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5.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師に甘やかされて困惑する
5-5.売られる為に召喚された後天性サキュバスの俺は、魔物嫌いな溺愛調教師に甘やかされて困惑する
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ディコラルタさんが正論で詰め寄り、カリタスは反論する事ができない。
大人しく耳を傾け、項垂れながら謝罪の言葉を口にするしかなかった。
しかし微妙に論点がずれており、更にディコラルタさんの怒りが燃え広がっていく。
「すまない、私の自己管理が甘かった。今後は病を軽く見積もらないようにする」
「病気になった事を責めてるんじゃなくて、連絡寄越しなさいって言ってるの!」
多分カリタスが無理しているのを、何度も目の当たりにしているんだろう。
付き合いの長い彼には強がりもお見通しで、尚更心配が募るのかもしれない。
だから俺もカリタスを庇うのをやめて、次回の為の交渉を持ち掛けた。
「ディコラルタさん、連絡って俺でも出来る方法ない? 魔法は使えないんだけど」
「それなら手紙の魔道具があるわ。うん、アナタに任せた方がいい気がしてきた」
するとディコラルタさんは怒気を鎮め、鞄から魔道具を取り出した。
一件古風な封筒に見えるが、閉じると宛先へ飛んでいくらしい。
「……随分信頼を失ってしまったようだな、私は」
「元から怪しかったわよ。一人なら自己責任だし、うるさく言わなかったけれど」
魔道具を受け渡しする俺達を見ながら、カリタスが気落ちしたように呟く。
だがディコラルタさんはそれを一蹴し、立場を弁えろと暗に告げていた。
「リベラもすまない。君の身を危険に晒してしまった、守るのが契約だというのに」
「それもあるけど、カリタスが心配なんだよ。こんな弱ってる姿、初めて見たから」
カリタスには逆恨みする者と同じくらい、変に惚れ込んでいる者も存在する。
普段は大人しいが、弱った時を狙う不届き者だって隠れてるかもしれない。
だからもっと危機感を持ってほしいのに、彼は自身を粗末に扱い続けていた。
「そ、そんな顔をしないでくれリベラ。分かった、今後病を放置しないと誓うから」
「身に染みたなら、もう私の役目は終わりね。クピド、急患だから引き継ぐわよ」
守る力がないのが悔しくて涙目になる俺に、カリタスは目に見えて狼狽する。
だがその様子にディコラルタさんは満足気に頷き、保健室の扉を叩いていた。
そして相変わらず無関心な校医が現れ、今度は呆れ返った声を上げる。
「あれ、病人がいたの? 賑やかだったから、じゃれてるだけだと思ってたのに」
「アンタはもうちょっと、気を配れないの? 仮にも学校を預かる身なんでしょ」
けれど大して気にした様子も見せず、クピド先生は既に診療の準備を始めていた。
案外ディコラルタさんは、周囲に振り回されるタイプなのかもしれない。
予想通りカリタスの熱病は、度重なる心労から来るものと診断された。
解熱剤や栄養剤を貰った後、俺は部屋に戻って主人を寝台に押し込める。
「でも顔色、良くなってきたね。薬も飲んでご飯も食べたし、もう大丈夫かな」
「……何から何まですまない。本来は、私がリベラを支える立場なのに」
布団の隙間から顔を出すカリタスは、申し訳なさそうに眉を下げていた。
けど彼を世話できる機会なんてないから、勝手に俺は張り切っている。
「いつも大切にしてくれてるから、少しでも返したいんだ。ご機嫌取りも含めてね」
「それでも私を、弱き人として接してくれる者は僅かだ」
冷たい水に浸した手を気に入ったのか、カリタスが甘えるようにすり寄ってくる。
いつもより子供っぽい仕草が可愛くて、俺は両手で彼の頬を包み込んだ。
「ディコラルタさんとかもそうだよね。カリタスを叱ってくれる、数少ない人だし」
「アイツは私のことを愚かな人間だとは思っているが、弱いとは思っていない」
カリタスは俺の手に頬擦りをしながら、ゆっくりと瞼を下ろしていく。
精神的にも弱っているのか、胸の内が次々と零れ落ちていた。
「私は未熟な部分が多いのに、力のみで強者と認識されている。全くの誤認なのに」
「俺も、カリタスは支配側だと思ってるよ。けどそれ以外の面も知ってるだけ」
絶対的な魔力や武力、外見の美しさも相まって、カリタスは近づきがたい存在だ。
しかし一度でも彼の内面に触れてしまえば、隠された情の方にこそ狂わされる。
「一生一緒にいても、多分全部は分からない。けど今はカリタスの手元にいたいよ」
彼の傍にいると絆されて、余計な事まで口にしてしまう。
ずっと一緒にいる訳でもないのに、無責任極まりない。
「リベラ「ごめん、喋り過ぎた。従魔が考えてることだから、深く考えないで」」
俺は無理矢理会話を断ち切るが、カリタスは熱の籠った瞳を向けて来る。
彼の口角は弧を描き、分かりやすく上機嫌なのが窺えた。
「分かった、大切に抱え持っているだけにしよう。大事にする」
「そんな大層な物じゃないってば、早く忘れてよ」
柔らかい空気に耐えられなくなって、俺は誤魔化すように就寝を促す。
だがそれすら嬉しそうに受け止められ、更に居た堪れなくなってしまった。
「嫌だ。私の物だ、絶対に誰にも渡さない」
熱に侵されたカリタスは、普段なら想像できないほど純真な姿を晒している。
その姿は後天性サキュバスなんかより、ずっと魔性の魅力に溢れていた。
大人しく耳を傾け、項垂れながら謝罪の言葉を口にするしかなかった。
しかし微妙に論点がずれており、更にディコラルタさんの怒りが燃え広がっていく。
「すまない、私の自己管理が甘かった。今後は病を軽く見積もらないようにする」
「病気になった事を責めてるんじゃなくて、連絡寄越しなさいって言ってるの!」
多分カリタスが無理しているのを、何度も目の当たりにしているんだろう。
付き合いの長い彼には強がりもお見通しで、尚更心配が募るのかもしれない。
だから俺もカリタスを庇うのをやめて、次回の為の交渉を持ち掛けた。
「ディコラルタさん、連絡って俺でも出来る方法ない? 魔法は使えないんだけど」
「それなら手紙の魔道具があるわ。うん、アナタに任せた方がいい気がしてきた」
するとディコラルタさんは怒気を鎮め、鞄から魔道具を取り出した。
一件古風な封筒に見えるが、閉じると宛先へ飛んでいくらしい。
「……随分信頼を失ってしまったようだな、私は」
「元から怪しかったわよ。一人なら自己責任だし、うるさく言わなかったけれど」
魔道具を受け渡しする俺達を見ながら、カリタスが気落ちしたように呟く。
だがディコラルタさんはそれを一蹴し、立場を弁えろと暗に告げていた。
「リベラもすまない。君の身を危険に晒してしまった、守るのが契約だというのに」
「それもあるけど、カリタスが心配なんだよ。こんな弱ってる姿、初めて見たから」
カリタスには逆恨みする者と同じくらい、変に惚れ込んでいる者も存在する。
普段は大人しいが、弱った時を狙う不届き者だって隠れてるかもしれない。
だからもっと危機感を持ってほしいのに、彼は自身を粗末に扱い続けていた。
「そ、そんな顔をしないでくれリベラ。分かった、今後病を放置しないと誓うから」
「身に染みたなら、もう私の役目は終わりね。クピド、急患だから引き継ぐわよ」
守る力がないのが悔しくて涙目になる俺に、カリタスは目に見えて狼狽する。
だがその様子にディコラルタさんは満足気に頷き、保健室の扉を叩いていた。
そして相変わらず無関心な校医が現れ、今度は呆れ返った声を上げる。
「あれ、病人がいたの? 賑やかだったから、じゃれてるだけだと思ってたのに」
「アンタはもうちょっと、気を配れないの? 仮にも学校を預かる身なんでしょ」
けれど大して気にした様子も見せず、クピド先生は既に診療の準備を始めていた。
案外ディコラルタさんは、周囲に振り回されるタイプなのかもしれない。
予想通りカリタスの熱病は、度重なる心労から来るものと診断された。
解熱剤や栄養剤を貰った後、俺は部屋に戻って主人を寝台に押し込める。
「でも顔色、良くなってきたね。薬も飲んでご飯も食べたし、もう大丈夫かな」
「……何から何まですまない。本来は、私がリベラを支える立場なのに」
布団の隙間から顔を出すカリタスは、申し訳なさそうに眉を下げていた。
けど彼を世話できる機会なんてないから、勝手に俺は張り切っている。
「いつも大切にしてくれてるから、少しでも返したいんだ。ご機嫌取りも含めてね」
「それでも私を、弱き人として接してくれる者は僅かだ」
冷たい水に浸した手を気に入ったのか、カリタスが甘えるようにすり寄ってくる。
いつもより子供っぽい仕草が可愛くて、俺は両手で彼の頬を包み込んだ。
「ディコラルタさんとかもそうだよね。カリタスを叱ってくれる、数少ない人だし」
「アイツは私のことを愚かな人間だとは思っているが、弱いとは思っていない」
カリタスは俺の手に頬擦りをしながら、ゆっくりと瞼を下ろしていく。
精神的にも弱っているのか、胸の内が次々と零れ落ちていた。
「私は未熟な部分が多いのに、力のみで強者と認識されている。全くの誤認なのに」
「俺も、カリタスは支配側だと思ってるよ。けどそれ以外の面も知ってるだけ」
絶対的な魔力や武力、外見の美しさも相まって、カリタスは近づきがたい存在だ。
しかし一度でも彼の内面に触れてしまえば、隠された情の方にこそ狂わされる。
「一生一緒にいても、多分全部は分からない。けど今はカリタスの手元にいたいよ」
彼の傍にいると絆されて、余計な事まで口にしてしまう。
ずっと一緒にいる訳でもないのに、無責任極まりない。
「リベラ「ごめん、喋り過ぎた。従魔が考えてることだから、深く考えないで」」
俺は無理矢理会話を断ち切るが、カリタスは熱の籠った瞳を向けて来る。
彼の口角は弧を描き、分かりやすく上機嫌なのが窺えた。
「分かった、大切に抱え持っているだけにしよう。大事にする」
「そんな大層な物じゃないってば、早く忘れてよ」
柔らかい空気に耐えられなくなって、俺は誤魔化すように就寝を促す。
だがそれすら嬉しそうに受け止められ、更に居た堪れなくなってしまった。
「嫌だ。私の物だ、絶対に誰にも渡さない」
熱に侵されたカリタスは、普段なら想像できないほど純真な姿を晒している。
その姿は後天性サキュバスなんかより、ずっと魔性の魅力に溢れていた。
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