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五章前編 "5人目の怪物"編
10.中村恋愛相談室 下
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「よくあんだわ、周りの奴らが進んでるから焦ってよ、自分もそこに立ちたいっ……ての?勉強とか部活にも当てはまるんだけど……自分がさ、他人より後ろにいる感じがして胸苦しくなって、どうにか同じ場所に居たくなるんだ」
さながらそれは……子どもが『あの子と同じおもちゃが欲しい』となるような、それが今のお前の現状だと、中村くんに言われた。刺し貫かれたような感覚すら覚えた僕は、黙るしかできなかった。
「口では言っていても、それは周りと同じになりたいからで……いざそうなれる、という状況が突然来て準備も心構えも出来ていない、だから……どうしたらいいか分からないってとこだろ?」
「……それだよ、全くもって」
こうも核心突かれると、頷くしかない。僕の肯定に中村くんはさらに続ける。
「で、だ、ここで"ラッキー、とりあえず片方付き合ってみよ"とならず、こうして第三者への恋愛相談するのはないい事だよ久島、誠実にあろうとして、欲に流れず……俺なら二人とも粉かけるだろうな、今のおまえと同じ状況に居たら」
「ぶっちゃけるね、キミは」
「そんな久島に尋ねるが……今、本当に彼女が欲しいか?お付き合いしたいか?何か、やる事があるんじゃないか?」
欲に流れず、誠実に、どうにか解決したいのは……本来の自分が何かを成さねばならないからだろう。だから相談し、背中を押してもらいたいから、第三者を頼った……いざそれを再確認する為に中村くんから問われた僕は……考える時間すらなく即座に答えた。
「……今の僕は、格闘技がある……9月、大晦日、大事な試合がある」
そうだ、僕にはキックボクシングの試合があるだろう。BOFユースの試合、9月の興業で勝って、12月の大晦日に出なければならない。
世間の高校球児やインターハイに出る部活動の高校生と同じ……そんな事にかまけてる暇が無いはずだろう、僕は再認識した。
「でもこれ、言い訳にならない?世間の高校生ってその中で恋愛してたりするし……」
「じゃあテメー、それが出来るくらい器用なんか?」
「器用ではないです……」
「だろ、じゃあお前がする事は決まっている……」
そうとも、言い訳だ。しかしその言い訳が、お前の恋愛できない理由なら、そうなんだ。不器用を理解しているなら認めろ……今お前がすべき事はと、中村くんは答えを遂に出したのだった。
「ちゃんと断れ、二人のその告白を」
「断る……」
「付き合う事はできませんと、しっかり断れ、そんな時間はありませんと……互いに傷つくが先伸ばしたところで更に傷は深くなる、早いうちに断って精算しろ、久島」
二人の告白、二人の好意、しっかり断って精算しろ。それが今の、不器用なお前ができる唯一の選択肢であると、中村くんは言い放つのであった。
「あ、言っとくけど言葉に注意しろよ?マジで、例えば"今は付き合いできない"とか口走ったら先延ばしになるだけだからな?しっかり気持ちを落ち着けたら、できるだけ早めに断れ、んで、ビンタ二、三発や玉を蹴られる覚悟しとけ……いいな?」
「……わかった、ありがとう中村くん」
「しかしまぁ……贅沢なやっちゃな、デカパイ女から二人告白されて、彼女持ちでないのに断るなんざ……」
最後に、先延ばしになりかねない言葉は決して吐かないようにと忠告して、中村くんはもはや話す事は無しと、先に松葉杖をつきながら渡り廊下より出て行った。
そうだ、今は彼女云々より、やらねばならない事がある。それを両立できる程に、僕は器用な人間ではない。これが万が一の楔となって、試合に負けるなんてあってはならない……。
万全のコンディションを得る為……僕は、二人の好意を捨てる。そう決めた、そして……それを実行するのに、時間はいらない。
まずは一人目から……僕はスマホのメッセージアプリを開いて、比嘉出さんにメッセージを送った。
『本日、時間が取れましたら、体育館裏に来ていただければ幸いです、無理でしたらまた後日に』
そうメッセージを打ち、僕は送信ボタンを押した。
さながらそれは……子どもが『あの子と同じおもちゃが欲しい』となるような、それが今のお前の現状だと、中村くんに言われた。刺し貫かれたような感覚すら覚えた僕は、黙るしかできなかった。
「口では言っていても、それは周りと同じになりたいからで……いざそうなれる、という状況が突然来て準備も心構えも出来ていない、だから……どうしたらいいか分からないってとこだろ?」
「……それだよ、全くもって」
こうも核心突かれると、頷くしかない。僕の肯定に中村くんはさらに続ける。
「で、だ、ここで"ラッキー、とりあえず片方付き合ってみよ"とならず、こうして第三者への恋愛相談するのはないい事だよ久島、誠実にあろうとして、欲に流れず……俺なら二人とも粉かけるだろうな、今のおまえと同じ状況に居たら」
「ぶっちゃけるね、キミは」
「そんな久島に尋ねるが……今、本当に彼女が欲しいか?お付き合いしたいか?何か、やる事があるんじゃないか?」
欲に流れず、誠実に、どうにか解決したいのは……本来の自分が何かを成さねばならないからだろう。だから相談し、背中を押してもらいたいから、第三者を頼った……いざそれを再確認する為に中村くんから問われた僕は……考える時間すらなく即座に答えた。
「……今の僕は、格闘技がある……9月、大晦日、大事な試合がある」
そうだ、僕にはキックボクシングの試合があるだろう。BOFユースの試合、9月の興業で勝って、12月の大晦日に出なければならない。
世間の高校球児やインターハイに出る部活動の高校生と同じ……そんな事にかまけてる暇が無いはずだろう、僕は再認識した。
「でもこれ、言い訳にならない?世間の高校生ってその中で恋愛してたりするし……」
「じゃあテメー、それが出来るくらい器用なんか?」
「器用ではないです……」
「だろ、じゃあお前がする事は決まっている……」
そうとも、言い訳だ。しかしその言い訳が、お前の恋愛できない理由なら、そうなんだ。不器用を理解しているなら認めろ……今お前がすべき事はと、中村くんは答えを遂に出したのだった。
「ちゃんと断れ、二人のその告白を」
「断る……」
「付き合う事はできませんと、しっかり断れ、そんな時間はありませんと……互いに傷つくが先伸ばしたところで更に傷は深くなる、早いうちに断って精算しろ、久島」
二人の告白、二人の好意、しっかり断って精算しろ。それが今の、不器用なお前ができる唯一の選択肢であると、中村くんは言い放つのであった。
「あ、言っとくけど言葉に注意しろよ?マジで、例えば"今は付き合いできない"とか口走ったら先延ばしになるだけだからな?しっかり気持ちを落ち着けたら、できるだけ早めに断れ、んで、ビンタ二、三発や玉を蹴られる覚悟しとけ……いいな?」
「……わかった、ありがとう中村くん」
「しかしまぁ……贅沢なやっちゃな、デカパイ女から二人告白されて、彼女持ちでないのに断るなんざ……」
最後に、先延ばしになりかねない言葉は決して吐かないようにと忠告して、中村くんはもはや話す事は無しと、先に松葉杖をつきながら渡り廊下より出て行った。
そうだ、今は彼女云々より、やらねばならない事がある。それを両立できる程に、僕は器用な人間ではない。これが万が一の楔となって、試合に負けるなんてあってはならない……。
万全のコンディションを得る為……僕は、二人の好意を捨てる。そう決めた、そして……それを実行するのに、時間はいらない。
まずは一人目から……僕はスマホのメッセージアプリを開いて、比嘉出さんにメッセージを送った。
『本日、時間が取れましたら、体育館裏に来ていただければ幸いです、無理でしたらまた後日に』
そうメッセージを打ち、僕は送信ボタンを押した。
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