8 / 11
第一章 新しい世界
精霊王と王都散策2
しおりを挟む
蓮が思っていたより王都は広く、さまざまな店があった。服飾も異世界転生ものにありがちなデザインがイマイチとか、素材がイマイチとかいうこともない。むしろ、さらりとした肌触りの良い柔らかな生地は、日本でも見たことのないものだ。
食べ物の屋台も豊富で、味付けもしっかりしている。日本にいたころと同じくらい充実している、というほどではないが、なかなかの満足度であるといえるだろう。どうやら、この世界は科学の発展はそれほどでもないが、魔道具などが電化製品の代わりなどをしているようである。そのため、場合によっては、日本よりも便利に感じる部分もあるようだ。
「思っていたより快適な生活ができそうだね」
「そうねえ。都市部はかなり発展しているものねえ」
「そうぞな。こういった部分はどの種族よりも人間が得意とするところぞな」
シャナの言葉に、シャーレイが器用にうなずいて同意を示す。この世界には獣人族や竜人族、エルフなどさまざまな種族がいるが、生活面を豊かにすることにかけては人族がもっともすぐれているらしい。ちなみに、魔法の扱いではエルフが、戦闘能力においては竜人族が優れているというように、種族によってそれぞれ特色があるようだ。こういった部分は、蓮が読んでいた小説や漫画に通じるものがある。
ともあれ、クレイやシャナ、シャーレイとの王都散策は存外に楽しい。屋台の食べ歩きも楽しく、目新しいものが多くあるのでついつい目移りしてしまい、あれもこれも食べてしまった。ちょっと食べすぎて気持ち悪いまである。
「うーん、食べすぎちゃった。気持ち悪っ」
「我にまかせるぞな」
失敗した、と反省していると、頭の上でいきなりシャーレイがタップダンスを踊り始め、一瞬ぴかっと小さく光る。
「何を‥‥おお?気持ち悪いのなくなった」
むしろ、今日一番に具合がいい。
「ふふ、さすがは光の精霊王ねえ」
回復は、光系統の精霊の十八番とのことのようだ。「でもそれくらいワタシにもできるわよう」と、謎の対抗意識を燃やすシャナ。だが、なぜタップダンス?なんでもいいが、人の頭の上で踊るのはやめてほしいものである。それはそれとして、治してもらったのは確かなことだ。
「ありがとう、シャーレイ」
気分が良くなった蓮が素直に礼を言うと、シャーレイは蓮の目の前にパタパタと飛んできて、まんざらでもなさそうに胸を張った。うん、かわいい。ついもふってしまったのはご愛嬌というものであろう。と、もふもふしていると、じっとこちらを見つめている子供に気づいた。なにやら、頭の上にネコのような耳がついている。全体的に薄汚れているが、顔立ちは悪くないようだ。大通りから少しはなれた、細い路地の入り口辺りからこちらをみている。
「おお~かわいい。もしかしてあれが獣人?」
「ほんとうねえ。こんなところで獣人を見るなんて珍しいわねえ」
「だな」
シャナの言葉に、クレイがうなずく。
「珍しいの?」
確かに、道行く人をみても、獣人らしきヒトはみない。
「獣人はねえ、もっと南の方に住んでいる種族なのよう。この辺りの気候は体質的に合わないようなのよう」
「へえ~」
では、あの子供たちはどこから来たのだろうか。何より視線がすごい。ものすごい圧を感じる。穴が空きそう。
「よし、声かけてみよう」
「やめておくぞな。あの子らには呪いがかかっているぞな。関わり合いになるのはおすすめしないぞな」
呪い、といった不吉な単語に、蓮は眉をひそめた。彼女が見たところ、多少薄汚れてはいても、特別憔悴している様子はないし、小説や漫画にあるような黒い靄をまとっているわけでもない。呪いといわれても全く実感がわかない。
「呪いって‥‥本当?」
「精霊は嘘なぞつかないぞな。我は呪いの類には敏感ぞな」
頭の上でパタパタと羽根を動かしながら、あれだけ濃い呪いをまとっていれば下級精霊にだってわかると断言するシャーレイ。そこまで言われれば、蓮としても納得せざるを得ない。とはいっても、このまま放置するのもなんだかすっきりしない。
「声をかけるだけで危険?」
「いや、そのようなことはないぞな。かかわったとて、我らがおるでの。主にそこまで危険は及ばぬぞな」
「なんかあってもお前は俺が守ってやるよ。コイツらはともかく、お前には傷一つつけねぇから安心しろや」
ニヤリと笑いながら、クレイが乱暴に蓮の頭をなでる。髪がぐしゃぐしゃになるからやめてほしいものだ。だが、守ってくれるというなら安心である。この世界の精霊王は、地域によっては神と崇められるほどに力があるのだから。
「わかった」
うなずいて、蓮は結局声をかけることにした。その間も、獣人の子供がじっと蓮を見ていたからだ。
「ねぇ、なにか用?」
ててっと近づいて、脅かさないように小さく声をかける。
「あ、えっと」
獣人の子供は、蓮とクレイ、シャナを順に見て、蓮の手を取った。
「こっち」
「え?」
かと思うと、いきなり蓮を引っ張る。
「おい!」
「まつのよう。ついていくのよう」
蓮から獣人の手を離そうとしたクレイに、シャナが待ったをかけた。
「イヤな予感がするのよう」
シャナは水の精霊王。少し先の未来を視る力がある。そして、他のどの系統よりも優れた直感力も。その直感が、今はついていくべきといっている。蓮の頭上にいるシャーレイも、何かを感じとっているようで、静かに辺りを観察していた。
そうして、彼らはたどり着いた。この国の最底辺。王都でもっとも貧しい場所、スラム街に。
食べ物の屋台も豊富で、味付けもしっかりしている。日本にいたころと同じくらい充実している、というほどではないが、なかなかの満足度であるといえるだろう。どうやら、この世界は科学の発展はそれほどでもないが、魔道具などが電化製品の代わりなどをしているようである。そのため、場合によっては、日本よりも便利に感じる部分もあるようだ。
「思っていたより快適な生活ができそうだね」
「そうねえ。都市部はかなり発展しているものねえ」
「そうぞな。こういった部分はどの種族よりも人間が得意とするところぞな」
シャナの言葉に、シャーレイが器用にうなずいて同意を示す。この世界には獣人族や竜人族、エルフなどさまざまな種族がいるが、生活面を豊かにすることにかけては人族がもっともすぐれているらしい。ちなみに、魔法の扱いではエルフが、戦闘能力においては竜人族が優れているというように、種族によってそれぞれ特色があるようだ。こういった部分は、蓮が読んでいた小説や漫画に通じるものがある。
ともあれ、クレイやシャナ、シャーレイとの王都散策は存外に楽しい。屋台の食べ歩きも楽しく、目新しいものが多くあるのでついつい目移りしてしまい、あれもこれも食べてしまった。ちょっと食べすぎて気持ち悪いまである。
「うーん、食べすぎちゃった。気持ち悪っ」
「我にまかせるぞな」
失敗した、と反省していると、頭の上でいきなりシャーレイがタップダンスを踊り始め、一瞬ぴかっと小さく光る。
「何を‥‥おお?気持ち悪いのなくなった」
むしろ、今日一番に具合がいい。
「ふふ、さすがは光の精霊王ねえ」
回復は、光系統の精霊の十八番とのことのようだ。「でもそれくらいワタシにもできるわよう」と、謎の対抗意識を燃やすシャナ。だが、なぜタップダンス?なんでもいいが、人の頭の上で踊るのはやめてほしいものである。それはそれとして、治してもらったのは確かなことだ。
「ありがとう、シャーレイ」
気分が良くなった蓮が素直に礼を言うと、シャーレイは蓮の目の前にパタパタと飛んできて、まんざらでもなさそうに胸を張った。うん、かわいい。ついもふってしまったのはご愛嬌というものであろう。と、もふもふしていると、じっとこちらを見つめている子供に気づいた。なにやら、頭の上にネコのような耳がついている。全体的に薄汚れているが、顔立ちは悪くないようだ。大通りから少しはなれた、細い路地の入り口辺りからこちらをみている。
「おお~かわいい。もしかしてあれが獣人?」
「ほんとうねえ。こんなところで獣人を見るなんて珍しいわねえ」
「だな」
シャナの言葉に、クレイがうなずく。
「珍しいの?」
確かに、道行く人をみても、獣人らしきヒトはみない。
「獣人はねえ、もっと南の方に住んでいる種族なのよう。この辺りの気候は体質的に合わないようなのよう」
「へえ~」
では、あの子供たちはどこから来たのだろうか。何より視線がすごい。ものすごい圧を感じる。穴が空きそう。
「よし、声かけてみよう」
「やめておくぞな。あの子らには呪いがかかっているぞな。関わり合いになるのはおすすめしないぞな」
呪い、といった不吉な単語に、蓮は眉をひそめた。彼女が見たところ、多少薄汚れてはいても、特別憔悴している様子はないし、小説や漫画にあるような黒い靄をまとっているわけでもない。呪いといわれても全く実感がわかない。
「呪いって‥‥本当?」
「精霊は嘘なぞつかないぞな。我は呪いの類には敏感ぞな」
頭の上でパタパタと羽根を動かしながら、あれだけ濃い呪いをまとっていれば下級精霊にだってわかると断言するシャーレイ。そこまで言われれば、蓮としても納得せざるを得ない。とはいっても、このまま放置するのもなんだかすっきりしない。
「声をかけるだけで危険?」
「いや、そのようなことはないぞな。かかわったとて、我らがおるでの。主にそこまで危険は及ばぬぞな」
「なんかあってもお前は俺が守ってやるよ。コイツらはともかく、お前には傷一つつけねぇから安心しろや」
ニヤリと笑いながら、クレイが乱暴に蓮の頭をなでる。髪がぐしゃぐしゃになるからやめてほしいものだ。だが、守ってくれるというなら安心である。この世界の精霊王は、地域によっては神と崇められるほどに力があるのだから。
「わかった」
うなずいて、蓮は結局声をかけることにした。その間も、獣人の子供がじっと蓮を見ていたからだ。
「ねぇ、なにか用?」
ててっと近づいて、脅かさないように小さく声をかける。
「あ、えっと」
獣人の子供は、蓮とクレイ、シャナを順に見て、蓮の手を取った。
「こっち」
「え?」
かと思うと、いきなり蓮を引っ張る。
「おい!」
「まつのよう。ついていくのよう」
蓮から獣人の手を離そうとしたクレイに、シャナが待ったをかけた。
「イヤな予感がするのよう」
シャナは水の精霊王。少し先の未来を視る力がある。そして、他のどの系統よりも優れた直感力も。その直感が、今はついていくべきといっている。蓮の頭上にいるシャーレイも、何かを感じとっているようで、静かに辺りを観察していた。
そうして、彼らはたどり着いた。この国の最底辺。王都でもっとも貧しい場所、スラム街に。
4
あなたにおすすめの小説
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
【本編完結】転生令嬢は自覚なしに無双する
ベル
ファンタジー
ふと目を開けると、私は7歳くらいの女の子の姿になっていた。
きらびやかな装飾が施された部屋に、ふかふかのベット。忠実な使用人に溺愛する両親と兄。
私は戸惑いながら鏡に映る顔に驚愕することになる。
この顔って、マルスティア伯爵令嬢の幼少期じゃない?
私さっきまで確か映画館にいたはずなんだけど、どうして見ていた映画の中の脇役になってしまっているの?!
映画化された漫画の物語の中に転生してしまった女の子が、実はとてつもない魔力を隠し持った裏ボスキャラであることを自覚しないまま、どんどん怪物を倒して無双していくお話。
設定はゆるいです
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
転生?憑依?したおっさんの俺は【この子】を幸せにしたい
くらげ
ファンタジー
鷹中 結糸(たかなか ゆいと) は、四十目前の独り身の普通という名のブラック会社に務めるサラリーマンだった。だが、目が覚めたら細く小さい少年に転生?憑依?していた。しかも【この子】は、どうやら家族からも、国からも、嫌われているようで……!?
「誰も【この子】を幸せにしないなら俺が幸せにしてもいいよな?」
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる