたのも可愛かったですね。自分の匂いを、纏わせたかった?」
「んぁ、分かんない……。でもヴァルネラに触れてると、少し安心する」

 猫化の薬を飲んだ後は嗅覚も発達し、ヴァルネラについた匂いが許せなくなった。
 だから俺の匂いで上書きしたくなるが、それを素直に口にしたくはない。

「今日はいつにも増して可愛いですね。……ねぇ、猫耳に口づけてもいいですか」
「嫌だ。人の時より音に敏感だから、やだ、息も吹きかけないで!」

 俺の言葉に答えずヴァルネラが猫耳に口づけ、俺は感触に身を捩ってしまう。
 ついでに尻尾も握り込まれて、強烈な快楽が通り抜けたのを機に悲鳴を上げた。

「分かりましたよ、耳も伏せちゃいましたしね。でも口づけだけはさせてください」
「んっ、音が近くて変な感じ……。あんっ、噛むのも許してない!」

 ヴァルネラは猫耳に口づけながら甘噛みし、湿った水音が直接頭に響いてくる。
 それが嫌で俺は抗議の声を上げるが、体は勝手に彼の熱を求めていた。

「でも本気で嫌がってはいないでしょう? 喉が鳴ってますよ」
「だから不可抗力だってば。……あ、今日は後ろからにして」

 最近は翅に負担が掛からないよう、ヴァルネラの膝に乗って性行為を行っていた。
 けれど猫は四足歩行が主だからか、後ろからの体勢の方がしっくりくる。

「私は顔が見える方がいいんですけどね。でも体位を指定してくるなんて、珍しい」
「猫になってるから、そっちの方がいいだけ。勘違いしないで」

 俺が寝台で腰を上げると、指定された通りにヴァルネラが後ろから挿入してくる。
 その熱に俺は背を仰け反らせ、彼のものを奥まで飲み込んでいった。

「じゃあ私にも項を噛ませてくださいね。猫の交尾ってそういうのするらしいので」
「ヴァルネラは猫になってないじゃん。……んあっ、これ、痺れちゃう!」

 首筋に噛みつかれた俺は痛みと快楽が混じり、中に埋められたものを締め付ける。
 するとヴァルネラが腰を動かし始め、揺らされた寝台が音を立てて軋み始めた。

「ふふ。腰をこんなに押し付けて、本当に雌猫みたいじゃないですか」
「馬鹿、そんなこと言うならさせない!」

 揶揄いの声に俺は尻尾で彼の顔を叩いて怒るが、余裕のない声音になってしまう。
 しかしそれに気圧されたのか、激しかった律動がぴたりと止まった。

「ご、ごめんなさい! そんなこと言わないでグレイシス、優しくしますから!」
「……本当に止まると思わなかった。前なら、強制的にしてきたのに」

 急停止されたことで冷静さを取り戻し、俺は首を捻って背後を見ようと試みる。
 すると彼は叱られた子犬のような顔で、必死に機嫌を取ろうとしていた。

「貴方とじゃれ合いたいだけで、本気で嫌われるのは嫌ですから。私、ちゃんと許可が出るまで待てますよ」
「ふふ、獣化の薬を飲んでないのに犬みたい。いいよきて。……んぁああっ!」

 ヴァルネラを可愛く感じて許した瞬間、彼は再び律動を再開して俺を責め立てる。
 その激しさに俺はまた余裕を失くし、ただ快楽に溺れる雌獣と化した。

「っは、あ。やっぱり顔が見たいですけど、背面だと翅が見えるのは魅力ですね」
「……でも最近、魔力を貰ってもあんまり大きくならないんだよね」

 けれど話題が翅に移り変わると、俺は浮ついた頭が冷え切っていくのを感じた。
 最近俺が積極的になってたのは、ヴァルネラの気を逸らす思惑もあったから。

「だから猫化の薬も嫌がらなかったんですか。でも大丈夫ですよ、焦らないで」
「……っん。も、早く魔力注いでよ、ゆっくり動いてたって意味ないじゃん」

 これ以上話題を深堀りしたくない俺は、尻尾を彼の腕に巻きつけて行為を促す。
 しかしヴァルネラは動いてくれず、後ろから包み込むように抱き締めてきた。

「もう少しだけ、このままでいさせて。後でちゃんと魔力は渡しますから」
「……分かったよ、ちょっとだけだからね」

 俺の不安を感じ取っているのか、ヴァルネラは殊更優しく口づけを降らせてくる。
 そして愛想のない言葉にも怒らず、俺の体を抱き込んだまま手を絡めてきた。

(こうしてると、少しだけ安心する。けどいつまでこうしてられるんだろう)

 成長しない翅、ヴァルネラの元婚約者、最近は不安要素ばかりが増えている。
 いいことだってあるはずなのに、そればかりが頭を占めて一人で苦しくなった。



 行為を終えて猫化の効果も切れた俺たちは、身を清めて寝台に横たわっている。
 けれど眠りに落ちる前に、ヴァルネラが声を掛けてきた。

「そうだグレイシス、一緒に舞踏会へ行ってくれませんか。そろそろ貴方を世間に紹介しておくべきだと思うんです」

 俺の髪を梳きながらヴァルネラが切り出すが、どうにも俺は乗り気になれない。
 面倒くさいのではなく、俺のせいでヴァルネラの評価が下がる懸念があるからだ。

「俺は貴族でもないし、翅も半端だからヴァルネラの評判が落ちるでしょ。嫌だよ」
「陰口を叩く輩は、その場で一掃しますよ。それに私の庇護下だと周知すれば、貴方も安全になります」

 俺の心配など恐れるには値しないと、ヴァルネラは自信に満ちた声で断言する。
 確かに彼は実力で黙らせるだろうから、結局俺の気持ちの問題だった。

「後日、舞踏会用の衣装を買いに行きましょう。ふふ、どんなのが似合いますかね」

 ヴァルネラは安心させるように冗談を混ぜ、不安を拭うように手を重ねてくる。
 ここまでされると断り続けるのも気が引けて、俺は小さく頷いて承諾した。
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