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1 目覚めたらスライムでした
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「……え?」
気がついたとき、俺は暗闇の中にいた。
いや、暗闇というのも少し違う。
真っ暗なはずなのに、なぜか周囲の様子がぼんやりと分かるのだ。
視界というより、感覚で空間を把握しているような――そんな不思議な感覚だった。
ひんやりとした空気。
湿った土の匂い。
どこか遠くで、水滴がぽたぽたと落ちる音が聞こえる。
……森、だろうか?
ぼんやりとした意識の中で、俺は状況を整理しようとした。
だが、すぐに異変に気づく。
「……あれ?」
体が、動かない。
いや、違う。
正確には――
手がない。
そして、
足もない。
「え?」
思わず声を出した……つもりだった。
だが、耳に届いたのは声ではなく、どこか粘ついたような震えだった。
ぷるん。
そんな間抜けな音が、自分の体から響いた。
嫌な予感がする。
恐る恐る体を動かしてみると、ぶよん、とゼリーのように揺れた。
「……なんだこれ」
俺は混乱しながら周囲を探った。
するとすぐ近くに、小さな水たまりがあるのが分かった。
本能的に、そこへ体を近づける。
そして――
水面に映った自分の姿を見た瞬間。
俺は完全に固まった。
そこにいたのは、
丸くて、青くて、ぷるぷるしている生き物。
いわゆるファンタジーでよく見る、
最弱の魔物。
「……スライム?」
思わず呟く。
いや、待て。
嘘だろ?
俺は確か――
会社にいた。
残業でくたくたになりながら、書類をまとめていたら……
そこで――
「……あ」
そこから先の記憶がない。
つまり、これは。
「転生ってやつか……?」
まさかとは思うが、状況的にはそれしか説明がつかない。
だが――
「よりにもよってスライムって……」
俺はがっくりと体を揺らした。
ぷるん。
情けない音が響く。
スライムといえば、RPGでは最初の雑魚だ。
初心者が最初に倒す練習相手みたいな存在。
剣を持った勇者どころか、
村人でも倒せるレベルの弱さ。
そんな魔物に転生って、どういう罰ゲームだ。
「せめてドラゴンとかさ……」
文句を言いかけた、その時だった。
突然。
頭の中に、機械のような声が響いた。
---
【スキルを獲得しました】
【捕食】
---
「……え?」
思わず間抜けな声が漏れる。
今の、何だ?
スキル?
捕食?
意味を考えるよりも早く――
ガサガサ。
近くの草むらが揺れた。
俺は反射的にそちらへ意識を向ける。
そして、
そいつは現れた。
背丈は子供ほど。
緑色の肌。
尖った耳。
そして手には、粗末な棍棒。
「……ゴブリン」
間違いない。
ファンタジーでよく見る、あの魔物だ。
しかもそいつは――
明らかに、
俺を見ている。
「ちょ、待て待て待て」
俺は慌てて後退しようとした。
だがスライムの体は遅い。
ずる……ずる……としか動けない。
その間にも、
ゴブリンはニヤニヤと笑いながら近づいてくる。
完全に、
獲物を見る目だ。
「いやいやいやいや!」
スライムなんて一撃だろ……
俺の頭の中で警報が鳴り響く。
だがゴブリンは構わず棍棒を振り上げた。
影が、俺の体を覆う。
「終わった……」
そう思った瞬間だった。
体が、勝手に動いた。
ぶよん!
勢いよく跳ねた俺の体が、
ゴブリンの腕に――
張り付いた。
「ギャッ!?」
ゴブリンが悲鳴を上げる。
だが、それだけじゃない。
ゴブリンの腕が、
俺の体の中へ、
ずぶずぶと沈んでいく。
「な、なんだこれ!?」
ゴブリンが慌てて腕を引こうとする。
だが抜けない。
むしろ、
どんどん飲み込まれていく。
そして。
頭の中に再び声が響いた。
---
【捕食発動】
【ゴブリンを吸収しています】
---
「?」
俺が理解するより早く、
ゴブリンの体は、
ぐにゃりと歪み――
そのまま、
跡形もなく消えた。
森は、静まり返っていた。
ついさっきまで騒いでいたゴブリンは、
どこにもいない。
残っているのは、
ぷるぷる揺れる俺だけ。
そして。
---
【レベルが上がりました】
【ゴブリンの能力を獲得しました】
---
「……」
俺はしばらく動けなかった。
いや、スライムだから元々あまり動けないけど。
それでも、
今起きたことを必死に整理する。
ゴブリンが襲ってきて。
体が勝手に動いて。
飲み込んで。
そして、
消えた。
「……つまり」
もしかして、俺。
めちゃくちゃヤバいスキル持ってないか?
ぷるん、と体が揺れる。
俺は森の奥へと意識を向けた。
そこにはまだ、
たくさんの気配がある。
ゴブリン。
小型の魔物。
獣のような気配。
この森には、
まだまだ魔物がいる。
そして俺は、まだ知らない。
この【捕食】というスキルが――
世界の勢力図すら塗り替える力だということを。
気がついたとき、俺は暗闇の中にいた。
いや、暗闇というのも少し違う。
真っ暗なはずなのに、なぜか周囲の様子がぼんやりと分かるのだ。
視界というより、感覚で空間を把握しているような――そんな不思議な感覚だった。
ひんやりとした空気。
湿った土の匂い。
どこか遠くで、水滴がぽたぽたと落ちる音が聞こえる。
……森、だろうか?
ぼんやりとした意識の中で、俺は状況を整理しようとした。
だが、すぐに異変に気づく。
「……あれ?」
体が、動かない。
いや、違う。
正確には――
手がない。
そして、
足もない。
「え?」
思わず声を出した……つもりだった。
だが、耳に届いたのは声ではなく、どこか粘ついたような震えだった。
ぷるん。
そんな間抜けな音が、自分の体から響いた。
嫌な予感がする。
恐る恐る体を動かしてみると、ぶよん、とゼリーのように揺れた。
「……なんだこれ」
俺は混乱しながら周囲を探った。
するとすぐ近くに、小さな水たまりがあるのが分かった。
本能的に、そこへ体を近づける。
そして――
水面に映った自分の姿を見た瞬間。
俺は完全に固まった。
そこにいたのは、
丸くて、青くて、ぷるぷるしている生き物。
いわゆるファンタジーでよく見る、
最弱の魔物。
「……スライム?」
思わず呟く。
いや、待て。
嘘だろ?
俺は確か――
会社にいた。
残業でくたくたになりながら、書類をまとめていたら……
そこで――
「……あ」
そこから先の記憶がない。
つまり、これは。
「転生ってやつか……?」
まさかとは思うが、状況的にはそれしか説明がつかない。
だが――
「よりにもよってスライムって……」
俺はがっくりと体を揺らした。
ぷるん。
情けない音が響く。
スライムといえば、RPGでは最初の雑魚だ。
初心者が最初に倒す練習相手みたいな存在。
剣を持った勇者どころか、
村人でも倒せるレベルの弱さ。
そんな魔物に転生って、どういう罰ゲームだ。
「せめてドラゴンとかさ……」
文句を言いかけた、その時だった。
突然。
頭の中に、機械のような声が響いた。
---
【スキルを獲得しました】
【捕食】
---
「……え?」
思わず間抜けな声が漏れる。
今の、何だ?
スキル?
捕食?
意味を考えるよりも早く――
ガサガサ。
近くの草むらが揺れた。
俺は反射的にそちらへ意識を向ける。
そして、
そいつは現れた。
背丈は子供ほど。
緑色の肌。
尖った耳。
そして手には、粗末な棍棒。
「……ゴブリン」
間違いない。
ファンタジーでよく見る、あの魔物だ。
しかもそいつは――
明らかに、
俺を見ている。
「ちょ、待て待て待て」
俺は慌てて後退しようとした。
だがスライムの体は遅い。
ずる……ずる……としか動けない。
その間にも、
ゴブリンはニヤニヤと笑いながら近づいてくる。
完全に、
獲物を見る目だ。
「いやいやいやいや!」
スライムなんて一撃だろ……
俺の頭の中で警報が鳴り響く。
だがゴブリンは構わず棍棒を振り上げた。
影が、俺の体を覆う。
「終わった……」
そう思った瞬間だった。
体が、勝手に動いた。
ぶよん!
勢いよく跳ねた俺の体が、
ゴブリンの腕に――
張り付いた。
「ギャッ!?」
ゴブリンが悲鳴を上げる。
だが、それだけじゃない。
ゴブリンの腕が、
俺の体の中へ、
ずぶずぶと沈んでいく。
「な、なんだこれ!?」
ゴブリンが慌てて腕を引こうとする。
だが抜けない。
むしろ、
どんどん飲み込まれていく。
そして。
頭の中に再び声が響いた。
---
【捕食発動】
【ゴブリンを吸収しています】
---
「?」
俺が理解するより早く、
ゴブリンの体は、
ぐにゃりと歪み――
そのまま、
跡形もなく消えた。
森は、静まり返っていた。
ついさっきまで騒いでいたゴブリンは、
どこにもいない。
残っているのは、
ぷるぷる揺れる俺だけ。
そして。
---
【レベルが上がりました】
【ゴブリンの能力を獲得しました】
---
「……」
俺はしばらく動けなかった。
いや、スライムだから元々あまり動けないけど。
それでも、
今起きたことを必死に整理する。
ゴブリンが襲ってきて。
体が勝手に動いて。
飲み込んで。
そして、
消えた。
「……つまり」
もしかして、俺。
めちゃくちゃヤバいスキル持ってないか?
ぷるん、と体が揺れる。
俺は森の奥へと意識を向けた。
そこにはまだ、
たくさんの気配がある。
ゴブリン。
小型の魔物。
獣のような気配。
この森には、
まだまだ魔物がいる。
そして俺は、まだ知らない。
この【捕食】というスキルが――
世界の勢力図すら塗り替える力だということを。
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