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2話
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「今日から昼休みはパージュと過ごす。お前は今後一切、サロンへの立ち入りは禁止だ」
学食の日替わりメニューの最後の一口を掬い上げた瞬間。突然乱入してきたレオンハルト様が声高にそう宣言された。
もちろん彼の人の横には、相変わらず僕を見下したような笑みを浮かべるパージュがベッタリと張り付いている。
返事をしようにも、ちょっと待ってほしい。あと一口で終わるから。
途中で止まっていたスプーンを口に運び、レオンハルト様の顔を見上げながらゆっくり味わい咀嚼する。
ほんと、顔だけはいいんだよな。この人。顔だけは。性格はアレなくせして。
子供の頃から変わりない、サラサラした白金の髪。切れ長で、濃いサファイアブルーの眼を縁取る白金の睫毛は僕のとは比べ物にならないくらい多いし長いし。スラリとまっすぐ通った鼻筋と、薄い唇のせいで余計酷薄そうに見える顔は笑うと案外可愛いのも知っている。
ただ、僕に笑顔を向けてくれていたのは遠い昔の話。今じゃニコリともしないから、性格悪そうとしか思えない。
流石というか。王子様然とした佇まいや立ち居振る舞いは周囲の人たちが息を呑むくらいに美しいし、それに関しては僕も同意見。性格はともかくとして。
無駄に思えるほどに手足も長く、剣術も得意だからかそこそこに体格も良くて、それこそ御伽話に出てきそうな理想的な王子様ではある。だけど、何度も言うが性格が残念すぎる。
……そもそも『今日から』って言い分からしておかしいのになんで気づかないんだろ。パージュが編入してきてからのここ半年、あんたと昼休みを過ごした記憶がないんですけど。昼休み以外も例外なくもちろんのこと。
いつまでも返事をしない僕に焦れたように舌を打ったレオンハルト様へと咎める視線を向ければ、一瞬で気まずそうな表情に変わる。
人の食事を邪魔しないってのはマナーだし、こんな開けた場所で王族が舌打ちするな。
たまにこうやってやらかすのがたまにキズってところだよな。
……ちなみに僕の口が悪いのは兄様の影響だけど、人前では慎んでいるしそれに関しては問題ないと思ってる。
だって、この扱いに文句くらいは言いたくなるでしょ。
モグモグゴクンと先に食事を終わらせ、後ろに椅子を引いてから空の食器がのった配膳プレートに手をかけた。
「はあ……、そうですか。わかりました。どうぞお好きに。では、僕はこれで」
あからさまな敵視の視線を第一王子を取り巻く面々から受け、ついでに聞き耳を立ててたらしい一般生徒から嘲笑されて、それを平気で受け流せるほど僕の心は強くない。
義務だからと、一応続けている王妃教育の賜物か。表情と声と態度だけは取り繕えるのがなによりだ。
明らかに笑いものにされてるこの空間からさっさと立ち去ろうと、一礼ののちまずは食器返却口へと向かおうとする。
せめてもの矜持で姿勢を正して一歩を踏み出した僕に背中に、どこか慌てたような声がかけられた。
「ま、待てっ!私の婚約者であるお前が、サロンへの立ち入りを禁じられたんだぞ!?なのに、それで終わりか??」
自分で言っといて、なに言ってんだこいつ。くらい思っても許される気がする。実際口に出したら不敬罪でしょっ引かれそうだけど。
内心の不快感は押し殺し、わずかに笑みを浮かべて振り返る。
「ええ。特に不便はありませんから。では、失礼いたします」
珍しいまでにポッカーンとした間抜けヅラを晒しているレオンハルト様へともう一度最敬礼の形を取り、同じく呆気に取られてるらしいパージュ含む側近たちを残して今度こそさっさとその場を離れた。
ていうか、最後に王族専用サロンに招かれたのも半年以上前のことだ。今さら不便もなにもないと思うんだけど。
そんなに僕に嫌がらせをしたいのか……と考えるほどに気分が落ち込みはしたものの、ここまでくればもう。婚約の白紙撤回を求めたとして、色良い返事がもらえるんじゃないかと内心期待が高まっていた。
学食の日替わりメニューの最後の一口を掬い上げた瞬間。突然乱入してきたレオンハルト様が声高にそう宣言された。
もちろん彼の人の横には、相変わらず僕を見下したような笑みを浮かべるパージュがベッタリと張り付いている。
返事をしようにも、ちょっと待ってほしい。あと一口で終わるから。
途中で止まっていたスプーンを口に運び、レオンハルト様の顔を見上げながらゆっくり味わい咀嚼する。
ほんと、顔だけはいいんだよな。この人。顔だけは。性格はアレなくせして。
子供の頃から変わりない、サラサラした白金の髪。切れ長で、濃いサファイアブルーの眼を縁取る白金の睫毛は僕のとは比べ物にならないくらい多いし長いし。スラリとまっすぐ通った鼻筋と、薄い唇のせいで余計酷薄そうに見える顔は笑うと案外可愛いのも知っている。
ただ、僕に笑顔を向けてくれていたのは遠い昔の話。今じゃニコリともしないから、性格悪そうとしか思えない。
流石というか。王子様然とした佇まいや立ち居振る舞いは周囲の人たちが息を呑むくらいに美しいし、それに関しては僕も同意見。性格はともかくとして。
無駄に思えるほどに手足も長く、剣術も得意だからかそこそこに体格も良くて、それこそ御伽話に出てきそうな理想的な王子様ではある。だけど、何度も言うが性格が残念すぎる。
……そもそも『今日から』って言い分からしておかしいのになんで気づかないんだろ。パージュが編入してきてからのここ半年、あんたと昼休みを過ごした記憶がないんですけど。昼休み以外も例外なくもちろんのこと。
いつまでも返事をしない僕に焦れたように舌を打ったレオンハルト様へと咎める視線を向ければ、一瞬で気まずそうな表情に変わる。
人の食事を邪魔しないってのはマナーだし、こんな開けた場所で王族が舌打ちするな。
たまにこうやってやらかすのがたまにキズってところだよな。
……ちなみに僕の口が悪いのは兄様の影響だけど、人前では慎んでいるしそれに関しては問題ないと思ってる。
だって、この扱いに文句くらいは言いたくなるでしょ。
モグモグゴクンと先に食事を終わらせ、後ろに椅子を引いてから空の食器がのった配膳プレートに手をかけた。
「はあ……、そうですか。わかりました。どうぞお好きに。では、僕はこれで」
あからさまな敵視の視線を第一王子を取り巻く面々から受け、ついでに聞き耳を立ててたらしい一般生徒から嘲笑されて、それを平気で受け流せるほど僕の心は強くない。
義務だからと、一応続けている王妃教育の賜物か。表情と声と態度だけは取り繕えるのがなによりだ。
明らかに笑いものにされてるこの空間からさっさと立ち去ろうと、一礼ののちまずは食器返却口へと向かおうとする。
せめてもの矜持で姿勢を正して一歩を踏み出した僕に背中に、どこか慌てたような声がかけられた。
「ま、待てっ!私の婚約者であるお前が、サロンへの立ち入りを禁じられたんだぞ!?なのに、それで終わりか??」
自分で言っといて、なに言ってんだこいつ。くらい思っても許される気がする。実際口に出したら不敬罪でしょっ引かれそうだけど。
内心の不快感は押し殺し、わずかに笑みを浮かべて振り返る。
「ええ。特に不便はありませんから。では、失礼いたします」
珍しいまでにポッカーンとした間抜けヅラを晒しているレオンハルト様へともう一度最敬礼の形を取り、同じく呆気に取られてるらしいパージュ含む側近たちを残して今度こそさっさとその場を離れた。
ていうか、最後に王族専用サロンに招かれたのも半年以上前のことだ。今さら不便もなにもないと思うんだけど。
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