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第三部 新たな己への旅路
大森林のエルフ編 第四話
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夢を見ていた。
セイラと一緒にいる夢。
肌と肌を触れ合わせ、なにをするでもなくただ抱き合う夢だ。
冷え切った肌を彼女の温もりが癒し、見上げれば彼女の瞳が優しく細められ、愛してると伝えてくる。
幸せで、切なくて。
ぎゅう、と彼女の身体を抱きしめたら、同じように彼女も抱き返してくれて。
ただそれだけのことが嬉しくて、彼女の胸元に頬をすり寄せたら、優しい指先が髪をすいてくれた。
その甘い感触にとろけそうになりながら思う。
セイラと別れて旅をしていたのは、アレはゆめだったのか、と。
だって彼女はここにいる。雷砂のそばに。
側にいて、こうして抱きしめてくれているのだから、きっと別れ別れになった方が夢だったに違いない。
そう思い、雷砂は微笑んだ。
髪の間を滑る指先の感触が少しだけくすぐったい。
雷砂はくすくすと小さな笑い声をたて、もっとセイラを感じようと彼女の身体をもう少しだけ強く、抱きしめた。
すると、小さな子供をあやすように背中をぽんぽんと優しく叩かれ、
「大丈夫だぞ?ここにいるから」
女性にしては少し低めの、落ち着いた声が頭の上から聞こえた。
聞こえたその声に、雷砂は目を丸くする。その言葉遣いや声の感じ、それはセイラと言うよりはむしろ……
「ん……あれ?シンファ??」
雷砂がこの世界に来てからずっと親代わりをしてくれた獣人族の女性のものに似ていた。
上を見上げ、自分が抱きついているのは誰なのか、確かめようとしたのだが、その前に雷砂の顔に優しい指先が触れてきた。
顔、というか、正確には耳、だったが。
その指先は、雷砂の耳の形をなぞるように何度も何度も触れてくる。優しく、だが、執拗に。
まるで愛撫するようなその指使いは、シンファ、というよりセイラのものに似ている気がする。
果たして、自分が抱きついている人は、セイラなのかシンファなのか。
「……セイラ?」
問うように呼びかけながら見上げれば、そこにあるのはやっぱりセイラの顔で。
雷砂は嬉しくなって思わず微笑んだ。
そしてそのまま手を伸ばし、愛しい人の首に回して引き寄せる。
普段はセイラから仕掛けられることの多いキスを、雷砂から求めたのはそれだけ彼女が恋しかったからだ。
恋しくて恋しくて、愛しくて。
雷砂は想いを込めて優しく甘い、口づけをする。
己の唇の下で、いつもはすぐに応えてくれる唇がなぜか一瞬硬直するのを感じた。
だが、どうしたんだろうと思うまもなく、その唇はいつものように甘くとろけて雷砂を受け入れてくれた。
ぎこちなく応えようとしてくれる舌をからめ取り、いつものように甘いキスをしながら、不意に雷砂は我に返る。
あれ?これ、セイラじゃないぞ、と。
思い返してみれば、触れた唇の感触も、絡めた舌の感触も、セイラのものとは違っていた様に思う。それに、吸い込んだ空気に混じるその香りも、とてもいい匂いだけれどセイラのものとは違っていた。
そのことに気づいた雷砂はやっと夢から覚め、目をぱっちりと開けて。
乱暴にならないように唇を離してから、ぽーっとした顔で自分を見つめている片目に眼帯をしたもの凄い美人の顔を困ったように見つめる。
そして……
「え~っと、ごめん。だれ、だっけ??」
とっても申し訳なさそうに、そう訊ねたのだった。
セイラと一緒にいる夢。
肌と肌を触れ合わせ、なにをするでもなくただ抱き合う夢だ。
冷え切った肌を彼女の温もりが癒し、見上げれば彼女の瞳が優しく細められ、愛してると伝えてくる。
幸せで、切なくて。
ぎゅう、と彼女の身体を抱きしめたら、同じように彼女も抱き返してくれて。
ただそれだけのことが嬉しくて、彼女の胸元に頬をすり寄せたら、優しい指先が髪をすいてくれた。
その甘い感触にとろけそうになりながら思う。
セイラと別れて旅をしていたのは、アレはゆめだったのか、と。
だって彼女はここにいる。雷砂のそばに。
側にいて、こうして抱きしめてくれているのだから、きっと別れ別れになった方が夢だったに違いない。
そう思い、雷砂は微笑んだ。
髪の間を滑る指先の感触が少しだけくすぐったい。
雷砂はくすくすと小さな笑い声をたて、もっとセイラを感じようと彼女の身体をもう少しだけ強く、抱きしめた。
すると、小さな子供をあやすように背中をぽんぽんと優しく叩かれ、
「大丈夫だぞ?ここにいるから」
女性にしては少し低めの、落ち着いた声が頭の上から聞こえた。
聞こえたその声に、雷砂は目を丸くする。その言葉遣いや声の感じ、それはセイラと言うよりはむしろ……
「ん……あれ?シンファ??」
雷砂がこの世界に来てからずっと親代わりをしてくれた獣人族の女性のものに似ていた。
上を見上げ、自分が抱きついているのは誰なのか、確かめようとしたのだが、その前に雷砂の顔に優しい指先が触れてきた。
顔、というか、正確には耳、だったが。
その指先は、雷砂の耳の形をなぞるように何度も何度も触れてくる。優しく、だが、執拗に。
まるで愛撫するようなその指使いは、シンファ、というよりセイラのものに似ている気がする。
果たして、自分が抱きついている人は、セイラなのかシンファなのか。
「……セイラ?」
問うように呼びかけながら見上げれば、そこにあるのはやっぱりセイラの顔で。
雷砂は嬉しくなって思わず微笑んだ。
そしてそのまま手を伸ばし、愛しい人の首に回して引き寄せる。
普段はセイラから仕掛けられることの多いキスを、雷砂から求めたのはそれだけ彼女が恋しかったからだ。
恋しくて恋しくて、愛しくて。
雷砂は想いを込めて優しく甘い、口づけをする。
己の唇の下で、いつもはすぐに応えてくれる唇がなぜか一瞬硬直するのを感じた。
だが、どうしたんだろうと思うまもなく、その唇はいつものように甘くとろけて雷砂を受け入れてくれた。
ぎこちなく応えようとしてくれる舌をからめ取り、いつものように甘いキスをしながら、不意に雷砂は我に返る。
あれ?これ、セイラじゃないぞ、と。
思い返してみれば、触れた唇の感触も、絡めた舌の感触も、セイラのものとは違っていた様に思う。それに、吸い込んだ空気に混じるその香りも、とてもいい匂いだけれどセイラのものとは違っていた。
そのことに気づいた雷砂はやっと夢から覚め、目をぱっちりと開けて。
乱暴にならないように唇を離してから、ぽーっとした顔で自分を見つめている片目に眼帯をしたもの凄い美人の顔を困ったように見つめる。
そして……
「え~っと、ごめん。だれ、だっけ??」
とっても申し訳なさそうに、そう訊ねたのだった。
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