間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

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二章 地下格闘技復讐編

5.夢見る者、覚めた者

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 畜生、畜生!ふざけやがって!正義の味方気取りか久島の野郎。つい最近まで窓際陰キャぼっちが主人公気取りやがって、俺は苛立ちながら歩けば、目の前に転がってきた空き缶を蹴りつけた、その缶はコンクリートの歩道を二転、三転して河川に落ちて行った。

 綾香も綾香だ、散々俺が指で掻き回して後ろから突いて喘いでやがった癖に、好き好き愛してると言ってた癖に、何を今更別れましょうだ。俺たちクリアユースの絆は、陰キャぼっちの蹴りと格闘技に壊されて終わるのかよ。

 何もかもあいつに壊された、だがそれもあと少しで終わる。また、俺たちは輝かしい透き通った青春を取り戻せる。

 俺は怒りながらもゆっくり笑みに顔を変えて住宅地の一軒家の前に辿り着き、チャイムを鳴らす。この時間にあいつの親は、共働きだから居ない筈だ。

『はい……って、浦和か?お互い謹慎なのに何で外に出てんだ』
「あぁ?お前なに、真面目に謹慎してんのかよ?話がしてぇから出てくれよ」

 俺が尋ねたのは前池の家だった。こいつ、馬鹿正直に謹慎で家に居やがったよ……とりあえず話がしたいから出てくれと俺が言えば、インターホンが切れて奥から足音が聞こえ、チェーンを外されドアが開く。

「何だよ、見つかったら伸びるぞ謹慎期間……」
「……お前、その頭……マジか?」

 ドアを開けて出てきた前池は、茶髪に染めた頭を丸刈りにして、かつてのイケイケな雰囲気は鳴りを潜めていた。いや、確かにあの時、最後久島の足に頭を踏み潰されかけて泣いて漏らしたのは見たけど、ここまで人は変わるのかと驚愕した。

 まるで去勢された気象難の馬、セン馬に成り下がっていた。ここまで久島は、あいつは!俺の友達に恐怖を刻み込んだのかと俺は怒りに燃えた。

「前池、お前も協力しろよ、あの窓際陰キャ正義マンの久島と、その金魚の糞どもを2度と病院から出られないようにするからよ」

 俺は、この時……前池も賛同してくれると思っていた。あれだけやられ、辱められたんだからやり返したい気持ちはある筈だと。また、前池はあのギラついた目に戻ってくれると思ったんだ。

 だが、前池から出た言葉におれは愕然とするしかなかった。

「ば、バカかお前、タダでさえ俺らネットで炎上してんだぞ?むしろ停学で済ましてくれたのは慈悲で、退学してもおかしくなかったんだ、そこからまた久島に仕返しって……お前変な薬にでも手を出したのかよ?」

 俺の相棒は、すでに心砕かれて怯え腐った陰キャ野郎にまでなっていたのだ。

「前池……お前、それでいいのかよ?あいつがのさばってるクラスに、そのまま戻る気かよ?なぁ?秋山やられて、俺ら全員尊厳も名誉も、面子も!汚された!取り返そうぜ!?俺らの立場をよ!」

 あの久島に支配されたクラスでお前は、この後の学園生活過ごすのかと俺は、前池を呼び覚まそうと檄を送った。また戻っても、俺たちに向けられる視線は『う◯こ漏らした無様な奴の友達』で馬鹿にされるだけだろうがと。

 取り返すには、久島を倒さなきゃ駄目なんだ。お前も分かってんだろうがと、肩を持って俺は語りかける。

 だが、前池は俯いて声を絞り出した。

「お前こそ、現実見ろよ……!あのな、俺ら調子乗りすぎたんだよ、YouTubeでチヤホヤされて、金入って……皆が注目してて……馬鹿になってたんだよ!」

 前池の言葉に俺は、時間が止まった。何言ってんだよお前と、そんな顔になった俺に前池は悔やむように語り出した。

「今見返してみたら、最初こそ楽しくワイワイスポーツやったり、遊んでるだけだった……けど、途中から明らかに再生数稼ごうとどんどん過激な事やってて、人様に迷惑かけたやつもあった!屋上ブレイキングケイジも!秋山が久島に凸したのだって炎上してしかたねぇし、誰も彼もザマァとしか言われねぇ事俺ら、やってたんだよ!」

 そうだ、楽しかった。楽しかったんだろ?楽しかったなら、もう一度その景色を取り戻したくならないのかと、俺は前池から手が離れた。

「久島にやられて、停学になって、そん時は腹たったけど……先輩らの最後の試合奪って、やらかしたと……取り返しつかねぇ事しちまったって……気付くのも遅かったんだ……好きなバスケもできねぇし、比嘉出も俺がやらかしたから、それで俺の彼女だからって今、立場失ってバレー部も学校も孤立してる……俺が、俺がさっさと停学解いてもらって戻らねぇと、比嘉出の壁になってやらねぇと……」

 ……そうかよ、前池……お前はそうなんだなと、俺は後ろに下がった。もう、『クリアユース』は戻らない……決して戻りはしない。

 だからこそ、その復讐を果たさなければならない。

 そうしたらまた、前池も戻ってくると思って俺は振り返った。

「久々に、三鬼先輩に会ったよ……あの人、俺らの惨状知ってさ、動いてくれるんだ」
「え!?」
「前池、久島やって、元の景色を取り戻したらさ、戻ってこいよ……待ってるから」

 俺を、お前を、秋山を、柳を東城を比嘉出をこんなにした久島を、俺は絶対に許さない。必ずお前に、この落とし前をつけてやると、俺は前池の家を後にした。
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