97 / 248
第一部 幸せな日々、そして旅立ち
SS シンファの部族会 1
しおりを挟む
今年の部族会は、いやな空気が流れていた。
ここ最近は毎年、族長である叔父に連れられて参加していたが、今までこんな雰囲気の時など無かった。
では、どんな空気・雰囲気なのか。
一言で言えば浮ついている。何とも軽薄な感じなのだ。
では、それは何故なのか。
草原の12ある大部族のうちの実に11部族が、何故か若い世代を何人も連れて参加しているせいだ。
ちなみに、若者の参加者が少ない部族はライガ族、つまりシンファ達の部族であり、今年は体調の優れない族長の代わりにまだ若いシンファが参加しているものの、他のメンバーは部族会に慣れた古参のメンバーばかり。
じつに重厚な雰囲気を醸し出していて心地が良い。
それに引き替え、他の部族は何なのか。
族長が、次代を担う若い身内を連れてくるくらいなら理解できる。
だが、今回は異様だ。
どの部族も、部族会に参加しているメンバーの半数以上が若い男性なのだ。
中には年端もいかない子供のような少年を連れてきているところもある。
何とも不自然な顔ぶれだし、その若い男達がやけにシンファに絡んでくるからどうにも心地が悪かった。
部族会の会場となった集落には昨日着いたばかりだが、昨日から今日の昼までに、実に17回も若い男に絡まれた。
絡まれたといっても、嫌なことはされていないし、実に紳士的なものだったが、それでも不快だと感じたのだから仕方ない。
いつも叔父のジルヴァンの補佐をしていて、今回もシンファの補佐で着いてきてくれているザズにも相談してみたが、逆に好みの男はいなかったのかと聞かれた。
正直に誰も好みじゃなかったと答えると、思いっきりため息をつかれて、なんだかいらっとした。
今日一日、旅の疲れを癒して、明日の昼から部族会が始まる。
が、今回の部族会は嫌な予感しかしなかった。
出来ることならさぼってしまいたいが、そういうわけにもいかない。
シンファは深くため息をつき、せめて今日は変な男に声をかけられないようにここで過ごそうと、引きこもりを決意するのだった。
翌日、昼間でばっちり引きこもり、しぶしぶ部族会を行う為に用意された天幕に入ったシンファは己が目を疑った。
ごしごしと目をこすり、もう一度よーく見てみる。
各部族の代表が座る場所が用意された奥に、いつも部族会の議題が張り出されるのだが、そこに信じがたい議題が掲げられていた。
「ザズ・・・・・・私は目が悪くなったのかな?」
あまりに信じられなくて、部族会に一緒に参加する予定の補佐役にそっと問いかけてみた。
「わ、私にはあそこに、シンファちゃんの好みのタイプを究明する、と書かれているような気がするのだが、まさかな。私の気のせいだよな?な?」
「いや、俺にもそう見えるな・・・・・・」
「・・・・・・帰っても良いか?いや、帰りたい。帰らせてくれ。ザズ、お前に全権を委任するから」
「そういうわけにもいかん。族長代理はお前だ、シンファ」
帰りたいと駄々をこねてみたが、重々しく却下されてしまった。
シンファはがっくり肩を落とし、渋々自分の席へ向かう。
用意された座席には、もうすでに来ている族長達もいて、一人だけ許される同行人にはやはり若い男を連れていた。
「お~、シンファちゃん。よう来たのぅ」
そう声をかけてきたのは、ライガ族と比較的交流のあるジンガ族の長だ。
彼の後ろには、次期族長候補でもある彼の長男が座っている。
シンファが昨年の部族会で振った男だ。
だが、彼はそんな事は気にしていない様で、昨年同様熱っぽい目でシンファを見つめ、小さく頭を下げてきた。
シンファも礼儀上、同じように礼を返すが、はっきりいって気まずい。
昨年告白された相手だが、申し訳ないが名前すら思い出せない。
あっちはまだこっちに気がありそうだが、こちらはまるでその気がない。
何度も振るのは申し訳ないから、出来れば早々に諦めてもらいたいものだ。そんな事を考えながら、シンファは小さくため息をついた。
続々と集まってくる各部族の長達。
彼らが例外なく連れている若い男の目線が何ともうっとおしく、これから始まる部族会にも嫌な予感しか抱けなかった。
ここ最近は毎年、族長である叔父に連れられて参加していたが、今までこんな雰囲気の時など無かった。
では、どんな空気・雰囲気なのか。
一言で言えば浮ついている。何とも軽薄な感じなのだ。
では、それは何故なのか。
草原の12ある大部族のうちの実に11部族が、何故か若い世代を何人も連れて参加しているせいだ。
ちなみに、若者の参加者が少ない部族はライガ族、つまりシンファ達の部族であり、今年は体調の優れない族長の代わりにまだ若いシンファが参加しているものの、他のメンバーは部族会に慣れた古参のメンバーばかり。
じつに重厚な雰囲気を醸し出していて心地が良い。
それに引き替え、他の部族は何なのか。
族長が、次代を担う若い身内を連れてくるくらいなら理解できる。
だが、今回は異様だ。
どの部族も、部族会に参加しているメンバーの半数以上が若い男性なのだ。
中には年端もいかない子供のような少年を連れてきているところもある。
何とも不自然な顔ぶれだし、その若い男達がやけにシンファに絡んでくるからどうにも心地が悪かった。
部族会の会場となった集落には昨日着いたばかりだが、昨日から今日の昼までに、実に17回も若い男に絡まれた。
絡まれたといっても、嫌なことはされていないし、実に紳士的なものだったが、それでも不快だと感じたのだから仕方ない。
いつも叔父のジルヴァンの補佐をしていて、今回もシンファの補佐で着いてきてくれているザズにも相談してみたが、逆に好みの男はいなかったのかと聞かれた。
正直に誰も好みじゃなかったと答えると、思いっきりため息をつかれて、なんだかいらっとした。
今日一日、旅の疲れを癒して、明日の昼から部族会が始まる。
が、今回の部族会は嫌な予感しかしなかった。
出来ることならさぼってしまいたいが、そういうわけにもいかない。
シンファは深くため息をつき、せめて今日は変な男に声をかけられないようにここで過ごそうと、引きこもりを決意するのだった。
翌日、昼間でばっちり引きこもり、しぶしぶ部族会を行う為に用意された天幕に入ったシンファは己が目を疑った。
ごしごしと目をこすり、もう一度よーく見てみる。
各部族の代表が座る場所が用意された奥に、いつも部族会の議題が張り出されるのだが、そこに信じがたい議題が掲げられていた。
「ザズ・・・・・・私は目が悪くなったのかな?」
あまりに信じられなくて、部族会に一緒に参加する予定の補佐役にそっと問いかけてみた。
「わ、私にはあそこに、シンファちゃんの好みのタイプを究明する、と書かれているような気がするのだが、まさかな。私の気のせいだよな?な?」
「いや、俺にもそう見えるな・・・・・・」
「・・・・・・帰っても良いか?いや、帰りたい。帰らせてくれ。ザズ、お前に全権を委任するから」
「そういうわけにもいかん。族長代理はお前だ、シンファ」
帰りたいと駄々をこねてみたが、重々しく却下されてしまった。
シンファはがっくり肩を落とし、渋々自分の席へ向かう。
用意された座席には、もうすでに来ている族長達もいて、一人だけ許される同行人にはやはり若い男を連れていた。
「お~、シンファちゃん。よう来たのぅ」
そう声をかけてきたのは、ライガ族と比較的交流のあるジンガ族の長だ。
彼の後ろには、次期族長候補でもある彼の長男が座っている。
シンファが昨年の部族会で振った男だ。
だが、彼はそんな事は気にしていない様で、昨年同様熱っぽい目でシンファを見つめ、小さく頭を下げてきた。
シンファも礼儀上、同じように礼を返すが、はっきりいって気まずい。
昨年告白された相手だが、申し訳ないが名前すら思い出せない。
あっちはまだこっちに気がありそうだが、こちらはまるでその気がない。
何度も振るのは申し訳ないから、出来れば早々に諦めてもらいたいものだ。そんな事を考えながら、シンファは小さくため息をついた。
続々と集まってくる各部族の長達。
彼らが例外なく連れている若い男の目線が何ともうっとおしく、これから始まる部族会にも嫌な予感しか抱けなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
この世界、イケメンが迫害されてるってマジ!?〜アホの子による無自覚救済物語〜
具なっしー
恋愛
※この表紙は前世基準。本編では美醜逆転してます。AIです
転生先は──美醜逆転、男女比20:1の世界!?
肌は真っ白、顔のパーツは小さければ小さいほど美しい!?
その結果、地球基準の超絶イケメンたちは “醜男(キメオ)” と呼ばれ、迫害されていた。
そんな世界に爆誕したのは、脳みそふわふわアホの子・ミーミ。
前世で「喋らなければ可愛い」と言われ続けた彼女に同情した神様は、
「この子は救済が必要だ…!」と世界一の美少女に転生させてしまった。
「ひきわり納豆顔じゃん!これが美しいの??」
己の欲望のために押せ押せ行動するアホの子が、
結果的にイケメン達を救い、世界を変えていく──!
「すきーー♡結婚してください!私が幸せにしますぅ〜♡♡♡」
でも、気づけば彼らが全方向から迫ってくる逆ハーレム状態に……!
アホの子が無自覚に世界を救う、
価値観バグりまくりご都合主義100%ファンタジーラブコメ!
異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜
キノア9g
ファンタジー
※本作はフィクションです。
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」
20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。
一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。
毎日19時更新予定。
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる