【完結】体を代償に魔法の才能を得る俺は、無邪気で嫉妬深い妖精卿に執着されている

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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11-3.妖精卿と翅の黒化編3【R-18:逆レ、両片思い】

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 黒い翅を携えて屋敷に戻ると、混乱しきったヴァルネラが俺を迎えた。
 身嗜みも整えていないのか、彼の髪も服装も乱れきっている。

「どこに行ってたんですか、グレイシス! 起きたらいなくて、探しに行こうと」
「ごめん。でももういなくなるから許して、……《動かないで、ヴァルネラ》」

 ヴァルネラの手が届く前に命令魔法を行使し、俺は無理やり彼の自由を奪う。
 本来なら適うはずのない相手だが、黒い翅は膨大な魔力を供給してくれた。

「どうして貴方が、私を上回る魔法を!? それにその翅は」

 ようやく変質した翅に気づいたヴァルネラだが、もう彼にできることはない。
 長い時間は保たないだろうが、一時間もあれば目的は果たせる。

「言うこと聞けなくて、翅は使い物にならなくなった。だから出ていく、……今までありがとうヴァルネラ」
「待ってください! ちゃんと話しましょう、私、まだなにも理解できてない!」

 俺が淀みなく別れを告げると、彼は意味が分からないと狼狽えている。
 けれど戸惑うことはない、もう続きもないのだから。

「色々してくれたのに、なにも返せなくてごめん。でもヴァルネラなら大丈夫だよ」
「グレイシス、「《それ以上は喋っちゃだめ》」」

 俺は動きどころか会話も封じて、ヴァルネラに聞くことだけを強いる。
 返事なんかいらない、全てここで終わらせる。

(もう最後だから、好きなこと話しちゃおう。答えを聞く必要もないんだから)

 俺に負担を与えない為にか、ヴァルネラが本気で抵抗する気配はない。
 代わりに音の出ない口を動かして、必死に言葉を紡ごうとしている。

 呪文なんかなくても、彼が全力を出したら俺の魔法なんて簡単に解けるのに。

「確かにヴァルネラは暴走しがちだけどさ、最近は他人に合わせる優しさも持ち始めてる。もう一人ぼっちになることはないよ」
「グ――シス、待っ――く――! 一人で――に――――いで!」

 俺の魔法じゃヴァルネラを完全には止められないけど、無力化できれば上等だ。
 だから今だけは俺が優位で、彼を好きなようにできる。

「俺以外にも相手はいるし、もっといい子が見つかるよ。妖精化の適性があって、ヴァルネラの良いところを見てくれる子がさ」
「お願――から、私の――聞――くだ――! 同――全て――ない――!」

 俺の言葉を一方的に聞かされているヴァルネラの顔色は、蒼白になっていく。
 なにか決定的な思い違いに気づいたような、愕然とした表情を浮かべていた。

(ヴァルネラ、泣いてる。一緒にいる時間が長かったから、情が湧いたのかな)

 感情的に潤んだ瞳が俺に向けられて、心が良くない満たされ方をしている。
 けど今だけだから許して欲しい、もう二度と姿を現さないと約束するから。

「少しの間は寂しいかもしれないけど、すぐに俺のことなんか忘れるよ。……俺は、忘れられない気がするけど」
「私だ――忘れ――ない! お願――から、話――いて!」

 彼にしては珍しく過ごした相手だから、他の人より記憶を引きずるかもしれない。
 でも違いなどその程度で、俺は今から有象無象に溶けていく。

(自分がしたことの結果なんだから、泣くな俺。ちゃんとヴァルネラを手放すんだ)

 結局全て台無しにしたのは俺で、この結末に導いたのは自業自得だ。
 けれど唯一良かったのは、まだ彼を手放す覚悟ができたこと。

「あぁでも、最後にしようか。俺との行為、好きだって言ってくれ、……いたっ」

 彼に残る記憶を少しでも良いものにしたくて、俺は服を脱ぎ捨てる。
 しかし強めの抵抗をしてきたヴァルネラに阻まれ、無様に床に倒れ込んだ。

(伸ばした手が、魔法で弾かれた。でも今なら、少し無理すれば押し返せる)

 多少の無茶は強いられるが、黒い翅があれば規格外の魔力を操ることができる。
 体の痛みを無視してヴァルネラに抗えば、彼は怯えた表情で力を霧散させた。

「拒まないで、ヴァルネラ。もう俺、これくらいしか渡せるものがないんだよ」
「グレ――ス、お願い――ら、話――いて……!」

 再び俺は立ち上がって、動けないヴァルネラを押し倒して服を剥ぎ取っていく。
 そして下を刺激すれば、生理反応で否応なく勃ち上がった。

「いいから気持ちよくなって。……んん、っふ、良かった、ちゃんと入りそうだ」

 散々ヴァルネラを受け入れてきた場所は、もう慣らさなくても挿入できる。
 俺が先端を宛てがって腰を下ろすと、水音を立てて深く入り込んできた。

(最近してなかったけど、ちゃんと入った。ヴァルネラも、余裕がなくなってる)

 彼は快感を噛み殺しているが、良い所に押し当てれば肩を揺らして反応する。
 その隙に俺は一気に奥まで迎え入れ、ヴァルネラのものを強く締め上げた。

「ん、あ゛ぁあ! はぁ、全部入った……。ヴァルネラ、動くから俺のこと見てて」
「いやです、――っ! やめ――ださいグレイ――!」

 一度動き出した腰はもう止まることなく、俺はヴァルネラのものを刺激し続ける。
 腰を逸らして雌猫のように喘ぎながら、一方通行の行為に没頭する。

「首を横に振ってても、中で大きくしてるじゃん。でも俺、それが嬉しい……」

 彼にもっと気持ちよくなって欲しくて、俺は自分の快楽を後回しにして奉仕する。
 これで終わりなのだから、ヴァルネラには少しでも気持ちよくなって欲しい。

「だ――話を、嫌だ、まだ――も貴方に伝え――てない――! ……っ」
「あは、やっと中に出してくれた。でも今日は、一滴も出なくなるまでしようね」

 押し倒したヴァルネラの肩を掴んで狂ったように腰を振り、俺は熱で満たされる。
 好き勝手された彼の表情は悲痛に染まっているけど、幸い彼は萎えていない。

(体は疲れてるけど、限界まで奉仕しよう。悔いは残したくない)

 快楽で濁った頭でもそこだけは譲れなくて、俺は倦怠感の残る体を揺らし続けた。
 ――そして本当に動けなくなるまで、俺はヴァルネラを搾り取る。

「俺、本当はヴァルネラのことが好きだったんだ。だからこそ幸せになってほしい」

 これは紛れもない本心で、俺がいては叶う事のない願いだ。
 だからここで解放するから、全てなかったことにしてほしい。

(あと俺にできるのは、軽いキスだけだ)

 疲れ果てた体を這いずらせて、俺はヴァルネラの唇に自分のものを押しつけた。
 もう色気もなにもないが、これが彼に贈れる精一杯の愛情表現だ。

「ヴァルネラ、元気でね。愛してた」
「グレイシス、私は「《眠って、ヴァルネラ》」」

 犯し尽くされて涙に濡れた顔も、いずれ笑顔に変わって他の人に向けられる。
 それを自分で想像した癖に、耐えられなくなって魔法で昏睡させた。

「じゃあね、ヴァルネラ。……もう今からは、他人同士だね」

 一方的な別れの言葉は彼には届かないだろうけど、言わずにはいられなかった。
 全てを終わらせた俺は汚れた体を拭き、振り返らずに屋敷を出ていく。

「満足したの、グレイシス」
「うん、おまたせディーロ。……じゃあ行こうか」

 屋敷の外で待ってくれていたディーロと合流し、今度は彼の後ろを歩き出す。
 呼び止める声は聞こえず、俺たちの同棲は呆気なく終わりを告げた。
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