間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

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三章 クラス派閥闘争編

5.楽しい奴らだけでやっとれよ 下

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 そこで刺しに行くの!?僕が冗談だで通しておけば穏便に住んだと思うんだけど!?伊佐美くんの狂犬ぶりに僕は肝を冷やした。

「戦力外は足も引っ張らず休んで、体育好きでやりゃええやんけ?ワシらは足も引っ張らんし、お前ら体育会系カースト上位チームで休んで空いた残りも参加して最強チームでやったら、勝ちに徹してやりあえる、やりとう無い奴はヘマを指摘されんでええからハッピーハッピーやんけ」

 戦力外は参加せず、休んで最強の体育会系グループで人員回して、勝ちに徹したらいいだろう。文化系や輪に入れないやつらはそもそも参加せず休んで見物して応援なりしとけば傷付かないからいいんじゃないかと、理想と私情ないまぜにした意見を伊佐美くんは、周防さんに吐き散らした。

「あのね伊佐美くん……体育祭はそもそも学校行事の絶対参加なの、風邪をひくとか怪我をしたとか、身内の不幸とかでも無い限りは参加が原則なの、それに……貴方達4名抜けたら2年2組は全員で33人、1組より7人も減ってその負担が他にのしかかるの、分かる?」

 周防さんは正しい、反論できない、その通りであった。

 そもそもが『サボる』事自体が駄目なのだ、僕たちは間違っている。どうあれこれ言おうと、彼女の正論には勝てないのだ。学校行事である以上、そこに通う学生は参加し、協力し合わなければならない……協調性というやつだ。

「のしかかる?活躍の機会が増えるって言い直せや、文化系の奴らはてけとーに端に、騎馬戦に追い込んどいてのう?」

 しかし伊佐美くんも譲らない、負担がのしかかるどころかお前らからしたら、まだ活躍できるチャンスが増えるだけだろ、寧ろ邪魔な奴らなしで競い合えるから最高じゃないかと揚げ足を取った。

「何?出たい競技があったら立候補したらよかったじゃない、今更文句?立候補してないから騎馬戦に残りがそうなったってだけでしょ?」

 出たい競技があったのかと、端に追いやったつもりは無いと彼女は返す。そう、立候補の権利は僕たちにもあったのだ。

 しかし、参加取り決めには推薦があった。勝つための最善手、活躍できる戦力の配置ができたのも事実である。例え山城くんがとち狂ってリレーに手を上げたら、ブーイングが飛んでいたのも目に浮かんだ。

「あらせんよ文句、ワシら参加自体面倒やからのう、けどお前らは毎回……毎回、負けたりヘマした奴ら針の筵にしとるやんけ」

 文句は無い、無いからこそ、参加意欲がないから適当な配置でいいとなったのも事実だ。だが、その追いやった意欲なき者達の敗戦すら晒し上げている……その空気があるのを知らないのかと、伊佐美くんはさらに言い返した。

「それは貴方だけが思ってる妄想じゃないかしら?」

 それは被害妄想では?周防さんは切り捨てた……実際、被害者は多々いるのを彼女は知らないらしい。でも、どうなっても僕たち4人は『間違っている』事は認めなければならないのだ。

「思わされた時点でそう空気なっとんのがわからんのか?仕切りたがりがぁ、まぁええわ……俺らは体育祭当日、全員親戚の不幸予約しとくから、気にせんといてくれよ」

 その空気を読めていないのがお前だろと、話はもう終わったなと、伊佐美くんは立ち上がり、焼き魚定食の器を返しに行こうと立ち上がるが、それを見た周防さんは僕に目を向けて言い放った。

「久島くん!貴方この集まりのリーダーなんでしょ!なんとか言ってあげて!!」
「え!?」

 いや違うが!?ただハブられ4人があつまってるだけでリーダーとか無いが!?寧ろ話題の中心こそ、伊佐美くんのようなと僕は彼女の叱責に慌てた。

「いや、違、違うよ!?ただ仲良いだけでそんな、グループのリーダーでは……」
「どないする、こんな事言っとんで団長?」
「ああ、どうする久島組長」
「どうしよう、リーダー」
「おいコラ!?」

 この土壇場で伊佐美くん、僕に押し付けやがった!!そして山城くんも本田くんも即座にシールド張りやがった!!覚えとけよ本当にと、僕はどうしたらいいんだと考えた。これなら最初に噛み付かないでよと、伊佐美くんに苛立つが、無い頭絞って僕は考える。

「ああそれと、久島くんは絶対サボったりはゆるさないからね?」
「えっ?」

 さらに、周防さんからの言葉に僕は驚いた。僕だけは絶対サボらせないという意思が、その言葉に含まれていたからだ、伊佐美くんはいい、山城くんも、本田くんも最悪サボっていいが、僕だけはダメという言葉に、何故と僕は尋ねてみる事にした。

「それは何故……?」

 その問いかけに、周防さんは即座に答えたのだった。


「だって貴方には、秋山くんを入院させた責任があるでしょう」


 その理由を聞いた瞬間……僕の中の何かが切れて、沸々と、熱が身体から湧き上がった。

 ああ、そう言えば忘れていたなと、僕は思い出した。

 ブレイキングケイジで、秋山くんが僕を煽ってから、クラスで勝敗のアンケートをやっていて……僕に投票したのが、伊佐美くんであり、山城くんであり、本田くんの3人だけであった事を。

 あの時から僕たちは、クラスから孤立した逸れの4人だった事。

 新しい委員長になった周防真琴も『あちら側』だったなと、僕の身体の熱が湧き上がる。

「そもそも秋山くんが入院しなければ、私は委員長やらなくて良かったんだから、居ない秋山くんの分に、柳さん、退学した浦和くんの分も怪我をさせた……貴方が……」

 周防さんの言葉が止まる、彼女の身体が、僕を見て震え出している。

 彼女の瞳に映った、さながら『人殺し』の表情をしていた僕自身を見て、ああこれは、こんな顔していたのかとりかいした。

 何も……事情を、知らない癖に……僕は周防さんに迫りーー。

「久島」
「久島くん!」

 右肩と、腹回りを、がしりと掴まれた。

右肩は本田くんが、腹回りは山城くんが抱きついてまで、僕を止めにかかった。

「周防、お前……事情も知らんと、ようもそんな言えたな?あー……そう言や俺ら以外はブレイキングケイジで秋山に勝ちを投票しとったし、今更やけど……お前も久島にピエロやれって方やったなぁ」

 伊佐美くんが、前に出て僕の胸板を軽く叩いて抑えろと所作で示してくれた。

「あ、いや、それは……」
「勝手にやってくれや、そっちで……な?俺らも勝手にするからよ」

 もういいだろう?これ以上、伊佐美くんはお盆を持ちながら、返却口まで歩き出し、山城くんも本田くんも食器を持って向かった。

 周防さんの目が焦燥と罪悪感に染まっている、僕は彼女に一礼してから、3人へついて行くのだった。
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