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エピローグ
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――それから一週間あまり。
放課後、ぼくは一人きりであの公園にやって来た。ミズキちゃんに「一緒に遊ぼ」と声をかけられたけど、用事があるからと断って。
ベンチにすわって足をぶらぶらしていると、茂みの方から草をふむ足音が聞こえてきた。ぼくはパッと顔をあげ、音のした方へ振り向く。
「……っ」
「あ……」
思いがけない人物と目が合って、心臓が飛びはねる。
そこにいたのは、あの日、茂みの中でおにいさんと一緒にいるところを見られてしまった男の子だった。おにいさんにキスをされ、ビックリして逃げていった男の子……。
なんでここに、と思ったけど、もともと普段からよく遊びにくるのだろう。違う区域の公園にわざわざ来ているぼくの方が、ここでは見慣れない顔なのだ。
(また、何か言われるかな……どうしよう……)
何か声をかけるべきなのか、それとも知らないふりをした方がいいのか、どうすればよいのかわからず、ぼくは凍りついたように動けなくなる。それは男の子も同じみたいで、お互い無言の気まずい時間が流れた。
あの時は気の強そうな子だなと思ったけど、今の彼はなんだか様子がおかしかった。顔を赤くして、そわそわと落ちつきなく目を泳がせる。何か言いたげに口をパクパクするのに、言葉は何も出てこない。また「ヘンタイ」とか言ってくるかと思ったのにそんな様子もなくて、ぼくの方もますますどうしていいかわからなくなる。
「あ、あの……」
思いきってぼくから口を開くと、男の子は大げさにギクッと体を強ばらせた。そして、ぼくが続きを言う前にくるりと背を向け、そのままものすごい速さで走り去ってしまった。
(どうしたんだろ……)
小さくなっていく後ろ姿をぽかんと見つめていると、いきなり目の前がまっくらになった。同時に、ふわっと甘い香りが鼻をくすぐる。
「だーれだ」
後ろから声がした。目もとをおおう少しひんやりとした手の体温にドギマギしながら、ぼくは「お、おにいさん……」と小声で答えた。ふっと視界がひらけ、すぐに光がもどってくる。振り返ると、そこには優しい笑みを浮かべたおにいさんがいた。
「あたり」
ぼくはあいさつをするのも忘れて、おにいさんの顔をぽーっと見上げた。
「あれから、あの女の子とはチューできた?」
おにいさんがいたずらっぽく訊いてくる。その顔に見とれていたぼくは、一拍遅れてぶんぶんと首を横にふった。
「そう……じゃあ……」
かがんでベンチの背にひじをついたおにいさんが、そっとぼくの耳もとに唇をよせる。
「また、おにいさんと練習する?」
耳に吹き込まれる甘い吐息にゾクゾクしながら、ぼくはこくりとうなずいた。
〈おわり〉
放課後、ぼくは一人きりであの公園にやって来た。ミズキちゃんに「一緒に遊ぼ」と声をかけられたけど、用事があるからと断って。
ベンチにすわって足をぶらぶらしていると、茂みの方から草をふむ足音が聞こえてきた。ぼくはパッと顔をあげ、音のした方へ振り向く。
「……っ」
「あ……」
思いがけない人物と目が合って、心臓が飛びはねる。
そこにいたのは、あの日、茂みの中でおにいさんと一緒にいるところを見られてしまった男の子だった。おにいさんにキスをされ、ビックリして逃げていった男の子……。
なんでここに、と思ったけど、もともと普段からよく遊びにくるのだろう。違う区域の公園にわざわざ来ているぼくの方が、ここでは見慣れない顔なのだ。
(また、何か言われるかな……どうしよう……)
何か声をかけるべきなのか、それとも知らないふりをした方がいいのか、どうすればよいのかわからず、ぼくは凍りついたように動けなくなる。それは男の子も同じみたいで、お互い無言の気まずい時間が流れた。
あの時は気の強そうな子だなと思ったけど、今の彼はなんだか様子がおかしかった。顔を赤くして、そわそわと落ちつきなく目を泳がせる。何か言いたげに口をパクパクするのに、言葉は何も出てこない。また「ヘンタイ」とか言ってくるかと思ったのにそんな様子もなくて、ぼくの方もますますどうしていいかわからなくなる。
「あ、あの……」
思いきってぼくから口を開くと、男の子は大げさにギクッと体を強ばらせた。そして、ぼくが続きを言う前にくるりと背を向け、そのままものすごい速さで走り去ってしまった。
(どうしたんだろ……)
小さくなっていく後ろ姿をぽかんと見つめていると、いきなり目の前がまっくらになった。同時に、ふわっと甘い香りが鼻をくすぐる。
「だーれだ」
後ろから声がした。目もとをおおう少しひんやりとした手の体温にドギマギしながら、ぼくは「お、おにいさん……」と小声で答えた。ふっと視界がひらけ、すぐに光がもどってくる。振り返ると、そこには優しい笑みを浮かべたおにいさんがいた。
「あたり」
ぼくはあいさつをするのも忘れて、おにいさんの顔をぽーっと見上げた。
「あれから、あの女の子とはチューできた?」
おにいさんがいたずらっぽく訊いてくる。その顔に見とれていたぼくは、一拍遅れてぶんぶんと首を横にふった。
「そう……じゃあ……」
かがんでベンチの背にひじをついたおにいさんが、そっとぼくの耳もとに唇をよせる。
「また、おにいさんと練習する?」
耳に吹き込まれる甘い吐息にゾクゾクしながら、ぼくはこくりとうなずいた。
〈おわり〉
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めっっっちゃ好きぃぃい!!❤❤❤
投稿ありがとうございます🙇
こちらこそコメントありがとうございます!
ご期待に添えるかわかりませんが、続きも頑張ります!