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1.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす
1-2.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師と期限付き契約を交わす
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『ほ、他に金額を提示する方は!? では落「待て、なんでテメェが買い落とす」』
怯んだ競売人が手早く売買を締めようとするが、遮ったのは俺を売った青年だった。
吊り上がる値札を見て上機嫌に笑っていたのに、今は警戒心を露わにしている。
「何故お前が水を差す、ヴァントス。最高値を提示したが、まだ足りないのか」
「違ぇ、テメェが淫魔なんざを買う理由が分かんねぇんだよ。必要ないだろ」
仮面越しでも相手を認識できる確執があるのか、ヴァントスは敵意を露わにする。
だが買い手の青年はその威嚇を鼻で笑い、持っていた値札を破り捨てた。
「勘違いしているようだが、私が欲しいのは弱く従順な魔物だ。君とは反対にな」
「成程、そういう性癖か。でもどうすっかな、このまま終わらせるのは勿体ねぇ」
買い手の青年は教卓に溢れる程の金貨を渡し、競売人から鍵を受け取ろうとする。
しかしそれはヴァントスに遮られ、張り詰めた空気の中で睨み合いへと発展した。
「金が欲しいなら、まだ積むが? 幾ら欲しいのか言ってみろ」
「違ぇよ、この状況を楽しんでんだ。テメェが下手に出る機会なんてねぇからな」
金貨を挟んで青年たちは一触即発の空気を纏い、周囲の客も好奇の色を隠さない。
だが今まで強い感情を見せなかった買い手側の青年が、不意に声を低くした。
「まともな交渉をする気はないということか。ならば、話すだけ時間の無駄だな」
「っ、服従魔法か! クソ、周りも巻き添えかよ!?」
買い手の青年が放出する魔力によって金貨が震え、教卓や椅子が軋んだ音を立てる。
身の危険を察知した周囲の生徒たちは出口に殺到するが、……間に合わなかった。
「この競売は非認可だから、教師に告げ口される心配がない。故に加減も不要だ」
買い手の青年は腰につけた鞘から短鞭を取り、自身の手に叩きつけて打ち鳴らす。
すると漂っていた魔力が重圧を持ち、誰も彼もが膝をついた。
「《這いつくばれ》、そして《立ち上がるな》。誰も、私の邪魔をするな」
当然至近距離にいた俺も例外ではなく、魔力に耐え切れない意識が薄れていく。
けど他の人と違うのは恐怖ではなく、圧倒的な力の差に下腹部が疼いていること。
(こんな怖い人に、俺は飼われるのか。嫌だ、でも淫魔の本能に囚われて動けない)
感じたことのない快感が下腹部から全身へと広がり、吐息まで熱を持ち始めた。
甘い倦怠感を逃そうと身を捩るが、過大な魔力に酔った体は敏感になる一方で。
(……近づいてくる足音。鍵がまわされる音が聞こえても、俺は指一つ動かせない)
檻の中に入ってきた青年が、抵抗の意思も体の自由も失った俺を抱き上げる。
その刺激にすら反応してしまうが、彼は構わず上着で俺を包み込んだ。
「金貨は好きに拾い集めろ、金額分以上はあるはずだ。我々は失礼させて頂く」
倒れ伏す生徒たちを長い足で跨ぎ、俺を抱えた青年は薄暗い競売場を後にする。
一瞬周囲の視線が向けられた気がしたが、それも被せられた帽子で遮られた。
(周りの様子を見るのは怖い、けどこの人も顔も確認しておきたい。……うわっ)
帽子の隙間から様子を窺うと、仮面の隙間から氷色の瞳が見えて驚いてしまう。
けど淡い日差しが差し込む廊下に出ると、彼は仮面を剥ぎ取って顔を露わにした。
(薄々感づいてはいたけど、綺麗な人だ。でも同時に、近寄りがたい感じがする)
襟足の長い髪に、無駄のない輪郭、切れ長の瞳と整った鼻梁は文句なく美しい。
けれど長身を包む軍服調の制服と、腰に下げた短鞭、そして凍てつくような表情が、目を奪われた人々を追い払ってしまっていた。
(拍車を掛けているのが、顔にある大きな古傷だ。魔物につけられたのかな)
内外ともに支配者の風格を持っているのに、それが彼の印象に違和感を与えている。
先程の魔法や苛烈な性格を考えると、脅かされる側とは到底思えないのに。
(でもなんで、この人は俺を買ったんだろう。確かに必要なさそうなのに)
彼は貴族らしいし魔力もお金も美貌もあるが、支配欲は一人じゃ満たせない。
だから隷属する為の存在に成り果てた俺で、欲望を満たそうとしているのだろうか。
――けど俺を両手で抱かえる仕草からは、薄汚れた感情を感じ取れずにいる。
(それにこの人、首輪を引かなかったんだよなぁ。そっちの方が楽なのに)
彼は身を屈めて俺がいる檻の中に入り、いつの間にか首輪も外してくれていた。
奴隷として買ったなら自分で歩かせ、見せびらかすのが普通だろうに。
(本当はいい人、なのかな。いや、善人なら競売場になんて顔を出さないか)
悲惨な扱いを受けてしまったから、今は少し優しくされただけで靡いてしまう。
だが判断材料が少なすぎて、彼を信じることも疑うことも現状難しかった。
(確かなのは、俺は買われたということ。なら殺されないように立ち回るしかない)
幸い彼に剥き出しの加虐欲は見えないから、今は従う振りをするのが良いだろう。
心底嫌だと思っていた誑かしの力も、彼を騙すにはきっと有用だ。
(服従でも調教でも受け入れて、お気に入りの座を占領しよう。それが最適解だ)
それまでは多少の性的奉仕も身の回りの世話も、……痛みにも耐えようと思う。
けれどその決意が続いたのは、彼の部屋に入る直前までだった。
怯んだ競売人が手早く売買を締めようとするが、遮ったのは俺を売った青年だった。
吊り上がる値札を見て上機嫌に笑っていたのに、今は警戒心を露わにしている。
「何故お前が水を差す、ヴァントス。最高値を提示したが、まだ足りないのか」
「違ぇ、テメェが淫魔なんざを買う理由が分かんねぇんだよ。必要ないだろ」
仮面越しでも相手を認識できる確執があるのか、ヴァントスは敵意を露わにする。
だが買い手の青年はその威嚇を鼻で笑い、持っていた値札を破り捨てた。
「勘違いしているようだが、私が欲しいのは弱く従順な魔物だ。君とは反対にな」
「成程、そういう性癖か。でもどうすっかな、このまま終わらせるのは勿体ねぇ」
買い手の青年は教卓に溢れる程の金貨を渡し、競売人から鍵を受け取ろうとする。
しかしそれはヴァントスに遮られ、張り詰めた空気の中で睨み合いへと発展した。
「金が欲しいなら、まだ積むが? 幾ら欲しいのか言ってみろ」
「違ぇよ、この状況を楽しんでんだ。テメェが下手に出る機会なんてねぇからな」
金貨を挟んで青年たちは一触即発の空気を纏い、周囲の客も好奇の色を隠さない。
だが今まで強い感情を見せなかった買い手側の青年が、不意に声を低くした。
「まともな交渉をする気はないということか。ならば、話すだけ時間の無駄だな」
「っ、服従魔法か! クソ、周りも巻き添えかよ!?」
買い手の青年が放出する魔力によって金貨が震え、教卓や椅子が軋んだ音を立てる。
身の危険を察知した周囲の生徒たちは出口に殺到するが、……間に合わなかった。
「この競売は非認可だから、教師に告げ口される心配がない。故に加減も不要だ」
買い手の青年は腰につけた鞘から短鞭を取り、自身の手に叩きつけて打ち鳴らす。
すると漂っていた魔力が重圧を持ち、誰も彼もが膝をついた。
「《這いつくばれ》、そして《立ち上がるな》。誰も、私の邪魔をするな」
当然至近距離にいた俺も例外ではなく、魔力に耐え切れない意識が薄れていく。
けど他の人と違うのは恐怖ではなく、圧倒的な力の差に下腹部が疼いていること。
(こんな怖い人に、俺は飼われるのか。嫌だ、でも淫魔の本能に囚われて動けない)
感じたことのない快感が下腹部から全身へと広がり、吐息まで熱を持ち始めた。
甘い倦怠感を逃そうと身を捩るが、過大な魔力に酔った体は敏感になる一方で。
(……近づいてくる足音。鍵がまわされる音が聞こえても、俺は指一つ動かせない)
檻の中に入ってきた青年が、抵抗の意思も体の自由も失った俺を抱き上げる。
その刺激にすら反応してしまうが、彼は構わず上着で俺を包み込んだ。
「金貨は好きに拾い集めろ、金額分以上はあるはずだ。我々は失礼させて頂く」
倒れ伏す生徒たちを長い足で跨ぎ、俺を抱えた青年は薄暗い競売場を後にする。
一瞬周囲の視線が向けられた気がしたが、それも被せられた帽子で遮られた。
(周りの様子を見るのは怖い、けどこの人も顔も確認しておきたい。……うわっ)
帽子の隙間から様子を窺うと、仮面の隙間から氷色の瞳が見えて驚いてしまう。
けど淡い日差しが差し込む廊下に出ると、彼は仮面を剥ぎ取って顔を露わにした。
(薄々感づいてはいたけど、綺麗な人だ。でも同時に、近寄りがたい感じがする)
襟足の長い髪に、無駄のない輪郭、切れ長の瞳と整った鼻梁は文句なく美しい。
けれど長身を包む軍服調の制服と、腰に下げた短鞭、そして凍てつくような表情が、目を奪われた人々を追い払ってしまっていた。
(拍車を掛けているのが、顔にある大きな古傷だ。魔物につけられたのかな)
内外ともに支配者の風格を持っているのに、それが彼の印象に違和感を与えている。
先程の魔法や苛烈な性格を考えると、脅かされる側とは到底思えないのに。
(でもなんで、この人は俺を買ったんだろう。確かに必要なさそうなのに)
彼は貴族らしいし魔力もお金も美貌もあるが、支配欲は一人じゃ満たせない。
だから隷属する為の存在に成り果てた俺で、欲望を満たそうとしているのだろうか。
――けど俺を両手で抱かえる仕草からは、薄汚れた感情を感じ取れずにいる。
(それにこの人、首輪を引かなかったんだよなぁ。そっちの方が楽なのに)
彼は身を屈めて俺がいる檻の中に入り、いつの間にか首輪も外してくれていた。
奴隷として買ったなら自分で歩かせ、見せびらかすのが普通だろうに。
(本当はいい人、なのかな。いや、善人なら競売場になんて顔を出さないか)
悲惨な扱いを受けてしまったから、今は少し優しくされただけで靡いてしまう。
だが判断材料が少なすぎて、彼を信じることも疑うことも現状難しかった。
(確かなのは、俺は買われたということ。なら殺されないように立ち回るしかない)
幸い彼に剥き出しの加虐欲は見えないから、今は従う振りをするのが良いだろう。
心底嫌だと思っていた誑かしの力も、彼を騙すにはきっと有用だ。
(服従でも調教でも受け入れて、お気に入りの座を占領しよう。それが最適解だ)
それまでは多少の性的奉仕も身の回りの世話も、……痛みにも耐えようと思う。
けれどその決意が続いたのは、彼の部屋に入る直前までだった。
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