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幻獣グリフォン
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エルフ族がいる教会の壁は年季を帯びており、散見されるひび割れを夕陽が照らしていた。
ベルの〈移動玄関〉の出口を教会の外の雑草が生い茂る地面に設置した。
俺達は〈学級閉鎖〉を発動したまま教会に忍びこむことにした。
入り口の看板にはドラゴン教と書かれている。
教会内に入るとブラッドエルフ1体を取り囲むように9人のダークエルフがいた。
「ドラゴン様の召喚の為に必要な鉱石はあと五つだ。そうすればアンデッド種を率いるオークどもから覇権を奪還できる」
ブラッドエルフがダークエルフに教えを説いている。
教会内の壁画には幻獣種が描かれており、召喚に必要な条件がエルフ語で刻印されている。〈暗黙の了解〉を発動して次々と解読していくが、フェニックスやワイバーンなどは不可能な召喚条件が書かれていた。
順番に壁画を見て行くとグリフォン家の家紋にそっくりの壁画が見つかった。
その壁画には幻獣グリフォンを召喚するための術式と共にこう刻まれていた。
“古よりグリフォンとの絆がある人類の末裔が鉱石を持つ時のみ永続召喚可能”
俺は術式を詳しくメモすると、教会の隅っこでエルフ族の様子を注視することにした。
「実に鬱陶しい視線だ、出てこいネズミども! この教会は既に我が魔法で封鎖されている」
ブラッドエルフが声を荒げた。
気づかれていたか、だが想定内だ。
ベルがすぐさま〈移動玄関〉の入り口を床に設置すると俺達は〈移動玄関〉の出口から教会の外へと脱出して事なきを得た。
「レオ、エルフがいきなり怒鳴ってびっくりしたね」
ソラが言った。
「そうだね、だが想像以上の収穫があったよ」
すっかり日が暮れていたが早速、幻獣グリフォンの召喚を試すことにした。
俺達は都市から出ると少し歩いて、辺りに誰もいない荒野に着いた。3人で強力して地面に召喚の術式を刻み、その中心に俺が手のひらをつけて魔力を注ぎ込んだ。
すると白銀の閃光が術式から放たれた。眩しくて閉じた目を開けると子犬サイズの幻獣グリフォンが召喚されていた。
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幻獣グリフォン 種族値:測定不能 個体値:1
成体になれば最強クラスの魔獣だが、幼体の時は脆弱な上に人に懐かないため大切に育てつつ信頼関係を築いていかなければならない。
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白銀の体毛はまだ産毛であり飛翔することもできないが凛々しい外見からは王者の風格が漂う。
俺は幻獣グリフォンを抱っこしてリュックにしまうと都市へと戻った。
宿の部屋に入りリュックを開けてみるとスヤスヤと眠っていた。幻獣とはいえまだ幼体だから大切に育てていこうと思った。
翌朝、店で食糧を調達してきて幻獣グリフォンにいろいろな食材を与えてみたが何も食べない。どうやらかなりの偏食らしい。
「困ったね、このままだと衰弱しちゃうよ」
ソラが心配そうに言った。
「そうだね、いったい何なら食べるのか、幻獣種だけに調べようがないからな」
「レオ、そんなことよりも提案がある。私達のレベルはこの世界では低すぎるから先に進む前に地道なレベル上げが必要だ、急がば回れだ」
「そうだな、ベル。だが効率重視でいこう、戦闘力が低くて経験値が高い魔獣を狩りたいところだ」
孤高のスライムがいればな……
翌朝、冒険者ギルドで聞き込みをするものの都合の良い魔獣はいなかった。だが修行にうってつけの原生林を教えてもらった。
数日歩いて原生林へと辿り着くと早速、恐竜種に出くわした。
鋭い牙を持った恐竜の群れが5体で襲いかかってきた。
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アルサウルス 種族値:380 個体値:30~85
アロサウルスみたいな魔獣。獰猛な性格であり群れで狩りをする。
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俺が土魔法と黒剣で3体、ベルが雷魔法とダガーで1体、ソラが水魔法と弓矢で1体倒した。
アルサウルスは魔石にはならなかった。どうやら、この世界の魔獣は本当に生きているらしい。
ベルがダガーでアルサウルスの肉をさばき、それを鉄板で焼いてみんなで食べた。
実にジューシーで美味しい肉だった。この原生林には果実や野菜も豊富で食べ物に困ることはなさそうだ。
ソラが焼き肉をラミにも食べやすい大きさにしてから取り分けてあげていた。
俺も試しにアルサウルスの生肉を幻獣グリフォンに与えてみた。すると初めて食物に興味を示した。入念に匂いを嗅ぐと、ついに生肉にかぶりついた。
どうやら幻獣グリフォンは恐竜種の生肉が好物らしい。
これは一石二鳥だ。俺達は原生林で恐竜種と戦ってレベル上げをしながら幻獣グリフォンの育成をすることにした。
原生林で一ヶ月修行すると俺達はレベルを大きく上げることに成功して新しい魔法やスキルをいくつも獲得した。
ラミともだいぶ意思疎通が図れるようになってきたが俺よりもソラに懐いてる気がする……
幻獣グリフォンは身体の成長こそないものの飛翔できるようになり、小さい獲物は自ら狩るようになった。
だが俺のリュックを気に入ったのか移動時や寝る時はリュックから出てこない……
都市での情報取集からアンデッド種を率いるオーク族も幻獣種を率いるエルフ族も人類や獣人への迫害や拷問を繰り返してきた歴史がわかった。
この二大勢力が対立しているのは好都合であり、俺達は上手く立ち回りながら敵の戦力をそいでいくことにした。
最初の標的は、エルフ族最弱のダークエルフとオーク族最弱のデビルオークに決まった。
ベルの〈移動玄関〉の出口を教会の外の雑草が生い茂る地面に設置した。
俺達は〈学級閉鎖〉を発動したまま教会に忍びこむことにした。
入り口の看板にはドラゴン教と書かれている。
教会内に入るとブラッドエルフ1体を取り囲むように9人のダークエルフがいた。
「ドラゴン様の召喚の為に必要な鉱石はあと五つだ。そうすればアンデッド種を率いるオークどもから覇権を奪還できる」
ブラッドエルフがダークエルフに教えを説いている。
教会内の壁画には幻獣種が描かれており、召喚に必要な条件がエルフ語で刻印されている。〈暗黙の了解〉を発動して次々と解読していくが、フェニックスやワイバーンなどは不可能な召喚条件が書かれていた。
順番に壁画を見て行くとグリフォン家の家紋にそっくりの壁画が見つかった。
その壁画には幻獣グリフォンを召喚するための術式と共にこう刻まれていた。
“古よりグリフォンとの絆がある人類の末裔が鉱石を持つ時のみ永続召喚可能”
俺は術式を詳しくメモすると、教会の隅っこでエルフ族の様子を注視することにした。
「実に鬱陶しい視線だ、出てこいネズミども! この教会は既に我が魔法で封鎖されている」
ブラッドエルフが声を荒げた。
気づかれていたか、だが想定内だ。
ベルがすぐさま〈移動玄関〉の入り口を床に設置すると俺達は〈移動玄関〉の出口から教会の外へと脱出して事なきを得た。
「レオ、エルフがいきなり怒鳴ってびっくりしたね」
ソラが言った。
「そうだね、だが想像以上の収穫があったよ」
すっかり日が暮れていたが早速、幻獣グリフォンの召喚を試すことにした。
俺達は都市から出ると少し歩いて、辺りに誰もいない荒野に着いた。3人で強力して地面に召喚の術式を刻み、その中心に俺が手のひらをつけて魔力を注ぎ込んだ。
すると白銀の閃光が術式から放たれた。眩しくて閉じた目を開けると子犬サイズの幻獣グリフォンが召喚されていた。
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幻獣グリフォン 種族値:測定不能 個体値:1
成体になれば最強クラスの魔獣だが、幼体の時は脆弱な上に人に懐かないため大切に育てつつ信頼関係を築いていかなければならない。
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白銀の体毛はまだ産毛であり飛翔することもできないが凛々しい外見からは王者の風格が漂う。
俺は幻獣グリフォンを抱っこしてリュックにしまうと都市へと戻った。
宿の部屋に入りリュックを開けてみるとスヤスヤと眠っていた。幻獣とはいえまだ幼体だから大切に育てていこうと思った。
翌朝、店で食糧を調達してきて幻獣グリフォンにいろいろな食材を与えてみたが何も食べない。どうやらかなりの偏食らしい。
「困ったね、このままだと衰弱しちゃうよ」
ソラが心配そうに言った。
「そうだね、いったい何なら食べるのか、幻獣種だけに調べようがないからな」
「レオ、そんなことよりも提案がある。私達のレベルはこの世界では低すぎるから先に進む前に地道なレベル上げが必要だ、急がば回れだ」
「そうだな、ベル。だが効率重視でいこう、戦闘力が低くて経験値が高い魔獣を狩りたいところだ」
孤高のスライムがいればな……
翌朝、冒険者ギルドで聞き込みをするものの都合の良い魔獣はいなかった。だが修行にうってつけの原生林を教えてもらった。
数日歩いて原生林へと辿り着くと早速、恐竜種に出くわした。
鋭い牙を持った恐竜の群れが5体で襲いかかってきた。
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アルサウルス 種族値:380 個体値:30~85
アロサウルスみたいな魔獣。獰猛な性格であり群れで狩りをする。
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俺が土魔法と黒剣で3体、ベルが雷魔法とダガーで1体、ソラが水魔法と弓矢で1体倒した。
アルサウルスは魔石にはならなかった。どうやら、この世界の魔獣は本当に生きているらしい。
ベルがダガーでアルサウルスの肉をさばき、それを鉄板で焼いてみんなで食べた。
実にジューシーで美味しい肉だった。この原生林には果実や野菜も豊富で食べ物に困ることはなさそうだ。
ソラが焼き肉をラミにも食べやすい大きさにしてから取り分けてあげていた。
俺も試しにアルサウルスの生肉を幻獣グリフォンに与えてみた。すると初めて食物に興味を示した。入念に匂いを嗅ぐと、ついに生肉にかぶりついた。
どうやら幻獣グリフォンは恐竜種の生肉が好物らしい。
これは一石二鳥だ。俺達は原生林で恐竜種と戦ってレベル上げをしながら幻獣グリフォンの育成をすることにした。
原生林で一ヶ月修行すると俺達はレベルを大きく上げることに成功して新しい魔法やスキルをいくつも獲得した。
ラミともだいぶ意思疎通が図れるようになってきたが俺よりもソラに懐いてる気がする……
幻獣グリフォンは身体の成長こそないものの飛翔できるようになり、小さい獲物は自ら狩るようになった。
だが俺のリュックを気に入ったのか移動時や寝る時はリュックから出てこない……
都市での情報取集からアンデッド種を率いるオーク族も幻獣種を率いるエルフ族も人類や獣人への迫害や拷問を繰り返してきた歴史がわかった。
この二大勢力が対立しているのは好都合であり、俺達は上手く立ち回りながら敵の戦力をそいでいくことにした。
最初の標的は、エルフ族最弱のダークエルフとオーク族最弱のデビルオークに決まった。
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