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一章.ブレイキングケイジ編
12.尊厳を踏み躙った報い
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救急車のサイレンが聞こえる。
最後の膝で顔面砕けたんだろうな、そんな感触だったもの。たった6秒の試合、いざ終わったら虚しさにいっぱいで、僕は控室のパイプ椅子に座り、姫原さんに無言で渡された市販のスポドリを開けて、一口飲んだ。
「お見事、秒殺KOだな久島くん」
「朝原さん」
第二試合前の、秋山の粗相による清掃から時間ができたらしい。朝原光流自らが、会いにきて、僕は流石に椅子から立とうとしたが、手を前に出され座ったままでいいと示される。
「視聴者あの瞬間一気に跳ね上がってね、いやはやイイ宣伝になった、やっぱり格闘技は派手な勝ち方しないと客が来ないからさ」
「ありがとうございます」
そんなつもりはない、ただぶちのめしただけ、結果的にそうなっただけと伝える僕に、朝原さんは妖しく笑いながら言う
「けどさ、キミも結構ひどい奴だな……本当は最初の一撃目をハイキックにして、失神で倒せたろ?わざわざ丁寧に、三発も全力、しかも最後は顔面に膝……彼、右の肋骨数本に上腕骨が折れて、顔面は粉砕骨折してて運ばれたよ?頚椎も捻挫して……半年は病院なんじゃないかな?可哀想に」
見抜かれていた、僕は少し顔を歪めた。
実際そうだ、最初の蹴り……ミドルではなくハイキックならば、意識を刈り取ってあんな怪我せず綺麗に倒せた自覚があった。
「最初のミドル、カウンターごと潰しに行ったね?キミの威力とスピードだからこそ出来る芸当だ、相手が殴ってこようと構わず蹴ってしまえば防御になる……これが脇腹に当たり、肋骨を砕いて痛みと恐怖を刻み込む」
そして、僕が秋山くんを再起不能にするまでの流れすらも朝原さんは解剖し、露わにしていった。
「二発目、肩を狙った高めのミドル、その威力で秋山くんの右上腕が折れて肩も脱臼させた、これでガードはできなくなり……金網に蹴り込まれ逃げられない彼に……三発目、左の跳び膝で顔面を粉砕……心も体も砕く見事な流れだよ」
全てを、狙って行ったわけではない。
素人の秋山くんなら、一撃喰らったら恐怖と衝撃から判断が鈍ると思ったし、足もすくむだろうと思った。そうしたらあとは流れだった、蹴りで倒すある程度の段階は組み立てて、それを行っただけ。
「朝原さんは……」
「うん?」
「僕がこんな勝ち方して、大人気ないと思いますか?」
朝原さんに僕は尋ねた、素人相手にムキになった僕は大人気ないかと。朝原さんはニヤリと笑った。
「世間はそうだけど、ここであいつ誓約書にサインして金網に上がったから何も言えねーよ?あいつが久島くんの尊厳に踏み込んで、ツバ吐いて喧嘩売った結果、失禁脱糞KOしたんだから……」
世間はそう言うだろうなと、しかし俺は秋山の礼を欠いた行いの果てに起きた自業自得だと、朝原さんは言い切った。
「まぁさ、ブレイキングケイジ見てる奴は派手好きだし、調子乗った輩がリングに這いつくばるのを安全なとこでバカにして笑ってみたい奴ら居るし、需要にはなったよね……感謝してるよ久島くんには」
朝原さんはそう言うや、僕の手を握って握手し、手を離した。手のひらに何やら握らされて、開いてみれば……栄一が数枚握らされていた。
「え!?は!?」
「ファイトマネーとは別に、俺からのお捻り、それで友達と美味いもの食って遊んできなよ?」
それじゃ、と手を上げて朝原さんは解説席へ戻って行った。僕は、手の中の栄一数枚を見て、姫原オーナーに言う。
「これも、ファイトマネー扱いですかね?」
「ええよそんな、美味しいもの食べに行き」
ファイトマネーのうち、3割はマッチメイク等の為の謝礼に、ジムへ収める必要がある、だからこれも納めなければならないのかと確認したら、流石にそこからは取らんよと僕は諭された。
なお……全て試合を終えた後の授賞式で、僕は『ベストバウト賞』で賞金が上乗せされたその総額は……ジムへの謝礼を抜いて70万、まだアマチュアでプロですらないのに支払わられて、通帳を見た父親に闇バイトを疑われた。
さらに数日後、勝利者賞でスポンサーとなっている健康食品会社からプロテインやらBCAAやら、学生が手を出すと割高な様々なサプリメントが送られて、そりゃブレイキングケイジ出るのも視野に入れるよなと太っ腹ぶりに唖然とする事になる。
最後の膝で顔面砕けたんだろうな、そんな感触だったもの。たった6秒の試合、いざ終わったら虚しさにいっぱいで、僕は控室のパイプ椅子に座り、姫原さんに無言で渡された市販のスポドリを開けて、一口飲んだ。
「お見事、秒殺KOだな久島くん」
「朝原さん」
第二試合前の、秋山の粗相による清掃から時間ができたらしい。朝原光流自らが、会いにきて、僕は流石に椅子から立とうとしたが、手を前に出され座ったままでいいと示される。
「視聴者あの瞬間一気に跳ね上がってね、いやはやイイ宣伝になった、やっぱり格闘技は派手な勝ち方しないと客が来ないからさ」
「ありがとうございます」
そんなつもりはない、ただぶちのめしただけ、結果的にそうなっただけと伝える僕に、朝原さんは妖しく笑いながら言う
「けどさ、キミも結構ひどい奴だな……本当は最初の一撃目をハイキックにして、失神で倒せたろ?わざわざ丁寧に、三発も全力、しかも最後は顔面に膝……彼、右の肋骨数本に上腕骨が折れて、顔面は粉砕骨折してて運ばれたよ?頚椎も捻挫して……半年は病院なんじゃないかな?可哀想に」
見抜かれていた、僕は少し顔を歪めた。
実際そうだ、最初の蹴り……ミドルではなくハイキックならば、意識を刈り取ってあんな怪我せず綺麗に倒せた自覚があった。
「最初のミドル、カウンターごと潰しに行ったね?キミの威力とスピードだからこそ出来る芸当だ、相手が殴ってこようと構わず蹴ってしまえば防御になる……これが脇腹に当たり、肋骨を砕いて痛みと恐怖を刻み込む」
そして、僕が秋山くんを再起不能にするまでの流れすらも朝原さんは解剖し、露わにしていった。
「二発目、肩を狙った高めのミドル、その威力で秋山くんの右上腕が折れて肩も脱臼させた、これでガードはできなくなり……金網に蹴り込まれ逃げられない彼に……三発目、左の跳び膝で顔面を粉砕……心も体も砕く見事な流れだよ」
全てを、狙って行ったわけではない。
素人の秋山くんなら、一撃喰らったら恐怖と衝撃から判断が鈍ると思ったし、足もすくむだろうと思った。そうしたらあとは流れだった、蹴りで倒すある程度の段階は組み立てて、それを行っただけ。
「朝原さんは……」
「うん?」
「僕がこんな勝ち方して、大人気ないと思いますか?」
朝原さんに僕は尋ねた、素人相手にムキになった僕は大人気ないかと。朝原さんはニヤリと笑った。
「世間はそうだけど、ここであいつ誓約書にサインして金網に上がったから何も言えねーよ?あいつが久島くんの尊厳に踏み込んで、ツバ吐いて喧嘩売った結果、失禁脱糞KOしたんだから……」
世間はそう言うだろうなと、しかし俺は秋山の礼を欠いた行いの果てに起きた自業自得だと、朝原さんは言い切った。
「まぁさ、ブレイキングケイジ見てる奴は派手好きだし、調子乗った輩がリングに這いつくばるのを安全なとこでバカにして笑ってみたい奴ら居るし、需要にはなったよね……感謝してるよ久島くんには」
朝原さんはそう言うや、僕の手を握って握手し、手を離した。手のひらに何やら握らされて、開いてみれば……栄一が数枚握らされていた。
「え!?は!?」
「ファイトマネーとは別に、俺からのお捻り、それで友達と美味いもの食って遊んできなよ?」
それじゃ、と手を上げて朝原さんは解説席へ戻って行った。僕は、手の中の栄一数枚を見て、姫原オーナーに言う。
「これも、ファイトマネー扱いですかね?」
「ええよそんな、美味しいもの食べに行き」
ファイトマネーのうち、3割はマッチメイク等の為の謝礼に、ジムへ収める必要がある、だからこれも納めなければならないのかと確認したら、流石にそこからは取らんよと僕は諭された。
なお……全て試合を終えた後の授賞式で、僕は『ベストバウト賞』で賞金が上乗せされたその総額は……ジムへの謝礼を抜いて70万、まだアマチュアでプロですらないのに支払わられて、通帳を見た父親に闇バイトを疑われた。
さらに数日後、勝利者賞でスポンサーとなっている健康食品会社からプロテインやらBCAAやら、学生が手を出すと割高な様々なサプリメントが送られて、そりゃブレイキングケイジ出るのも視野に入れるよなと太っ腹ぶりに唖然とする事になる。
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