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決意の旅立ち!

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 無限暗黒へと飛び込んで行く俺の腕をソラが掴んだが振り払った。

 ソラを巻き込む訳にはいかない。
 
 俺が飛び込んでくるとダークエルフは驚きの表情を浮かべた。どうやら俺がソラかベルのどちらかを見捨てると確信していたらしい。

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〈炎魔法・火炎陣〉
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 その時、火炎陣が俺と無限暗黒の間に放たれ爺さんが現れた。

「生き急ぐな、レオ」

「爺さん、どうしてここに!?」

「レオ……儂はあの日、お前を崖から落とすつもりはなかったのだ。ダークエルフを道連れに儂が崖から落ちようと計画していたがお前が崖から落ちてしまって後悔しなかった日などなかった」

「それならば僕をあの場所へと連れて行ったのはなぜですか?」

「ダークエルフがレオの生まれ持っての魔法力の大きさに恐れを抱き、儂にレオを始末するように助言したのだ。その時にヤツの洗脳から目を覚ますことができた。儂はヤツの言う通りに事を運ぶふりをして最後に出し抜く計画をしていたのだ」

 無限暗黒の引力がより一層強くなり火炎陣が風前の灯火となった。

「とにかく儂が罪滅ぼしとして無限暗黒へと入る」

「爺さん腑に落ちません。まず、あのダークエルフは何者なのですか?」

「ヤツは時空の狭間から現れ、儂に力を与えた」

「時空の狭間とはどこにあるのですか?」

「この世界には消えない雲が一つだけある。その雲の中に時空の狭間は存在するが、そんなことは忘れてレオには平和な世界で幸せに生きてほしい」

 最期にそう言うと爺さんは無限暗黒へと飛び込んでいった。

「爺、最期に余計なことをするな、俺のおかげで良い夢を見てこれたのを忘れたのか」

「ああ、そうじゃ。だが儂は間違っていた。永遠の闇で悔い改めることにする」

 そう言うと爺さんはダークエルフの顔を一発ぶん殴ってから無限暗黒へと吸い込まれていってしまった。

 爺さんを吸い込んだ無限暗黒はダークエルフもろとも消失した。 
 
 荒野には俺達3人とダークエルフの魔石、そして激戦の爪痕だけが残された。

「レオ、大丈夫?」
「うん、問題ない。でも……」

 俺の元へと駆け付けたソラに今起きた出来事を説明した。

「そんなことが……」
「俺は爺さんを無限暗黒から救いたい、でもまずは城に戻って事態の報告をしよう」

 俺は魔石を拾うと疲れ果てて気を失っているベルを背負ってソラと一緒に城へと戻ることにした。

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【レオ・グリフォン】
〈基本ステータス〉
 Lv :80
 HP :220/400
 MP :5/780
 魔法力:900
 攻撃力:490
 防御力:410
 回避力:450
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【ソラ・クリア】 
〈基本ステータス〉
 Lv :40
 HP :160/160
 MP :80/215
 魔法力:280
 攻撃力:160
 防御力:230
 回避力:250
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【ベル・フィオーレ】 
〈基本ステータス〉
 Lv :45
 HP :30/210
 MP :50/285
 魔法力:450
 攻撃力:335
 防御力:290
 回避力:365
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 俺は新たに〈土魔法・砂獏竜〉を獲得した。

 ソラは新たに〈水魔法・雪だるま〉を獲得した。

 ベルは新たに〈雷魔法・雷分身〉を獲得した。

 
 俺達が貴族の丘に戻ると城は跡形もなく消え去っていた。

 俺の帰還に人々は驚き目を丸くした。

「レオ王子、不幸な事故で亡くなられたと聞いておりましたが、ご無事で何よりです」

「ありがとう、ロイドさんも元気そうでよかった。早急に周知しなければならないことがあるから大広場に貴族や国王軍の兵士達を集めてほしい」

「承知いたしました」

 ロイドさんは俺が国王軍で唯一信頼している長老だ。
 
 俺は大広場で数万人の群衆の前に立つと、国王の死を直接告げた。すると群衆が想像以上に嘆き悲しんだ。
 
 爺さんがここまで慕われていたことは嬉しい半面、複雑な気持ちにもなった。どこまで真実を伝えるべきなのか、世の中には知らない方が幸せなこともあるのかもしれない。

 俺は発表後にロイドさんに再度会った。

「爺さんはダークエルフから国を守る為に自らを犠牲にした真の英雄だ。世界の人々にもそう伝えてほしい。僕はこれから爺さんの無念を晴らす為の冒険へと出発するから国の統治はロイドさんに任せたい」

「承知いたしました」

 
 俺達は〈砂雲〉に乗り崖下へと戻った。

 時空の狭間へと行く前にそれぞれが必要な物を買うことになり商業都市ロンダムを訪れた。

 俺が買うべき物は夜に使うゴムだ。

 なぜなら向こうの世界に売っているのか不明だからだ。そもそも素材すらないかもしれない。

 今すぐは不要でも将来的には必要な物だ。

 まして我がパーティには女の子がいるから最低限の準備はしとこう。

 俺は一人で薬局に入ると商品を手に取りかごに10箱入れた。これだけあれば足りるだろう。

「レオ!」

 レジの列に並んでいるとソラに声をかけられた。

「ど、どうしたの?」

「ベルがね、レオが私を呼んでるっていうから来たの」

 ソラは俺のかごの中を見て目を丸くして顔を赤らめた。

「こ、これはそういう意味じゃなくて」

「レオ……私達にはまだ早いと思う、もうちょっと我慢してね」

「そ、そうだよね。俺もそう思う」

 将来的には可能性があるという意味なのか気になったが聞かなかった。

 ふと、遠くを見るとベルが笑いながらこっちを見てた。

 ベルはこの手の悪ふざけが好きらしい。

 だが俺は列の流れでしっかりと購入した。

 
 それから二週間後、俺達は世界中を旅して遂に消失しない入道雲を発見した。

 ダンジョンの創設者がいなくなったことで、世界中からダンジョンが消失して平和が訪れた。行く先々の都市で人々は幸せそうに暮らしている。

「この世界は平和になり人々は幸せになった。だが時空の狭間からダークエルフが現れ爺さんにダンジョン創出スキルを付与していたのだとしたら、この虚構の平和は長くは続かない」

「そう、私達が時空の狭間の向こう側へと行き根本を絶たなければ、この世界に真の平和は訪れない」

 俺が言いたかった台詞をソラに先に言われてしまった。

「そ、そうだよね。険しい道のりになるだろうが俺は困難に挑むよ」

「私も一緒に挑むよレオ」

「無論私もだ、レオ、ソラ、よろしく頼むぞ」

 俺の〈砂雲〉に乗り入道雲に入ると、子供一人がなんとか入れるくらいの小さな裂け目があり、その内部はカラフルに光り輝いていた。

 これが時空の狭間!
 
 俺達は強い絆と揺るがぬ意志を持って時空の狭間へと突入した!!!
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