銃弾と攻撃魔法・無頼の少女

立川ありす

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第19章 ティーチャーズ&クリーチャーズ

クモ! クモ! クモ! レスキュー大作戦3

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 林でムクロザキの毒蜘蛛を探す舞奈たち一行。
 蜘蛛に仕込まれた発信機を追跡アプリで追跡しつつ、毒で淫乱になったヤマネコを追い返し、川で遊んでずぶ濡れになった服を乾かすべく小休止。
 なんだかんだで絆を深め合いながら一行は心機一転、捜索を再開。だが……

「……本当にこっちで合ってるんだろうな? 方向」
「間違いないわよ。人間が歩きやすい道を選んで蜘蛛が逃げる訳ないでしょ」
「ったく蜘蛛のクセに人間様に面倒かけやがって」
 マシエトで枝を払って道を切り開きながら、舞奈は最後尾の明日香に愚痴る。
 側のキャロル、中央列のレインや梢が苦笑する。

 ムクロザキが逃がした蜘蛛には何故か発信機が仕掛けられていて、同じくムクロザキから預かった胡散臭い追跡アプリでそいつを追跡できる。
 なので一行はアプリをインストールした携帯を持った明日香の指示を頼りに歩く。
 だが、そうするうちに木漏れ日が減って木と葉枝の密度が増えてきた。
 一行の目的は、つまり蜘蛛は林の奥にいるようだ。

「まー林を突き抜けて抜けて新開発区まで行かれるよりはマシだよ」
「そりゃまあそうなんだがな……」
 梢のもっともな指摘に仕方なくうなずきながら、

「おおっと」
 足元を横切る大きな木の根をまたぎ越す。
 正直、足元は見ていなかった。
 だが周囲の空気の流れすら把握する舞奈にとって、その程度は造作ない。

「足元に気をつけてくれ、大きい木の根っこがある」
「はぁい……うわあっ!?」
「おいおい!」
 注意をうながした直後にタイムラグなくレインがけつまずく。

 舞奈にしてはあわててマシエトを下に向ける。
 空いている左手と、小さなツインテールの頭でレインの大ぶりな胸を受け止める。
 後ろから倒れこんでくる相手にそうすることも、舞奈にとって造作ない。
 いろいろな意味で少しビックリしたのは事実だが。

「ちょっとレイン!?」
「レインさん、大丈夫ですか?」
 続く梢と園香もビックリ。

「すいません舞奈さん……」
「……気にせんでくれ」
 まあ完全に予想できなかった訳でもないから。
 狙いすましたような絶妙なタイミングだったのはともかく。
 凹むレインの重さと温度を頭頂に感じながら舞奈はやれやれと苦笑して、

「haha! さっすがサィモン・マイナー。アクロバティックなセクハラだね」
「……あんたは真横で見てただろ」
 キャロルの軽口に思わず口をへの字に曲げる。
 まあ自分の髪の毛ごしに頭に当たる胸のふくらみが心地いいのは事実だが。
 そんなことを思った直後、

 ぐぅー。

 後頭部で派手に腹が鳴った。

「すいません。重ね重ね……」
「い、いや、別に気にしてないから……」
 頭上からは消え入りそうに小さな恥ずかしそうな声。
 レインだ……。

「そ、そういえば、もうお昼だね」
 あわてて園香がフォローして、

「足が疲れたよーお昼ごはんにしようよー」
「さっき遊んだばかりな気がするがな」
 チャビーも尻馬に乗る。
 舞奈はやれやれと苦笑する。

 だが午前中の成果がどうだろうが今が昼なのは事実だ。
 別に強行軍をしたからといって今すぐ蜘蛛に追いつけるとも思えない。

 それに林の奥に入りこんだ分、足場も悪くなっている。
 木の根もそうだし、下生えや落ち葉の量も増えて歩き辛い。
 皆の疲労もそれだけ早く蓄積する。
 そりゃあチャビーの足だって疲れるだろう。
 先ほどのレインも疲労のため足元がおろそかになったと考えることができる。
 まあ疲労のせいだけじゃないのも事実だが。

 何より、この調子で進むなら、この先も歩く量は相当なはずだ。
 園香たちの荷物も減らしたほうがいい。
 なので……

「……そっちの様子はどうだ?」
「相変わらず動きはなしよ」
「そいつは重畳。本来は夜行性なのか?」
「さあ? そこまでは」
 アプリで蜘蛛の動きをチェックする明日香に確認する。
 蜘蛛と距離を離される心配もないので、一行はお昼ごはんにすることにした。
 そして……

「ごはんだー!」
「ごはんー」
 キャロルとメリルが並んではしゃぐ。
 元気いっぱい腹ペコさんだ。
 前者はもうちょっと言動を考えろと言う感じではある。
 だが、まあ、いい感じに皆で座れそうなスペースのある大きな木の根の股を誰より早く見つけてくれたのも彼女なので特に何も言わない。
 舞奈も腹が減っているのは事実だし。

「こんな感じでいいかな」
「うん、完璧だね」
「あっこっちがシワになってる。よいしょっと」
「……」
 レインと梢が木の根の股にレジャーシートを敷いて、皆で座る。
 地味に几帳面なレインのおかげで見栄えも座り心地も上々だ。

「レインさん、梢さん、シートありがとうございます」
「いえいえ園香ちゃんこそ、お弁当を全部まかせちゃって大変だったでしょ」
「そんなことないですよ。チャビーちゃんも手伝ってくれたし」
「チャビーちゃんも偉いね」
「エヘヘ」
「それじゃあ皆さん、どうぞ」
 シートの中央にまとめて置いた背負いバッグから、園香が弁当包みを取り出す。
 ニコニコと微笑みながら開いた包みの中身は大ぶりな籐編みのバスケット。
 蓋を開けると……

「……これが……スシ!?」
「スシ!」
 キャロルとメリルがテンション高く大はしゃぎ。
 米粒を見るのが珍しいのだろうか。

「おにぎりです」
「おにぎり!」
 中には綺麗にダイナミックに並んだおにぎり。
 量もたっぷり、バスケットの隅にはだし巻き卵や唐揚げも添えられていて、なんとも豪華で食べ応えがありそうなお弁当だ。
 綺麗に握られた飯粒が木漏れ日につやつや輝く様が、否が応でも食欲をかきたてる。
 舞奈も自分が思っていた以上に空腹だったらしい。

「いっただきまーす」
 早速、キャロルはおにぎりをつまんでかぶりつき、

「酢じゃなくて塩で味付けしてあるんだ。あたしはこっちのが好きかも。大きいし」
「ありがとうございます」
 ニコニコ笑顔で一丁前に評しながら、パクリと2口目。
 その側では、

「おにぎり……美味」
 メリルもニコニコしながらおにぎりを頬張る。
 大ぶりな握り飯を両手で持つ小さな手とむしゃむしゃする小さな口が可愛らしい。
 飯のサイズは舞奈の食欲に合わせたか、あるいは小さいおにぎりを多人数で取って食べようとするとせわしなくなるからか。
 幼女は幸せそうに大きなおにぎりをむしゃむしゃしてから、

「おにぎりのなかにサーモンが!」
 叫びながら、食べ口をキャロルに見せびらかす。
 鮭のおにぎりに当たったらしい。

「焼いたサーモンの身をほぐした奴だね。おいしそう。あたしのにも入ってるかな?」
 見せびらかされた食べかけと、楽しそうな幼女の顔を見やって笑い、

「にしてもネターがシャリの中に入ってるんだね。……ロシアンルーレット?」
「変なものは入ってねぇよ」
 ボソリと言ったキャロルに苦笑する。
 ネターってのは寿司のネタのことだろうか?
 そんなことを考えながら舞奈もおにぎりにかぶりつく。

 ほどよい固さに握られた米粒を噛みしめる。
 まずはやわらかく炊かれた米粒と、巻かれた海苔の食感のハーモニー。
 デンプンのほのかな甘さに、やがて細やかな食感と心地よい辛みが加わる。
 明太子だ。
 タラコを唐辛子で味付けした辛子明太子が、ほぐされて中に入っていた。

 舌でネタを見抜いた後は、ごはんと明太子のアンサンブルを愉しむ。
 飯の風味と明太子の細やかさ、ピリリとした辛さが舌の上で踊る。
 そのように舞奈がおにぎりを堪能する側では、

「むー」
 半分くらいまで食べたキャロルが口をすぼめていた。

「あ、梅干しですね」
「plumを塩漬けして干した保存食です」
 レインが察し、隙を逃さず食べる手を止めた明日香が梅干しについて解説する。
 まったく至れり尽くせりだ。

 だがまあキャロルも刺激の強い食べものは嫌いじゃないらしい。
 ぺろりと下半分も平らげてから、

「面白いじゃない。もうひとつちょうだい」
 ヒョイと新しいおにぎりをつまんで頬張る。
 むしゃむしゃと半分ほど食べてから、

「さっきより食べやすくて味わい深い……これはなに?」
「塩昆布ですね」
「千切りにしたKombuに味付けして煮詰めた料理です」
「ええっとKombuって海藻だっけ。こんな不思議な味になるんだね」
「こんぶでそのまま通じるのか……」
 満足そうに塩昆布のおにぎりを食べる。
 こっちも気に入ったらしい。
 彼女も舞奈と同様、味はわかるが選り好みはしない主義なのかもしれない。

「ぎょくーはある?」
「ぎょく?」
「お寿司の卵かな? だし巻き卵を作ってきたよ」
 問いかけるメリルに、舞奈は明太子のおにぎりを平らげつつ首をかしげる。
 そんなメリルに答えながらバスケットの端を指し示したのは園香だ。

「……渋い単語知ってるな」
「卵は普通にあるんだね」
 何となく見守る舞奈とキャロルの前で、

「メリルちゃん、フォーク使う?」
「chopsticksをもらおう!」
「わっ。おはし使えるんだ。凄い」
「……むりだった」
「うん。フォークあるよ」
 園香がメリルの小さな手にフォークを握らせる。
 そんな様子がお母さんみたいで、見ていた皆も思わず優しい顔になる。
 メリルは綺麗に巻かれただし巻き卵にフォークを刺して頬張り、

「あまい! 美味!」
 満面の笑みを浮かべる。

「じゃあ、あたしはこの唐揚げをいただくぜ」
 舞奈は器用に箸を操り、こちらも大ぶりな唐揚げをいただく。
 骨付き肉みたいなビッグサイズの唐揚げの衣はカラリと揚がっていて、中身は脂がとろけるほどにやわらかくてジューシーだ。
 満遍なく火を通すためか長細い形なのも食べやすくて良い。
 おにぎりを片手にいただくには最高のおかずだ。

 ちなみに舞奈が次にいただいたおにぎりはおかか。
 肉弾戦要員の身体は、肉! 炭水化物! 肉! でできている。
 そんな舞奈の側で、

「こっちのおにぎりは日比野さんが手伝ったの? いただくわね」
「うん、そうだよ! どうぞ!」
 明日香がいびつな形のおにぎりをつまむ。
 海苔が多いのは握り方が雑なせいで崩れてくるからか。

 ……あと多分、大ぶりなおにぎりのサイズはチャビーが中身を詰めて握れる最小サイズなのだろう。園香が自分で作る分もそっちに合わせたのだ。

 そんなチャビーが自分のおにぎりを手にした明日香を嬉しそうに見やる。
 一丁前におにぎりの形が悪いのを気にしていたのだろうか。
 明日香もそんなチャビーを見やり、おにぎりを見やって笑顔で頬張る。
 まあネコポチの毛を探していた訳じゃないだろうが。

「じゃあ、わたしももらおうっと」
 釣られたように梢もつまんでもぐもぐしてから、

「ツナマヨだ。チャビーちゃんらしくて美味しいね」
「えへへ、ありがとう!」
 ニッコリ笑う。
 チャビーも笑う。

「ツナマヨ!? たべたい!」
「うん! 食べて食べて!」
 メリルもむしゃむしゃ。

「ツナコーンより、ずっとうまい!」
 ニッコリ笑う。
 チャビーもニコニコ。
 比較対象は回転寿司だろうか? 日本を満喫しているようで何より。

「ふー。まんぞく。おみずはある?」
「ちょっと待ってね」
 答えながら取り出した缶ジュースを見やり、

「モモジュース!」
 メリルが目を輝かせる。

「みなさんもどうぞ」
「サンキュー! 喉もカラカラだったんだよ!」
 キャロルも笑顔で手渡されたジュース缶を見やり、

「あお……もりって、リンゴが有名なところだっけ」
「詳しいなあんた」
 大きく書かれた商品名を読んでみせるキャロルに苦笑する。
 この女、最初から観光するつもりで来日したのだろうか?
 そんなことを考える舞奈に、

「マイちゃんもどうぞ」
「おっカツオジュースじゃないか! さんきゅー園香」
 差し出された缶を見やって舞奈もイントネーションのおかしい英語で答える。

「紅茶ですね。ありがとうございます」
「よかった。イギリス系の方だと思ったから気にいっていただけると思って」
「たすかりました。水筒で持って来ようとしたら忘れちゃって」
 レインの賛辞に園香が微笑む。

「そうだったのか?」
「あ、はい」
 舞奈は思わず見やる。
 レインが恐縮するようにうなずく。
 彼女との面識は舞奈の方が少し深いが、金髪だから外人なのだろうくらいにしか思っていなかった。だが園香はそうじゃなかったらしい。

(そっかー彼女、スカイフォールのプリンセスの現地の友人なんだっけ)
 園香の察する能力の高さにキャロルが内心で感心する。

「じゃ、あたしも早速いただくぜ」
「そ、そうだね。マイちゃんそれ大好きだもんね……」
 舞奈もカツオジュースに口をつけ、

「えっ飲むの? それ」
「うわぁ……」
「うるせぇ」
 顔をしかめるキャロル、声に出して言った梢を思わず睨む。

 だがレインと園香も地味に両の拳をキュッと握りしめ、目を見開きながら舞奈がジュースに口をつけるのを見ている。
 その瞬間を目にするショックを予想して緊張しているのがわかる。
 地味に今までキャロルとか明日香とかから受けた侮蔑より傷ついた。
 そんな舞奈の側で、

「ブラボーちゃんも、お昼ごはん食べたかな?」
 ふとチャビーが言った。

 一行が林を探検している理由はムクロザキの毒蜘蛛を捕獲するためだ。
 舞奈たちの目的は催淫作用のある毒を持つ蜘蛛の産卵および子蜘蛛の拡散の阻止。
 梢とレインの目的は蜘蛛とは関係なく預言の真相を確かめること。
 だがチャビーの目的は、飼っていた蜘蛛がいなくなって悲しんでいる(はずの)ムクロザキ先生に蜘蛛のブラボーちゃんを見つけて返してあげることだ。

「まあ昼ごはんかはともかく、十分な食べ物はあるんじゃないかしら」
「よかった!」
 明日香が木の幹を這う何かを見やりながらボソリと言う。
 チャビーはニッコリ安堵の笑みを浮かべる。
 やれやれ、食事の最中に話題にされなくて幸いだった。

「巣を張ってたから動かなかった……?」
「食休みかも知れないわよ」
 首をかしげるレインに梢が軽口を返し、

「あたしもたくさん食べて。眠たくなってきちゃったね」
「自由すぎるだろうあんた」
 キャロルがふわわとあくびしながら大きな木の根の上に寝転がる。

「ふふ、パパと同じこと言ってる」
「ええっ!? あたしそんな年じゃないよ!」
 片付けをしながら園香が珍しくくすくす笑う。
 キャロルはビックリして起き上がる。

「キャロル、おじさん」
「メリルまで」
 幼女にまで面白そうに言われ、

「もー! 行くよ! みんな!」
 一行は探索を再開することにした。
 園香とチャビーがバスケットを仕舞い、ジュースの空き缶を回収する。
 そしてレインと梢がレジャーシートを片付ける側、

「蜘蛛の位置はどうだ?」
「あら、さっきまでより近いわね」
「お、近づいてきてるのか。奴もようやく起きたかな」
 アプリで蜘蛛の位置を確認した明日香の言葉に口元をゆるめる。

「手間が省けてラッキーじゃん。休憩しててよかったね」
「まあ否定はせんがな」
 キャロルの言葉に苦笑する。

「ブラボーちゃん、こっちに来るの? 帰りたくなったのかな」
「だと良いんだがな」
 片付け終わってやってきたチャビーの楽観論に苦笑しつつ、

「そんじゃ、ブラボーちゃんと落ち合う場所までレッツゴーだ」
「ゴー!」
「Go-!」
 舞奈を先頭に、元気になったチャビーとメリル、皆は出発する。

「ブラボーちゃんが見つかったら、黒崎先生に教えてあげなきゃね!」
「先生、今日は学校にいるといいね」
 手にした虫かごをゆらせながら張り切るチャビー。
 隣でにこやかに同意する園香。
 虫かごは商店街のホームセンターで買ったらしい。
 黒崎先生の大事な蜘蛛が逃げたり窮屈な思いをしないようにと、大きくて丈夫なものを見繕ったのだそうな。その一方で、

「問題ないわ。確保の連絡をしたら速やかに登校するよう訓告しておいたから」
「そりゃそうだ。あんなデカイ毒蜘蛛を一晩あずかるとか親御さんが許さんだろう」
 明日香と舞奈の反応が厄介事を押しつけた女教師への恨み節なのは御愛嬌。

 そのように道なき道をかしましく進む一行は――

「――なんか音がしないか?」
「えっ?」
 舞奈の言葉に足を止める。
 誰ともなく聞き耳を立てる。
 その中で舞奈の次に気づいたのはキャロルだ。

 鳥のさえずり、木の枝をゆらす風の音にまぎれ、それらとは異質な音がする。
 間違いない。
 遠くだが、割と派手な物音だ。
 しかも舞奈たちが向かおうとしている方向から。

「熊だったりしてね」
「だから、熊なんかいねぇって」
 キャロルの軽口にツッコみながら口元を歪める。

 側の彼女の軽薄な口調とは裏腹に、先ほどまでの眠そうな様子は微塵もない。
 ヴィランとして裏の世界に馴染んだ彼女の感覚がそうさせている。

 さらに同じ音。
 先ほどから何回かしている。

 この音が何の音に近いかと考えると、木が倒れる音だ。
 熊にそこまでの力はないだろう。
 老木でも倒れたのだろうか?
 まとめて何本も?

「……発信機の反応が途絶したわ」
「どういうことだよ?」
「わたしじゃなくてアプリに聞いてよ。ステータスが『No Signal』になった以外にわかる情報は表示されてないわ」
 唐突な明日香の言葉に口元を歪め、

「ブラボーちゃん! 食べられちゃったの!?」
「いや、それだと発信機の反応がなくなった理由にはならんだろう」
 ショックを受けるチャビーに何食わぬ声色で答えながら、内心で顔をしかめる。

 動きを止めていた蜘蛛が動き出した直後の、物騒な物音。
 唐突な発信機のロスト。
 そもそも本来は米国の裏社会で多用されているという胡散臭いアプリ。
 何もかもに馴染み深い感触がする。
 つまり嫌な予感だ。

 ふと、県の占術士ディビナーでもある梢が視たという預言の言葉が脳裏をかすめる。
 舞奈が巨大な何かと戦闘しているというビジョン。
 今の状態からその状況になると仮定して、あり得る展開はどんなものだろうと思考を巡らせ、園香やチャビー、皆を守るために何をすべきかを考えようとして、

「ねえ、さっきより近いところで音が鳴ってない?」
「えっ?」
 キャロルの言葉にレインと梢が驚いて、チャビーと園香が首を傾げ、

「キャロル!」
「気をつけて! 強い――」
 メリルと明日香がはじかれたように叫ぶと同時に――

「――伏せろ!」
「!?」
「わっ!」
 舞奈も叫びながらチャビーと園香を抱えて地面を転がる。

 次の瞬間、側に立っていた木が倒れた。

 ……否。

 大人が登れそうなほど太くて立派な巨木が数本、真っ二つに裂けて吹き飛んだ!
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