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第二部 旅のはじまり~小さな娼婦編~
小さな娼婦編 第二十九話
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「アリオス!!」
その姿をみた雷砂が大きく目を見開き、それからうれしそうに破顔した。
駆け寄ると、待ってましたとばかりにアリオスが腕を広げて雷砂の身体をひょいっと抱き上げる。
「おー、重くなったなぁ。ライ坊」
「そりゃあね。だってもう10歳だよ?前に会ったのっていくつの時だっけ?」
「ん~、確か2年……いや、3年くらい前?いつもすれ違いばっかだったからなぁ」
むむむっと眉間にしわを寄せて記憶を探るアリオスのほっぺたを両手で挟んで、雷砂は笑う。
「久しぶり。元気そうで安心した」
「そりゃあこっちのセリフさね。なんつーか、男っぷりが増した?」
「男っぷりって。こんなでも一応女だよ?」
「見事なまでにぺったんこだけどな。それとも、ちったぁ成長したのかね?」
言いながら、アリオスは片方の手で雷砂の胸元をぺたっと触った。
その見事なまでのぺったんこな感触に、ちょっとだけ気の毒そうな顔をして、
「・・・・・・まあ、女の価値は胸じゃねーからな」
うんうんと頷きながらそう言った。雷砂は、アリオスの暴力的なまでの胸を半眼で見つめながら、
「それ、アリオスには言われたくない。っていうか、オレはまだまだ成長期だからね!?」
そう言って、可愛らしく頬を膨らませた。
アリオスは膨らんだ頬を指先でつつきながら、
「わりぃわりぃ。ちゃあんとライ坊のお使いしてやったから、機嫌直せよ。な?」
「あ、ちゃんと持ってきてくれた?」
「おうよ。ブツは宿に置いてきた。セイラってキレイなねーちゃんに預けてある。で、雷砂はどこにいるかって聞いたら、多分ここだって言うから、急いで来てみたってわけ」
「そっか。ありがとう。助かったよ、アリオス」
「礼を言ってくれるのはいいけど、可愛さが足りないな~。ほれ、もうちょっと可愛く言ってみ?」
「可愛くって・・・・・・」
「ほら、昔みたいにさ。小さい頃のライ坊は可愛かったよなぁ~。アリお姉ちゃん、アリお姉ちゃんって、子犬みたいに後をついてきてさ~」
「む、昔の話だろ!!」
「それほど昔でもないさ。さ、遠慮せずに、アリお姉ちゃんと呼んでいいんだぞ?」
「やだよ、恥ずかしい」
からかわれ、思わず顔をしかめる雷砂を、アリオスがにやにやしながら見つめる。
そんな風にじゃれ合っている間に、冒険者ギルド関係の3人がやっと事態に追いついてきたらしい。
マーサは驚いたような表情のまま前に進み出てくると、雷砂を腕に抱えたままのアリオスの顔をまじまじと見上げた。
「その特徴的な髪と瞳、それからアリオスという名前・・・・・・あなた、疾風のアリオスね?S級冒険者の」
「お?よく分かったね。最近は冒険者としての活動はあんまりしてないし、すっかり忘れられてると思ってたけど。で、おたくはどちら様?」
「アリオス、ここの冒険者ギルドの偉い人のマーサだよ」
「マーサ、か。あんた、物知りだねぇ」
「お褒めに与り、どうも。アリオスさん、雷砂とはお知り合いかしら?」
「まぁね。ライ坊が今よりもっとちび助の頃からの知り合いだよ。さっきちょっと聞こえた試験官ってやつ?アタシでよければやってもいいけど?」
「いいんですか?雷砂と戦うことになりますけど?」
「構わない。どうせ模擬戦だろ?真剣を使う訳じゃないし、ちょっとくらい当たっても死にゃあしないさ。だろ、雷砂」
マーサの言葉に即座に頷いて了承の意を示し雷砂を見れば、腕の中のちび助もキラキラした目でアリオスを見上げている。
「アリオスが相手をしてくれるの?やったぁ。いつ以来だっけ?」
「うーん。忘れちまったなぁ」
首を傾げて考える。
確か、7歳の誕生日の時に、自分で木から削りだした木刀をプレゼントし、そのまま叩きのめしてシンファにこっぴどく怒られた事は覚えている。
ちょっと相手をして遊んでやろうと思ったら、思っていたより雷砂がいい動きをするものだからついつい本気になってしまったのだ。
傷だらけになった雷砂を見て、過保護なシンファは頭から湯気を出して怒った。
防戦一方のアリオスを見かねて、傷だらけの雷砂が割って入り、雷砂の為に怒ったのにと今度はシンファが酷く拗ねて大変だった事を思い出し、微妙な顔をするアリオスを見て、雷砂も同じ事を思い出したのだろう。
苦笑を浮かべつつ、少しだけ懐かしそうに目を細め、それから思い出したようにアリオスに尋ねた。
「シンファは、元気?」
「おう。ライ坊が自分を頼ってくれないって、拗ねてたぞ?」
アリオスの返答に、雷砂は少しだけ困った顔をする。
そんな雷砂の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ま、しゃーないわな。シンはライ坊に惚れてるからなぁ。恋する女は拗ねたりイジケたり、色々面倒なもんなんだ」
「惚れられてるのかなぁ、オレ。シンファが惚れるほど、オレはすごいヤツじゃないと思うんだけど」
「迷惑なのか?」
ズバリと問えば、雷砂は首を横に振る。
「迷惑じゃないよ。嬉しい」
素直に答え、ただ自信がないのだと答える。
肉親としてはこの上もなく愛している。
だが女として愛しているかと問われれば、まだ分からないとしか答えようがない。
シンファの想いを、きちんと受け止めてやりたいとは思うが、受け止められるか分からない。
そんな自分に、シンファから想いを寄せられる資格はあるのだろうか。
そんな迷いに雷砂の瞳が揺れる。
その瞳をのぞき込み、アリオスは獰猛に笑った。じゃあ、アタシが確かめてやるよ、と。
「ランクアップの試験の為に、アタシと戦う必要があるんだろ?ガツンとやり合おうぜ。そんで、アタシがアンタを見極めてやる」
シンファに相応しいか否か。
大事な幼なじみを託すに足る相手なのかどうかを。
猛禽類のような笑みを浮かべたまま、アリオスはマーサに視線を向ける。
「で、試験はどこでやる?」
まるで威嚇をしているような物騒な笑みに、マーサの後ろに立つミヤビとアトリはしっぽを逆立てた。
だが、マーサはまるで動じずにおっとりと微笑んで答える。
「地下に闘技場があります。試験はそこで。ですが、もう少し時間を頂きますよ?雷砂のランクアップを承認させる為に、観客を集めなくてはいけませんからね」
「ま、それはしゃあねーな。だけど、なるべく早くしてくれよな?こっちは雷砂とやり合いたくてうずうずしてんだ」
マーサの答えに肩をすくめ、ぎらりとした目で雷砂をみる。
それは獲物を見つめる野獣の瞳。
雷砂もまた、強い意志を込めてアリオスの瞳を見返した。
戦いの始まりまであとしばらく。
マーサの指示で、ミヤビとアトリが忙しく動き始める中、2人は視線をぶつけ合い、静かに闘志の火花を散らしあうのだった。
その姿をみた雷砂が大きく目を見開き、それからうれしそうに破顔した。
駆け寄ると、待ってましたとばかりにアリオスが腕を広げて雷砂の身体をひょいっと抱き上げる。
「おー、重くなったなぁ。ライ坊」
「そりゃあね。だってもう10歳だよ?前に会ったのっていくつの時だっけ?」
「ん~、確か2年……いや、3年くらい前?いつもすれ違いばっかだったからなぁ」
むむむっと眉間にしわを寄せて記憶を探るアリオスのほっぺたを両手で挟んで、雷砂は笑う。
「久しぶり。元気そうで安心した」
「そりゃあこっちのセリフさね。なんつーか、男っぷりが増した?」
「男っぷりって。こんなでも一応女だよ?」
「見事なまでにぺったんこだけどな。それとも、ちったぁ成長したのかね?」
言いながら、アリオスは片方の手で雷砂の胸元をぺたっと触った。
その見事なまでのぺったんこな感触に、ちょっとだけ気の毒そうな顔をして、
「・・・・・・まあ、女の価値は胸じゃねーからな」
うんうんと頷きながらそう言った。雷砂は、アリオスの暴力的なまでの胸を半眼で見つめながら、
「それ、アリオスには言われたくない。っていうか、オレはまだまだ成長期だからね!?」
そう言って、可愛らしく頬を膨らませた。
アリオスは膨らんだ頬を指先でつつきながら、
「わりぃわりぃ。ちゃあんとライ坊のお使いしてやったから、機嫌直せよ。な?」
「あ、ちゃんと持ってきてくれた?」
「おうよ。ブツは宿に置いてきた。セイラってキレイなねーちゃんに預けてある。で、雷砂はどこにいるかって聞いたら、多分ここだって言うから、急いで来てみたってわけ」
「そっか。ありがとう。助かったよ、アリオス」
「礼を言ってくれるのはいいけど、可愛さが足りないな~。ほれ、もうちょっと可愛く言ってみ?」
「可愛くって・・・・・・」
「ほら、昔みたいにさ。小さい頃のライ坊は可愛かったよなぁ~。アリお姉ちゃん、アリお姉ちゃんって、子犬みたいに後をついてきてさ~」
「む、昔の話だろ!!」
「それほど昔でもないさ。さ、遠慮せずに、アリお姉ちゃんと呼んでいいんだぞ?」
「やだよ、恥ずかしい」
からかわれ、思わず顔をしかめる雷砂を、アリオスがにやにやしながら見つめる。
そんな風にじゃれ合っている間に、冒険者ギルド関係の3人がやっと事態に追いついてきたらしい。
マーサは驚いたような表情のまま前に進み出てくると、雷砂を腕に抱えたままのアリオスの顔をまじまじと見上げた。
「その特徴的な髪と瞳、それからアリオスという名前・・・・・・あなた、疾風のアリオスね?S級冒険者の」
「お?よく分かったね。最近は冒険者としての活動はあんまりしてないし、すっかり忘れられてると思ってたけど。で、おたくはどちら様?」
「アリオス、ここの冒険者ギルドの偉い人のマーサだよ」
「マーサ、か。あんた、物知りだねぇ」
「お褒めに与り、どうも。アリオスさん、雷砂とはお知り合いかしら?」
「まぁね。ライ坊が今よりもっとちび助の頃からの知り合いだよ。さっきちょっと聞こえた試験官ってやつ?アタシでよければやってもいいけど?」
「いいんですか?雷砂と戦うことになりますけど?」
「構わない。どうせ模擬戦だろ?真剣を使う訳じゃないし、ちょっとくらい当たっても死にゃあしないさ。だろ、雷砂」
マーサの言葉に即座に頷いて了承の意を示し雷砂を見れば、腕の中のちび助もキラキラした目でアリオスを見上げている。
「アリオスが相手をしてくれるの?やったぁ。いつ以来だっけ?」
「うーん。忘れちまったなぁ」
首を傾げて考える。
確か、7歳の誕生日の時に、自分で木から削りだした木刀をプレゼントし、そのまま叩きのめしてシンファにこっぴどく怒られた事は覚えている。
ちょっと相手をして遊んでやろうと思ったら、思っていたより雷砂がいい動きをするものだからついつい本気になってしまったのだ。
傷だらけになった雷砂を見て、過保護なシンファは頭から湯気を出して怒った。
防戦一方のアリオスを見かねて、傷だらけの雷砂が割って入り、雷砂の為に怒ったのにと今度はシンファが酷く拗ねて大変だった事を思い出し、微妙な顔をするアリオスを見て、雷砂も同じ事を思い出したのだろう。
苦笑を浮かべつつ、少しだけ懐かしそうに目を細め、それから思い出したようにアリオスに尋ねた。
「シンファは、元気?」
「おう。ライ坊が自分を頼ってくれないって、拗ねてたぞ?」
アリオスの返答に、雷砂は少しだけ困った顔をする。
そんな雷砂の頭をわしゃわしゃと撫でた。
「ま、しゃーないわな。シンはライ坊に惚れてるからなぁ。恋する女は拗ねたりイジケたり、色々面倒なもんなんだ」
「惚れられてるのかなぁ、オレ。シンファが惚れるほど、オレはすごいヤツじゃないと思うんだけど」
「迷惑なのか?」
ズバリと問えば、雷砂は首を横に振る。
「迷惑じゃないよ。嬉しい」
素直に答え、ただ自信がないのだと答える。
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だが女として愛しているかと問われれば、まだ分からないとしか答えようがない。
シンファの想いを、きちんと受け止めてやりたいとは思うが、受け止められるか分からない。
そんな自分に、シンファから想いを寄せられる資格はあるのだろうか。
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その瞳をのぞき込み、アリオスは獰猛に笑った。じゃあ、アタシが確かめてやるよ、と。
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猛禽類のような笑みを浮かべたまま、アリオスはマーサに視線を向ける。
「で、試験はどこでやる?」
まるで威嚇をしているような物騒な笑みに、マーサの後ろに立つミヤビとアトリはしっぽを逆立てた。
だが、マーサはまるで動じずにおっとりと微笑んで答える。
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「ま、それはしゃあねーな。だけど、なるべく早くしてくれよな?こっちは雷砂とやり合いたくてうずうずしてんだ」
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