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15歳の誕生日!

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 ゴブリンキングは鉱石を探して深淵の底から壁をよじ登り鉱窟の入り口へと向かった。

 入り口付近で俺達を待ち伏せするつもりだろうが、この鉱窟には入り口が沢山あるから全てを塞ぐのは不可能だ。

 俺達はゴブリンキングに見つかることなく鉱窟からの脱出に成功した。

 鉱窟を出ると俺達のレベルが上がった。
 
 魔獣の討伐だけでなくレアな素材の入手でもレベルは上がる。

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 レオ・グリフォン Lv:82
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 ソラ・クリア   Lv:43
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 ベル・フィオーレ Lv:48
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 俺は【クラス“陰キャ”】の新スキル〈暗黙の了解テレパシー〉を獲得した。

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 〈暗黙の了解テレパシー〉 消費MP:10
 効果:異種族の言葉や文字が理解できるようになり、発動者の言葉や文字も相手に伝わるようになる。
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 俺がいた世界のダークエルフは例外的であり、基本的に異種族は人語を使わないから情報入手が困難を極める。特にエルフ族の使用言語は解読不可能とまで言われている。

 このスキルは大いに役立ちそうだ。
 
 俺達は岩肌にある地下へと繋がる扉を開けると地下道に出てシェルターへと急いで帰った。
 
 大統領の執務室に行くと任務の報告をした。

「その鉱石は見たことない代物だ、何か神秘の力があるかもしれないから大切に保管してほしい」

 俺は肌身離さず持っていることを誓った。

 大統領への報告を終えると俺はソラとベルと離れて一人で地下街を散策した。

 一人になりたい気分だった。

 他に選択肢が無かったとはいえエイブリーとの出来事は俺の心に深い傷を残した。
 
 だが落ち込んでなどいられない。
 
 エイブリーの尊厳を踏みにじったゴブリンキングは必ず討伐する。その上で故人の遺志を継ぎ人類の為に戦うことが手向けになるはずだ。それにソラとベルの前で弱音は吐きたくない。

 俺は気持ちを切り替えてホテルに帰ると最上階の部屋に入った。

「おかえりレオ、どこに行ってたの? 遅くて心配したよ」

 部屋に入るとソラが玄関まで迎えに来てくれた。
 
「ごめん、少し道に迷ってさ」

 ベルはリビングのソファで雑誌を読んでいた。

 俺もリビングで少しくつろぐことにした。
 
 なんだか、さっきからソラがそわそわしている。

「ソラ、どうしたの?」

「レオ、誕生日おめでとう! レオに似合いそうなジャケットを買ってきたよ」

「え、ありがとう!」

 そういえば今日は6月15日、俺の誕生日だ。

 ソラと出会ったばかりの頃に誕生日を聞かれた淡い記憶があり、その時に俺もソラの誕生日を聞いたのだが日付を全く思い出せない。

 プレゼントまで用意してくれたソラにもう一回、誕生日を聞くのは失礼だろう。ここはベルの誕生日を聞くことでソラがもう一度言う流れを期待しよう。

「ところでベルの誕生日はいつなんだ?」

「私の出生は不明だが毎年10月になるとステータスの年齢が勝手に増えているな」

「そ、そうなんだ……なんか聞いてごめん」

「謝る必要など全くない。ところでソラの誕生日はいつなんだ?」

 さすがベル、よくぞ聞いてくれた。

「私は2月8日だよ」

 俺はすぐさまメモをとった。

 15歳といえば俺がいた世界では結婚が可能になる年齢だ。

 まてよ、そういえばあの時のソラが言ってた、“もう少し我慢してね"は俺が15歳になった時という意味だったのではないか。
 
 だとすれば今日が俺とソラの初夜だ!
 
 いやバカか俺は、肝心のソラがまだ14歳じゃないか。だが俺の妄想が正しければ来年の2月8日が初夜になるはずだ。

「レオ、ニコニコしてどうしたの?」

「な、なんでもないよソラ。プレゼントありがとう」

 包装紙を開けると赤いジャケットが入っていた。

「レオはいつもシックな服装だけど、たまには明るい服も似合うと思うよ」

「ありがとう、明日さっそく着させてもらうよ」

 その後、夕食と風呂を済ませて消灯の時間になった。

 ベッドに入ったが初夜の妄想ばかりしてたら興奮して眠れなくなった。

 仕方ないからトイレでスッキリしてこよう。

 ソラはスヤスヤ寝ているがベルは起きているような気がする。

 いつも勘が鋭いベルにからかわれるから〈無断欠席エスケープ〉を使うか迷うとこだが、さすがにやめとこう。

 俺がベッドから出ると案の定ベルに声をかけられた。

「レオ……ソラのおっぱいは成長中だよ」

「ど、どうでもいいよ。そんなことは」

 俺はますます興奮したが平静を装った。

「いつも一人でしてて可哀想だから私が慰めてあげようか?」

「ど、どういう意味!?」

「ウソに決まってるでしょ。なに期待しちゃってるの?」

 ベルに煽られて欲情しかけたが、なんとか理性で持ちこたえた。

 だが、もう我慢できないからトイレへと駆け込んだ。

 俺は冷静になると寝室へと戻ってきた。

「レオ……今日はいつにもまして早かったな」

 ベルが笑いながら言った。

「よ、余計なお世話だ」

 俺はベッドに入るなり賢者タイムへと突入した。

 想像以上に過酷な世界だ。人類の未来は大事だがそれよりも遥かにソラとベルの命は重い。この二人だけは何があっても守り抜こう。
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