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懐かしい顔
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「えっ……」
俺は目を見開いて驚きの声をあげてしまった。その理由は騎士団長の執務室の扉がとつぜん爆発し、木っ端微塵になったからだ。近くで扉が爆発して俺に怪我がないのはおそらくシアが魔法で壁でも張り防いでくれたおかげだと思うが俺は驚きすぎて心臓が痛い。シアが仕事をする横で俺はのんびりと朝食をとっていた時で心構えも何もなかったのだ。痛む心臓に俺は胸を手で撫で落ち着かせようとするも追撃の怒り声が執務室に響いた。
「スタシア! あれほど城に戻れと言っただろうが!」
声とともに現れたのは懐かしい顔であるエインだった。エインは俺に気づいた様子はなくシアに詰め寄っているがシアの方は鬱陶しそうな顔で彼を迎えた。
「戻っただろう」
「遅いんだよ!」
「そんなに怒るな、ほら、お前の分のコーヒーだ」
「はあ? 病んだお前が俺にコーヒー買うなんて何事だ?」
シアから差し出されたコーヒーを見ながら言うエインに俺は思わず傍観を忘れ笑ってしまった。しかしその事でエインがこちらを見た。エインは驚きの表情でシアと俺を交互に何度か見てから口を開いた。
「とうとうお前が鬱陶しすぎて化けてでも出られたか?」
「違う」
シアの素早い否定の声に俺は笑いながら椅子から立ち上がりエインの前に行った。
「久しぶりだね、エイン」
俺を上から下へと見たエインは片手で顔を覆うと辛そうに言った。
「俺はついに過労から幻覚が見える。これも全部スタシアの所為だ」
「違う」
「本当だろうが!」
仲が良いなと俺は思うも口には出さず、微笑んで二人を見た。するとエインがまた俺の方を向いてからシアに真面目な声で問う。
「それで説明はあるのか、スタシア」
「これから私の補佐をする、異世界からきたフィーロだ」
ちらりと俺を見るシアだったがすぐにエインへ向き直った。しかしエインの方はといえば、眉を寄せ怒りを露わにする。
「はあ? お前、本当いい加減にしろよ」
「いや、本当にシアの言ってる事はあってるよ。俺、召喚されたから。あの時に対応を任せた騎士に訊いてみなよ」
簡潔に答えたシアだったが前世の俺を知るエインには冗談に聞こえる説明で困ったものだと俺は思った。だが俺が真面目な顔で足した言葉にエインは納得したようだ。
「……分かった、少し抜ける」
出て行く際に扉も直していくエインを見送った俺は疲れたように先程座っていた椅子に戻った。そして残りの朝食を食べ終わった頃にエインは召喚された時に対応した騎士と一緒に戻ってきた。
「合ってるか?」
「え、全く別人ですよ。短い黒髪に黒目でしたから」
「待って待って。俺、あの時は髪染めてたし目の色も変えてたんだって」
怪しげな目で二人に見られる俺は慌ててシアの方を向き、助けを求めた。
「この姿だろう?」
シアの言葉とともに自分の頭が軽くなる。
「そうです! この姿でした」
騎士がびっくりしながらも肯定するので俺の姿が変わっているのだろう。俺は見えないので分からないが。
エインの方はまだ怪しそうにしていたが新たに扉をノックする音があり、シアではなくエインが入室の許可を出した。
「失礼します」
入ってきたのは宿舎の案内などをしてくれて新米騎士の育成担当かつ俺の髪の色を戻してくれたりなどいろいろと面倒を見てくれた人だった。
「とつぜんで悪いがこれは召喚されたフィーロで間違いないか?」
エインの問いにその人は俺を見るもまた髪を戻したのかという不思議そうな顔しながら答えた。
「はい。ですがまた黒髪黒目に戻したのですか? 本来の彼は金髪碧眼です」
「そうだ。そして私が昨夜、髪を伸ばした」
部屋に集まった者が俺を見るなか、俺は頭が重くなったことで元に戻ったと分かった。
「それで召喚されたフィーロで合っているということでいいか?」
シアの最後の確認にエインに呼ばれた騎士二人は頷く。それを見たシアは二人を仕事場に戻し、この場は三人になった。
「エイン、納得したか?」
「とりあえずはな。ただいろいろとあり得ないだろう、本当に俺たちの知るフィーロか?」
探るようなエインの目に俺は彼が疑うのも無理はないと思った。
「エイン達が知る俺だと思うけど、あの俺そのままとはいえないね。なにしろ、俺は生まれ変わってる」
「前世の記憶があるのか?」
エインのその問いに俺は肩をすくめ言う。
「あるんだよね、これがまた」
「何か話してみろよ」
とつぜんの無茶振りに困るが信じてもらえそうな話を思い出す。
「ええ、何かって言われてもな……。あ、新米の頃、煙草をエインから貰って一緒に吸った」
これはぴったりな話だなと俺は思い、エインを見るとまた片手で顔を覆い、頷く。
「……本当にフィーロだわ」
「ちょっと待て、私はそんな話聞いたことがない」
「お前に言うはずないだろう、鬱陶しい。それに誰にも言ったことない話だ」
「はは、禁則事項だもんね」
そう、新米騎士の時、煙草は禁止だったが内緒でエインと二人で吸った。まあ、俺は巻き込まれたに近いが。
俺は目を見開いて驚きの声をあげてしまった。その理由は騎士団長の執務室の扉がとつぜん爆発し、木っ端微塵になったからだ。近くで扉が爆発して俺に怪我がないのはおそらくシアが魔法で壁でも張り防いでくれたおかげだと思うが俺は驚きすぎて心臓が痛い。シアが仕事をする横で俺はのんびりと朝食をとっていた時で心構えも何もなかったのだ。痛む心臓に俺は胸を手で撫で落ち着かせようとするも追撃の怒り声が執務室に響いた。
「スタシア! あれほど城に戻れと言っただろうが!」
声とともに現れたのは懐かしい顔であるエインだった。エインは俺に気づいた様子はなくシアに詰め寄っているがシアの方は鬱陶しそうな顔で彼を迎えた。
「戻っただろう」
「遅いんだよ!」
「そんなに怒るな、ほら、お前の分のコーヒーだ」
「はあ? 病んだお前が俺にコーヒー買うなんて何事だ?」
シアから差し出されたコーヒーを見ながら言うエインに俺は思わず傍観を忘れ笑ってしまった。しかしその事でエインがこちらを見た。エインは驚きの表情でシアと俺を交互に何度か見てから口を開いた。
「とうとうお前が鬱陶しすぎて化けてでも出られたか?」
「違う」
シアの素早い否定の声に俺は笑いながら椅子から立ち上がりエインの前に行った。
「久しぶりだね、エイン」
俺を上から下へと見たエインは片手で顔を覆うと辛そうに言った。
「俺はついに過労から幻覚が見える。これも全部スタシアの所為だ」
「違う」
「本当だろうが!」
仲が良いなと俺は思うも口には出さず、微笑んで二人を見た。するとエインがまた俺の方を向いてからシアに真面目な声で問う。
「それで説明はあるのか、スタシア」
「これから私の補佐をする、異世界からきたフィーロだ」
ちらりと俺を見るシアだったがすぐにエインへ向き直った。しかしエインの方はといえば、眉を寄せ怒りを露わにする。
「はあ? お前、本当いい加減にしろよ」
「いや、本当にシアの言ってる事はあってるよ。俺、召喚されたから。あの時に対応を任せた騎士に訊いてみなよ」
簡潔に答えたシアだったが前世の俺を知るエインには冗談に聞こえる説明で困ったものだと俺は思った。だが俺が真面目な顔で足した言葉にエインは納得したようだ。
「……分かった、少し抜ける」
出て行く際に扉も直していくエインを見送った俺は疲れたように先程座っていた椅子に戻った。そして残りの朝食を食べ終わった頃にエインは召喚された時に対応した騎士と一緒に戻ってきた。
「合ってるか?」
「え、全く別人ですよ。短い黒髪に黒目でしたから」
「待って待って。俺、あの時は髪染めてたし目の色も変えてたんだって」
怪しげな目で二人に見られる俺は慌ててシアの方を向き、助けを求めた。
「この姿だろう?」
シアの言葉とともに自分の頭が軽くなる。
「そうです! この姿でした」
騎士がびっくりしながらも肯定するので俺の姿が変わっているのだろう。俺は見えないので分からないが。
エインの方はまだ怪しそうにしていたが新たに扉をノックする音があり、シアではなくエインが入室の許可を出した。
「失礼します」
入ってきたのは宿舎の案内などをしてくれて新米騎士の育成担当かつ俺の髪の色を戻してくれたりなどいろいろと面倒を見てくれた人だった。
「とつぜんで悪いがこれは召喚されたフィーロで間違いないか?」
エインの問いにその人は俺を見るもまた髪を戻したのかという不思議そうな顔しながら答えた。
「はい。ですがまた黒髪黒目に戻したのですか? 本来の彼は金髪碧眼です」
「そうだ。そして私が昨夜、髪を伸ばした」
部屋に集まった者が俺を見るなか、俺は頭が重くなったことで元に戻ったと分かった。
「それで召喚されたフィーロで合っているということでいいか?」
シアの最後の確認にエインに呼ばれた騎士二人は頷く。それを見たシアは二人を仕事場に戻し、この場は三人になった。
「エイン、納得したか?」
「とりあえずはな。ただいろいろとあり得ないだろう、本当に俺たちの知るフィーロか?」
探るようなエインの目に俺は彼が疑うのも無理はないと思った。
「エイン達が知る俺だと思うけど、あの俺そのままとはいえないね。なにしろ、俺は生まれ変わってる」
「前世の記憶があるのか?」
エインのその問いに俺は肩をすくめ言う。
「あるんだよね、これがまた」
「何か話してみろよ」
とつぜんの無茶振りに困るが信じてもらえそうな話を思い出す。
「ええ、何かって言われてもな……。あ、新米の頃、煙草をエインから貰って一緒に吸った」
これはぴったりな話だなと俺は思い、エインを見るとまた片手で顔を覆い、頷く。
「……本当にフィーロだわ」
「ちょっと待て、私はそんな話聞いたことがない」
「お前に言うはずないだろう、鬱陶しい。それに誰にも言ったことない話だ」
「はは、禁則事項だもんね」
そう、新米騎士の時、煙草は禁止だったが内緒でエインと二人で吸った。まあ、俺は巻き込まれたに近いが。
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