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第16章 つぼみになりたい
戦闘1-1 ~サメvsゾンビ
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合同攻撃部隊によるヴィラン拠点への再攻撃。
一行は歌の力を借りて、拠点を守る強固な結界を破壊することに成功した。
だが直後、一行の視界がまばゆい光に塗りこめられ――
――所変わって新開発区の別の一角。
遠目にはゾンビの群にも見える廃ビルが乱雑に立ち並び、足元にサメの顎のような不気味な影をのばす廃墟の通り。
そんな先ほどと似て異なる死の街の、とある廃ビルのふもとで、
「……どうやら『プリドゥエンの守護珠』を使われたようですね」
モノクロの全身タイツに身を包んだグラマラスな女性が周囲を見回す。
口元が覗く黒いマスクの頭についた、サメの背びれを象った装飾が不安げにゆれる。
ディフェンダーズのヒーローのひとり、シャドウ・ザ・シャークだ。
ひとりごちたのは、希少故に界隈で名だけは知られた魔道具の名称。
強力な【智慧の大門】により対象を転移させることで所有者を守護する。
術の強制力も高く、不意打ちで使われれば抵抗もほぼ不可能。
シャドウ・ザ・シャークが知る限り、構成員の大半を魔道士が占める合同部隊を対処する余地もなく転移させられる唯一の手段だ。
サメ女ヒーローの言葉に、だが返事はない。
「舞奈さん? 楓さん? 小夜子さん?」
周囲を見回しながら呼びかける。
だが近くには舞奈も、楓や小夜子も、【機関】の面子は誰もいない。
「イアソンさん?」
ディフェンダーズの頼れる仲間にも呼びかける。
だが極彩色のタイツを着こんだ屈強なミスター・イアソンの姿もない。
通信機も反応しない。
「……」
どうやら死のように静かな廃墟の一角に、ひとり転移されたらしい。
おそらく皆がバラバラに転移されたのだ。
ふと左腕を見やる。
巻かれた注連縄から【護身神法】を形成する魔力の流れを感じない。
術者であるサチが近くにいないからだ。
げに恐ろしきはプリドゥエンの守護珠。
湧き上がる不安を誤魔化すように、手にしたシャーク・シューターを構える。
シャドウ・ザ・シャークことKAGEは熟達した高等魔術師だ。
最も得手とする生命の創造の他、各種の元素をも自在に操る。
だが公安でもディフェンダーズでも、基本的に単独行動はとらない。
例外は諜報任務のみ。【機関】でいうニュットやソォナムと同じ扱いである。
彼女に直接戦闘への適性がないからだ。
魔術の才に比べて戦闘センスはさほどでもなく、何より戦う覚悟がない。
何故なら彼女の魔術の根底にあるのは恐怖だ。
10年前の、あの恐ろしい事件の記憶から逃れるようにKAGEは魔術を修めた。
そんな彼女の敵との直接戦闘における役割は、あくまで仲間の補佐だ。
だから別れた仲間の位置を探るべく目を閉じて集中し、魔法探知を試みる。
ついでに今いる場所もわかればいいと思った。
なにせ土地勘のまったくない廃墟の一角だ。
目に見えるランドマークが廃屋と廃ビルしかない中、先ほどまでいたヴィラン拠点周辺からどのくらい跳ばされたのか見当もつかない。
幸いにも近くで反応。
術が使われているようだ。
並の魔術師なら見逃してしまう類の、世界に満ちる天然の魔力が賦活される気配。
森羅万象から魔力を借りる呪術師の呪術が使われている。
サチか小夜子、あるいは紅葉かと思って方向を探ろうとして――
「――Weeeeelcooome,my siiister!」
狂ったような叫びに続く、無数のゾンビの長くのびるうめき声。
同時に頭上から、歪に組み合わされた脂虫のバイクが降って来た。
瓦礫を踏みしめ着地したのはクラフター・モービル。
うめく屍肉でできたバイクから、黒いマントをなびかせ少女が降りる。
華奢な身体にまとう、大胆なカットのレオタード。
目元を覆う鮮血色のマスク。
流れるような銀髪の上で、ピエロのような2股のトンガリ帽子がゆれる。即ち――
「――クラフター!」
「Yeeeees! I aaam!」
死霊使いは何処かの子供とは違う完璧な発音で、舞台の上の芝居の如く大仰に叫ぶ。
仮面と同じ色の唇が妖艶に歪む。
「親愛なるシャドウ・ザ・シャーク! 貴女と出会えて光栄ですよ」
「わたしは別に会いたくなかったですが!」
言いつ構えたシャーク・シューターから水弾を放つ。
警告なし。
しかも【急流の雨】を用いた連続射撃。
「それに貴女と姉妹の契りを結んだ覚えもないですよ!」
言うなれば出会い頭の短機関銃の掃射。だが、
「Oops! それは残念!」
クラフターはおどけた素振りで予備動作もなく跳んで避ける。
身体強化のケルト呪術【英雄化】で実現せしめたバッタのような超ジャンプ。
だが【妖精の舞踏】を使う素振りはない。
まるで恐怖に震えながら放たれた弾丸など恐るるに足らずと言うように。
水鉄砲を撃ち尽くしたシャドウ・ザ・シャークは魔術で水を補充する。
即ち【大天使の水の召喚】。
高等魔術における最も初歩の水術は、KAGEにかかれば詠唱もなく一瞬で終わる。
その隙にクラフターは舞うような動作で華麗に着地する。
次いで芝居がかった仕草で片手を宙にかざし、
「Please,Merlin!」
叫ぶとともに指輪のひとつが輝く。
そして次の瞬間、死霊使いの周囲にくわえ煙草の集団が出現した。
即ち【智慧の大門】。
指輪の力で脂虫の群を展開したのだ。
先ほどの戦闘でも派手にばらまいていたが、同じ数を温存していたらしい。
銃こそ手にしていないものの、双眸をヤニで濁らせた不気味で不潔な虫どもは、
「Hey presto,Zombies!」
続けざまに行使された【不死の大呪詛】で屍虫――ゾンビと化す。
いつものクラフターの戦術だ。
クラフターはセオリー通りに【妖精の舞踏】で後退する。
入れ替わりに無数のゾンビどもが、サメ女ヒーローめがけて襲い来る。
シャドウ・ザ・シャークは装填し終えたシャーク・シューターを構えて発砲する。
水の弾丸【急流弾】が喫煙者ゾンビどもの何匹かを射抜く。
次いで【急流の雨】による水弾の掃射が蜂の巣にする。
ゾンビどもは崩れ落ちた仲間を踏みつけながら迫り来る。
先ほどの群に持たせた分で銃が尽きたか、撃ってこないのが幸いか。
だがゾンビ自体の数はほとんど減っていない。
「……やむを得ませんね。かくなる上は!」
サメ女ヒーローは映画映えする慣れた動作でシャーク・シューターを仕舞う。
両の掌を合わせて突き出しながら、大天使ガブリエルを奉ずる呪文を紡ぐ。
すると掌の先に巨大な水の塊が出現して――
「――ハァッ!」
気合とともに、術者の身体より大きな水球が砲弾のように放たれる。
勢いのままゾンビどもを巻きこみながら轢き潰す。
即ち【屠龍撃】。
大天使ガブリエルのイメージから水を創り、球状にして放つ魔術。
楓が多用する【大水球】と同等の術だ。
たかが水と侮るなかれ。熟練した高等魔術師が創造する魔術の水の質量は、その名にかかげた龍の如く、居並ぶ敵を轢き屠る。
それでも所詮は直線状に飛ぶ水球だ。
一直線に轢き潰されたラインから外れたゾンビは怯みもせずに迫りくる。
呪術で操られ、変化させられたゾンビどもに意思はない。
仲間の死を悼む心も、死を恐れる心もない。
だからシャドウ・ザ・シャークは続けざまに、手品のようにシャーク・シューターを再び取り出す。それをクルリと器用に回してステッキに変形させ、
「ヤッ!」
サメの頭を象ったステッキの先を、流れるような動きで群れに突きつける。
今度は先端から凄まじい勢いの放水。
即ち【激流波】。
サメ杖の先から魔法の水が無尽蔵に溢れ出し、奔流と化してゾンビを襲う。
こちらは火炎放射の水版といったところか。だが、
「これは流石に……! Defend it,Wind!」
「ちいっ」
魔術の激流は不自然な挙動でゾンビどもを避け、地を濡らして消えた。
ゾンビどもの周囲の空気が蠢きドーム状の壁と化し、水の勢いを削いだのだ。
即ち【旋風の守護者】。
クラフターはゾンビを操るだけでなく、ケルト呪術全般を高い技術で使いこなす。
ゾンビに任せている最中でも要所で援護をしてくるので厄介だ。
「ならば!」
シャドウ・ザ・シャークはシャーク・シューターを仕舞い、両手にアジを創造する。
即ち【大天使の血肉の召喚】。
そして胸元のペンタクルを用いた疑似呪術【操命弾】で放つ。
2匹のアジはピチピチと回転しながら勢いよく飛んでいく。
こちらの方が手間はかかるが手馴れているぶん威力は高いし、誘導もする。
加えて質量もあるので【旋風の守護者】程度では受け流せない。
さしずめ手製のスマートバレットといったところか。
2匹のアジは狙い違わずゾンビどもの胸に突き刺さる。
さらには上半身を食い破りながら貫通し、後ろのゾンビに喰らいつく。
だが数匹を屠った程度ではゾンビの群は止まらない。
だからシャドウ・ザ・シャークは再度【大天使の血肉の召喚】を行使する。
今度の得物はアジより大きい。
術者の背丈ほどある体長と同じほどある槍のような吻を上顎からのばした大魚。
メカジキである。
それをシャドウ・ザ・シャークはヤリ投げのフォームで投げる。
巨大な生物の砲弾を放つ疑似呪術は【獣撃】だ。
メカジキは鋭い吻でゾンビの胴を粉砕する。
そのまま貫通し、微誘導しながら次々にゾンビどもを突き破る。
それでもゾンビの数は減らない。
さらにシャドウ・ザ・シャークは膝をついてしゃがみこむ。
次なる呪文を唱えながら両の掌を地に向ける。
途端、少し離れた地面の2ヵ所から、瓦礫と土くれを跳ね除けながら巨大なホオジロザメが飛び出した。ランドシャークだ。
こちらに用いた魔術は【血肉の大天使の召喚】。
自立移動する大天使ザドギエルを召喚し、戦わせる術だ。
もちろん大天使の容姿は術者の自由。
大天使のホオジロザメは鋭いナイフが如く歯が並んだ大きな口を広げて宙を駆ける。
そしてゾンビどもが逃げる間もなく食らいつき、上半身をまるごと喰いちぎる。
ゾンビどもに抗う術はない。
何故ならゾンビが手にした鉄パイプや日本刀では巨大なサメに傷もつかない。
クラフター本体も自身の呪術で応戦する。
瓦礫の下の地面の冷気を利用した【鋭氷の短剣】【鋭氷の斬刃】。
だがサメの皮膚はの氷弾を、鋭い氷の巨刃すら弾き返す。
「Gggggreat! 流石は我が宿敵シャドウ・ザ・シャァァァク!」
叫びつつ、クラフターは妖艶に身をくねらせる。
奇抜で珍妙なダンスはKAGEがあずかり知らぬみゃー子に少し似ている。
ゾンビの数で押すクラフター、サメの大きさで押すKAGE。
召喚生物による勝負は互角。
クラフターは大量にストックされた脂虫を召喚し、ゾンビに変えて襲わせられる。
対するシャドウ・ザ・シャークのホオジロザメはゾンビを相手に無双できる。
そんなホオジロザメがゾンビどもを食い散らす側、シャドウ・ザ・シャークは両手にヒラメとカレイを創造する。
両手の得物を硬化させ、サメを掻い潜って術者本体に迫るゾンビに斬りかかる。
手にした生物を武器と化す【謝肉拳】だ。
鋭いヒレに胴を腕ごと切断されたゾンビは成す術もなく崩れ落ちる。
だが次の瞬間、
「嗚呼! シャドウ・ザ・シャーク! 我が永遠のRivalよ!」
いきなり目前にクラフターがあらわれた。
召喚生物によるバトルに飽きて【妖精の舞踏】で跳びこんできたか。
勢いまかせで予測し辛い言動もクラフターの特徴だ。
とっさに跳び退ったシャドウ・ザ・シャークの残像を射抜いて地面が凍る。
小さな凍結弾を放つ【氷霜の稲妻】の呪術。
鋭く速い【鋭氷の短剣】じゃないのは所詮はバックアップ要員と侮られたか、あるいは高等魔術師を相手に小さな刃じゃ傷もつかぬと足止めを狙われたか。
「いや別に、貴女とライバルになった覚えもないんですがね!」
口元を歪めつつ、シャドウ・ザ・シャークは胸の谷間から何かを取り出す。
数本の小さなスティック。
それを放り投げる。
同時に胸元のペンタクルが輝く。
するとスティックはそれぞれヤツメウナギへと変化する。
木の棒をヘビに変化させて襲わせる【蛇杖】の応用だ。
細長いウナギ型生物は身をくねらせて空中を駆け抜けクラフターを襲う。
「Hey,Icicle! Two,Three,Icicle!」
クラフターは氷のナイフを放ち、ヤツメウナギを苦も無く仕留める。
それぞれ上下を分割されたウナギもどきは折れた棒に戻って地に転がる。
KAGEの普段の言動は過去のトラウマを誤魔化すための、いわばポーズだ。
おかげで映画では妙な言動は控えめで、クールビューティーとして通っている。
なので素で頭がおかしい感じなクラフターの相手は荷が重い。
まるで陽キャに対する陰キャのように、無意識に腰が引けてしまう。
だから敵がウナギに対処する隙に、自身の影の中に逃げこむ。
地に黒い染みのように張りついた影は、滑るようにクラフターから距離を取る。
そして影から跳び出てサメ女ヒーローの姿を取り戻す。
即ち【影移動】。
形態変化の応用で概念へと変ずることにより、影と化して移動する。
今のシャドウ・ザ・シャークは【形態変化】の影響下にある。
故に式神やメジェドのように意思の力で身体を制御することができる。
だがシャドウ・ザ・シャーク――KAGEの役割はバックアップだ。
直接戦闘の技量は低い。
加えて覚悟が……敵と直接に拳を、銃火を交える気概がない。
飄々とした言動で誤魔化してはいるが怖いのだ。
何故なら彼女が最初に相対した『敵』は――
「――!」
KAGEの内心の動揺を嘲笑うように、一瞬前までシャドウ・ザ・シャークがいた場所を貫いてクラフターが出現する。
転移の手段は御馴染の【妖精の舞踏】。
突き出した拳に宿る放電は【痺れる手】。
「けど【ミューズの探索者協会】の重鎮たちは、貴女とわたしの対戦カードをいたく気に入ってるみたいだよ! 映画の観客だって同じさ!」
陶酔した口調で語りつつ、ヴィランは開いた分の距離を一瞬で詰めつつ猛打。
凍てつく掌底【凍る手】。
冷気で押し出した熱を逆の手のチョップにこめた【燃える手】。
「そう! いつの世も、人々は美女に魅了されずにいられない! Sexxxxy!」
「セクシーって人前で言うの、この国じゃあ良く思われないですよ。ちょっと前に更迭された○違い大臣の口癖だったもので」
クラフターの拳と言葉の猛撃を、手にしたカレイとヒラメで凌ぐ。
貴女もたいがいですが、という一言を付け加える余裕はない。
本体同士の、しかも接近戦闘では完全に敵に分がある。
シャドウ・ザ・シャークの【形態変化】を応用した身体制御。
対するクラフターの【英雄化】による身体強化。
両者に性能上の違いはさほどない。
だから術者の戦闘センスと、なによりメンタルが勝敗を分ける。
「それに貴女とわたしは――似ている」
「結構な悪口ですよそれ」
クラフターの猛攻を手にした魚と【影移動】を駆使して回避するので手一杯。
影と化して移動している最中は、呪術で手出しされないのが幸いか。
それでも幾度目かに影から跳び出た後、
「hahaha,つれないじゃないかシャドウ・ザ・シャァァク! かくなる上は!」
クラフターは指を鳴らす。途端、
「!?」
シャドウ・ザ・シャークの背後が爆発した。
即ち【贄の火】。
いつの間にか周囲にゾンビが集まって来ていた。
幾らか数は減っているものの、まだ相当数が残っている。
そのうち1匹で発破をかけたらしい。
ケルトの魔術は魔力の創造のためにウェールズやアイルランドの神々を幻視する。
だがケルト呪術では操作する元素や妖精そのものに呼びかける。他の呪術の流派のように神々のイメージというクッションを置かない。自分自身が半ば魔法と等しくなる。
その例外が、罪人を贄と成す古の呪術。
ケルトの古の神の名を借りた後ろ暗い施術により、ケルト呪術師は人間とも魔法とも全く異質な怪異、ゾンビどもを贄にして破壊と創造の奇跡を行使する。
そんな太古の秘術【贄の火】は、少しばかり離れた場所で発動していた。
ダメージを負う距離ではない。
だが直接戦闘に不慣れなシャドウ・ザ・シャークを怯ませる程度の効果はある。
だから次の瞬間、
「……しまっ――」
死霊使いの放電する拳がサメ女ヒーローのわき腹を捉える。
だがシャドウ・ザ・シャークは怯むだけ。なぜなら、
「Oops!」
クラフターが跳び退ると同時にシャドウ・ザ・シャークの周囲に嵐が吹き荒れる。
即ち【螺旋の装甲】。
大気の鎧【大気の装甲】で打撃を受け止め、【螺旋風】で反撃する。
さしもののクラフターも、小技で高等魔術師の防御魔法を貫くことはできない。
加えて見えざる防護を舞奈のように空気の流れで見抜けたりもしない。
急激な魔力の流れに対する反応が、あと一瞬だけ遅ければ竜巻に巻きこめていた。
直接戦闘に不慣れなシャドウ・ザ・シャークも、魔術の腕前では分がある。
だから好機を逃すまいと掌をかざし、呪文も動作もなく【風の檻】を行使する。
大気を生み出し拘束する魔術だ。
素早い不可視の拘束術は一見すると便利だが、軽い風の檻は小動物や子供程度の力で容易の脱出できるために逆に使われることはあまりない。
だが熟達した高等魔術師が疑似呪術【大気の束縛】と併用するなら別だ。
「Wha……t!?」
唐突にクラフターの動きが止まる。
魔術で創り出された気体の檻と、周囲の大気を利用した空気の枷、二重の拘束術に絡み取られたからだ。
その間にシャドウ・ザ・シャークの身体を、虚空から出現した水のヴェールが覆う。
こちらは【流体装甲】。
水の鎧は大気の装甲よりは少しばかり強度がある。
反撃による不意打ちという利点がなくなった故の安全策だ。
「流石はシャドウ・ザ・シャァァァク! 正攻法ではわたしは貴女に勝てないようだ」
クラフターは身動きひとつせず【妖精の舞踏】で跳び退る。
そして崩れた壁の上に出現する。
身体を拘束されているにもかかわらず口元には妖艶な笑みが浮かぶ。
「けど、これならどうかな?」
ニヤリと笑った瞬間、シャドウ・ザ・シャークの視界が歪んだ。
正確には周囲にひしめくゾンビどもが、滲むように姿を変える。
何の変哲もない光学迷彩による幻術【幻影】。
高等魔術師であるシャドウ・ザ・シャークを欺くには至らない。だが、
――そいつは無理ってもんだなぁ。てめぇも彼氏と同じように死ぬのさ
――へへっ、アイツみてぇにな!
「……!?」
声に思わず後ずさる。
こちらもケルト呪術としては初歩的な幻聴の呪術【幻影の音声】。
先ほどクラフターが使った【贄の火】には術者の魔力を増す効果もある。
ゾンビどもの忌まわしい命を魔力に変え、プラズマで浄化して取りこむのだ。
むしろ、そちらが生贄の本来の目的だ。
そのように得た追加の魔力を【幻影】【幻影の音声】に注ぎこみ、複数のゾンビに施術したのだろう。
だが、この際、術そのものの仕組みはどうでもいい。
見やるとゾンビたちは、ガラの悪いくわえ煙草の少年たちへと変化していた。
学ランを不格好に変形させ、木刀を手にした脂虫――邪悪な喫煙者ども。
その昔は暴走族と呼ばれていた、下衆で卑しい珍走団。
幻影で形作られた人間モドキのクズどもは、サメ女ヒーローを囲んでニヤニヤ笑う。
「これは、まさか……」
「流石は聡明なる我が宿敵。貴女のために用意した我が秘策に気づいたようだね」
クラフターはニヤリと笑う。
対してシャドウ・ザ・シャークの、マスクの下の顔は青ざめる。
シャドウ・ザ・シャーク――KAGEが魔術を学ぶ以前。
魔法とも怪異とも無縁だった10年前。
彼女には将来を誓いあった恋人がいた。
もとより幼児体形な彼女を、それでも構わないと愛してくれた紳士だった。
彼女は一般の女性として人生を謳歌していた。
……奴らと相対するまでは。
悪臭と犯罪の申し子である喫煙者――脂虫。
忌まわしい怪異の珍走団どもは、通りがかったKAGEと恋人を集団で襲った。
恋人は果敢にも若きKAGEをかばった。
だが邪悪な脂虫どもは数の暴力でKAGEの恋人を拘束した。
そして集団で四肢をつかみ、KAGEの目の前で――残虐な方法で殺害した。
そして今、目前で幻影がかぶせられたゾンビどもの姿形は記憶の中の奴らと同じ。
クラフターは初歩の呪術【幻影】【幻影の音声】を活用し、シャドウ・ザ・シャークの昔のトラウマを誘発したのだ。
「くっ……」
シャドウ・ザ・シャークは気力を振り絞ってシャーク・シューターを構る。
ペンタクルに意識を集中して【急流弾】を行使する。
水鉄砲のサメの口から放たれる流水の弾丸がゾンビを穿つ。
もとより高等魔術師のペンタクルは諸惑星に宿る大天使――魔神が放出する魔力を受信、変換して呪術と成す疑似的な術者だ。
だからペンタクルによる疑似呪術は、魔術と比べて行使の難易度が格段に低い。
慣れていれば魔道具を使うくらいの負担で施術が可能だ。
シャドウ・ザ・シャークは過去の幻影に恐れ怯む自身の精神状態を把握していた。
だから現実的な抵抗を試みた。
それでも恐れに委縮し、実質的に四肢を構成する【形態変化】の制御すらおぼつかない状態では鋭い水弾も致命打には至らない。
維持のための集中が続かず【流体装甲】を構成していた水が蒸発する。
気づくと先ほど召喚したサメ型のザドキエルもいない。
操作のための魔術的な反応もない。
こちらも集中を欠いた隙に消えたか、倒されたらしい。
忌まわしい過去からあらわれた珍走団の群。
形をとった恐怖が成す術もないシャドウ・ザ・シャークめがけて襲い来る。
何匹かがサメ女ヒーローの四肢をつかむ。
幼児体形を誤魔化すために【形態変化】で変化させていたグラマラスな身体がビクリと震える。そして包帯がほどけるように、魔法の光が剥がれていく。
恐怖により【形態変化】に必要な精神集中までもが維持できなくなったのだ。
魔法の解除に伴いモノクロの全身タイツも消える。
ヒーローたちが纏う、偽装迷彩と同じ原理のコスチュームは術者の魔力や異能力に反応して具現化する。
魔法による防護や偽装をすべて失った本物のKAGEは幼児体形の大人だ。
彼女の身体は、あの恐ろしい喪失の日からほとんど成長していない。
そんな彼女を――
――その前に、
――ああ、あんたには俺たちを楽しませてもらわないとな!
珍走団の姿を模したゾンビどもが取り囲む。
素顔のKAGEの、年齢に似合わぬ童顔が恐怖に歪む。
そして次の瞬間――
「――その前に、おまえたちがわたしを楽しませるんだ」
「What!?」
唐突に、何の前触れもなく数匹のゾンビがはじけた。
ヤニ色の破片と飛沫が不自然な挙動で集まり腐肉の門を形作る。同時に、
「ぐあっ!!」
珍走団のひとりの四肢が切断された。
視界の端に迸る水。
猫島朱音の【水天の斬撃】?
あの恐ろしい悔恨の日に、それでもKAGEの命運を救った水の舞の如く。
否――
――間に合ったようだな
幻聴。
同時にヤニ色の門から4つの人影が飛び出し、地に降り立つ。
「貴女がたは……!?」
シャドウ・ザ・シャークが見やる先、
「よかった! シャークさんは無事よ」
「脂虫のいるところにクラフターもいるという名推理が的中しましたね」
「……ぜんぶ屍虫に進行してるみたいだけど」
巣黒支部の若き術者たち。
即ち巫女服姿のサチに、油断なく身構えた制服姿の小夜子と、楓。そして、
「――間に合ったようだね」
掌をかざして【水の斬撃】を行使した直後の体勢の、桂木紅葉の背中だった。
一行は歌の力を借りて、拠点を守る強固な結界を破壊することに成功した。
だが直後、一行の視界がまばゆい光に塗りこめられ――
――所変わって新開発区の別の一角。
遠目にはゾンビの群にも見える廃ビルが乱雑に立ち並び、足元にサメの顎のような不気味な影をのばす廃墟の通り。
そんな先ほどと似て異なる死の街の、とある廃ビルのふもとで、
「……どうやら『プリドゥエンの守護珠』を使われたようですね」
モノクロの全身タイツに身を包んだグラマラスな女性が周囲を見回す。
口元が覗く黒いマスクの頭についた、サメの背びれを象った装飾が不安げにゆれる。
ディフェンダーズのヒーローのひとり、シャドウ・ザ・シャークだ。
ひとりごちたのは、希少故に界隈で名だけは知られた魔道具の名称。
強力な【智慧の大門】により対象を転移させることで所有者を守護する。
術の強制力も高く、不意打ちで使われれば抵抗もほぼ不可能。
シャドウ・ザ・シャークが知る限り、構成員の大半を魔道士が占める合同部隊を対処する余地もなく転移させられる唯一の手段だ。
サメ女ヒーローの言葉に、だが返事はない。
「舞奈さん? 楓さん? 小夜子さん?」
周囲を見回しながら呼びかける。
だが近くには舞奈も、楓や小夜子も、【機関】の面子は誰もいない。
「イアソンさん?」
ディフェンダーズの頼れる仲間にも呼びかける。
だが極彩色のタイツを着こんだ屈強なミスター・イアソンの姿もない。
通信機も反応しない。
「……」
どうやら死のように静かな廃墟の一角に、ひとり転移されたらしい。
おそらく皆がバラバラに転移されたのだ。
ふと左腕を見やる。
巻かれた注連縄から【護身神法】を形成する魔力の流れを感じない。
術者であるサチが近くにいないからだ。
げに恐ろしきはプリドゥエンの守護珠。
湧き上がる不安を誤魔化すように、手にしたシャーク・シューターを構える。
シャドウ・ザ・シャークことKAGEは熟達した高等魔術師だ。
最も得手とする生命の創造の他、各種の元素をも自在に操る。
だが公安でもディフェンダーズでも、基本的に単独行動はとらない。
例外は諜報任務のみ。【機関】でいうニュットやソォナムと同じ扱いである。
彼女に直接戦闘への適性がないからだ。
魔術の才に比べて戦闘センスはさほどでもなく、何より戦う覚悟がない。
何故なら彼女の魔術の根底にあるのは恐怖だ。
10年前の、あの恐ろしい事件の記憶から逃れるようにKAGEは魔術を修めた。
そんな彼女の敵との直接戦闘における役割は、あくまで仲間の補佐だ。
だから別れた仲間の位置を探るべく目を閉じて集中し、魔法探知を試みる。
ついでに今いる場所もわかればいいと思った。
なにせ土地勘のまったくない廃墟の一角だ。
目に見えるランドマークが廃屋と廃ビルしかない中、先ほどまでいたヴィラン拠点周辺からどのくらい跳ばされたのか見当もつかない。
幸いにも近くで反応。
術が使われているようだ。
並の魔術師なら見逃してしまう類の、世界に満ちる天然の魔力が賦活される気配。
森羅万象から魔力を借りる呪術師の呪術が使われている。
サチか小夜子、あるいは紅葉かと思って方向を探ろうとして――
「――Weeeeelcooome,my siiister!」
狂ったような叫びに続く、無数のゾンビの長くのびるうめき声。
同時に頭上から、歪に組み合わされた脂虫のバイクが降って来た。
瓦礫を踏みしめ着地したのはクラフター・モービル。
うめく屍肉でできたバイクから、黒いマントをなびかせ少女が降りる。
華奢な身体にまとう、大胆なカットのレオタード。
目元を覆う鮮血色のマスク。
流れるような銀髪の上で、ピエロのような2股のトンガリ帽子がゆれる。即ち――
「――クラフター!」
「Yeeeees! I aaam!」
死霊使いは何処かの子供とは違う完璧な発音で、舞台の上の芝居の如く大仰に叫ぶ。
仮面と同じ色の唇が妖艶に歪む。
「親愛なるシャドウ・ザ・シャーク! 貴女と出会えて光栄ですよ」
「わたしは別に会いたくなかったですが!」
言いつ構えたシャーク・シューターから水弾を放つ。
警告なし。
しかも【急流の雨】を用いた連続射撃。
「それに貴女と姉妹の契りを結んだ覚えもないですよ!」
言うなれば出会い頭の短機関銃の掃射。だが、
「Oops! それは残念!」
クラフターはおどけた素振りで予備動作もなく跳んで避ける。
身体強化のケルト呪術【英雄化】で実現せしめたバッタのような超ジャンプ。
だが【妖精の舞踏】を使う素振りはない。
まるで恐怖に震えながら放たれた弾丸など恐るるに足らずと言うように。
水鉄砲を撃ち尽くしたシャドウ・ザ・シャークは魔術で水を補充する。
即ち【大天使の水の召喚】。
高等魔術における最も初歩の水術は、KAGEにかかれば詠唱もなく一瞬で終わる。
その隙にクラフターは舞うような動作で華麗に着地する。
次いで芝居がかった仕草で片手を宙にかざし、
「Please,Merlin!」
叫ぶとともに指輪のひとつが輝く。
そして次の瞬間、死霊使いの周囲にくわえ煙草の集団が出現した。
即ち【智慧の大門】。
指輪の力で脂虫の群を展開したのだ。
先ほどの戦闘でも派手にばらまいていたが、同じ数を温存していたらしい。
銃こそ手にしていないものの、双眸をヤニで濁らせた不気味で不潔な虫どもは、
「Hey presto,Zombies!」
続けざまに行使された【不死の大呪詛】で屍虫――ゾンビと化す。
いつものクラフターの戦術だ。
クラフターはセオリー通りに【妖精の舞踏】で後退する。
入れ替わりに無数のゾンビどもが、サメ女ヒーローめがけて襲い来る。
シャドウ・ザ・シャークは装填し終えたシャーク・シューターを構えて発砲する。
水の弾丸【急流弾】が喫煙者ゾンビどもの何匹かを射抜く。
次いで【急流の雨】による水弾の掃射が蜂の巣にする。
ゾンビどもは崩れ落ちた仲間を踏みつけながら迫り来る。
先ほどの群に持たせた分で銃が尽きたか、撃ってこないのが幸いか。
だがゾンビ自体の数はほとんど減っていない。
「……やむを得ませんね。かくなる上は!」
サメ女ヒーローは映画映えする慣れた動作でシャーク・シューターを仕舞う。
両の掌を合わせて突き出しながら、大天使ガブリエルを奉ずる呪文を紡ぐ。
すると掌の先に巨大な水の塊が出現して――
「――ハァッ!」
気合とともに、術者の身体より大きな水球が砲弾のように放たれる。
勢いのままゾンビどもを巻きこみながら轢き潰す。
即ち【屠龍撃】。
大天使ガブリエルのイメージから水を創り、球状にして放つ魔術。
楓が多用する【大水球】と同等の術だ。
たかが水と侮るなかれ。熟練した高等魔術師が創造する魔術の水の質量は、その名にかかげた龍の如く、居並ぶ敵を轢き屠る。
それでも所詮は直線状に飛ぶ水球だ。
一直線に轢き潰されたラインから外れたゾンビは怯みもせずに迫りくる。
呪術で操られ、変化させられたゾンビどもに意思はない。
仲間の死を悼む心も、死を恐れる心もない。
だからシャドウ・ザ・シャークは続けざまに、手品のようにシャーク・シューターを再び取り出す。それをクルリと器用に回してステッキに変形させ、
「ヤッ!」
サメの頭を象ったステッキの先を、流れるような動きで群れに突きつける。
今度は先端から凄まじい勢いの放水。
即ち【激流波】。
サメ杖の先から魔法の水が無尽蔵に溢れ出し、奔流と化してゾンビを襲う。
こちらは火炎放射の水版といったところか。だが、
「これは流石に……! Defend it,Wind!」
「ちいっ」
魔術の激流は不自然な挙動でゾンビどもを避け、地を濡らして消えた。
ゾンビどもの周囲の空気が蠢きドーム状の壁と化し、水の勢いを削いだのだ。
即ち【旋風の守護者】。
クラフターはゾンビを操るだけでなく、ケルト呪術全般を高い技術で使いこなす。
ゾンビに任せている最中でも要所で援護をしてくるので厄介だ。
「ならば!」
シャドウ・ザ・シャークはシャーク・シューターを仕舞い、両手にアジを創造する。
即ち【大天使の血肉の召喚】。
そして胸元のペンタクルを用いた疑似呪術【操命弾】で放つ。
2匹のアジはピチピチと回転しながら勢いよく飛んでいく。
こちらの方が手間はかかるが手馴れているぶん威力は高いし、誘導もする。
加えて質量もあるので【旋風の守護者】程度では受け流せない。
さしずめ手製のスマートバレットといったところか。
2匹のアジは狙い違わずゾンビどもの胸に突き刺さる。
さらには上半身を食い破りながら貫通し、後ろのゾンビに喰らいつく。
だが数匹を屠った程度ではゾンビの群は止まらない。
だからシャドウ・ザ・シャークは再度【大天使の血肉の召喚】を行使する。
今度の得物はアジより大きい。
術者の背丈ほどある体長と同じほどある槍のような吻を上顎からのばした大魚。
メカジキである。
それをシャドウ・ザ・シャークはヤリ投げのフォームで投げる。
巨大な生物の砲弾を放つ疑似呪術は【獣撃】だ。
メカジキは鋭い吻でゾンビの胴を粉砕する。
そのまま貫通し、微誘導しながら次々にゾンビどもを突き破る。
それでもゾンビの数は減らない。
さらにシャドウ・ザ・シャークは膝をついてしゃがみこむ。
次なる呪文を唱えながら両の掌を地に向ける。
途端、少し離れた地面の2ヵ所から、瓦礫と土くれを跳ね除けながら巨大なホオジロザメが飛び出した。ランドシャークだ。
こちらに用いた魔術は【血肉の大天使の召喚】。
自立移動する大天使ザドギエルを召喚し、戦わせる術だ。
もちろん大天使の容姿は術者の自由。
大天使のホオジロザメは鋭いナイフが如く歯が並んだ大きな口を広げて宙を駆ける。
そしてゾンビどもが逃げる間もなく食らいつき、上半身をまるごと喰いちぎる。
ゾンビどもに抗う術はない。
何故ならゾンビが手にした鉄パイプや日本刀では巨大なサメに傷もつかない。
クラフター本体も自身の呪術で応戦する。
瓦礫の下の地面の冷気を利用した【鋭氷の短剣】【鋭氷の斬刃】。
だがサメの皮膚はの氷弾を、鋭い氷の巨刃すら弾き返す。
「Gggggreat! 流石は我が宿敵シャドウ・ザ・シャァァァク!」
叫びつつ、クラフターは妖艶に身をくねらせる。
奇抜で珍妙なダンスはKAGEがあずかり知らぬみゃー子に少し似ている。
ゾンビの数で押すクラフター、サメの大きさで押すKAGE。
召喚生物による勝負は互角。
クラフターは大量にストックされた脂虫を召喚し、ゾンビに変えて襲わせられる。
対するシャドウ・ザ・シャークのホオジロザメはゾンビを相手に無双できる。
そんなホオジロザメがゾンビどもを食い散らす側、シャドウ・ザ・シャークは両手にヒラメとカレイを創造する。
両手の得物を硬化させ、サメを掻い潜って術者本体に迫るゾンビに斬りかかる。
手にした生物を武器と化す【謝肉拳】だ。
鋭いヒレに胴を腕ごと切断されたゾンビは成す術もなく崩れ落ちる。
だが次の瞬間、
「嗚呼! シャドウ・ザ・シャーク! 我が永遠のRivalよ!」
いきなり目前にクラフターがあらわれた。
召喚生物によるバトルに飽きて【妖精の舞踏】で跳びこんできたか。
勢いまかせで予測し辛い言動もクラフターの特徴だ。
とっさに跳び退ったシャドウ・ザ・シャークの残像を射抜いて地面が凍る。
小さな凍結弾を放つ【氷霜の稲妻】の呪術。
鋭く速い【鋭氷の短剣】じゃないのは所詮はバックアップ要員と侮られたか、あるいは高等魔術師を相手に小さな刃じゃ傷もつかぬと足止めを狙われたか。
「いや別に、貴女とライバルになった覚えもないんですがね!」
口元を歪めつつ、シャドウ・ザ・シャークは胸の谷間から何かを取り出す。
数本の小さなスティック。
それを放り投げる。
同時に胸元のペンタクルが輝く。
するとスティックはそれぞれヤツメウナギへと変化する。
木の棒をヘビに変化させて襲わせる【蛇杖】の応用だ。
細長いウナギ型生物は身をくねらせて空中を駆け抜けクラフターを襲う。
「Hey,Icicle! Two,Three,Icicle!」
クラフターは氷のナイフを放ち、ヤツメウナギを苦も無く仕留める。
それぞれ上下を分割されたウナギもどきは折れた棒に戻って地に転がる。
KAGEの普段の言動は過去のトラウマを誤魔化すための、いわばポーズだ。
おかげで映画では妙な言動は控えめで、クールビューティーとして通っている。
なので素で頭がおかしい感じなクラフターの相手は荷が重い。
まるで陽キャに対する陰キャのように、無意識に腰が引けてしまう。
だから敵がウナギに対処する隙に、自身の影の中に逃げこむ。
地に黒い染みのように張りついた影は、滑るようにクラフターから距離を取る。
そして影から跳び出てサメ女ヒーローの姿を取り戻す。
即ち【影移動】。
形態変化の応用で概念へと変ずることにより、影と化して移動する。
今のシャドウ・ザ・シャークは【形態変化】の影響下にある。
故に式神やメジェドのように意思の力で身体を制御することができる。
だがシャドウ・ザ・シャーク――KAGEの役割はバックアップだ。
直接戦闘の技量は低い。
加えて覚悟が……敵と直接に拳を、銃火を交える気概がない。
飄々とした言動で誤魔化してはいるが怖いのだ。
何故なら彼女が最初に相対した『敵』は――
「――!」
KAGEの内心の動揺を嘲笑うように、一瞬前までシャドウ・ザ・シャークがいた場所を貫いてクラフターが出現する。
転移の手段は御馴染の【妖精の舞踏】。
突き出した拳に宿る放電は【痺れる手】。
「けど【ミューズの探索者協会】の重鎮たちは、貴女とわたしの対戦カードをいたく気に入ってるみたいだよ! 映画の観客だって同じさ!」
陶酔した口調で語りつつ、ヴィランは開いた分の距離を一瞬で詰めつつ猛打。
凍てつく掌底【凍る手】。
冷気で押し出した熱を逆の手のチョップにこめた【燃える手】。
「そう! いつの世も、人々は美女に魅了されずにいられない! Sexxxxy!」
「セクシーって人前で言うの、この国じゃあ良く思われないですよ。ちょっと前に更迭された○違い大臣の口癖だったもので」
クラフターの拳と言葉の猛撃を、手にしたカレイとヒラメで凌ぐ。
貴女もたいがいですが、という一言を付け加える余裕はない。
本体同士の、しかも接近戦闘では完全に敵に分がある。
シャドウ・ザ・シャークの【形態変化】を応用した身体制御。
対するクラフターの【英雄化】による身体強化。
両者に性能上の違いはさほどない。
だから術者の戦闘センスと、なによりメンタルが勝敗を分ける。
「それに貴女とわたしは――似ている」
「結構な悪口ですよそれ」
クラフターの猛攻を手にした魚と【影移動】を駆使して回避するので手一杯。
影と化して移動している最中は、呪術で手出しされないのが幸いか。
それでも幾度目かに影から跳び出た後、
「hahaha,つれないじゃないかシャドウ・ザ・シャァァク! かくなる上は!」
クラフターは指を鳴らす。途端、
「!?」
シャドウ・ザ・シャークの背後が爆発した。
即ち【贄の火】。
いつの間にか周囲にゾンビが集まって来ていた。
幾らか数は減っているものの、まだ相当数が残っている。
そのうち1匹で発破をかけたらしい。
ケルトの魔術は魔力の創造のためにウェールズやアイルランドの神々を幻視する。
だがケルト呪術では操作する元素や妖精そのものに呼びかける。他の呪術の流派のように神々のイメージというクッションを置かない。自分自身が半ば魔法と等しくなる。
その例外が、罪人を贄と成す古の呪術。
ケルトの古の神の名を借りた後ろ暗い施術により、ケルト呪術師は人間とも魔法とも全く異質な怪異、ゾンビどもを贄にして破壊と創造の奇跡を行使する。
そんな太古の秘術【贄の火】は、少しばかり離れた場所で発動していた。
ダメージを負う距離ではない。
だが直接戦闘に不慣れなシャドウ・ザ・シャークを怯ませる程度の効果はある。
だから次の瞬間、
「……しまっ――」
死霊使いの放電する拳がサメ女ヒーローのわき腹を捉える。
だがシャドウ・ザ・シャークは怯むだけ。なぜなら、
「Oops!」
クラフターが跳び退ると同時にシャドウ・ザ・シャークの周囲に嵐が吹き荒れる。
即ち【螺旋の装甲】。
大気の鎧【大気の装甲】で打撃を受け止め、【螺旋風】で反撃する。
さしもののクラフターも、小技で高等魔術師の防御魔法を貫くことはできない。
加えて見えざる防護を舞奈のように空気の流れで見抜けたりもしない。
急激な魔力の流れに対する反応が、あと一瞬だけ遅ければ竜巻に巻きこめていた。
直接戦闘に不慣れなシャドウ・ザ・シャークも、魔術の腕前では分がある。
だから好機を逃すまいと掌をかざし、呪文も動作もなく【風の檻】を行使する。
大気を生み出し拘束する魔術だ。
素早い不可視の拘束術は一見すると便利だが、軽い風の檻は小動物や子供程度の力で容易の脱出できるために逆に使われることはあまりない。
だが熟達した高等魔術師が疑似呪術【大気の束縛】と併用するなら別だ。
「Wha……t!?」
唐突にクラフターの動きが止まる。
魔術で創り出された気体の檻と、周囲の大気を利用した空気の枷、二重の拘束術に絡み取られたからだ。
その間にシャドウ・ザ・シャークの身体を、虚空から出現した水のヴェールが覆う。
こちらは【流体装甲】。
水の鎧は大気の装甲よりは少しばかり強度がある。
反撃による不意打ちという利点がなくなった故の安全策だ。
「流石はシャドウ・ザ・シャァァァク! 正攻法ではわたしは貴女に勝てないようだ」
クラフターは身動きひとつせず【妖精の舞踏】で跳び退る。
そして崩れた壁の上に出現する。
身体を拘束されているにもかかわらず口元には妖艶な笑みが浮かぶ。
「けど、これならどうかな?」
ニヤリと笑った瞬間、シャドウ・ザ・シャークの視界が歪んだ。
正確には周囲にひしめくゾンビどもが、滲むように姿を変える。
何の変哲もない光学迷彩による幻術【幻影】。
高等魔術師であるシャドウ・ザ・シャークを欺くには至らない。だが、
――そいつは無理ってもんだなぁ。てめぇも彼氏と同じように死ぬのさ
――へへっ、アイツみてぇにな!
「……!?」
声に思わず後ずさる。
こちらもケルト呪術としては初歩的な幻聴の呪術【幻影の音声】。
先ほどクラフターが使った【贄の火】には術者の魔力を増す効果もある。
ゾンビどもの忌まわしい命を魔力に変え、プラズマで浄化して取りこむのだ。
むしろ、そちらが生贄の本来の目的だ。
そのように得た追加の魔力を【幻影】【幻影の音声】に注ぎこみ、複数のゾンビに施術したのだろう。
だが、この際、術そのものの仕組みはどうでもいい。
見やるとゾンビたちは、ガラの悪いくわえ煙草の少年たちへと変化していた。
学ランを不格好に変形させ、木刀を手にした脂虫――邪悪な喫煙者ども。
その昔は暴走族と呼ばれていた、下衆で卑しい珍走団。
幻影で形作られた人間モドキのクズどもは、サメ女ヒーローを囲んでニヤニヤ笑う。
「これは、まさか……」
「流石は聡明なる我が宿敵。貴女のために用意した我が秘策に気づいたようだね」
クラフターはニヤリと笑う。
対してシャドウ・ザ・シャークの、マスクの下の顔は青ざめる。
シャドウ・ザ・シャーク――KAGEが魔術を学ぶ以前。
魔法とも怪異とも無縁だった10年前。
彼女には将来を誓いあった恋人がいた。
もとより幼児体形な彼女を、それでも構わないと愛してくれた紳士だった。
彼女は一般の女性として人生を謳歌していた。
……奴らと相対するまでは。
悪臭と犯罪の申し子である喫煙者――脂虫。
忌まわしい怪異の珍走団どもは、通りがかったKAGEと恋人を集団で襲った。
恋人は果敢にも若きKAGEをかばった。
だが邪悪な脂虫どもは数の暴力でKAGEの恋人を拘束した。
そして集団で四肢をつかみ、KAGEの目の前で――残虐な方法で殺害した。
そして今、目前で幻影がかぶせられたゾンビどもの姿形は記憶の中の奴らと同じ。
クラフターは初歩の呪術【幻影】【幻影の音声】を活用し、シャドウ・ザ・シャークの昔のトラウマを誘発したのだ。
「くっ……」
シャドウ・ザ・シャークは気力を振り絞ってシャーク・シューターを構る。
ペンタクルに意識を集中して【急流弾】を行使する。
水鉄砲のサメの口から放たれる流水の弾丸がゾンビを穿つ。
もとより高等魔術師のペンタクルは諸惑星に宿る大天使――魔神が放出する魔力を受信、変換して呪術と成す疑似的な術者だ。
だからペンタクルによる疑似呪術は、魔術と比べて行使の難易度が格段に低い。
慣れていれば魔道具を使うくらいの負担で施術が可能だ。
シャドウ・ザ・シャークは過去の幻影に恐れ怯む自身の精神状態を把握していた。
だから現実的な抵抗を試みた。
それでも恐れに委縮し、実質的に四肢を構成する【形態変化】の制御すらおぼつかない状態では鋭い水弾も致命打には至らない。
維持のための集中が続かず【流体装甲】を構成していた水が蒸発する。
気づくと先ほど召喚したサメ型のザドキエルもいない。
操作のための魔術的な反応もない。
こちらも集中を欠いた隙に消えたか、倒されたらしい。
忌まわしい過去からあらわれた珍走団の群。
形をとった恐怖が成す術もないシャドウ・ザ・シャークめがけて襲い来る。
何匹かがサメ女ヒーローの四肢をつかむ。
幼児体形を誤魔化すために【形態変化】で変化させていたグラマラスな身体がビクリと震える。そして包帯がほどけるように、魔法の光が剥がれていく。
恐怖により【形態変化】に必要な精神集中までもが維持できなくなったのだ。
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――その前に、
――ああ、あんたには俺たちを楽しませてもらわないとな!
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素顔のKAGEの、年齢に似合わぬ童顔が恐怖に歪む。
そして次の瞬間――
「――その前に、おまえたちがわたしを楽しませるんだ」
「What!?」
唐突に、何の前触れもなく数匹のゾンビがはじけた。
ヤニ色の破片と飛沫が不自然な挙動で集まり腐肉の門を形作る。同時に、
「ぐあっ!!」
珍走団のひとりの四肢が切断された。
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否――
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