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第一部 幸せな日々、そして旅立ち
SS シンファの部族会 2
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「みな揃ったようなので、今年度の部族会を開催する」
そんなまじめな口上から、部族会は始まった。
だが、議題が議題である。まじめな会議になど、なりようがない。
誰もがそわそわ浮ついていて、まるで会議らしい雰囲気のない会議だった。
そんな中、唯一周りと違った空気を醸し出しているのはライガ族の陣営。
シンファは不機嫌でイライラし、その後ろに控える補佐役のザズは無表情だが冷や汗を流している。
だが、そんなふわふわした空気の中、まずは例年通り各部族からの報告があり、最後に全体の統括だけは行われる。
各部族とも、特に目立った事は無かった様だ。
シンファも事前にジルヴァンと打ち合わせし指示された通り真面目に発表した。
しかし周りの連中が浮つき過ぎていて、思わず途中で怒鳴り声をあげそうになったが、それだけは頑張って何とか自重した。
質疑応答で、「パンツの色は何色ですか?」などと聞いてきたバカがいたが、あれだけは殴っても良かったと思う。
もちろん殴りはしなかったが、心底殴ってやりたかった。
質問はもちろん無視した。
さて、そんなこんなで昨年度の報告が終わり、とうとう本年の議題を検討する時間が来てしまった。
「ザズ、腹が痛いから、私は中座する。後は任せ・・・・・・」
「だめだ。あきらめろ」
無駄なあがきをしてみたが、最後まで言わせてもらえず却下された。
「おお、待ちに待った議題の時間じゃ」
「今年の議題はええのぅ。心が躍るわい」
「シンファちゃんの好みのタイプ、か。ワシじゃったらどうしよう」
「はっはっはっ。それだけはありえんじゃろ」
じじい達が楽しそうにさえずっている。殴りたい。
「シ、シンファさんはどんな男がいいのかな」
「や、やっぱり俺みたいな男らしいタイプだろ?」
「いやいや、僕のような賢そうな男が良いに違いない」
「違うよ、シンファさんは可愛い男の子が好きなんだ。ぼ、ぼくみたいな」
若い男も好き勝手さえずっている。腹が立つ。ボコボコにしたい。
「みんな、待て。落ち着け」
そんなシンファの黒いオーラに気がついたのか、司会が慌ててみんなに声をかける。
「我らだけで話し合っても埒があかん。ここは、シンファちゃんの意見を聞く形で進めたらどうだろう?」
そんな提案にみんなが頷く。シンファだけは頷かなかったが。
ザズも、首が固まっていて頷けなかったようだ。
「ここに、事前に集めた質問がある。まずは私が代表して質問していこう。その後、足りないと思うようなら各自挙手をして質問をする様に。では、シンファちゃ・・・・・・こほん。シンファ、前に出てくれ」
促され、黙って前にでる。
熱い視線やらねちっこい視線が飛んできて、本当にうんざりする。
シンファは腕を組み、男共の視線を跳ね返すように仁王立ちした。
早く始めろと進行役を睨むと、彼は慌てたように手元の質問票に目を落とし、
「じゃあ、まず最初の質問だ。年上と年下ならどっちが好みか?」
「・・・・・・年下だ」
ぶっきらぼうな答えに会場がわく。
若い男の半分ほどが喜んでいる。彼らはきっとシンファより年下なのだろう。
「強い男と優しい男、どっちがいい?」
「どちらも。強くて優しいのがいい」
みんな身を乗り出して、ふむふむと頷いている。
「たくましいタイプ、秀才タイプ、可愛いタイプだとどれを選ぶ?」
「そうだな・・・・・・どちらかと言えば可愛いタイプだ。だが、なよっとしたのは好きじゃない」
シンファは意外に真面目に答えていた。
早く全て答えて終わらせてしまいたいだけかもしれないが。
「身長は高い方が?」
「いや、低くてもかまわない。低いのも、可愛いからな」
「髪の色は何色が好み?」
「金色、だな」
「瞳の色は?」
「あえて言うなら、左右色違いが良い。左が金で右が黒にも見える深い青だ」
「・・・・・・もしや、好みのタイプに合致する特定の人物がいるとか?」
「ん?いや、特にそんなつもりはないが」
きょとんとした顔で司会を見返すシンファ。
彼女は自分があげた条件が、ある人物と合致することに気づいてない。
というか、完全に無意識の結果のようだ。
重症である。
会場の中がざわざわしていた。
中には雷砂を見知っている者もいて、シンファの好みのタイプが誰と合致するのか、気づいている者もいるようだ。
ザズは静かに頭を抱えていた。
そんな中、静かに挙手をする者がいた。
シンガ族の若長だ。
昨年、シンファに振られたその人である。
「ジンガ族・ラージェン殿。発言されよ」
司会がほっとしたように彼を指名する。
シンファに自覚が無いためこれ以上つっこみようがなく、困っていたのだ。
指名されたラージェンはすくっとその場に立ち上がった。
熱いまなざしをシンファに注ぎながら、自信に満ちた表情で。
昨年振られているとは思えない自信だ。
「シンファ殿、このままでは埒が飽かないので質問させて頂く」
「ああ。かまわんが」
「この会場内にいる男の中で、あなたの好みに一番近い男を指名して頂きたい」
おおっ、と会場がどよめいた。
この質問であれば、誰か一人は指名されるだろう。
「この、中からか」
シンファは困ったように会場内を見回した。
彼女の視線にさらされる男達が一喜一憂する様子がうざい。
だが、誰かを選ばねば、この恥ずかしい会議はいつまでたっても終わらないだろう。
仕方ないな、とシンファは一人の犠牲者を定めた。
「まあ、私の好みとは少し違うが、あえてこの中から選ぶとすれば・・・・・・」
「え、選ぶとすれば?」
ゴクリと、ジンガ族の若長の喉が鳴った。
ラージェンはこの中で唯一金色の髪をしている男だった。
年も、シンファより2つほど若いし、体もまだそれほどムキムキじゃない。
顔もそれほどごつくないし、部族の女からは良い顔だと良く誉められる。
この中から選べと迫ればシンファはきっと自分を選ぶ。
そんな自信があった。しかしー。
「私は我が部族のザズを選ぶ」
にやりと笑って指名すれば、ザズはまさしく苦虫を噛み潰したような顔でシンファを見た。
なんとなく予測はしていたのだろう。諦めきったように肩を落として。
「な、なぜ彼なのです?あなたの言っていた好みとは全然違うじゃないですか!?」
ラージャンが食い下がると、シンファは軽く肩をすくめ、
「まあ、好みのタイプとは違うが、彼は私に妙な色目は使わないし、気を使わずにつき合えるところは悪くないな、と思う」
そう言うと、自分に妙な色目を使う会場内の男達をじとっとした目で見回した。
「では、本日の議題はここまでだな。シンファちゃんの好みのタイプは、十分究明出来ただろう?」
これ以上引き留めたら、さすがに怒るぞと言わんばかりの顔で告げられて、司会も他の連中もこくこくと黙って頷く。
それじゃあと、ザズを連れて出て行こうとするシンファの背中をラージャンの声が追いかける。
「あなたは、強い男が好きなんですよね?」
「・・・・・・そうだな。強い男は嫌いじゃない」
「じゃあ、明日の競技会であなたに勝てたら、俺との交際を考えてくれませんか?」
まっすぐな眼差しに、シンファはしばし考え、それからふっと唇をほころばせた。
「まあ、私に勝てるなら、少しは考えてやっても良い」
そう答えて、再び彼に背を向け歩き出す。
「絶対に、あなたに勝ってみせます!!」
そんな青臭い宣言に、
「ま、せいぜい頑張ってみろ」
シンファは肩越しにひらりと軽く手を振りながら答えた。
そんなまじめな口上から、部族会は始まった。
だが、議題が議題である。まじめな会議になど、なりようがない。
誰もがそわそわ浮ついていて、まるで会議らしい雰囲気のない会議だった。
そんな中、唯一周りと違った空気を醸し出しているのはライガ族の陣営。
シンファは不機嫌でイライラし、その後ろに控える補佐役のザズは無表情だが冷や汗を流している。
だが、そんなふわふわした空気の中、まずは例年通り各部族からの報告があり、最後に全体の統括だけは行われる。
各部族とも、特に目立った事は無かった様だ。
シンファも事前にジルヴァンと打ち合わせし指示された通り真面目に発表した。
しかし周りの連中が浮つき過ぎていて、思わず途中で怒鳴り声をあげそうになったが、それだけは頑張って何とか自重した。
質疑応答で、「パンツの色は何色ですか?」などと聞いてきたバカがいたが、あれだけは殴っても良かったと思う。
もちろん殴りはしなかったが、心底殴ってやりたかった。
質問はもちろん無視した。
さて、そんなこんなで昨年度の報告が終わり、とうとう本年の議題を検討する時間が来てしまった。
「ザズ、腹が痛いから、私は中座する。後は任せ・・・・・・」
「だめだ。あきらめろ」
無駄なあがきをしてみたが、最後まで言わせてもらえず却下された。
「おお、待ちに待った議題の時間じゃ」
「今年の議題はええのぅ。心が躍るわい」
「シンファちゃんの好みのタイプ、か。ワシじゃったらどうしよう」
「はっはっはっ。それだけはありえんじゃろ」
じじい達が楽しそうにさえずっている。殴りたい。
「シ、シンファさんはどんな男がいいのかな」
「や、やっぱり俺みたいな男らしいタイプだろ?」
「いやいや、僕のような賢そうな男が良いに違いない」
「違うよ、シンファさんは可愛い男の子が好きなんだ。ぼ、ぼくみたいな」
若い男も好き勝手さえずっている。腹が立つ。ボコボコにしたい。
「みんな、待て。落ち着け」
そんなシンファの黒いオーラに気がついたのか、司会が慌ててみんなに声をかける。
「我らだけで話し合っても埒があかん。ここは、シンファちゃんの意見を聞く形で進めたらどうだろう?」
そんな提案にみんなが頷く。シンファだけは頷かなかったが。
ザズも、首が固まっていて頷けなかったようだ。
「ここに、事前に集めた質問がある。まずは私が代表して質問していこう。その後、足りないと思うようなら各自挙手をして質問をする様に。では、シンファちゃ・・・・・・こほん。シンファ、前に出てくれ」
促され、黙って前にでる。
熱い視線やらねちっこい視線が飛んできて、本当にうんざりする。
シンファは腕を組み、男共の視線を跳ね返すように仁王立ちした。
早く始めろと進行役を睨むと、彼は慌てたように手元の質問票に目を落とし、
「じゃあ、まず最初の質問だ。年上と年下ならどっちが好みか?」
「・・・・・・年下だ」
ぶっきらぼうな答えに会場がわく。
若い男の半分ほどが喜んでいる。彼らはきっとシンファより年下なのだろう。
「強い男と優しい男、どっちがいい?」
「どちらも。強くて優しいのがいい」
みんな身を乗り出して、ふむふむと頷いている。
「たくましいタイプ、秀才タイプ、可愛いタイプだとどれを選ぶ?」
「そうだな・・・・・・どちらかと言えば可愛いタイプだ。だが、なよっとしたのは好きじゃない」
シンファは意外に真面目に答えていた。
早く全て答えて終わらせてしまいたいだけかもしれないが。
「身長は高い方が?」
「いや、低くてもかまわない。低いのも、可愛いからな」
「髪の色は何色が好み?」
「金色、だな」
「瞳の色は?」
「あえて言うなら、左右色違いが良い。左が金で右が黒にも見える深い青だ」
「・・・・・・もしや、好みのタイプに合致する特定の人物がいるとか?」
「ん?いや、特にそんなつもりはないが」
きょとんとした顔で司会を見返すシンファ。
彼女は自分があげた条件が、ある人物と合致することに気づいてない。
というか、完全に無意識の結果のようだ。
重症である。
会場の中がざわざわしていた。
中には雷砂を見知っている者もいて、シンファの好みのタイプが誰と合致するのか、気づいている者もいるようだ。
ザズは静かに頭を抱えていた。
そんな中、静かに挙手をする者がいた。
シンガ族の若長だ。
昨年、シンファに振られたその人である。
「ジンガ族・ラージェン殿。発言されよ」
司会がほっとしたように彼を指名する。
シンファに自覚が無いためこれ以上つっこみようがなく、困っていたのだ。
指名されたラージェンはすくっとその場に立ち上がった。
熱いまなざしをシンファに注ぎながら、自信に満ちた表情で。
昨年振られているとは思えない自信だ。
「シンファ殿、このままでは埒が飽かないので質問させて頂く」
「ああ。かまわんが」
「この会場内にいる男の中で、あなたの好みに一番近い男を指名して頂きたい」
おおっ、と会場がどよめいた。
この質問であれば、誰か一人は指名されるだろう。
「この、中からか」
シンファは困ったように会場内を見回した。
彼女の視線にさらされる男達が一喜一憂する様子がうざい。
だが、誰かを選ばねば、この恥ずかしい会議はいつまでたっても終わらないだろう。
仕方ないな、とシンファは一人の犠牲者を定めた。
「まあ、私の好みとは少し違うが、あえてこの中から選ぶとすれば・・・・・・」
「え、選ぶとすれば?」
ゴクリと、ジンガ族の若長の喉が鳴った。
ラージェンはこの中で唯一金色の髪をしている男だった。
年も、シンファより2つほど若いし、体もまだそれほどムキムキじゃない。
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この中から選べと迫ればシンファはきっと自分を選ぶ。
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「私は我が部族のザズを選ぶ」
にやりと笑って指名すれば、ザズはまさしく苦虫を噛み潰したような顔でシンファを見た。
なんとなく予測はしていたのだろう。諦めきったように肩を落として。
「な、なぜ彼なのです?あなたの言っていた好みとは全然違うじゃないですか!?」
ラージャンが食い下がると、シンファは軽く肩をすくめ、
「まあ、好みのタイプとは違うが、彼は私に妙な色目は使わないし、気を使わずにつき合えるところは悪くないな、と思う」
そう言うと、自分に妙な色目を使う会場内の男達をじとっとした目で見回した。
「では、本日の議題はここまでだな。シンファちゃんの好みのタイプは、十分究明出来ただろう?」
これ以上引き留めたら、さすがに怒るぞと言わんばかりの顔で告げられて、司会も他の連中もこくこくと黙って頷く。
それじゃあと、ザズを連れて出て行こうとするシンファの背中をラージャンの声が追いかける。
「あなたは、強い男が好きなんですよね?」
「・・・・・・そうだな。強い男は嫌いじゃない」
「じゃあ、明日の競技会であなたに勝てたら、俺との交際を考えてくれませんか?」
まっすぐな眼差しに、シンファはしばし考え、それからふっと唇をほころばせた。
「まあ、私に勝てるなら、少しは考えてやっても良い」
そう答えて、再び彼に背を向け歩き出す。
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