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閑古鳥の目覚め
閑古鳥が十七羽
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リドが居そうなあの森、キリバの森へ早く行こうと相変わらず使えない剣を差して飛び出るはずがティガからストップがかけられてしまった。
というのも、現在キリバの森では人喰いガルバと呼ばれる大層まずい魔物がいるらしくポンコツなクランが行くのは駄目ということだ。
せっかくリドがいるかもしれないし、そのガルバに襲われているかもと心配で向かいたくなるがティガのガードは固かった。
結局、リドを探しにキリバの森へ行くのは中止となったがティガが帰った夕方頃、クランは装備を準備して早朝すぐに内緒でキリバの森へ旅立った。
そうしてクランはキリバの森へ着き、早速リドを探すが困ったことが一つあった。
「リドのボロ家ってどこにあったかな」
もともとリドは劣悪な孤児院から逃げ出し、この森で暮らし始めたのでボロ家と言うよりもあれは、ほぼ動物の棲家のようだったとクランは記憶している。そんな動物の棲家を四年ぶりにこの森から探すなど難題すぎた。
ないない、と探すこと数時間、成果はなく体力だけが減った。少し休むところはないかと思うクランだったがなんとちょうど良いところになかなかに綺麗そうな切り株を見つける。
「ラッキー。ここで休憩しよう」
腰を下ろして息を吐く。減った体力を回復するために茫然と辺りを見るがふとあることに気付く。
「焚き火の跡だ」
少し先に焚き火の跡を見つけ、クランは腰をあげて近づくが痕跡はまだ新しかった。
もしかしてリドかと辺りを見回すが誰も居らず、あったのは幹にビシャっとかかったような乾いた血痕である。
「ヒェッ」
驚きに跳び上がるが血痕の主はまさかリドではと確認のため近づくもその時、ガサガサと物音が横からした。
何だと顔を向ければ、そこには信じられない巨体に似合わないつぶらすぎる瞳をもった茶色のガルバだ。
クランはキュッと喉が締まったのを感じる。ガルバとクランの視線が静かに重なる数秒間。クランは高速で走馬灯が見えていた。
こちらをじっと見つめ、大人しさを抱くガルバだが、次の瞬間低い唸り声を出す。
完全に敵とみなすガルバに唸られ、クランは震え上がるも逃げるように後ずさる。ジリジリとガルバを刺激しないよう下がるが詰めるようにガルバはゆっくりとクランを追い詰めてきた。
「助けて……」
このお飾りな剣でも振り回すか、と腰に差す剣をちらりと見るもすぐに無理だと思い直す。
自分がもう少し戦闘面に得意だったらガルバを倒すまではいかないものの逃げる隙は作れただろう。
だが今まで、戦闘はリドに任せきりで後ろに隠れていたクランに残るのはガルバのご飯になるだけだ。
こんなことならティガの言う通りにしておくべきだったという考えが過ぎるもやはりクランはリドに会いたかった。
「リドっ……どこにいるの?」
口から小さく溢れた言葉を目の前のガルバがわかるはずもなく、こちらを仕留めようと動くがその時、近くから爆発音が響く。
あまりの突然なことにクランは跳び上がって驚くがガルバも同じだったのか森の奥へ俊敏に逃げていった。
展開に追いつけないが今度は何がと辺りを見回せば、ある人影を見つけ、クランは目を見開く。
その人影は爆発を起こした当人のようで木などが木っ端微塵になった爆発地の近くに佇むも酷く焦った表情を浮かべている。息をするにも肩を上下し、どれほど緊急を要する事態にあったのかが見るだけでよくわかった。
そんな人影はクランを見つめる。
「どうして──」
「リド!」
困惑するリドの言葉を遮り、クランはリドへ駆け寄り飛び付いた。拒絶されることはなくリドは抱き止めるが少しぎこちなさは残る。
心の距離を感じるその動きにクランは軽く唇を噛むも抱擁を享受した。そして顔を上げるとリドへ話しかけた。
「すごいよ、君って強いんだね!」
「……クラン?」
「すごいすごい……」
クランの様子を見つめるリドは戸惑った表情を浮かべる中、クランは何度も褒めた。
けれども、目の前が滲み、ほぼ鼻を啜るばかりになると「クラン」と優しく呼ばれる。
クランは俯きかけていた顔を戻して、微笑を作った。
「助けてくれて、ありがとう」
あの時とは少し違うが最後に回復魔法をかければ、リドも気付いたのだろう。僅かに目を見開くがすぐに困ったように笑った。
「痛くない」
「ふふ、それならよかった。唯一の回復も駄目駄目な方だから」
苦笑するクランにリドは「知ってる」と揶揄った。けれど、穏やかな顔でクランを見ていた。
成長したが変わらずに鮮やかなグリーンの瞳と見つめ合うクランは「あ、あのさ」と口を開く。
「僕のギルドによかったら入らない……? も、もう他に良いギルド見つけちゃった?」
僕のこと呆れた? と聞きながら無意識に下がる視線だったが「見つけてない、それに呆れてないさ」と言われ、クランは柔らかく目を細める。
また滲む瞳から溢れた涙などこの際、些細なことだとクランは目の前のリドへ告げる。
「それなら僕のギルドに来てよ。リドはギルドに……いや違う、僕に……」
大切なリドをしっかりと見つめた。
「僕に必要なんだ!」
というのも、現在キリバの森では人喰いガルバと呼ばれる大層まずい魔物がいるらしくポンコツなクランが行くのは駄目ということだ。
せっかくリドがいるかもしれないし、そのガルバに襲われているかもと心配で向かいたくなるがティガのガードは固かった。
結局、リドを探しにキリバの森へ行くのは中止となったがティガが帰った夕方頃、クランは装備を準備して早朝すぐに内緒でキリバの森へ旅立った。
そうしてクランはキリバの森へ着き、早速リドを探すが困ったことが一つあった。
「リドのボロ家ってどこにあったかな」
もともとリドは劣悪な孤児院から逃げ出し、この森で暮らし始めたのでボロ家と言うよりもあれは、ほぼ動物の棲家のようだったとクランは記憶している。そんな動物の棲家を四年ぶりにこの森から探すなど難題すぎた。
ないない、と探すこと数時間、成果はなく体力だけが減った。少し休むところはないかと思うクランだったがなんとちょうど良いところになかなかに綺麗そうな切り株を見つける。
「ラッキー。ここで休憩しよう」
腰を下ろして息を吐く。減った体力を回復するために茫然と辺りを見るがふとあることに気付く。
「焚き火の跡だ」
少し先に焚き火の跡を見つけ、クランは腰をあげて近づくが痕跡はまだ新しかった。
もしかしてリドかと辺りを見回すが誰も居らず、あったのは幹にビシャっとかかったような乾いた血痕である。
「ヒェッ」
驚きに跳び上がるが血痕の主はまさかリドではと確認のため近づくもその時、ガサガサと物音が横からした。
何だと顔を向ければ、そこには信じられない巨体に似合わないつぶらすぎる瞳をもった茶色のガルバだ。
クランはキュッと喉が締まったのを感じる。ガルバとクランの視線が静かに重なる数秒間。クランは高速で走馬灯が見えていた。
こちらをじっと見つめ、大人しさを抱くガルバだが、次の瞬間低い唸り声を出す。
完全に敵とみなすガルバに唸られ、クランは震え上がるも逃げるように後ずさる。ジリジリとガルバを刺激しないよう下がるが詰めるようにガルバはゆっくりとクランを追い詰めてきた。
「助けて……」
このお飾りな剣でも振り回すか、と腰に差す剣をちらりと見るもすぐに無理だと思い直す。
自分がもう少し戦闘面に得意だったらガルバを倒すまではいかないものの逃げる隙は作れただろう。
だが今まで、戦闘はリドに任せきりで後ろに隠れていたクランに残るのはガルバのご飯になるだけだ。
こんなことならティガの言う通りにしておくべきだったという考えが過ぎるもやはりクランはリドに会いたかった。
「リドっ……どこにいるの?」
口から小さく溢れた言葉を目の前のガルバがわかるはずもなく、こちらを仕留めようと動くがその時、近くから爆発音が響く。
あまりの突然なことにクランは跳び上がって驚くがガルバも同じだったのか森の奥へ俊敏に逃げていった。
展開に追いつけないが今度は何がと辺りを見回せば、ある人影を見つけ、クランは目を見開く。
その人影は爆発を起こした当人のようで木などが木っ端微塵になった爆発地の近くに佇むも酷く焦った表情を浮かべている。息をするにも肩を上下し、どれほど緊急を要する事態にあったのかが見るだけでよくわかった。
そんな人影はクランを見つめる。
「どうして──」
「リド!」
困惑するリドの言葉を遮り、クランはリドへ駆け寄り飛び付いた。拒絶されることはなくリドは抱き止めるが少しぎこちなさは残る。
心の距離を感じるその動きにクランは軽く唇を噛むも抱擁を享受した。そして顔を上げるとリドへ話しかけた。
「すごいよ、君って強いんだね!」
「……クラン?」
「すごいすごい……」
クランの様子を見つめるリドは戸惑った表情を浮かべる中、クランは何度も褒めた。
けれども、目の前が滲み、ほぼ鼻を啜るばかりになると「クラン」と優しく呼ばれる。
クランは俯きかけていた顔を戻して、微笑を作った。
「助けてくれて、ありがとう」
あの時とは少し違うが最後に回復魔法をかければ、リドも気付いたのだろう。僅かに目を見開くがすぐに困ったように笑った。
「痛くない」
「ふふ、それならよかった。唯一の回復も駄目駄目な方だから」
苦笑するクランにリドは「知ってる」と揶揄った。けれど、穏やかな顔でクランを見ていた。
成長したが変わらずに鮮やかなグリーンの瞳と見つめ合うクランは「あ、あのさ」と口を開く。
「僕のギルドによかったら入らない……? も、もう他に良いギルド見つけちゃった?」
僕のこと呆れた? と聞きながら無意識に下がる視線だったが「見つけてない、それに呆れてないさ」と言われ、クランは柔らかく目を細める。
また滲む瞳から溢れた涙などこの際、些細なことだとクランは目の前のリドへ告げる。
「それなら僕のギルドに来てよ。リドはギルドに……いや違う、僕に……」
大切なリドをしっかりと見つめた。
「僕に必要なんだ!」
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