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人類最高戦力!

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 俺達が時空の狭間から脱出すると巨大都市を見渡せる建造物の屋上へと出た。

 地上は見渡す限りに人や馬車が溢れていた。街並みを見る限りでは俺達がいた世界と文明的には似ていそうだ。

「高い天井が綺麗な放物線を描いているな。さしずめ巨大シェルターといったところか」

 上空を見上げるとベルの言う通り天井がドームみたいに覆われていた。

「ほんとだねベル! レオ、地上に降りて街の人達に色々と教えてもらおうよ」

「そうしよう、ソラ」

 俺達が街の人に聞き込みをすると人類の最高権力者である大統領の元へと案内されることになった。

 立派な建物の最上階まで昇り、長い廊下の一番奥の部屋に入ると白髪のお爺さんが椅子に深々と腰掛けていた。

「お主達、時空の狭間から来たとは誠か?」

「はい、なのでこの世界について色々と教えていただけると助かります」

「ならばまずはヒエラルキーついて説明しよう。恥ずかしながら我々人類が言葉を話せる知的生命体では最底辺だ」

「そうですか、詳しくお願い致します」

「人類の他にも数多くの種族がいるのだが、我々は迫害されているから地上では暮らせない。だから致し方なく地下シェルターで暮らしているのだ」

「ならば一刻も早く地上での生活を取り戻さなければならないな」

 ベルが毅然と言った。

「その通り、だから魔法やクラスを持っている選ばれし者達は地上で日夜、敵と交戦しているのだ」

「では僕達も魔法やクラスを持っているので参戦させて下さい」

 時空の狭間がある以上はこの世界に平和が訪れないと俺達の世界も危うい。

「レベルと討伐履歴を教えてくれたまえ」

「僕のレベルは80でダークエルフを倒しました」

「ほう、素晴らしい実績だ。ぜひとも人類最強の精鋭部隊である“かなめ”に入隊してもらいたい」

「お願いします。あと時空の狭間について教えてもらえると助かります」

「あれについては正直わからない。一つだけ言えるのはお主達が地下シェルターに出られたのは幸運だったということ」

 俺達は要のメンバーと会うことになり大統領の執務室で待機した。

 大統領いわく要は現在8つのパーティで24人の構成。人類の最高戦力であり最前線で戦うことになるが、全人類から尊敬と感謝をされておりシェルター内では格別の待遇が保証されているらしい。
 
 現在、要の7つのパーティは別のシェルターにいたり地上で任務中だったりするから1つのパーティだけとしか会えないらしい。

「失礼致します、大統領」

 三人一組のパーティが執務室へと入ってきた。

「なんだよガキじゃねーか。こいつらが新たな要のメンバーなんて冗談だろ!?」

 赤色の髪をした傷だらけの男が強い口調で言った。

「あらまあ、坊や可愛い顔してるのね……舐め回してみたいわ」

 25歳くらいの紫色の髪をした胸元が開けた女性が俺を見つめながら言った。

 強烈な色香に俺の鼓動は激しく高鳴った。

「二人共やめなって、ドン引きしてるじゃないか可哀想に」

 眼鏡をかけた男が冷静に言った。

「それぞれ思うところはあるだろうが、この子達はダークエルフの討伐履歴を持っている。見かけによらず実力は確かなのだ」

「お言葉ですが大統領、ダークエルフはエルフ族では最弱であり追い込まれれば自滅するだけの雑魚です。その程度の実績で要に加えるのはいかがなものでしょうか」

 赤髪が礼儀正しく言った。

「レオ君のレベルは80だ。お前よりも少し高いぞ、ケイン」

 大統領が笑みを浮かべながら言った。

「なんだと!? だが俺のレベルは要の中では一番低い、あまり調子に乗るなよ」

 いや、俺は何も言ってないんだが……

「大統領、ケインの僭越な発言を深くお詫び致します。後で私の方から厳しく叱責致します」

 眼鏡をかけた男性が言った。

「気にするなシェスター、それじゃあレオ君たちはシェルター内の繁華街でも楽しんでくるといい、ホテルは五つ星のところを予約してある」

 大統領に要のメンバーが着用するバッジを渡された。

「大統領、僕達この世界の通貨を持ってないのですが――」

「問題ない。要のメンバーはシェルター内では衣食住などすべてが無料だから遠慮なく利用するといい、任務が入ったら連絡するからそれまでは自由行動だ」

 俺達が繁華街を訪れると大勢の人で賑わっていた。

「レオ、ご飯にしようよ」

「そうだね、ソラ……あの繁盛しているお店に入ろうか?」

 俺達は大通り沿いの庶民的な大きい店に入ると四人掛けの席に対面で座った。

「レオ、さっき要の女性に見とれていたな。ああいうのがタイプなのか?」

「ち、違うよ。誤解しないでくれベル!」

 俺は肉野菜炒めを頼んだがシャキシャキのもやしが沢山入ってて美味しかった。
 
 俺達は食事を終えるとレジへと行ったが代金を要求されないばかりか最敬礼されてしまった。

「想像以上にリスペクトされていて驚いたな」

 店から出るとベルが言った。

「なんだか恐縮だよね、私達まだ何もしてないのに」

 ソラが申し訳なさそうに言った。

「本当そうだよね、早く任務の依頼がきてほしい」

 俺はソラに共感した。

 大統領に紹介された五つ星ホテルを訪れると、正面玄関で深々とお辞儀されるVIP待遇で最上階のスイートルームへと通された。

 豪華な食事に貸切の大浴場など、まさに至れり尽くせりだった。

 だが、俺達はこの世界では実績がないだけに恐縮してばかりだった。

 それから三日が経って就寝前にホテルの部屋でソラとベルとトランプゲームで遊んでいた。
 
 俺は平和な日々に現状の深刻さを忘れかけていた。

 だがその時、誰かがチャイムを鳴らしたから俺は駆け足で玄関へと行きドアを開いた。

「大統領より緊急招集命令です!」
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