【完結】魔力至上主義の異世界に転生した魔力なしの俺は、依存系最強魔法使いに溺愛される

秘喰鳥(性癖:両片思い&すれ違いBL)

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2.魔法契約の裏側編

15-2.投薬治療と薬師の想い編2

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「でも薬の副作用は? 魔力制御薬って、意識が混濁するよね確か」
「あぁ、魔法の威力が落ちますもんね。でもワタクシ強いんで、役に立ちますよ!」

 スヴィーレネスは問題ないと胸を張るが、俺はそうじゃないと首を振った。
 彼の強さを信じているのもあるが、それ以上に。

「そうじゃなくて、心配なんだよ。前だって危ない目に遭ってたし」
「オルディールが気にかけてくれてる、嬉しい……!」

 俺の言葉にスヴィーレネスは喜びを顕わにするが、正直申し訳なさを感じる。
 だってこんな些細なことで喜ぶくらい、彼を追い詰めてしまっていた。

「酒場の暴漢から庇ったり、情けなく泣いてても慰めてくれますし!」
(別に、そんなの当たり前じゃん。好きな相手なんだし)

 喜色を帯びた言葉を前に、俺はどんな表情をすれば良いのか分からなくなる。
 逆に言えば俺は、今までそんなことすらできていなかったということだ。

「そんな簡単に感動しないでよ。確かに最近、冷たくし過ぎたけどさ」
「でもオルちゃんのそういうところ、スヴィさんは好きなんだ」

 微笑ましげなフィルトゥラムの問いに、スヴィーレネスは全力で肯定する。
 そして我慢できなかったのか、俺を後ろから抱きしめてきた。

「えぇ! ワタクシ自身のことを考えて、行動してくれるのが嬉しくて!」
「好きな人のこと考えるのは、当たり前でしょ。大したことじゃない」

 人前での接触になるが、ここで止めれば彼が酷く傷つく気がして好きにさせる。
 幸いフィルトゥラムも穏やかに見守っているので、変に拒絶する必要もなかった。

「でも優しさに惹かれるのは分かるよ、俺もそういう人が好きだし」
「あぁ、エンヴェレジオですか。ずっと絡んでま「ちょっと、スヴィーレネス!」

 遠慮のないスヴィーレネスの言葉に、俺は慌てて喋りかけの口を手で塞ぐ。
 だって誰も指摘しなかった公然の事実に、彼はあっさり踏み込んでしまった。
 しかしフィルトゥラムは気分を害した様子もなく、普通に頷いている。

「いいよ、隠してないし。でも全然振り向いてもらえないんだ、一夜でいいのに」

 艶やかな薬師は夢を見るように頬を染め、それがまた背徳感と色気を漂わせる。
 けれどスヴィーレネスは彼の様子より、言葉に引っかかったようだった。

「不思議なこと言いますね。好きなら、ずっと一緒にいたいと思わないんですか」
「あの人は綺麗な世界で生きるべきだから。俺は、そういうのできないし」

 寂しそうに笑うフィルトゥラムは、自分の恋は叶わないのだと理解していた。
 けれどその言葉は、俺にも深く突き刺さるもので。

(気持ちはちょっと分かるなぁ、俺も散々悩んだし)

 身分違いだなんだと一人で悩んで、それでも最後は幸運に恵まれた。
 それが当たり前だとは思えないから、俺は共感できるけど。

「え……、全然分からないんですけど。好きなら、ずっと一緒にいたいですよね」
「ねぇ、そのくらいにし「ねぇ、恋の話してる!? 俺にも聞かせて!!」」

 俺は無遠慮な深堀りを止めようとしたが、その前に乱入者が飛び込んでくる。
 けれど小さな人影は今、虚空から部屋の中に現れたように見えた。

「ドーリィ、今どこから出てきた? 窓でも扉でもないよね?」
「妖精や幻想生物はね、普通の人間には知覚できない神秘の道を通れるんだよ」

 俺の問いにドーリィは軽く答えているが、保護施設で使える魔法は限定されてる。
 まして抜け道関係の魔法は、真っ先に潰されているはずなのに。

「それより話の続きを聞かせて! 俺は感情を糧にして、生きてるんだから!」
「だから俺たちのことも、弟子を装って引っ掻き回しに来たのか」

 苦い記憶を思い出した俺は顔を顰めるが、ドーリィは可憐な微笑みを返すだけだ。
 悪びれないその様子は、やはり人間とは違う存在だと再認識させられる。

「でも大丈夫だったでしょ、僕が見たいのは幸福な終わりなんだから」

 彼には助けてもらった面もあるが、やはり前科が大きく完全には信用し切れない。
 けれど強い警戒心を前にしても、妖精の混血児は動じなかった。

「そうだ二人とも、あとヴェセルのところに行ってきな。そろそろ物語が動くよ」

 軽い雰囲気でドーリィは俺たちを送り出すが、やけに俯瞰した物言いが耳に残る。
 最近の彼はよく人間に介入してくるが、その心算を察することは難しかった。
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