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二章 地下格闘技復讐編
10.金網電流デスマッチ
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夕陽が沈んだあとの浜縁は、緩やかに賑わいが増していく。かつての大規模な感染病でのロックダウンにより閉まったゲーセンには、今はテナントそのままドン・キホーテが建てられ、パチンコ屋の喧しい銀玉と演出が外にも聞こえる。
この時間に制服でうろつく輩は不良か、はたまたパパ活をする女子学生くらいだろう。居酒屋も開き出し、ホストは規制により広告は幼稚な文書で濁されていた。
クラブがあるのは、浜縁でも奥側だ。地元の大学生や大人が、講義疲れを癒しに、酒を飲み出会いを求めるそんな場所で、いくつかの店からEDMが漏れ出て混ざり合って騒がしい。
「ここか……」
1軒だけだ『Close』の看板が吊り下げられている『ブラッディレイン』という中々大きなクラブを目の前にして、それを見上げた。
両開きのドアは閉まり切っている……そこに近づいて、僕はそのドアを思い切り押し開けた。
エントランスらしい受付と、さらに奥のメインホールには空港やらにありそうな金属探知のゲートが見えた。静かで気配を感じない、場所間違えてないよな……僕は探知機をくぐり、メインホールのドアを押し開けた。
薄暗い、しかし広いホール。天井には様々な照明が見えるし、左にはバーテンが酒を振る舞うバーカウンターもある。
何より目を引くのが……中央の『金網』だった。恐らくは、動画で見た、このクラブでの格闘技イベントで使われていた物かと見上げていると。
「キミかぁ、久島くん」
さながらドラマや演劇のように、照明が一つ照らされて、ホールの一部を照らした。そこに立っていた、いかにも成金趣味なガウンに、サングラス……ステッキを肩に携え笑う男がこちらを見ており、その横には松葉杖突いて右足を包帯に固定された浦和が居た。
「あんたが三鬼奏多か?」
「おっほ、呼び捨てかよ生意気に……こいつで間違いない?浦和くん」
浦和にこいつが久島かと尋ねた三鬼、そして浦和は松葉杖から手を離してポケットから何やら取り出しーー。
パァン!!
鳴り響いた破裂音……浦和が右手に持ったその物体から煙が上がり、久島の左頬に赤い線が引かれて、たらたらと血が流れる。
「久島ぁ!!まずは土下座しろやぁ!!」
まじかこいつ……銃ぶっ放しやがった。
停学、退学ときて、もう少年刑務所行きだろ、どこまで堕ちる気だお前と血を拭いながら僕は浦和を睨みつける。
「もー……なにやってんのさ浦和くぅん、駄目じゃないいきなり、そんな物撃ったら……さぁ!」
さらに驚く事態が続く、銃を撃った浦和に三鬼が容赦なく包帯巻いた右足に蹴りを入れたのだ。
「あぁあはぁあ!?いた、痛いいい!?み、三鬼さん!?」
「そんな簡単に抜いたらだめでしょ?分かってないなぁ色々さぁ?」
蹲り倒れた浦和の右足を踏みにじり……常識人ならば止めろと言うべきなんだろうが、僕もその叫びを聴きながらしばらく待った。
「まぁ、浦和くんがさぁ、キミに色々壊されて面子も汚されて?こうして芋虫みたく這い回ってしまってるわけよ、態々僕のとこまで頼って来たわけ、分かる?」
「……何が言いたいんですか、貴方は?」
「あ、分かんない?よしよし、お兄さんが簡単に言ってあげるね?……浦和くんに詫び入れてよ、土下座して、あと左足折ってさ?キミも浦和くんの人生潰したからそれであいこにしよ?」
説得力無いな、と感じながら僕は何となく理解していた。この三鬼という半グレに一般常識は持ち合わせていないし、説いたところで理解もしないと。
僕も、アマチュアとはいえ格闘家。昨今のアングラ格闘家の地上進出から、この手のタイプの人間が、どんな性格が大半かも理解していた。
自分が世界の中心、と思っている。仲間を、女を侍らせて兵隊を率いて、望めば思い通りになると思っている。
故に『面子を潰される』事を大変嫌う。この俺が来てやったから話は終わり、俺が間に入ってんだからテメェら仲良くしろやと、自身の暴力と威光で道理を捻じ曲げて、支配する事で満たされるタイプ。
「浦和くんもクソだけど……あんたも大概だな、正直に言ったらどう?学生一人にビビって兵隊出して、自分じゃ戦えないからリンチするために呼び出したってさ?」
「あ?」
僕はそう言って、金網の方へと向かい……土足か素足で入るか分からなかったが、そのまま土足で上がってやり、マット……ではなく硬い板製らしい金網の中に入って、三鬼さんを煽った。
「上がってこいよチンピラ、一対一(タイイチ)だ、ガキに煽られて……やらないって事はないよね?」
その煽りを聞いて、笑った三鬼はステッキを投げてガウンを脱いで金網に歩き出す。
「ガキがぁ、つけ上がりやがって、テメェここから帰れると思うなよ!?おい!!電源入れたれや!!」
「はい!!」
やっぱり他に兵隊が居たらしい、声が響き現れたブラッディレインの兵隊が、三鬼が入ると同時に金網の入り口を塞ぎ、入り口をロックすると、金網からバチチィ!と火花が散った。
「俺らブラッディレインは、そこらの地下格闘技や、エンタメに腑抜けた朝原のブレイキングケイジとわけが違う、殺るか殺られるかの過激さを売りにしていてなぁ……こいつはその中でも特別過激な、金網電流デスマッチってルールの為に改造した、金網リングなんだよ!」
「いつの時代のインディープロレスだ、爆発したりするのか?」
メジャーにできない過激なインディーズ系にありがちな仕様だなと、まさかプロレスじみた試合、いや喧嘩をやるはめになるとはと僕はため息を吐いた。
しかし一方で……僕の身体の熱は最高潮にまで達していたのであった。この後多分、勝とうが兵隊に詰め寄られるだけで、逃げ場なんて無かろうに……それでも僕はこの戦いへの高揚が抑えられず、股座がいきり立ってすらいた。
「ガキには大人の怖さをしっかりおしえてやるよぉ、ゴングならせやぁ!試合開始だ!!」
そう兵隊に伝えながら、ゴングが鳴る前から突っ込んできた三鬼。同じように駆け出し突貫したのと同時に、遅れてゴングが鳴り響いた。
この時間に制服でうろつく輩は不良か、はたまたパパ活をする女子学生くらいだろう。居酒屋も開き出し、ホストは規制により広告は幼稚な文書で濁されていた。
クラブがあるのは、浜縁でも奥側だ。地元の大学生や大人が、講義疲れを癒しに、酒を飲み出会いを求めるそんな場所で、いくつかの店からEDMが漏れ出て混ざり合って騒がしい。
「ここか……」
1軒だけだ『Close』の看板が吊り下げられている『ブラッディレイン』という中々大きなクラブを目の前にして、それを見上げた。
両開きのドアは閉まり切っている……そこに近づいて、僕はそのドアを思い切り押し開けた。
エントランスらしい受付と、さらに奥のメインホールには空港やらにありそうな金属探知のゲートが見えた。静かで気配を感じない、場所間違えてないよな……僕は探知機をくぐり、メインホールのドアを押し開けた。
薄暗い、しかし広いホール。天井には様々な照明が見えるし、左にはバーテンが酒を振る舞うバーカウンターもある。
何より目を引くのが……中央の『金網』だった。恐らくは、動画で見た、このクラブでの格闘技イベントで使われていた物かと見上げていると。
「キミかぁ、久島くん」
さながらドラマや演劇のように、照明が一つ照らされて、ホールの一部を照らした。そこに立っていた、いかにも成金趣味なガウンに、サングラス……ステッキを肩に携え笑う男がこちらを見ており、その横には松葉杖突いて右足を包帯に固定された浦和が居た。
「あんたが三鬼奏多か?」
「おっほ、呼び捨てかよ生意気に……こいつで間違いない?浦和くん」
浦和にこいつが久島かと尋ねた三鬼、そして浦和は松葉杖から手を離してポケットから何やら取り出しーー。
パァン!!
鳴り響いた破裂音……浦和が右手に持ったその物体から煙が上がり、久島の左頬に赤い線が引かれて、たらたらと血が流れる。
「久島ぁ!!まずは土下座しろやぁ!!」
まじかこいつ……銃ぶっ放しやがった。
停学、退学ときて、もう少年刑務所行きだろ、どこまで堕ちる気だお前と血を拭いながら僕は浦和を睨みつける。
「もー……なにやってんのさ浦和くぅん、駄目じゃないいきなり、そんな物撃ったら……さぁ!」
さらに驚く事態が続く、銃を撃った浦和に三鬼が容赦なく包帯巻いた右足に蹴りを入れたのだ。
「あぁあはぁあ!?いた、痛いいい!?み、三鬼さん!?」
「そんな簡単に抜いたらだめでしょ?分かってないなぁ色々さぁ?」
蹲り倒れた浦和の右足を踏みにじり……常識人ならば止めろと言うべきなんだろうが、僕もその叫びを聴きながらしばらく待った。
「まぁ、浦和くんがさぁ、キミに色々壊されて面子も汚されて?こうして芋虫みたく這い回ってしまってるわけよ、態々僕のとこまで頼って来たわけ、分かる?」
「……何が言いたいんですか、貴方は?」
「あ、分かんない?よしよし、お兄さんが簡単に言ってあげるね?……浦和くんに詫び入れてよ、土下座して、あと左足折ってさ?キミも浦和くんの人生潰したからそれであいこにしよ?」
説得力無いな、と感じながら僕は何となく理解していた。この三鬼という半グレに一般常識は持ち合わせていないし、説いたところで理解もしないと。
僕も、アマチュアとはいえ格闘家。昨今のアングラ格闘家の地上進出から、この手のタイプの人間が、どんな性格が大半かも理解していた。
自分が世界の中心、と思っている。仲間を、女を侍らせて兵隊を率いて、望めば思い通りになると思っている。
故に『面子を潰される』事を大変嫌う。この俺が来てやったから話は終わり、俺が間に入ってんだからテメェら仲良くしろやと、自身の暴力と威光で道理を捻じ曲げて、支配する事で満たされるタイプ。
「浦和くんもクソだけど……あんたも大概だな、正直に言ったらどう?学生一人にビビって兵隊出して、自分じゃ戦えないからリンチするために呼び出したってさ?」
「あ?」
僕はそう言って、金網の方へと向かい……土足か素足で入るか分からなかったが、そのまま土足で上がってやり、マット……ではなく硬い板製らしい金網の中に入って、三鬼さんを煽った。
「上がってこいよチンピラ、一対一(タイイチ)だ、ガキに煽られて……やらないって事はないよね?」
その煽りを聞いて、笑った三鬼はステッキを投げてガウンを脱いで金網に歩き出す。
「ガキがぁ、つけ上がりやがって、テメェここから帰れると思うなよ!?おい!!電源入れたれや!!」
「はい!!」
やっぱり他に兵隊が居たらしい、声が響き現れたブラッディレインの兵隊が、三鬼が入ると同時に金網の入り口を塞ぎ、入り口をロックすると、金網からバチチィ!と火花が散った。
「俺らブラッディレインは、そこらの地下格闘技や、エンタメに腑抜けた朝原のブレイキングケイジとわけが違う、殺るか殺られるかの過激さを売りにしていてなぁ……こいつはその中でも特別過激な、金網電流デスマッチってルールの為に改造した、金網リングなんだよ!」
「いつの時代のインディープロレスだ、爆発したりするのか?」
メジャーにできない過激なインディーズ系にありがちな仕様だなと、まさかプロレスじみた試合、いや喧嘩をやるはめになるとはと僕はため息を吐いた。
しかし一方で……僕の身体の熱は最高潮にまで達していたのであった。この後多分、勝とうが兵隊に詰め寄られるだけで、逃げ場なんて無かろうに……それでも僕はこの戦いへの高揚が抑えられず、股座がいきり立ってすらいた。
「ガキには大人の怖さをしっかりおしえてやるよぉ、ゴングならせやぁ!試合開始だ!!」
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