神の国から逃げた神さまが、こっそり日本の家に住まうことになりました。

羽鶴 舞

文字の大きさ
5 / 22

5.変な少女との出会い

しおりを挟む
 固まったまま、しばらく時間経ったが、やっと脳が再起動してくれたようだ。

「何してるんですか!?」

 僕の第一声は、そんな言葉だった。

 そりゃあ、僕の許可もなく、勝手に入るのだから。

「え? あたしは今日から、ここに住むんだよ?」

 のほほんとした笑みを浮かべた少女さんが、なぜか小首を傾げていた。

 何言ってんだ! こいつは。
 随分、図々しくありませんかね。だが、相手は少女だ。
 大の大人が少女相手に、キレるのは大人げない。

「テレビを消してください。大きな音が出ていますので、近所迷惑です。あと、あなたはどこから来たんですか? それとどうしてここに住むことになったんですか? ああ、それと……」

「ちょっと待って! いっぺんにそんな質問されても、あたし困るわ」

 右手の平を大きく広げ、僕にストップ! というような仕草と同時に、左手は頭にあてた。
 そんな姿をした少女はカッコよく決めポーズで、頭を横に振ってドヤァ! というような態度だった。

 めちゃカチンとしたが、冷静に、冷静に……。

 まずは、目の前の少女は何者なのか、知るべきだろう。

 だが、僕の注意にこたえてくれたのか、律義にテレビを消してくれた。
 ただ、それだけである。

「えっとね、あたし、神の国から来た神さまなんだよっ!」

 そんなことを耳に入った僕は、頭大丈夫か? こいつ! と思ってしまった。

 僕の部屋を荒らしやがったし、近所迷惑をした上に、自分のことを神様だと? 

 これは、トラップなのかもしれない。
 見知らぬ子どもをわざと自分の部屋に住ませておいて、しばらく時間経つと子どもの両親がやってきて監禁罪として訴えてやる! という新たな詐欺だろう。

 そんな詐欺に遭う前に、警察を呼び込む方が安心だと感じた僕はポケットからスマホを取り出し、警察に通報しようとしたが……。

 目の前にいる少女は、感付いたのか必死な形相になる。ガスコンロの火の消し忘れで慌てて止めに行くかように、ガシッと僕にしがみついた。

「通報やめてっ! あたしの居場所がなくなっちゃう! ここしかないんだっ!」

 はぁ? 勝手に住ませて、ここしかないだとっ!

 どうしても泣きわめくので、仕方なく話題を変えようと少女に、
「君は、どこから来たの」と尋ねた。

「上だよ!」

 上? 見上げると、部屋の天井だけど? 天井に何かあるの?

「違うよ! 空から! すんごい高い空から来たんだっ」

 人差し指を必死に、上を差す少女さん。

 ……だめだ。理解不能に陥ってしまいそうだ。ふう……。

 とりあえず、心を落ち着かせた僕は続いて質問した。

「じゃあ、空って何の空?」

「さっき、言ったでしょ。神の国から来たって」

 頭が痛くなりそうだ。
 確たるものがないのに、安易に信じることができない。
 なので──、

「じゃあ、神様だということを見せてください」

 そう言うと、少女は金色輝く扇子を手にもって何やら形作ったように、踊り始めた。

 神社でよく見かける巫女が、神楽殿の上で神楽の舞をするのと同じだ。金色に輝く扇子が円を描くように、振る舞いゆっくりとなびく。

 凄いきれいな踊りで、思わず見とれてしまう。

 少女が踊り終わると、何もないところから、光り輝きはじめ、2体の動物が現れた。

「コンコン!」

「ワンワン!」

 なんだっ! これはっ!

 眺めると、口に何か巻物をくわえている狐のような動物と、
 手鞠てまりで転がしている獅子のようで犬のような動物だった。
 
 これって、お稲荷様と狛犬様じゃないか!
 本当に、神様だったのか!

「ねっ! 本当に、あたしは神さまなんだよっ」

 驚きのあまりに、またもや固まってしまうのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...