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第二部 旅のはじまり~小さな娼婦編~
小さな娼婦編 第三十六話
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ゆっくりと、少女の糸を警戒しながら進む。
さっき見た光景のように、一瞬で何もかもを吸い出されて彼女に補食されるのは勘弁願いたかった。
近づく雷砂の気配を感じたのか、少女がゆっくりと振り返る。
白い髪は艶やかで、その肌はどこまでもきめ細やかな白磁の様。
整いすぎた顔立ちは、一瞬美しい人形の様にも見えるが、その頬は淡く上気しほのかな色気を放つ。
年の頃は雷砂と同じくらいか、1つ2つ上くらいだろうか。
身長は同じ位なのに、その胸元を押し上げる膨らみは年の割に大きく見えた。
雷砂は一瞬自分の胸へと目を落とし、それから再び少女へと視線を向ける。
少し不公平だという気持ちはないでもない。
だが、今は落ち込んでいる暇はないと自分を戒め、まだ成長期だから大丈夫と己を慰めた。
近づく雷砂を少女の紅い瞳がじっと見つめる。
その瞳はなぜか嬉しそうに輝き、少女はにっこりと無邪気な笑みを浮かべた。
「雷砂?」
「ああ」
問われて頷く。
なぜ自分の名を知っているのか、という疑問と共に、やっぱりなという思いも浮かんだ。
白い少女の紅い瞳は、今までに何度も自分の前に現れた男の瞳に、とてもよく似ていたから。
何故か雷砂に執着し、狙ってくる存在に。
「雷砂、あそぼ?」
「遊ぶ?」
とろけるような微笑みを浮かべて少女が誘う。
「何をして、遊ぶんだ?」
首を傾げて問いかける。
「殺し合い!」
にこっと笑って少女が答えた。物騒な、その答えを。
「殺し合い、か」
呟くように繰り返し、雷砂は目の前の存在を見つめた。
少女の瞳はキラキラと輝き、敵意はまるで感じられない。
むしろ、雷砂に対する好意すら感じられた。
ニコニコ無邪気に笑う少女には、これから殺し合おうという雰囲気はかけらも無かった。
困ったな、と思う。
目の前の相手は、恐らく今回の依頼の対象。
倒さなくてはならない相手だ。
そうしなければ、依頼の報酬は手には入らない。
なのに、倒したいという気持ちになれないのだ。
魔物を倒すと言うことは、ただ戦って勝つという事では終わらない。
殺すのだ。
討伐の証明となる部位を持ち帰り、証明するために。
「早く、遊ぼう?」
少女が誘う。
遊ぶのがー殺し合うことが待ちきれないとばかりに。
「準備、するね?」
「準備?」
言葉が終わるな否や、少女の体は一瞬で変貌し、雷砂の疑問にその身で答える。
獣人族の集落で育った雷砂は、人の身から別のものへと変貌する事に一々驚いたりはしなかったが、少女の変わりようには少しだけ目を見張った。
「準備、か。なるほどな」
呟きつつ、まじまじと少女を見つめる。先程まではただの少女であった存在を。
「一瞬で、ずいぶん大きくなったなぁ」
見上げる先にあるのは、さっきと変わらぬ美しい少女の面。
上半身は人のまま。
だが、腰から下は大分様変わりしていた。
「蜘蛛、か。だから糸だったんだな」
すっかり変わった少女の下半身を見ながら、妙に納得する。
そんな雷砂に、少女は誘うような艶やかな笑みを投げかける。
「雷砂、あそぼ?」
繰り返される誘いに、雷砂は苦笑を漏らす。
ここまで誘われて固辞するのも申し訳ない。
どのみち戦わねばならぬ相手なのだ。勝負の結果、互いがどうなるか。そんなことは戦ってみてから考えればいい。
雷砂は微笑み頷く。
右手を掲げ、
「ロウ、おいで」
そう囁けば、忠実な友は銀色の鋭利な輝きを伴い、少しの間もおかず雷砂の右手に納まった。
「待たせたな。じゃあ、思う存分やり合おう」
紅い瞳と色違いの瞳、互いの視線をぶつけ合い、二人は笑う。
戦いの火蓋が切って落とされた。
さっき見た光景のように、一瞬で何もかもを吸い出されて彼女に補食されるのは勘弁願いたかった。
近づく雷砂の気配を感じたのか、少女がゆっくりと振り返る。
白い髪は艶やかで、その肌はどこまでもきめ細やかな白磁の様。
整いすぎた顔立ちは、一瞬美しい人形の様にも見えるが、その頬は淡く上気しほのかな色気を放つ。
年の頃は雷砂と同じくらいか、1つ2つ上くらいだろうか。
身長は同じ位なのに、その胸元を押し上げる膨らみは年の割に大きく見えた。
雷砂は一瞬自分の胸へと目を落とし、それから再び少女へと視線を向ける。
少し不公平だという気持ちはないでもない。
だが、今は落ち込んでいる暇はないと自分を戒め、まだ成長期だから大丈夫と己を慰めた。
近づく雷砂を少女の紅い瞳がじっと見つめる。
その瞳はなぜか嬉しそうに輝き、少女はにっこりと無邪気な笑みを浮かべた。
「雷砂?」
「ああ」
問われて頷く。
なぜ自分の名を知っているのか、という疑問と共に、やっぱりなという思いも浮かんだ。
白い少女の紅い瞳は、今までに何度も自分の前に現れた男の瞳に、とてもよく似ていたから。
何故か雷砂に執着し、狙ってくる存在に。
「雷砂、あそぼ?」
「遊ぶ?」
とろけるような微笑みを浮かべて少女が誘う。
「何をして、遊ぶんだ?」
首を傾げて問いかける。
「殺し合い!」
にこっと笑って少女が答えた。物騒な、その答えを。
「殺し合い、か」
呟くように繰り返し、雷砂は目の前の存在を見つめた。
少女の瞳はキラキラと輝き、敵意はまるで感じられない。
むしろ、雷砂に対する好意すら感じられた。
ニコニコ無邪気に笑う少女には、これから殺し合おうという雰囲気はかけらも無かった。
困ったな、と思う。
目の前の相手は、恐らく今回の依頼の対象。
倒さなくてはならない相手だ。
そうしなければ、依頼の報酬は手には入らない。
なのに、倒したいという気持ちになれないのだ。
魔物を倒すと言うことは、ただ戦って勝つという事では終わらない。
殺すのだ。
討伐の証明となる部位を持ち帰り、証明するために。
「早く、遊ぼう?」
少女が誘う。
遊ぶのがー殺し合うことが待ちきれないとばかりに。
「準備、するね?」
「準備?」
言葉が終わるな否や、少女の体は一瞬で変貌し、雷砂の疑問にその身で答える。
獣人族の集落で育った雷砂は、人の身から別のものへと変貌する事に一々驚いたりはしなかったが、少女の変わりようには少しだけ目を見張った。
「準備、か。なるほどな」
呟きつつ、まじまじと少女を見つめる。先程まではただの少女であった存在を。
「一瞬で、ずいぶん大きくなったなぁ」
見上げる先にあるのは、さっきと変わらぬ美しい少女の面。
上半身は人のまま。
だが、腰から下は大分様変わりしていた。
「蜘蛛、か。だから糸だったんだな」
すっかり変わった少女の下半身を見ながら、妙に納得する。
そんな雷砂に、少女は誘うような艶やかな笑みを投げかける。
「雷砂、あそぼ?」
繰り返される誘いに、雷砂は苦笑を漏らす。
ここまで誘われて固辞するのも申し訳ない。
どのみち戦わねばならぬ相手なのだ。勝負の結果、互いがどうなるか。そんなことは戦ってみてから考えればいい。
雷砂は微笑み頷く。
右手を掲げ、
「ロウ、おいで」
そう囁けば、忠実な友は銀色の鋭利な輝きを伴い、少しの間もおかず雷砂の右手に納まった。
「待たせたな。じゃあ、思う存分やり合おう」
紅い瞳と色違いの瞳、互いの視線をぶつけ合い、二人は笑う。
戦いの火蓋が切って落とされた。
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