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五章前編 "5人目の怪物"編
3.夏の2年2組、その一幕
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そうして東京で『東京ばな奈』をジムの人と、伊佐美くん達に買って、僕は地元である波浜に帰って来た。
「……」
期末も近い、テスト勉強でジムの時間を割いてせめて赤点回避のために机に齧り付く。その中でも、試合に向け出来る事は……動画を見て相手の対策を考えるだった。
「何度か食うたことあるけど、やっぱりうまいなぁ」
「柔らかい生地とバナナクリームがいいよね」
「うむ、美味い」
伊佐美くん達が東京ばな奈に舌鼓を打つ傍らで、スマホから動画サイトのアプリで、獅子元くんの試合動画を探して見つけ、その内容を眺める。
「んで?久島の相手ってどっちや?」
「キックショーツが赤い方」
伊佐美くんが、僕の傾けたスマホを覗き込みながら尋ねて来た。カバーがスタンドになるタイプだから良いもので、肩あたりにポロポロくずを落として来たが、僕は払った所作で、すまんと彼は呟き少し離れた。
「獅子元博之くん、JKBキックボクシング連盟ライト級チャンピオン、高校三年……BOFユースに出ず高一でプロデビューして、7戦7勝の現在無敗の学生プロだよ」
「無敗!?デビューから!?」
「めちゃくちゃ強いんだな……しかもアマチュアじゃなくてプロとは……」
無敗の推薦枠、更にチャンピオン。そう聞いた山城くんと本田くんも動画を見るために寄って来た。JKBのリングで戦う、獅子元くんの様子に……彼らがコメントを語る。
「おいおい、タコ殴りやんけ……息がきれんのかいな」
「ずっと殴ってない?止まってないよね……」
「スタミナが凄まじいな……」
格闘家にも、様々なタイプが居る。
単に『パンチが得意』だけでも細分化したら、一撃で倒せるパワーがある奴、的確に当てられる奴、コンビネーションが上手い奴。と分けれる。
獅子元博之くんは所謂パンチが得意なパンチャー、そして『手数が多い』と言えるだろうか。今見ている試合も3分3ラウンド、フルに戦って全く息を切らしてないスタミナ……さらに言えば手数はラウンドを重ねる毎に増えている気配すらある。
「お、判定で3-0フルマーク勝ちか、まぁあれだけ殴って相手も追い込まれてたら当たり前やな」
「この判定って誰が決めてるの?久島くん」
「え?あー、団体によるけどジャッジって言う採点係りがいて、試合のアグレッシブさやダウン数とかで……」
伊佐美くんが判定を見て、比嘉出さんがどんなふうに判定を決めているのか尋ねて来たので、団体によって違うが……と説明したところで僕は振り向いた。
「比嘉出さん!?」
比嘉出さんが夏制服で覗き込んでいた、スポーティながら高身長のたわわが揺れながら、僕の驚く様に少し彼女は膨れて言う。
「ちょっと、驚きすぎだよ……あ、東京ばな奈私も食べていい?」
「ああ……どうぞ」
そして、土産の東京ばな奈を一つ取るや早速放送を破り齧り付く様に、伊佐美くんは嫌味ったらしい笑みを向けて比嘉出さんに言うのであった。
「なんやぁ、比嘉出お前……久島の土産につられたんけ?」
「いいじゃん、一つくらい、十二個入り4箱なんて貴方達4人で消費できるの?」
「逆にお前半分くらい食ってまいそうやな、体育会系やからそんぐらい平らげるやろ?久島ーー食い尽くされる前に食べとかんとなくなるで」
「失礼ね、いいよね久島くん」
「皆へのお土産だから……どうぞ、東條さんにも渡してあげて」
伊佐美くんの比嘉出さんへの態度は、攫われた事件以来軟化していた。最初こそ倫理コード突っ切った罵倒をしていたが、今は無くなって軽くちょっかいかける程度にはなっていた。
「そうだぞ比嘉出、皆に行き渡る分は残さないとな……」
「いやちょっと待てよ前池、お前は何自然に手を伸ばして新しい箱を開けてるんだ」
「いいよ、今の箱無くなったし……」
そうして話していたら、前池くんが勝手に新しい箱を開けだしたので本田くんが、何してんだよと訝しむが、まぁ禊は済んだしいいよと僕は許した。
「おいおい、委員長が何を学校に不要なもの持って来てんだよ、先生にチクッちまおっかなー」
「中村くん、足は?」
「そうすぐ治るかよ、一つもらうぜ?鳥風も食べるか?」
「いただくよ」
東京ばな奈に群れる、クラスメイト達。多めに買って来てよかったなと、皆に行き渡るようにして僕はそのままスマホに目を落とす、騒がしくなって来たが心地いい。
夏の始まる7月の2年2組は、体育祭を超えて少しだけ変わった気がした。
「……」
期末も近い、テスト勉強でジムの時間を割いてせめて赤点回避のために机に齧り付く。その中でも、試合に向け出来る事は……動画を見て相手の対策を考えるだった。
「何度か食うたことあるけど、やっぱりうまいなぁ」
「柔らかい生地とバナナクリームがいいよね」
「うむ、美味い」
伊佐美くん達が東京ばな奈に舌鼓を打つ傍らで、スマホから動画サイトのアプリで、獅子元くんの試合動画を探して見つけ、その内容を眺める。
「んで?久島の相手ってどっちや?」
「キックショーツが赤い方」
伊佐美くんが、僕の傾けたスマホを覗き込みながら尋ねて来た。カバーがスタンドになるタイプだから良いもので、肩あたりにポロポロくずを落として来たが、僕は払った所作で、すまんと彼は呟き少し離れた。
「獅子元博之くん、JKBキックボクシング連盟ライト級チャンピオン、高校三年……BOFユースに出ず高一でプロデビューして、7戦7勝の現在無敗の学生プロだよ」
「無敗!?デビューから!?」
「めちゃくちゃ強いんだな……しかもアマチュアじゃなくてプロとは……」
無敗の推薦枠、更にチャンピオン。そう聞いた山城くんと本田くんも動画を見るために寄って来た。JKBのリングで戦う、獅子元くんの様子に……彼らがコメントを語る。
「おいおい、タコ殴りやんけ……息がきれんのかいな」
「ずっと殴ってない?止まってないよね……」
「スタミナが凄まじいな……」
格闘家にも、様々なタイプが居る。
単に『パンチが得意』だけでも細分化したら、一撃で倒せるパワーがある奴、的確に当てられる奴、コンビネーションが上手い奴。と分けれる。
獅子元博之くんは所謂パンチが得意なパンチャー、そして『手数が多い』と言えるだろうか。今見ている試合も3分3ラウンド、フルに戦って全く息を切らしてないスタミナ……さらに言えば手数はラウンドを重ねる毎に増えている気配すらある。
「お、判定で3-0フルマーク勝ちか、まぁあれだけ殴って相手も追い込まれてたら当たり前やな」
「この判定って誰が決めてるの?久島くん」
「え?あー、団体によるけどジャッジって言う採点係りがいて、試合のアグレッシブさやダウン数とかで……」
伊佐美くんが判定を見て、比嘉出さんがどんなふうに判定を決めているのか尋ねて来たので、団体によって違うが……と説明したところで僕は振り向いた。
「比嘉出さん!?」
比嘉出さんが夏制服で覗き込んでいた、スポーティながら高身長のたわわが揺れながら、僕の驚く様に少し彼女は膨れて言う。
「ちょっと、驚きすぎだよ……あ、東京ばな奈私も食べていい?」
「ああ……どうぞ」
そして、土産の東京ばな奈を一つ取るや早速放送を破り齧り付く様に、伊佐美くんは嫌味ったらしい笑みを向けて比嘉出さんに言うのであった。
「なんやぁ、比嘉出お前……久島の土産につられたんけ?」
「いいじゃん、一つくらい、十二個入り4箱なんて貴方達4人で消費できるの?」
「逆にお前半分くらい食ってまいそうやな、体育会系やからそんぐらい平らげるやろ?久島ーー食い尽くされる前に食べとかんとなくなるで」
「失礼ね、いいよね久島くん」
「皆へのお土産だから……どうぞ、東條さんにも渡してあげて」
伊佐美くんの比嘉出さんへの態度は、攫われた事件以来軟化していた。最初こそ倫理コード突っ切った罵倒をしていたが、今は無くなって軽くちょっかいかける程度にはなっていた。
「そうだぞ比嘉出、皆に行き渡る分は残さないとな……」
「いやちょっと待てよ前池、お前は何自然に手を伸ばして新しい箱を開けてるんだ」
「いいよ、今の箱無くなったし……」
そうして話していたら、前池くんが勝手に新しい箱を開けだしたので本田くんが、何してんだよと訝しむが、まぁ禊は済んだしいいよと僕は許した。
「おいおい、委員長が何を学校に不要なもの持って来てんだよ、先生にチクッちまおっかなー」
「中村くん、足は?」
「そうすぐ治るかよ、一つもらうぜ?鳥風も食べるか?」
「いただくよ」
東京ばな奈に群れる、クラスメイト達。多めに買って来てよかったなと、皆に行き渡るようにして僕はそのままスマホに目を落とす、騒がしくなって来たが心地いい。
夏の始まる7月の2年2組は、体育祭を超えて少しだけ変わった気がした。
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