間違いだらけの久島くん

魔根喪部荼毘座右衛門

文字の大きさ
65 / 93
五章前編 "5人目の怪物"編

3.夏の2年2組、その一幕

しおりを挟む
 そうして東京で『東京ばな奈』をジムの人と、伊佐美くん達に買って、僕は地元である波浜に帰って来た。

「……」

 期末も近い、テスト勉強でジムの時間を割いてせめて赤点回避のために机に齧り付く。その中でも、試合に向け出来る事は……動画を見て相手の対策を考えるだった。

「何度か食うたことあるけど、やっぱりうまいなぁ」
「柔らかい生地とバナナクリームがいいよね」
「うむ、美味い」

 伊佐美くん達が東京ばな奈に舌鼓を打つ傍らで、スマホから動画サイトのアプリで、獅子元くんの試合動画を探して見つけ、その内容を眺める。

「んで?久島の相手ってどっちや?」
「キックショーツが赤い方」

 伊佐美くんが、僕の傾けたスマホを覗き込みながら尋ねて来た。カバーがスタンドになるタイプだから良いもので、肩あたりにポロポロくずを落として来たが、僕は払った所作で、すまんと彼は呟き少し離れた。

 「獅子元博之くん、JKBキックボクシング連盟ライト級チャンピオン、高校三年……BOFユースに出ず高一でプロデビューして、7戦7勝の現在無敗の学生プロだよ」
「無敗!?デビューから!?」
「めちゃくちゃ強いんだな……しかもアマチュアじゃなくてプロとは……」

 無敗の推薦枠、更にチャンピオン。そう聞いた山城くんと本田くんも動画を見るために寄って来た。JKBのリングで戦う、獅子元くんの様子に……彼らがコメントを語る。

「おいおい、タコ殴りやんけ……息がきれんのかいな」
「ずっと殴ってない?止まってないよね……」
「スタミナが凄まじいな……」

 格闘家にも、様々なタイプが居る。

 単に『パンチが得意』だけでも細分化したら、一撃で倒せるパワーがある奴、的確に当てられる奴、コンビネーションが上手い奴。と分けれる。

 獅子元博之くんは所謂パンチが得意なパンチャー、そして『手数が多い』と言えるだろうか。今見ている試合も3分3ラウンド、フルに戦って全く息を切らしてないスタミナ……さらに言えば手数はラウンドを重ねる毎に増えている気配すらある。

「お、判定で3-0フルマーク勝ちか、まぁあれだけ殴って相手も追い込まれてたら当たり前やな」
「この判定って誰が決めてるの?久島くん」
「え?あー、団体によるけどジャッジって言う採点係りがいて、試合のアグレッシブさやダウン数とかで……」

 伊佐美くんが判定を見て、比嘉出さんがどんなふうに判定を決めているのか尋ねて来たので、団体によって違うが……と説明したところで僕は振り向いた。

「比嘉出さん!?」

 比嘉出さんが夏制服で覗き込んでいた、スポーティながら高身長のたわわが揺れながら、僕の驚く様に少し彼女は膨れて言う。

「ちょっと、驚きすぎだよ……あ、東京ばな奈私も食べていい?」
「ああ……どうぞ」

 そして、土産の東京ばな奈を一つ取るや早速放送を破り齧り付く様に、伊佐美くんは嫌味ったらしい笑みを向けて比嘉出さんに言うのであった。

「なんやぁ、比嘉出お前……久島の土産につられたんけ?」
「いいじゃん、一つくらい、十二個入り4箱なんて貴方達4人で消費できるの?」
「逆にお前半分くらい食ってまいそうやな、体育会系やからそんぐらい平らげるやろ?久島ーー食い尽くされる前に食べとかんとなくなるで」
「失礼ね、いいよね久島くん」
「皆へのお土産だから……どうぞ、東條さんにも渡してあげて」

 伊佐美くんの比嘉出さんへの態度は、攫われた事件以来軟化していた。最初こそ倫理コード突っ切った罵倒をしていたが、今は無くなって軽くちょっかいかける程度にはなっていた。

「そうだぞ比嘉出、皆に行き渡る分は残さないとな……」
「いやちょっと待てよ前池、お前は何自然に手を伸ばして新しい箱を開けてるんだ」
「いいよ、今の箱無くなったし……」

 そうして話していたら、前池くんが勝手に新しい箱を開けだしたので本田くんが、何してんだよと訝しむが、まぁ禊は済んだしいいよと僕は許した。

「おいおい、委員長が何を学校に不要なもの持って来てんだよ、先生にチクッちまおっかなー」
「中村くん、足は?」
「そうすぐ治るかよ、一つもらうぜ?鳥風も食べるか?」
「いただくよ」

 東京ばな奈に群れる、クラスメイト達。多めに買って来てよかったなと、皆に行き渡るようにして僕はそのままスマホに目を落とす、騒がしくなって来たが心地いい。

 夏の始まる7月の2年2組は、体育祭を超えて少しだけ変わった気がした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

妹の仇 兄の復讐

MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。 僕、寺内勇人は高校三年生。妹の茜は高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。 その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...