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対等へ
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あれから馬車で一足早く城へ戻った私は傷を詳しく見てもらったが失明していると言われた。回復も不可能な私の左目は二度と見えないということだ。自分の体であの痛みと男の魔法士の言葉に分かってはいたが少しだけ、本当に少しだけなんとかなってはいないかと祈っていた私は悲しかった。
しかしそんな私へ、突きつけられた騎士から他へ異動するようにという紙を渡され、ますます悲しく、こんな結果なった自分に今までの努力が否定された気がした。ただでさえ、突然の片目で感覚が掴めない中、その片目まで涙でぼやけながらも私は自室になんとか戻りベッドへ倒れた。しばらく泣いてしまった私だったがいつの間にか眠りについていたのだった。
それから、私は先延ばしにも出来ない異動先を悩んだ末に魔法士として頑張ろうと決めた。騎士は片目が見えないことはかなりの枷で相当な腕がなければ所属続行は無理な話だが魔法士は後方支援が多く片目でも問題ないだろう。別として城の文官でもよかったが私は片目になってから、あの対等でいようとしてくれたディアの顔がよく浮かんでいた。私にあの場を任してくれたはずがこんな失態をした自分とはもう対等でいてくれないかもしれないがそれなら、少しでも彼に近い距離にある魔法士として再び頑張り対等になれるよう努めようと考えたのだ。
希望の異動先を提出した私は周りが討伐関係で未だバタバタしている間に魔法士として決まり、部屋の移動や書類関係などもすぐに済んでしまった。ディアへ何も言わずに騎士をやめたことが気掛かりだったがこの間に一度も会うことはなく、もしかすると私ともう会うつもりはないのかと思った。そもそもバディにならなければ話すこともなかった地位のある彼だ、バディでもなければ騎士でもなくなった自分を気にかける理由がないのかもしれない。
気掛かりがなくなった私はひとまず彼へ話しかける程度は許してもらえるような人になろうかと城から募集していた優秀な魔法士が多い隣国の留学に応募した。数年、隣国にいなければいけないことからなかなか人が集まらなかったらしく感謝されながら私はすぐに隣国へ送られた。
自分の国から出たことはなかった私は異文化に触れながらも着実に魔法士として成長していく。あの習得の難しい回復魔法だって出来るようになったのだ、確実に一歩進んでいる。この国の知り合いもでき、とても充実した数年間過ごした。たびたび驚く出来事が私に起こったが今思うといい思い出だと振り返れる。
今日は留学の期間が終わり、国に帰る日だ。私を見送る者たちが数名、別れを惜しんでいる。特に先ほどから涙を大量に流す一名が目に入り笑ってしまう。
「そんなに泣かないで下さい、一生の別れではないんですから」
胸元からハンカチを出し、涙を流す彼へ渡す。
「僕からすれば一生の別れなんだよ、うぅ、だよね、王子?」
ハンカチを受け取った栗毛の髪の彼が隣の銀髪の彼へ問えば頷いた。そして私を見て「もうこちらの魔法士として過ごしてはどう? 書類完備しているのに」というここで過ごして彼と会えばいつも言うお決まりの言葉を言った。つい、この言葉も最後だと思うとまた笑ってしまうが一度首を横に振って「すみません、最後まで断ってしまって。でもそう言ってくれるのは嬉しかったんです、ありがとうございます」と伝える。
銀髪の彼は優しく微笑み「私はいつまでも歓迎しているから何かあった時はいつでもおいで」と言って私を抱きしめた。彼の優しさに目が潤む私は抱きしめ返し、続けて抱きついてきた栗毛の髪の彼も抱きしめる。
そうして彼らと他の者にも別れを告げた私は馬車に乗り込み、懐かしい母国へと帰るのだった。
しかしそんな私へ、突きつけられた騎士から他へ異動するようにという紙を渡され、ますます悲しく、こんな結果なった自分に今までの努力が否定された気がした。ただでさえ、突然の片目で感覚が掴めない中、その片目まで涙でぼやけながらも私は自室になんとか戻りベッドへ倒れた。しばらく泣いてしまった私だったがいつの間にか眠りについていたのだった。
それから、私は先延ばしにも出来ない異動先を悩んだ末に魔法士として頑張ろうと決めた。騎士は片目が見えないことはかなりの枷で相当な腕がなければ所属続行は無理な話だが魔法士は後方支援が多く片目でも問題ないだろう。別として城の文官でもよかったが私は片目になってから、あの対等でいようとしてくれたディアの顔がよく浮かんでいた。私にあの場を任してくれたはずがこんな失態をした自分とはもう対等でいてくれないかもしれないがそれなら、少しでも彼に近い距離にある魔法士として再び頑張り対等になれるよう努めようと考えたのだ。
希望の異動先を提出した私は周りが討伐関係で未だバタバタしている間に魔法士として決まり、部屋の移動や書類関係などもすぐに済んでしまった。ディアへ何も言わずに騎士をやめたことが気掛かりだったがこの間に一度も会うことはなく、もしかすると私ともう会うつもりはないのかと思った。そもそもバディにならなければ話すこともなかった地位のある彼だ、バディでもなければ騎士でもなくなった自分を気にかける理由がないのかもしれない。
気掛かりがなくなった私はひとまず彼へ話しかける程度は許してもらえるような人になろうかと城から募集していた優秀な魔法士が多い隣国の留学に応募した。数年、隣国にいなければいけないことからなかなか人が集まらなかったらしく感謝されながら私はすぐに隣国へ送られた。
自分の国から出たことはなかった私は異文化に触れながらも着実に魔法士として成長していく。あの習得の難しい回復魔法だって出来るようになったのだ、確実に一歩進んでいる。この国の知り合いもでき、とても充実した数年間過ごした。たびたび驚く出来事が私に起こったが今思うといい思い出だと振り返れる。
今日は留学の期間が終わり、国に帰る日だ。私を見送る者たちが数名、別れを惜しんでいる。特に先ほどから涙を大量に流す一名が目に入り笑ってしまう。
「そんなに泣かないで下さい、一生の別れではないんですから」
胸元からハンカチを出し、涙を流す彼へ渡す。
「僕からすれば一生の別れなんだよ、うぅ、だよね、王子?」
ハンカチを受け取った栗毛の髪の彼が隣の銀髪の彼へ問えば頷いた。そして私を見て「もうこちらの魔法士として過ごしてはどう? 書類完備しているのに」というここで過ごして彼と会えばいつも言うお決まりの言葉を言った。つい、この言葉も最後だと思うとまた笑ってしまうが一度首を横に振って「すみません、最後まで断ってしまって。でもそう言ってくれるのは嬉しかったんです、ありがとうございます」と伝える。
銀髪の彼は優しく微笑み「私はいつまでも歓迎しているから何かあった時はいつでもおいで」と言って私を抱きしめた。彼の優しさに目が潤む私は抱きしめ返し、続けて抱きついてきた栗毛の髪の彼も抱きしめる。
そうして彼らと他の者にも別れを告げた私は馬車に乗り込み、懐かしい母国へと帰るのだった。
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