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第2章 おつぱいと粗品
奈良坂
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その後、舞奈たちは真神邸で何事もなく朝を迎えた。
朝食はチーズをたっぷり乗せたトーストに、サラダとベーコンエッグだ。
調理中に舞奈が尻をさわったので、少し焦げてしまった。
そして、4人揃って家を出た。
その時、向かいの家のフェンスの陰に人影が隠れた。
早朝から様子を覗っていたらしい。
隠しようもない悪臭に、舞奈は思わず眉をひそめる。
すると側の明日香は殺し屋のような冷酷な表情で睨みつけていた。
明日香はヤニの臭いが嫌いだ。
舞奈はふと思った。
明日香をひとりで家の前に待たせておいたら、このストーカー騒ぎは終息するのではなかろうか。血まみれの最悪な結末とともに。
それはともかく。
生真面目な明日香と世話好きな園香のおかげで、登校時間には余裕がある。
今日はこちらも4人いるし、せっかくだから大通りを脇にそれて三剣邸の前を通って登校しようという話になった。
「あーあ、パンをくわえて走ってきた悟様と、ぶつかっったりとかしないかなー」
「いや、それはない」
チャビーの寝言を斬って捨てる。
「役割が逆だろ。っていうか、おまえの背丈じゃ蹴っとばされるのがオチだ」
「マイ、ひどーい!」
「まあ、まあ。チャビーちゃんも、そのうち大きくなるよ」
「それに、朝からパンって家には見えないわね」
「じゃ、ご飯をかきこみながらでも……」
「ぶちまけるのか? きったねぇ絵面だな」
そんなバカな話をしながら歩く中、
「あ、クソガキ。何してやがる」
舞奈からするとイラつく声に、だが園香は笑みを見せる。
仕方なく視線をめぐらせると、門からクセ毛の学生服が姿をあらわした。
竹刀の袋に学生カバンをひっかけた三剣刀也だ。
「おはようございます」
明日香は社交辞令を返す。
「ございますー」
チャビーもてきとうに挨拶しつつ門の中を覗きこむ。
だが悟の姿が見当たらないので不満げに口を尖らせる。
園香は舞奈と刀也の顔を交互に見やる。
……そして寂しげにうつむいた。
刀也に続いて、フレームレスの眼鏡の少女が姿をあらわしたから。
うつむき気味で、なで肩で線も細く、胸も控えめで、尻は大振りで可愛い。
着こんでいるのは刀也と同じ学校の高等部指定のセーラー服。
執行人【鹿】こと、奈良坂であった。
「粗品のくせに、朝っぱらから彼女とデートか? こりゃまた充実した人生だな」
舞奈は少女から刀也へ視線を移し、マヌケ面を見上げて睨みつける。
園香の気持ちをないがしろにされたような気がしたからだ。
もちろん、引っこみ思案な園香は刀也に好意を伝えてなどいないだろう。
舞奈もそれを望んでなどいない。
それでも園香の前で、彼が他の女性を連れ歩く状況は気にいらない。だが、
「あ、あの、違うんです、そういうんじゃ……。その、ごめんなさい」
意外にも当の奈良坂が、うわずった声で否定した。
彼女が刀也に向ける視線は、先日に支部で同僚に絡まれていたときと似ている。
つまり、迷惑そうだった。
(ああ、そういうことか)
舞奈は何となく事情を察した。
気弱な奈良坂が、身勝手な刀也に無理やり付き合わされているのだ。
ひょっとしたら、奈良坂が執行人だからかもしれない。
つまり、付き合っているわけではないのだろう。
だが不愉快なのは変わらない。
舞奈は刀也を睨みつける。
一方、奈良坂は手首にはめられた地味な色のブレスレットを無意識に弄る。
眼鏡の奥の垂れぎみな瞳に、怯えがにじむ。
彼女は気弱なだけでなく、奥手な園香と比べても遜色ない人見知りらしい。
小動物じみたおどおどした仕草に、毒気を抜かれた舞奈は口ごもる。
「行こうぜ、奈良坂」
刀也が強引に奈良坂の手を引いて、去っていった。
「まったく、しょうがない奴だな」
詫びつつ園香を振り返る。
「気にしないで、それより早く行こ」
大人びた優しい少女は気丈に微笑む。
なので舞奈も、
「そういや、今晩はオムライスが食べたいな」
そう言って口元に笑みを浮かべた。園香の両親が帰るのは明日だ。
「あ、ありがとう! マイちゃん」
園香もニッコリ笑った。
朝食はチーズをたっぷり乗せたトーストに、サラダとベーコンエッグだ。
調理中に舞奈が尻をさわったので、少し焦げてしまった。
そして、4人揃って家を出た。
その時、向かいの家のフェンスの陰に人影が隠れた。
早朝から様子を覗っていたらしい。
隠しようもない悪臭に、舞奈は思わず眉をひそめる。
すると側の明日香は殺し屋のような冷酷な表情で睨みつけていた。
明日香はヤニの臭いが嫌いだ。
舞奈はふと思った。
明日香をひとりで家の前に待たせておいたら、このストーカー騒ぎは終息するのではなかろうか。血まみれの最悪な結末とともに。
それはともかく。
生真面目な明日香と世話好きな園香のおかげで、登校時間には余裕がある。
今日はこちらも4人いるし、せっかくだから大通りを脇にそれて三剣邸の前を通って登校しようという話になった。
「あーあ、パンをくわえて走ってきた悟様と、ぶつかっったりとかしないかなー」
「いや、それはない」
チャビーの寝言を斬って捨てる。
「役割が逆だろ。っていうか、おまえの背丈じゃ蹴っとばされるのがオチだ」
「マイ、ひどーい!」
「まあ、まあ。チャビーちゃんも、そのうち大きくなるよ」
「それに、朝からパンって家には見えないわね」
「じゃ、ご飯をかきこみながらでも……」
「ぶちまけるのか? きったねぇ絵面だな」
そんなバカな話をしながら歩く中、
「あ、クソガキ。何してやがる」
舞奈からするとイラつく声に、だが園香は笑みを見せる。
仕方なく視線をめぐらせると、門からクセ毛の学生服が姿をあらわした。
竹刀の袋に学生カバンをひっかけた三剣刀也だ。
「おはようございます」
明日香は社交辞令を返す。
「ございますー」
チャビーもてきとうに挨拶しつつ門の中を覗きこむ。
だが悟の姿が見当たらないので不満げに口を尖らせる。
園香は舞奈と刀也の顔を交互に見やる。
……そして寂しげにうつむいた。
刀也に続いて、フレームレスの眼鏡の少女が姿をあらわしたから。
うつむき気味で、なで肩で線も細く、胸も控えめで、尻は大振りで可愛い。
着こんでいるのは刀也と同じ学校の高等部指定のセーラー服。
執行人【鹿】こと、奈良坂であった。
「粗品のくせに、朝っぱらから彼女とデートか? こりゃまた充実した人生だな」
舞奈は少女から刀也へ視線を移し、マヌケ面を見上げて睨みつける。
園香の気持ちをないがしろにされたような気がしたからだ。
もちろん、引っこみ思案な園香は刀也に好意を伝えてなどいないだろう。
舞奈もそれを望んでなどいない。
それでも園香の前で、彼が他の女性を連れ歩く状況は気にいらない。だが、
「あ、あの、違うんです、そういうんじゃ……。その、ごめんなさい」
意外にも当の奈良坂が、うわずった声で否定した。
彼女が刀也に向ける視線は、先日に支部で同僚に絡まれていたときと似ている。
つまり、迷惑そうだった。
(ああ、そういうことか)
舞奈は何となく事情を察した。
気弱な奈良坂が、身勝手な刀也に無理やり付き合わされているのだ。
ひょっとしたら、奈良坂が執行人だからかもしれない。
つまり、付き合っているわけではないのだろう。
だが不愉快なのは変わらない。
舞奈は刀也を睨みつける。
一方、奈良坂は手首にはめられた地味な色のブレスレットを無意識に弄る。
眼鏡の奥の垂れぎみな瞳に、怯えがにじむ。
彼女は気弱なだけでなく、奥手な園香と比べても遜色ない人見知りらしい。
小動物じみたおどおどした仕草に、毒気を抜かれた舞奈は口ごもる。
「行こうぜ、奈良坂」
刀也が強引に奈良坂の手を引いて、去っていった。
「まったく、しょうがない奴だな」
詫びつつ園香を振り返る。
「気にしないで、それより早く行こ」
大人びた優しい少女は気丈に微笑む。
なので舞奈も、
「そういや、今晩はオムライスが食べたいな」
そう言って口元に笑みを浮かべた。園香の両親が帰るのは明日だ。
「あ、ありがとう! マイちゃん」
園香もニッコリ笑った。
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